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糖質の中でも、果糖の代謝は特殊です。
こんにちは。
今日は、果糖のお話です。

果物に含まれている糖質は、果糖、ショ糖、ブドウ糖などです。
この中のショ糖は、果糖とブドウ糖から構成されています。
市販されている砂糖の主成分がショ糖です。

皆さん、果物の糖質は、全て果糖と思っていませんでしたか?
実は、私も当初はそう思っていましたが、実態は違うのですね。
例えばリンゴ1個(約240g)のカロリーは約150kcalであり、
ビタミンC含量は8mg、
遊離糖含有量は35.6g(果糖:18g、ブドウ糖:6g、ショ糖:9.6g、ソルビトール:2g)、
水溶性食物繊維含量は0.95g、不溶性食物繊維含量は2.95gくらいだそうです。

さて、その果糖ですが、実に面白い性質をもっていますので検討してみましょう。
まず、果糖は、ブドウ糖とは代謝経路が全く異なっています。
そして、果糖のGI(血糖上昇指数)は20くらいと、大変低いです。
果糖の代謝経路は特殊で、10%がブドウ糖に変換され吸収されますが、
残りの90%は、果糖のまま吸収され、肝臓でそのまま直接代謝されます。
ですから、果糖は血糖値をほとんど上昇させず、
インスリンの分泌もほとんど促しません。

つまり、果糖のGI値が低いのは、
果糖が「ブドウ糖として」利用されるのはごく一部であるからであり、
果糖の吸収速度が遅いからGI値が低いというわけではありません。
消化吸収されて肝門脈に流れ込んだ果糖は肝臓で、
ブドウ糖より速く解糖作用をうけます。
これは、ブドウ糖が解糖系に入って代謝されていく時には、
ホスホフルクトキナーゼという酵素が必要なのですが、
果糖はこの段階をバイパスして、速やかに解糖系に入って代謝されるからです。
肝臓に取り込まれたブドウ糖、果糖は解糖系、TCAサイクルを経てATP産生に消費され、
余分なものは、グリコーゲン、中性脂肪に変換され蓄えられます。
肝臓のグリコーゲン蓄積には限りがあるので、
ブドウ糖より速やかに代謝された果糖の代謝産物により、
脂肪酸合成が促進され、中性脂肪の合成が亢進し、高中性脂肪血症となります。

血糖値の上昇をみるGI値では「ブドウ糖>砂糖>果糖」ですが、
中性脂肪値の上昇速度は、「果糖>砂糖>ブドウ糖」となります。
ですから、果糖は、ブドウ糖に比べれば血糖値はほとんど上昇させませんが、
中性脂肪合成を促進させ、太りやすい性質をもっています。

果物の糖質の主成分は果糖ですので、
血糖値はパンや米など穀物より上昇させにくいですが、
中性脂肪に変わるという意味では、太り安い食材です。
農耕以前の人類は、来るべき冬の食糧難に備えて、実りの秋に果物を摂取して、
効率よく中性脂肪を蓄えていたというのが私の仮説です。

従って、現代において、糖尿人やメタボ人には、
甘味料は「ラカントS」「パルスイートゼロ」などがお奨めです。
これらの主成分はエリスリトールであり、カロリーはゼロで血糖値も上昇させません。

血糖値を直接上昇させるのは、糖質・脂質・蛋白質のうち、糖質だけです。
体重64kgの糖尿人が1gの糖質摂取を摂取すると、血糖値を約3mg上昇させます。
しかし糖質のなかには果糖のようにほとんど血糖値を上げないものや、
エリスリトールのように、全く血糖値を上げないものも例外的に存在しているのです。

まとめ


① 果糖のGI(グリセミック・インデックス)は20程度と低いです。
② ブドウ糖のGIは、100です。
③ 果糖は、血糖値をほとんど上昇させません。
④ 果糖は中性脂肪に変わりやすく肥満しやすいです。
⑤ 果糖はブドウ糖の数十倍、AGEsに変わりやすいので危険な物質です。


**
今回のブログは「ハーパー・生化学」
原書27版、上代淑人監訳、丸善株式会社、2007年
などを参考にしました。


江部康二
コメント
ありがとうございます
詳細なご解説を誠にありがとうございました!
果糖について良く分かりました。
明日からの臨床にいかします。
本当に有難うございました。
2021/11/10(Wed) 21:27 | URL | としの | 【編集
リンゴすりおろしたっぷりのとんかつソース
で、糖尿病合併症=若年性アルツハイマー型認知症再発の らこ です。

「リンゴが血糖値を上げ難い」

と江部先生が言われても、全く信じられません。
私らこ は、中性脂肪は増えても気になりません。
体内のケトン体が減少して、脳神経細胞が栄養補給できなくなり異常発生=若年性アルツハイマー型認知症再発が怖いだけです。

