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糖質制限食と登山やマラソン。
【21/10/24 MY
ありがとうございました
江部先生

お忙しい中、丁寧なアドバイスを頂き本当にありがとうございました。
最近は少し食欲が落ちていた為、栄養摂取についてより意識していきたいと思います。
また、できればホルモン補充療法も再開していきたいと思います。

あと1つだけ質問させて下さい。
登山(数日間20kg近い重い荷物を持って歩く)の様な、
比較的ハードなスポーツを行う場合の栄養は少しは糖質を摂取した方が良いのでしょうか? 
夏に糖質摂取を再開したのもその為なのですが…私は失敗したようです。
プロのスポーツ選手もオフではケトジェニック、シーズン中は糖質接種と分けていると聞いた事があります。
山の行動食は糖質の塊が多い為悩むところです。
できるだけナッツやチーズ、缶詰、MCTオイルをフル活用していますが
不足していた様なので難しいところではあります。
ラードを吸いながら歩くと言う人をネットで見つけましたが、勇気が湧きません。
ポイントはスパイクを起こさないことかなぁとも思ってはいるのですが…。
前回の筋トレについての記事もとても参考になります。もし何かアドバイスあればよろしくお願い致します。

ちなみに、家族はもちろん友人にも先生の著書を勧めています。
その結果、70代の糖尿病薬でコントロール中の友人が食事だけで
数年ぶりにHbA1c 7→6台へ下がったと連絡がありました!
先生のおかげです。ありがとうございます。】


こんばんは。
MY さんから、登山と糖質制限食について、コメント・質問を頂きました。
回答として、調度よい過去ブログ(☆)があったので、以下再掲します。


(☆)
糖質制限食とマラソン。
2018年06月22日 (金)

【18/06/21 登山好きのランナー
いつもお世話になっております。
こんにちは。
いつも楽しく拝見しております。
過去に何度か糖質制限をしたことがありいつもある程度の成果を得ております。
今回も昨年、怪我とストレスで体重が増加してしまったので糖質制限を実施して4週間が経過しました。
46才男性事務職です。
毎朝5-10kmのランニングをしております。
今回は朝食抜き(もともとあまり食べることはない食生活)、昼はサラダ(海藻、きのこ類入)と鶏胸肉もしくは豚肉、夜は茶碗少なめ1杯の雑穀米や麺類少々を食べる時もある程度で主にストレスのない程度に家族とおかず中心の食事に低糖質の発泡酒等を350ml缶4-5本という感じで2食は主食抜きで間食やジュース類なし(もともとほとんど口にしない)の生活です。
3年ほど心拍計付の活動量計を腕に装着して記録しています。
今回、体重は平均して2.5kgマイナス、体脂肪率もマイナス2%とBMIは23台から22台へと順調に減量できているのですがひとつ問題が。
お酒に極端に弱くなりました。いつもの量を飲んでいるのにそのまま居間で眠ってしまうことが増え翌日も軽い二日酔い状態ということが増えました。
他サイトで水分量が減るので水分摂取を心がけるようにとあったので飲んでいる最中に炭酸水や烏龍茶を飲むようにしてこれは改善しました。
もうひとつは2週間経過したころから時折頭痛が出るようになりました。
思い当たるのはもともと軽度高血圧症なので測ってみると下が100前後で上が150近い数値でした。もともと似たような感じですが1年前に毎日計測していた時人比較すると若干高くなっています。
前述の活動量計の記録を確認すると安静時心拍数は糖質制限をはじめる前は52-54程度だったのが57-60と明確に上昇しております。糖質制限を開始した翌日から数値が上昇しています。
安静時心拍数の上昇、血圧の上昇(元々軽度高血圧症ではあるにしろ)は糖質制限となにか関係はありますでしょうか?またずばり間接的にでも頭痛を誘発することは考えられますでしょうか?よろしくお願いします。

