2021年11月09日 (火)
【21/11/09 としの
GI値
いつも大変勉強させて頂いております。
内科医です。
血糖日内変動、実際に数字で示されるとあらためて驚きます。
私はHbA1c5.8%、血糖値は白米150gで軽く200mg/dl超えます。
最近たまたま、りんご1個(糖質40g程)摂取後、
リブレであまり血糖値が上昇していない事に気づきました。
(違う日に2回測定しましたが50程までの上昇であったかと)。
私の場合、白米も玄米も血糖値が同程度に上昇するので、
GI値は参考にならないと考えていましたが、、、、。
りんごのGI値が37と白米よりだいぶ低いからでしょうか?
食べる物に関して一律に糖質量のみで患者さんに説明してきましたが、
GI値も考慮した説明が必要なのかと思案中です。
しかし、蕎麦のGI値は50ですが、
患者さんの血糖値はかなり上昇するなあと感じており、
GI値のみで判断は危険な感じもあります。
よろしければ御回答頂ければ幸いです。】
こんばんは。
グリセミック・インデックス(GI)について、
内科医のとしのさんから、コメント・質問を頂きました。
ちなみに日本のダイエットサイトにあるGIの数値は、
信頼度がイマイチです。
シドニー大学のGIのデータベースサイト
http://www.glycemicindex.com/foodSearch.php
が、最も信頼度が高いですが、英語です。
英語ですが、「apple」とか単語を書いてサーチすれば、
数値が表示されるので、理解できます。
シドニー大学のサイトによれば、
生リンゴのGIは
<40(アメリカ)、34(カナダ)、28(デンマーク)、44(イタリア)>
と記載されています。
Sugar (Sucrose), 100 g portion 65
砂糖のGIは65です。
精製度の低い食べ物は一般的に「GI値が低い」といわれています。
GI(グリセミック・インデックス)値とは、血糖値の上がりやすさを示す指数です。
具体的に説明しましょう。
まず、基準となるのはブドウ糖50gを摂取したときの血糖値の上昇カーブを2時間測定したグラフデータの下面積です。
次に糖質50gを含む食品(ご飯とかパンとかイモとか)を摂取した後の血糖値の上昇カーブを2時間測ります。
基準となるブドウ糖の下面積を100として、
その何%にあたるかを表した数値がGI値というわけです。
端的にいうと、GI値の数字が大きいほど食後の血糖値は上がりやすく、
数字が小さいほど血糖値が上がりにくいということです。
シドニー大学によれば、
GI値は「70以上が高GI値」「56~69が中GI値」「55以下は低GI値」とされます。
以下はシドニー大学のデータですが、米の種類により数値は結構ばらつきます。
白米と玄米を比べてみると、
白米は75~89と高GI値、玄米は48~62と低・中GI値。
精製度の低い玄米のほうが、少し血糖値を上げにくいということになります。
食後血糖値の上昇の目安として活用されるGI値には、実は4つの問題点があります。
第一にGI値の大半は欧米人を被験者として計測されたものであり、
欧米人よりインスリン分泌能力が低い日本人にはそのまま当てはまらない可能性があります。
しかも欧米人で測った値でも研究者によって少なからぬ数値のバラツキがあり、
GI値の信頼性は決して高くないのです。
第二にGI値は糖質を含む食品だけを単品で食べて計測した数値ですが、
実際の食事は単品で食べることはほとんどありません。
一食で十数種類の食品を食べるのが普通で、
糖質と同時に食物繊維、脂質、タンパク質などを摂りますから、
何をどのくらい一緒に食べているかでGI値は大きく変わるのです。
第三にGI値はあくまでも糖質が主成分の食物を対象にしたものであり、
肉類や魚介類のように脂質やタンパク質が主成分の食品は対象外で計算不能です。
たとえば、豚肉は100g当たり0・5gの糖質しか含まれていませんから、
