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糖尿病は治るのでしょうか?治らないのでしょうか?
こんばんは。
厚生労働省の2016年「国民健康・栄養調査」の要点は以下のとおりです。

<患者・予備群の数>
「糖尿病が強く疑われる者」の割合は、12.1%であり、
男女別にみると男性16.3%、女性9.3% です。
「糖尿病の可能性を否定できない者」の割合は12.1%であり、
男女別にみると男性 12.2%、女性12.1%です。
「糖尿病が強く疑われる者」は約1,000 万人と推計され、
1997年以降増加し続けています。
また、「糖尿病の可能性を否定できない者」も約1,000 万人と推計され、
1997年以降増加していましたが2007 年以降減少しています。

<治療の状況>

「糖尿病が強く疑われる者」のうち、
現在治療を受けている者の割合は76.6%です。
男女別 にみると男性で78.7%、女性で74.1%であり、
男女とも有意に増加しているのは良いことです。
しかし、日本糖尿病学会主導の「カロリー制限・高糖質食」では
糖尿病合併症を防ぐのは困難なので、おおいに問題です。
性・年齢階級別にみると、
40 歳代男性では治療を受けている割合が他の年代よりも低いです。
これでは将来の合併症が野放しに発症するので、何とかしなくてはなりません。

<糖尿病は治るのでしょうか?治らないのでしょうか?>
このように、日本の糖尿病患者は1997年以降、増え続けているのが現状です。
さて、よくある質問の一つに
「糖尿病は治るのでしょうか?治らないのでしょうか?」というのがあります。
一般には、「一旦糖尿病になったら決して治らない。」というのが定説ですが、
本当のところはどうなのでしょう。
それではまず、どのようにして糖尿病が発症するのかを考えてみます。

日本人の糖尿病発症は、食後高血糖が数年間続いているのを見逃しているうちに、
遂に空腹時血糖値が上昇してきて、健康診断で発見されたというパターンが多いです。
即ち、当初は食後高血糖にならないように、
膵臓のβ細胞がインスリン追加分泌を頑張って沢山出し続けていくのですが、
ある日とうとう疲弊して追いつかなくなってきて、食後高血糖の段階に至ります。

この段階では、インスリン追加分泌の軽度の不足があり、
食後2時間値が140~199mgの境界型レベルになりますが、
まだ基礎分泌は保たれていて早朝空腹時血糖値は、
110mg/dl未満で正常範囲を保つことがほとんどです。
食後高血糖の段階になると、高血糖そのものが膵臓のβ細胞を障害します。
食後高血糖が180mgを超えてくると、
β細胞への直接のダメージでインスリン分泌不足を悪化させ、
また筋肉細胞のインスリン抵抗性も増してきて、糖毒と呼ばれる悪循環を生じます。

食後高血糖が数年間続くと、膵臓はさらに疲弊していき、
インスリン追加分泌の不足に加えて、インスリン基礎分泌不足となり、
とうとう早朝空腹時血糖値が高値となるのです。
空腹時血糖値が126mg/dl以上、
随時血糖値が200mg/dl以上で糖尿病型と診断されます。
糖毒状態が1日の中でも長時間続くようになれば、
急速に糖尿病が悪化していきます。

糖尿病は、インスリン分泌不足とインスリン抵抗性が合わさって発症しますが、
日本人は、インスリン分泌不足が主で、欧米人は、インスリン抵抗性が主とされています。
インスリン分泌不足とインスリン抵抗性を合わせて、インスリン作用不足と言います。

インスリン分泌不足が主の場合、糖尿病と診断された時点で
インスリンを作っている膵臓のランゲルハンス島のβ細胞の1~2割が壊れていて、
3~4割が疲弊していて、健常なのは、残りの半分くらいと考えられます。
一般に、糖尿病が治らないと言われるのは、
「インスリン分泌不足が主の糖尿病」であり、
既に壊れてしまったβ細胞は、元に戻らないと言う意味です。

しかし、糖質制限食を実践して、膵臓が充分休養できれば、
疲弊していたβ細胞が、正常に回復することが期待できます。
実際、入院時の空腹時血糖値が200mg/dl近かった方が、
糖質制限食実践数日で、110mgを切ってくることもあります。
この場合、β細胞数の一定の不足はあるけれども、
<残っているβ細胞の作用 + スーパー糖質制限食実践>により
血糖コントロールが正常レベルを保てているということになります。
例えば、糖尿人・江部康二がそのパターンです。

食後高血糖の期間・年数が長いほど、
β細胞がダメージを受けている割合が徐々に増えていき、
ダメージが大きい細胞は、回復しにくくなっていくということになります。


次に「インスリン抵抗性が主の糖尿病」を考えてみます。
この場合、インスリン分泌能力は、まだ比較的保たれていることが多いのです。
日本人でもこのタイプが少し増えてきています。
例えば、肥満や脂肪肝がありインスリン抵抗性が高まれば、
インスリンは分泌されていても、糖尿病を発症することがあります。
このとき何らかの方法で肥満や脂肪肝が改善すればインスリン抵抗性も減少します。
そうすると、適量のインスリンで、
筋肉細胞や脂肪細胞内にブドウ糖を取り込むことが可能となり、
インスリン分泌不足はないので血糖値は正常化し、
糖尿病が治ったような状態になります。
治るという言い方に語弊があるなら、
インスリン作用不足が改善し健常のパターンに戻るということです。