PS 運動時の心拍数は糖質制限前後で特に上がりやすくなったとは感じていません。】




18/06/22 ドクター江部
Re: いつもお世話になっております。
登山好きのランナー さん

「安静時心拍数の上昇、血圧の上昇」

は糖質制限とは無関係と思います。
糖質制限をすると、血圧は下がることが多いです。
糖質制限と心拍数の変動は聞いたことがありません。

原因としては、運動量のわりに、摂取エネルギーが少ない可能性があります。


【18/06/22 登山好きのランナー
お返事ありがとうございます。
糖質制限による影響がないということがわかって安心しました。
が、心拍数に関しては聞いたことがないということですが糖質制限を開始したのとタイミングが同じでどこかに因果関係があるのでは?と素人ながら考えてしまいますね。
ありがとうございます。
目標体重まで減量できたら徐々にゆるやかな糖質制限食に戻そうと考えておりますのでその時に安静時心拍数がどう変化するのか確認してまたご報告させていただきます。
もうひとつ、以前の記事で登山でのシャリバテのことを書かれており実際自分もほとんど食べることなく登山をするのですがフルマラソン大会ではどうしても心配で栄養ゼリー等を補給します。糖質制限をしている時も糖質の補給は不要という記事も読みましたが市販の携行食やゼリーは糖質を多く含んだものばかりですがそういうものは逆に摂取すると悪影響でしょうか?携行するならこういうものが良いというものがあれば教えていただけますでしょうか?それとも結論的には水分補給のみで何も摂る必要はないと考えて良いのでしょうか?】



登山好きのランナーさん

マラソンのエネルギー源ですが、グリコーゲンは肝臓に約100g、
筋肉中に約300gしか蓄えがありません。
従って、<ブドウ糖-グリコーゲン>エネルギーシステムでは
400g×4= 1600kcalしか賄えませんので、
フルマラソンに必要なエネルギー量(体重60kgの男性で約2600kcal)には到底足りません。

その点、脂肪は、体重60kgで体脂肪率15%なら、9kg、81000kcalであり
必要充分な備蓄量と言えます。
つまり、理論的には42.195kmの走行課程のほとんどを、
有酸素運動の<脂肪酸-ケトン体>エネルギーシステムで走り、
ラストスパートだけ、
無酸素運動の<ブドウ糖-グリコーゲン>エネルギーシステムで
全力疾走というのが、理想的な配分と言えます。


結論からいうと、マラソン前も最中もスーパー糖質制限食でOKです。
水分も水で大丈夫で、塩は必要量を適宜補充です。

米国の医学雑誌・代謝(Metabolism)に、2016年3月、興味深い論文が掲載されました。
『糖質制限食は、ウルトラマラソンやトライアスロンにおいて普通の高糖質食と比べて、遜色なし』
という内容です。

普段から
(A)<炭水化物:たんぱく質:脂質 = 10:19:70>の糖質制限食を食べている10人
(B)<炭水化物:たんぱく質:脂質 = 59:14:25>の高炭水化物食を食べている10人
いずれの群もエリートランナーです。

研究施設に2泊3日で滞在、最大酸素摂取量、体組成、筋生検など実施、
その後トレッドミルで走った後、直後と2時間後に筋生検を実施です。

(A)(B)群を比較したところ、糖質制限群(A)は、(B)群と比較して、
運動中のエネルギー源として脂肪酸化の利用が極めて高率でした。

一方、筋肉のグリコーゲン利用と充満のパターンは、運動中も3時間のランニング後も、(A)(B)群で同様でした。

つまり、普通に糖質制限食をしているランナーがそのまま、
ウルトラマラソンやトライアスロンをしても、
筋肉中のグリコーゲンの量及び増減と回復パターンは、
糖質摂取群と比べて、全く遜色ないという研究報告です。


江部康二


ケトン適合したウルトラ持久力ランナーの代謝特性について

要約
背景


多くの成功したウルトラ持久力アスリートが、高炭水化物から低炭水化物食に切り替えた、しかし彼らは代謝適合の度合いを決定するために前もって研究はされてはいない。

方法

20人のエリートウルトラマラソンランナーとアイアンマン距離のトライアスリートが、代謝反応を決定するために最大強度の運動テストと180分間の64% VO2maxのサブ最大強度のトレッドミル運動を実行した。
1グループは従来の常に高炭水化物食(HC: n = 10, %炭水化物:たんぱく質:脂質 = 59:14:25),
もう1つのグループは、低炭水化物食(LC: n = 10, %炭水化物:たんぱく質:脂質 = 10:19:70),
で、平均20ヶ月(9~36ヶ月の範囲)実践した。