・赤信号無視連発が父からの遺伝

2021/11/11(Thu) 08:53 | URL | らこ | 【編集
江部先生のブログ、いつも拝読させてもらっています。
糖尿予備軍で、会社の健診の際に医師から
「ごはんは主成分がでんぷんの多糖類だから血糖値は緩やかに上昇する」
と言われました。
江部先生のご指摘では「血糖値の上昇をみるGI値では、ブドウ糖>砂糖>果糖」となっています。
白米のでんぷんはブドウ糖の集合体と聞きますが、
白米は砂糖に比べて血糖値の上昇についてどうなのでしょうか?
2021/11/11(Thu) 12:27 | URL | 小山田 | 【編集
Re: リンゴすりおろしたっぷりのとんかつソース

らこ さん

トンカツソースには、

野菜(たまねぎ)砂糖、澱粉色付きの文字

が含まれていますので、これらが血糖を上昇させます。

シドニー大学のサイトによれば、
生リンゴのGIは
<40(アメリカ)、34(カナダ)、28(デンマーク)、44(イタリア)>
と記載されています。

砂糖のGIは65です。
ブドウ糖のGIは100です。

果糖のGIは20と低いですが、リンゴのGIは40くらいなので
果糖の倍は血糖が上昇します。
2021/11/11(Thu) 17:39 | URL | ドクター江部 | 【編集
Re: タイトルなし

小山田 さん

GI(グリセミック・インデックス)
玄米:66-87
白米:94
ショ糖:65
ブドウ糖:100
果糖:20
リンゴ:40


白米はブドウ糖に近い速度で血糖値が急上昇します。
玄米は、少しだけましですね。
白米や玄米は砂糖(ショ糖)よりも、GIが高く、血糖が上昇しやすいです。
2021/11/11(Thu) 17:52 | URL | ドクター江部 | 【編集
プロテインについて
いつも有難うございます。
食物から摂るたんぱく質よりほかに最近筋肉量を増やす目的で、様々なプロテインが売られています。
私も実は食が細くなり、痩せるので粉状のプロテインを飲み始めました。植物性と動物性が半々のものです。
これらのプロテインブームに警鐘を鳴らしておられる医師のブログに出会いました。
人工的なものは腎臓に悪影響があるというものでした。
江部先生は飲むプロテインについてどのような見解をお持ちでしょうか。お願いいたします。
2021/11/11(Thu) 20:53 | URL | よよ | 【編集
Re: プロテインについて
よよ さん

私は、サプリは全く、摂りません。
従って、プロテインのことは、よくわかりません。
私の基本方針は、タンパク質は食べ物から摂取するということです。
納豆や豆腐も良いですが、動物性タンパク質をしっかり充分量、摂取することが大切です。








2021/11/12(Fri) 10:20 | URL | ドクター江部 | 【編集
Twitter
今日は
私はTwitterもよく見ていますが。
専門医と称する方が、適当な栄養の知識を呟いている事があります。
先生のご見識を広める為に、Twitterでブログのタイトルを呟き、ブログ飛べるようにするとかは、考えてないでしょうか?
まぁアンチはうるさいとは思いますが。

2021/11/13(Sat) 07:23 | URL | としの | 【編集
血中ケトン体が減少はなぜ?
◎リンゴすりおろしたっぷりのとんかつソース で血中ケトン体が減少

食後26時間ケトン体が戻らず、若年性アルツハイマー型再発状態継続でした。2020年6月28日17:00食事開始です。
その後もとんかつは外食してます。広島の おたふくソース 使用の店でも喰ってますが、アルツハイマー型認知症は再発していません。

◎リンゴすりおろしたっぷりのとんかつソース と 血中ケトン体が減少 の関係

をご教示お願い致します。
2021/11/15(Mon) 12:50 | URL | らこ | 【編集
Re: 血中ケトン体が減少はなぜ?
らこ さん

<リンゴに含まれる果糖以外のブドウ糖やショ糖 + とんかつソースの砂糖>

が血糖値を上昇させたのだと思います。
2021/11/15(Mon) 13:28 | URL | ドクター江部 | 【編集
AGEs
⑤果糖はブドウ糖の数十倍、AGEsに変わりやすいので危険な物質です。

この根拠が本文を読んでも、よくわかりません。なにゆえに、AGEsに変わりやすいのでしょうか? そもそもAGEsが生成される条件がよく分かりません。血糖値が高いときにAGEsが生成されるのは、理解できます。それはブドウ糖であって果糖ではないですよね? 高中性脂肪血症のときにAGESが生成しやすくなるのでしょうか?
2022/01/11(Tue) 15:17 | URL | 神阪 威 | 【編集
Re: AGEs
神阪 威 さん

以下の本ブルグ記事をご参照頂ければ幸いです。


果糖は ブドウ糖の約数十倍AGEsを生じやすい危険な物質です。果物もNG。
2019年01月05日 (土)
http://koujiebe.blog95.fc2.com/blog-entry-4786.html
色付きの文字
2022/01/11(Tue) 16:54 | URL | ドクター江部 | 【編集
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