糖質50gを含む豚肉を食べてGI値を測ろうとすると5kg以上も食べないといけなくなり、
現実には測定不能です。
第四にGI値は正常人のデータを元にしており、
血糖値が上がりやすい糖尿人には、そのまま当てはまりません。
糖尿人は玄米などGI値の低いものを食べたとしても、
普通に一人前摂取すれば200mg/㎗以上の危険な食後高血糖を起こしてしまうことを、
私たちは高雄病院入院患者さんの約1500人以上のデータで確認しています。
糖尿人ではGI値よりも食品に含まれる糖質の絶対量(グラム数)が重要です。
高GI値であれ、低GI値であれ、糖質1gは体重64kgの2型糖尿病患者の血糖値を約3mg上昇させ、
1型糖尿病患者の血糖値を5mg上昇させるのです。
以上を踏まえると糖尿人はもちろん、健常人でもGI値にこだわるのではなく、
糖質の絶対量を減らす試み(糖質制限食の実践)をしたほうが、
健康度を高め免疫力の向上には効果的です。
【最近たまたま、りんご1個(糖質40g程)摂取後、
リブレであまり血糖値が上昇していない事に気づきました。
(違う日に2回測定しましたが50程までの上昇であったかと)。】
例えばリンゴ1個(約240g)ですと、
・カロリー:約150kcal
・ビタミンC:8mg
・遊離糖含有量:35.6g (果糖:18g、ブドウ糖:6g、ショ糖:9.6g、ソルビトール:2g)
・水溶性食物繊維含量:0.95g
・不溶性食物繊維含量:2.95g
くらいです。
果糖のGI(血糖上昇指数)は20程度と低いです。
ブドウ糖のGIは、100です。
リンゴは果糖が多いので血糖値が上昇しにくいのです。
一方、果糖は中性脂肪に変わりやすく肥満しやすいです。
さらに、果糖はブドウ糖の数十倍、AGEsに変わりやすいので
危険な物質と言えます。
江部康二
GI値
いつも大変勉強させて頂いております。
内科医です。
血糖日内変動、実際に数字で示されるとあらためて驚きます。
私はHbA1c5.8%、血糖値は白米150gで軽く200mg/dl超えます。
最近たまたま、りんご1個(糖質40g程)摂取後、
リブレであまり血糖値が上昇していない事に気づきました。
(違う日に2回測定しましたが50程までの上昇であったかと)。
私の場合、白米も玄米も血糖値が同程度に上昇するので、
GI値は参考にならないと考えていましたが、、、、。
りんごのGI値が37と白米よりだいぶ低いからでしょうか?
食べる物に関して一律に糖質量のみで患者さんに説明してきましたが、
GI値も考慮した説明が必要なのかと思案中です。
しかし、蕎麦のGI値は50ですが、
患者さんの血糖値はかなり上昇するなあと感じており、
GI値のみで判断は危険な感じもあります。
よろしければ御回答頂ければ幸いです。】
こんばんは。
グリセミック・インデックス(GI)について、
内科医のとしのさんから、コメント・質問を頂きました。
ちなみに日本のダイエットサイトにあるGIの数値は、
信頼度がイマイチです。
シドニー大学のGIのデータベースサイト
http://www.glycemicindex.com/foodSearch.php
が、最も信頼度が高いですが、英語です。
英語ですが、「apple」とか単語を書いてサーチすれば、
数値が表示されるので、理解できます。
シドニー大学のサイトによれば、
生リンゴのGIは
<40(アメリカ)、34(カナダ)、28(デンマーク)、44(イタリア)>
と記載されています。
Sugar (Sucrose), 100 g portion 65
砂糖のGIは65です。
精製度の低い食べ物は一般的に「GI値が低い」といわれています。
GI(グリセミック・インデックス)値とは、血糖値の上がりやすさを示す指数です。
具体的に説明しましょう。
まず、基準となるのはブドウ糖50gを摂取したときの血糖値の上昇カーブを2時間測定したグラフデータの下面積です。
