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重症低血糖で搬送、年2万件…薬の誤使用原因か?糖質摂取のせいか?
こんばんは。

医療ニュース m3.com において、2017年8月12日 (土)
重症低血糖で搬送、年2万件…薬の誤使用原因か
という記事が掲載されました。

2015年7月に、
日本糖尿病学会が631施設にアンケートを送付して調査した結果です。


 調査結果をまとめた兵庫医科大学病院の難波光義院長は

「重症低血糖の原因として、インスリンを注射で補充するタイミングや使用量の誤り、
薬の飲み間違いなどが多い。

高齢などで発症リスクが高い患者には、服薬指導に加え、
生活面も含めた指導を行う必要がある」と話している。



ということですが、もう少し整理して、より具体的な方策を立てないと
重症低血糖を減らすことは困難と思います。
ともあれ、インスリン注射かSU剤を内服している糖尿人が、
重症低血糖のほとんどを占めていると思います。
65歳以上の高齢の糖尿人には、SU剤は禁忌と言っても過言ではないと思います。


とくに重症低血糖の起きた2型糖尿病患者では、
HbA1cが7%以下が60%を占めていました。
これは、糖質を普通に摂取して、
血糖コントロールを厳格に行いHbA1cを下げようとすると、
低血糖が増えてしまう
ということを意味しています。

このことは、以下の研究で明らかとなっています。
『血糖コントロール良好を目指してHbA1cを下げるべく厳格に薬物療法を行うと
かえって総死亡率が上昇する』

という信頼度の高いACCORD試験というエビデンスがあります。(☆)

最近では低血糖を起こしにくい血糖降下薬が治療に使われるようになってきています。
私が、最もよく処方するのは「GLP1受容体作動薬」.と」「SGLT2阻害薬」です。
何故なら低血糖を起こしにくいし、効果も高いからです。
あとは「αGI薬」や「グリニド系薬」を、糖質摂取直前に内服して貰います。
勿論、必要に応じて、メトホルミンやDPP-4阻害薬も使用します。
SU剤は、ほぼ使いません。
アクトスは男性で膀胱がん、女性で体重増加が懸念されるので
使いにくい薬です。
新薬のツイミーグ®錠(一般名:イメグリミン塩酸塩)は、
少し様子をみているところです。

1)<インスリン注射>
当たり前のお話しですが、
インスリン注射の単位が多いほど低血糖になりやすいです。
糖質制限食なら、インスリンの単位は必要最小限ですむので
低血糖になりにくいです。
従来の糖尿病食は、高炭水化物食となるので、必要なインスリンの単位数が多くなり
その分、低血糖になりやすいのです。

2)<SU剤>

アマリール、グリミクロン、オイグルコンなどがSU剤です。
SU剤は、多くの場合、「食後高血糖は防げず、空腹時低血糖を生じる」
ということが、CGMの普及により、確認されるようになりました。
それを受けて、現在SU剤の使用は、日本中で激減しています。

SU剤の処方割合は
2005年 50%
2015年 20%


で、半減以下です。
もともとSU剤は、疲れたβ細胞を鞭打つ側面がありますから、
本来、少量投与に越したことはないのです。

そしてもし、グリペンクラミド(オイグルコン、ダオニール:第2世代SU剤)や
第一世代のSU剤(ジメリンなど)を服用しておられる方がいたら、
心筋障害のリスクがあるので即刻中止することをお奨めします。

アマリールやグリミクロン(第3世代)も、
HbA1cの改善効果だけはあるものの、上述の様に
食後高血糖をマッチング良く防ぐことができないことと、
空腹時には低血糖を招きやすい欠点が、CGMにより明らかとなってきました。
SU剤は12~24時間と作用時間が長いのも低血糖になりやすい理由の一つです。

3)<糖質制限食で低血糖予防>
糖質制限食なら、99%、SU剤は不必要です。
そもそも、高齢者の糖尿人には、低血糖リスクの高いSU剤は
基本的に処方しないほうが無難です。
それなら、経口糖尿病薬による低血糖発作は、激減すると思います。
同様に、インスリン注射をしている場合も、単位が少ないほど
低血糖発作は起こしにくいです。
糖質制限食なら、従来の糖尿病食に比し、食前のインスリン注射は1/3以下となりますので、
低血糖発作のリスクはおおいに減少します。


江部康二

(☆)ACCORD
Action to Control Cardiovascular Risk in Diabetes Study Group, , Miller ME, Byington RP, Goff DC, Bigger JT, Buse JB, Cushman WC, Genuth S, Ismail-Beigi F, et al.: Effects of intensive glucose lowering in type 2 diabetes. N Engl J Med 2008; 358: 2545-2559.
コメント
アマリール服用について
先生、こんにちは。
食後高血糖がわかり、糖質制限歴1年となります。
10時頃と夕方の低血糖症状があまり出なくなり、とても快適です。

同じ職場に65歳の男性の同僚がいます。
毎日のように清涼飲料水を飲んで、どら焼きなんかを食べているので、いいねー正常人はと羨ましく思っていたのですが、先日、糖尿人であることがわかりました。
インスリンはほぼ出ず、服用薬がアマリールだそうです。
アマリールと言えば、こちらのブログであまり良くないと見た覚えがあり、こちらの記事に辿り着きました。
高糖質の物を飲食して、SU剤って、素人ながらにも怖いような気がしてしまいます。
インスリンが出ないタイプの方なら、すごい上手いこと血糖値を帳消しにしてくれる…なんてうまくはいかないですよね?
とても主治医を信頼しているようですし、結構頑固な人なので、ご本人には何も言いませんけど、大丈夫なのかと思ってしまいます。

更に怖いのは、その方がお客様を乗せて運転する事がままある事です。
自分が低血糖で運転中に寝かかった事があるので、怖くて糖質食べれません。
とすると、インスリン出ない方なら低血糖にはなりにくいのか?どうなんでしょうか…

タクシー運転手さんは高齢の方が多いので、勿論正常人もたくさんいらっしゃるとは思いますが、乗るのちょっと怖いと最近思う次第です。
2022/01/13(Thu) 14:54 | URL |  | 【編集
Re: アマリール服用について

アマリールなどSU剤は、低血糖を起こしやすいので、使用量は日本全体で、かなり減少しています。
昔は他の薬があまりなかったのでSU剤がよく使用されていました。
今は、SGLT2阻害薬、GLP1受容体作動薬、DPP4阻害薬など低血糖を起こしにくい良い薬が
出現してきたので、SU剤はあまり使われなくなったのです。

2022/01/13(Thu) 15:44 | URL | ドクター江部 | 【編集
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