実際、そういう患者さんを数名経験しました。
例えば、初診時、
空腹時血糖値218mg/dl、HbA1c11.7%、163cm、72kgだった女性が、
内服薬なしでスーパー糖質制限食を1年間続けて、60kgと肥満が解消し、
HbA1cは5%前後で維持できていました。
そうすると、糖質を普通に摂取しても、
食後2時間血糖値は140mg/dl未満となりました。
勿論空腹時血糖値も正常範囲内です。
血液検査のデータでは、診断基準上は正常人としかいいようがありませんので、
糖尿病のレッテルも消えました。(^-^)v(^-^)v  
この患者さんが糖尿病専門医を受診して、いろいろ血液検査をされたとしても
「糖尿病ではありません。診断基準からみて正常です。」
という診断となるでしょう。

一方、江部康二の場合は、身長167cm、体重57kg前後を足かけ21年維持していますが、
「インスリン分泌不足が主でインスリン抵抗性が従の糖尿病」です。
スーパー 糖質制限食を続けているかぎりは正常人ですが、
糖質を一人前摂取すれば残念ながら食後時間血糖値は軽く200mg/dlを超えて、
立派な糖尿人です。
β細胞が既に1~2割壊れていて、決して治らないパターンです。(*- -)(*_ _)


結論です。
「インスリン分泌不足が主の糖尿病は、決して治らない。」
「インスリン抵抗性が主の糖尿病なら、抵抗性が改善すれば、
糖代謝が正常人のパターンに戻る人も時にいる。」
ということですね。


江部康二
コメント
おはようございます
先生、私の楽しみ、そしてリスクも考えてのものです。
マクドナルドのエッグマックマフィンが好きなのですが、コンビで月に2回位は食べます。
炭水化物は27g位と表記されてたはずです。
卵とチーズ、ハム。
マフィンが余計ですが、まぁ美味しいので。
結構栄養バランスって良くないですか?(笑)
2021/11/22(Mon) 09:02 | URL | 猫 | 【編集
理解出来ました
糖尿病診断から主治医の指示を無視して 先生の著者を参考にスーパー糖質制限を5ヶ月行い減量後 糖尿病の症状も出ず 主治医に糖質制限を告げてから投薬も無くなり 血液検査で正常な結果が出て 果たして自分は
糖尿病患者なのだろうか?と悩み先日先生に質問コメントの解答を頂き納得していた事がこの記事で良く解りました
有り難う御座います
2021/11/22(Mon) 09:57 | URL | 山口 | 【編集
アムラについて
江部先生

こんにちは。本題からはそれますが、糖尿病を寛解させるかもしれないサプリの話しです。これまでも糖尿病を改善するサプリは、菊芋をはじめ様々なものが紹介されてきましたが、どれも効果は限定的なようです。

ところで、すでにご存知だと思いますが、アムラ(インディアングースベリー)という果物の粉末が、空腹時の血糖値を下げるという研究があります。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21495900/

アムラは、アユルベーダでも至宝の果実とされ、その効能は、血糖値を下げるだけでなく、抗がん作用、クコの実の60倍もの抗酸化作用、コレステロール値の改善などに即効性があり、高血圧、白髪、脱毛、アンチエイジングにも有効な、まさに不老不死の霊薬のようです。

Amla vs. Diabetes
https://youtu.be/C11zDNtpJwo

Amla vs. Cancer Cell Growth
https://youtu.be/49PMkTQJLKo

Better than goji berries
https://youtu.be/Bgp4_N2Sjrg

The Best Food For High Cholesterol
https://youtu.be/hNj6V7kIqGY
2021/11/22(Mon) 10:30 | URL | ジョー | 【編集
Re: おはようございます
猫 さん

スーパー糖質制限食は、一回の食事の糖質量20g以下が目標です。

27gなら、緩やかな糖質制限食ですね。
2021/11/22(Mon) 14:26 | URL | ドクター江部 | 【編集
Re: アムラについて
ジョー さん

情報をありがとうございます。

一方、糖質セイゲニストの場合は、サプリなしでも、目標を達成できると思います。
2021/11/22(Mon) 14:33 | URL | ドクター江部 | 【編集
先生のブログで糖質制限を始めた境界型の者です。
いつも勉強させていただき、感謝しています。
自己採血するようになってから気づいたのですが、私の場合、朝の空腹時血糖値に季節傾向があるようです。
冬と春は80~90、夏と秋は95~105の範囲に収まります。
生活習慣や食べ物は変わりませんので、季節要因かなと思います。
関連で思い当たる節があるとすれば、睡眠かもしれません。
冬と春はよく眠れますし、深い睡眠がとれています。
夏と秋は寝つきもいまいちで、朝も早く目が覚めて睡眠時間も比較的短くなりがちです。
このような季節(気温?)傾向があるのは、私だけでしょうか?
それとも一般的にあることなのでしょうか?
先生の見解を教示していただけると幸いです。
2021/11/23(Tue) 22:42 | URL | 児玉 | 【編集
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