次に糖質50gを含む食品(ご飯とかパンとかイモとか)を摂取した後の血糖値の上昇カーブを2時間測ります。
基準となるブドウ糖の下面積を100として、
その何%にあたるかを表した数値がGI値というわけです。
端的にいうと、GI値の数字が大きいほど食後の血糖値は上がりやすく、
数字が小さいほど血糖値が上がりにくいということです。
シドニー大学によれば、
GI値は「70以上が高GI値」「56~69が中GI値」「55以下は低GI値」とされます。
以下はシドニー大学のデータですが、米の種類により数値は結構ばらつきます。
白米と玄米を比べてみると、
白米は75~89と高GI値、玄米は48~62と低・中GI値。
精製度の低い玄米のほうが、少し血糖値を上げにくいということになります。
食後血糖値の上昇の目安として活用されるGI値には、実は4つの問題点があります。
第一にGI値の大半は欧米人を被験者として計測されたものであり、
欧米人よりインスリン分泌能力が低い日本人にはそのまま当てはまらない可能性があります。
しかも欧米人で測った値でも研究者によって少なからぬ数値のバラツキがあり、
GI値の信頼性は決して高くないのです。
第二にGI値は糖質を含む食品だけを単品で食べて計測した数値ですが、
実際の食事は単品で食べることはほとんどありません。
一食で十数種類の食品を食べるのが普通で、
糖質と同時に食物繊維、脂質、タンパク質などを摂りますから、
何をどのくらい一緒に食べているかでGI値は大きく変わるのです。
第三にGI値はあくまでも糖質が主成分の食物を対象にしたものであり、
肉類や魚介類のように脂質やタンパク質が主成分の食品は対象外で計算不能です。
たとえば、豚肉は100g当たり0・5gの糖質しか含まれていませんから、
糖質50gを含む豚肉を食べてGI値を測ろうとすると5kg以上も食べないといけなくなり、
現実には測定不能です。
第四にGI値は正常人のデータを元にしており、
血糖値が上がりやすい糖尿人には、そのまま当てはまりません。
糖尿人は玄米などGI値の低いものを食べたとしても、
普通に一人前摂取すれば200mg/㎗以上の危険な食後高血糖を起こしてしまうことを、
私たちは高雄病院入院患者さんの約1500人以上のデータで確認しています。
糖尿人ではGI値よりも食品に含まれる糖質の絶対量(グラム数)が重要です。
高GI値であれ、低GI値であれ、糖質1gは体重64kgの2型糖尿病患者の血糖値を約3mg上昇させ、
1型糖尿病患者の血糖値を5mg上昇させるのです。
以上を踏まえると糖尿人はもちろん、健常人でもGI値にこだわるのではなく、
糖質の絶対量を減らす試み(糖質制限食の実践)をしたほうが、
健康度を高め免疫力の向上には効果的です。
【最近たまたま、りんご1個(糖質40g程)摂取後、
リブレであまり血糖値が上昇していない事に気づきました。
(違う日に2回測定しましたが50程までの上昇であったかと)。】
例えばリンゴ1個(約240g)ですと、
・カロリー:約150kcal
・ビタミンC:8mg
・遊離糖含有量:35.6g (果糖:18g、ブドウ糖:6g、ショ糖:9.6g、ソルビトール:2g)
・水溶性食物繊維含量:0.95g
・不溶性食物繊維含量:2.95g
くらいです。
果糖のGI(血糖上昇指数)は20程度と低いです。
ブドウ糖のGIは、100です。
リンゴは果糖が多いので血糖値が上昇しにくいのです。
一方、果糖は中性脂肪に変わりやすく肥満しやすいです。
さらに、果糖はブドウ糖の数十倍、AGEsに変わりやすいので
危険な物質と言えます。
江部康二
極めて明確なご解説ありがとうございました。
感謝しかありません。
なるほどGI値が正常人を元に作られているなら、
糖尿病人には当てはまらないですね!
ただ、「傾向」としてはある程度参考にはならないでしょうか?
例えば、先生が果糖10g、ブドウ糖10g摂取した場合上がり方が変わらないでしょうか?