結果

ピークの脂肪酸化はLCグループ((1.54 ± 0.18 vs 0.67 ±0.14 g/min; P = 0.000))が2~3倍高く、VO2max (70.3 ± 6.3 vs 54.9 ±7.8%; P = 0.000)もより高かった。
サブ最高強度の運動中で平均脂肪酸化は、LCグループ(1.21 ± 0.02 vs 0.76 ± 0.11 g/min; P = 0.000)で、脂肪のが大きな貢献(88 ± 2 vs 56 ± 8%; P = 0.000)に対応して59%高かった。
燃料使用量における、LCとHCの著明な相違にも関わらず、休息中の筋肉中のグリコーゲンと180分間ランニング (−64% from pre-exercise) 後のグリコーゲンレベルの低下と120分の回復(−36% from pre-exercise)において有意差はなかった。.

結論
HC(高糖質)食を実践している高度に訓練されたウルトラ持久力アスリートと比較して、長期のケトン適合食は著明に脂肪酸化の比率が高かった。
一方、筋肉のグリコーゲン利用と充満パターンは運動中も3時間のランニング後も同様であった。



METABOLISM CLINICAL AND EXPERIMENTAL 65 (2016) 100 – 110
Metabolic characteristics of keto-adapted ultra-endurance runners


ABSTRACT
Background.

Many successful ultra-endurance athletes have switched from a highcarbohydrate
to a low-carbohydrate diet, but they have not previously been studied to
determine the extent of metabolic adaptations.

Methods.
Twenty elite ultra-marathoners and ironman distance triathletes performed a
maximal graded exercise test and a 180 min submaximal run at 64% VO2max on a treadmill
to determine metabolic responses.
 One group habitually consumed a traditional highcarbohydrate
(HC: n = 10, %carbohydrate:protein:fat = 59:14:25) diet, and the other a lowcarbohydrate
(LC; n = 10, 10:19:70) diet for an average of 20 months (range 9 to 36 months).

Results.
Peak fat oxidation was 2.3-fold higher in the LC group (1.54 ± 0.18 vs 0.67 ±0.14 g/min; P = 0.000) and it occurred at a higher percentage of VO2max (70.3 ± 6.3 vs 54.9 ±7.8%; P = 0.000).
Mean fat oxidation during submaximal exercise was 59% higher in the LC
group (1.21 ± 0.02 vs 0.76 ± 0.11 g/min; P = 0.000) corresponding to a greater relative
contribution of fat (88 ± 2 vs 56 ± 8%; P = 0.000). Despite these marked differences in fuel
use between LC and HC athletes, there were no significant differences in resting muscle
glycogen and the level of depletion after 180 min of running (−64% from pre-exercise) and
120 min of recovery (−36% from pre-exercise).

Conclusion.

Compared to highly trained ultra-endurance athletes consuming an HC diet,
long-term keto-adaptation results in extraordinarily high rates of fat oxidation, whereas
muscle glycogen utilization and repletion patterns during and after a 3 hour run are similar

コメント
糖質の必要性??
都内河北 鈴木です。

本日記事を読んでも、過剰な運動でも『糖質の必要性は、皆無で良いのだなと、理解しました!!』

理解把握は、しとくべきだなと、考えます!!

日々のブログには、感謝尽きません!!
更なる『覚醒事実』が起きましたら、報告します!!
ありがとうございます。
敬具
2021/10/25(Mon) 21:52 | URL | 都内河北 鈴木 | 【編集
スポーツと栄養について
江部先生

貴重な情報再掲ありがとうございました。
糖質制限をしている友人達とも共有していきたいと思います。
これからも先生の著書やブログを楽しみにしております!
取り急ぎ御礼まで。