あと、先生がよく解説されておられる、
「糖質1gは、2型糖尿病患者の血糖値を約3mg上昇させ、、」
ですが、各自のインスリン分泌能や、抵抗性も違うので全員がそうはならないのでは、と思うのですが、、、どうなのでしょうか。
2点につきまして、度々誠に申し訳ありませんが、よろしければ御回答頂けば幸いです。
感謝しかありません。
なるほどGI値が正常人を元に作られているなら、
糖尿病人には当てはまらないですね!
ただ、「傾向」としてはある程度参考にはならないでしょうか?
例えば、先生が果糖10g、ブドウ糖10g摂取した場合上がり方が変わらないでしょうか?
あと、先生がよく解説されておられる、
「糖質1gは、2型糖尿病患者の血糖値を約3mg上昇させ、、」
ですが、各自のインスリン分泌能や、抵抗性も違うので全員がそうはならないのでは、と思うのですが、、、どうなのでしょうか。
2点につきまして、度々誠に申し訳ありませんが、よろしければ御回答頂けば幸いです。
としの さん
「傾向」としてはある程度参考にはならないでしょうか?
少しは参考になると思います。
果糖は血糖をほとんど上昇させませんが、ブドウ糖はしっかり上昇させるので
糖尿人が摂取したときは、大きな差があります。
『糖質1gは、体重64kgの2型糖尿病患者の血糖値を約3mg上昇させる』
これは『バーンスタイン医師の糖尿病の解決』に記載してあります。
勿論、個人差はありますが、高雄病院の糖尿病入院患者さん1500人以上において、
ほとんどの人に当てはまっていました。
「傾向」としてはある程度参考にはならないでしょうか?
少しは参考になると思います。
果糖は血糖をほとんど上昇させませんが、ブドウ糖はしっかり上昇させるので
糖尿人が摂取したときは、大きな差があります。
『糖質1gは、体重64kgの2型糖尿病患者の血糖値を約3mg上昇させる』
これは『バーンスタイン医師の糖尿病の解決』に記載してあります。
勿論、個人差はありますが、高雄病院の糖尿病入院患者さん1500人以上において、
ほとんどの人に当てはまっていました。
2021/11/10(Wed) 10:27 | URL | ドクター江部 | 【編集】
先生、お忙しい中本当にありがとうございます。
ご解説で、
「果糖は血糖をほとんど上昇させませんが、ブドウ糖はしっかり上昇させるので糖尿人が摂取したときは、大きな差があります。」
という事であれば、糖質の種類によって
血糖値の上昇は同じ1gであっても違うという事にはならないのでしょうか?
糖質1gで血糖値が3mg/dl上昇する、と言えなくなるのでは、と思ってしまいました。
私は何か大きな考え違いをしているかもしれません、、
本当に度々誠に申し訳ありません。
よろしければ御回答頂ければ幸いです。
ご解説で、
「果糖は血糖をほとんど上昇させませんが、ブドウ糖はしっかり上昇させるので糖尿人が摂取したときは、大きな差があります。」
という事であれば、糖質の種類によって
血糖値の上昇は同じ1gであっても違うという事にはならないのでしょうか?
糖質1gで血糖値が3mg/dl上昇する、と言えなくなるのでは、と思ってしまいました。
私は何か大きな考え違いをしているかもしれません、、
本当に度々誠に申し訳ありません。
よろしければ御回答頂ければ幸いです。
トシノリ さん
糖質のなかには果糖のようにほとんど血糖値を上げないものや、
エリスリトールのように、全く血糖値を上げないものも
例外的に存在しているのです。
「糖質1g摂取で、血糖値が3mg/dl上昇する」
というのは、あくまでも原則としてということです。
糖質のなかには果糖のようにほとんど血糖値を上げないものや、
エリスリトールのように、全く血糖値を上げないものも
例外的に存在しているのです。
「糖質1g摂取で、血糖値が3mg/dl上昇する」
というのは、あくまでも原則としてということです。
2021/11/10(Wed) 14:02 | URL | ドクター江部 | 【編集】
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