MY
2021/10/26(Tue) 07:34 | URL | MY | 【編集
運動の話題は大事
前回、私の書込みに対して有益なコメントありがとう御座いました。
運動の話題はこれからもしてほしいです。
2021/10/26(Tue) 12:00 | URL | 寝る牛 | 【編集
無食登山継続中
先生のブログと著作に出会い命を救われた者です。感謝の気持ちを、このコメント内で書き記す事はとても出来ず、只々、感謝々と申し上げるに止まる事をお許し願います。両目とも人工レンズの1957年生れです。登山中、麦茶とカリカリ梅のみの無食登山を継続中です。目的はケトン体の高値維持と「脂肪酸・ケトン体エネルギーシステム」を維持していく為です。南東北の梅雨明けと共に夏季縦走登山としては、過酷な部類に入る飯豊連峰に、25kg以上を背負い無食登山をして来ました。二日目は空身(アタックザックのみ)山小屋から約11時間かけて大日岳までのピストンでした。流石に齢なので最後はバテましたが、お腹が空いてバテたのではなく「飯豊の酷暑」が主原因です。これは「ブドウ糖・リコーゲンエネルギーシステム⇒脂肪酸・ケトン体エネルギーシステム」への切替え成功の成せる業です。でもそこには大前提があります。(1)完全な「スーパー制限」を行い、体が完全に「脂肪酸・ケトン体エネルギーシステム」に切り替わっている事。(2)「脂肪酸・ケトン体エネルギー」を燃料にして登るには、激しい動きを避け、ゆっくり登る事。私は元来、あまり健脚ではないので「亀」登山スタイルです。特に登りはものすごくゆっくり登ります。ですから、どんどん後ろの方に追い越されます(*^_^*)でも昼食も間食も摂らないし、ゆっくり登るので水分補給時にしか休みません。結果的に登山時間は同じ位になります。私も最初「ブドウ糖・グリコーゲンエネルギー」が枯渇した時分から、お腹が減って減って、たまりませんでした。そこからが勝負です。ゆっくり歩いていると、徐々に「脂肪酸・ケトン体エネルギーシステム」へ切り替わって行き、多くの方は信じられないでしょうが、お腹が空かなくなり、満腹感すら感じるようになります。「スーパー制限」を厳守し、これを繰り返すと「脂肪酸・ケトン体エネルギーシステム」へと徐々に切り替わって行き無食登山も可能となって行きます。但し経験則として「スーパー制限」を怠ると、直ぐに「ブドウ糖・グリコーゲンエネルギーシステム」へと元の木阿弥になります。折角「脂肪酸・ケトン体エネルギーシステム」体質に切り替わったならば「スーパー制限」を継続して行く事が必須です。中途半端な取組みで無食登山を行えば、レスキューの憂き目に遭うと思います。ことは生理上の話ですから、何事も徐々にです。往年の「寅さん」の名セリフ『人間は徐々に変わるんだよ。一変に変わったら、体に悪りぃじゃねぇか』ですね (*^_^*)
PS.先生のご啓蒙のお陰で、ワクチンを摂取せずにコロナ禍を乗り切れそうです。感謝感謝。
2021/10/26(Tue) 18:12 | URL | 感謝感謝 | 【編集
ランニングと糖質制限について
江部先生、こんにちは。
いつもブログを拝見させていただいております。
糖質制限歴7年になり、糖質制限前からランニングをやっていました。
糖質制限を始めてからは、ランニング中も糖質摂取は不要ではないかと考え試行錯誤しました。
結論から言うと、個人差はあると思いますが、私の場合、糖質摂取なしで行けるのはぎりぎりフルマラソンまでです。フルマラソンでもパフォーマンスを維持するには終盤には糖質摂取が必要です。
フルマラソン以上の長距離、長時間になると、糖質摂取なしではハンガーノック状態になってしまいます。
いったん糖質を摂取すると、定期的に糖質摂取しないとパフォーマンスを維持できないので、レース前もスタート後も糖質は摂取せず、2~3時間後空腹を感じる前に糖質を摂取し始めるようにしています。
2021/10/27(Wed) 16:59 | URL | リュウ | 【編集
Re: ランニングと糖質制限について
リュウ さん

コメントありがとうございます。
やはり個人差があるのでしょうね。
以下の記事もご参照頂ければ幸いです。

糖質制限食とマラソン。
2018年06月22日 (金)
http://koujiebe.blog95.fc2.com/blog-entry-4598.html

2021/10/28(Thu) 17:41 | URL | ドクター江部 | 【編集
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