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機能性低血糖と糖質制限食
【21/08/27 なつこ
低血糖症状がでなくなりました
過去記事へのコメントで申し訳ありません。
私は20代女性ですが、食後の低血糖で長年悩んでいました。
インスリンの分泌が遅いせいだとお医者様にはいわれました。
江部先生のブログを読むようになってからスーパー糖質制限を始め、約2年になります。

昨日ほとんど食事を取らなかったせいか、
今朝の寝起きの血糖値が50mg/dl、ケトン体が7.6mmol(過去最高値で驚きました)でしたが、まったく体がきつくなくむしろ元気だったんです。
糖質制限を始めてから血糖値が安定した(上がりすぎも下がりすぎも減った)自覚はありましたが、血糖値が下がっても低血糖症状が出なくなったのには驚きました。

糖質をとっていた頃は65mg/dlをきると、気持ち悪さや目の前が暗くなることが多々あり、ブドウ糖を常時携帯していたことを考えると、体って変わるものなのだと心から思えました。
糖質制限、これからも続けていきたいと思っています。

健康へ導いてくださり、ありがとうございました。】



こんばんは。
なつこさんから、糖質制限食で、機能性低血糖の症状が改善したという
嬉しいコメントを頂きました。

『今朝の寝起きの血糖値が50mg/dl、ケトン体が7.6mmol(過去最高値で驚きました)』
ご自分で測定なので、ケトン体のなかの、3-ヒドロキシ酪酸の数値と思います。
3-ヒドロキシ酪酸 の一般的な基準値は、~ 76μmoL/Lです。
なつこさんのデータは、7600μmoL/Lなので、かなりの高値であり、
スーパー糖質制限食で脂肪が大変よく燃えています。
これくらい、ケトン体高値なら、
脳細胞はほとんどのエネルギー源をケトン体にしています。

それで、血糖値が50mg/dlでも元気なのです。

私も、初めて、本断食(0カロリー、塩も0、水のみ)を実施したときは
朝の空腹時血糖値が35mg/dlでしたが、
普通に外来診療をしていました。
血中ケトン体が数千レベルで、脳のエネルギー源となっていたので
血糖35mg/dlでも、平気だったのだと思います。

機能性低血糖症は、1924年アメリカのSeale Harrisによって指摘された疾患で、
血糖値の低下に伴ない、精神的・身体的症状を来たす疾患です。
易疲労感、気力低下、眠気、集中力低下、物忘れ、不安、いらいら、頭痛、めまい、発汗、震え、心悸亢進、筋肉痛、甘いものに対する異常な欲求、異常な空腹感・・・ などの症状がみられます。
ほとんどの機能性低血糖の背景には、インスリンの過剰分泌及び遷延分泌があります。
やせ型でインスリン抵抗性がなくても、機能性低血糖を生じる人はおられます。

機能性低血糖症は、糖質を摂取して血糖値が上昇して、追加分泌インスリンが基礎分泌インスリンの10倍、20倍、30倍レベル出たときに、早ければ食後2時間、通常は4時間から5時間くらいで発症することが多いです。
はっきりしている場合は、糖質摂取4~5時間後の血糖値が60mg/dl以下になります。

家族歴に2型糖尿病があって、現在は正常型で糖尿病を発症していない人は、インスリン追加分泌が遷延することがあり、機能性低血糖が特に起こりやすいです。
境界型および糖尿病でも、軽症の段階だと、インスリン分泌能力はまだ残っています。
そして、インスリン追加分泌が出遅れて遷延するのが2型糖尿病の特徴なので、

「機能性低血糖+境界型」あるいは「機能性低血糖+糖尿病型」

というパターンは、結構あると思います。

一方、家族歴に2型糖尿病がなくて、現在糖尿病的には全く正常でも、
インスリンが過剰に分泌されるタイプの「機能性低血糖+正常型」もあります。

こちらは若い人に多く、それこそ小学生や中学生でもありえると思います。
当然、高校生や大学生は言うまでもありません。

いずれにせよ
<糖質摂取による血糖値上昇→インスリン過剰分泌・分泌遷延→機能性低血糖>
というパターンです。
従って、精製炭水化物が、最も機能性低血糖を起こしやすいです。
未精製の炭水化物はややましですが、やはり起こす可能性があります。

A)機能性低血糖が原因で生じている症状は、糖質制限食でリアルタイムに改善します。
B)糖質制限食で改善しない症状は、機能性低血糖とは無関係ということです。


A)B)はシンプルですが、重要なことなので、「自分は機能性低血糖かも?」と思っている皆さんは、しっかり覚えておきましょう。

糖質制限食なら、食後高血糖がほとんどなくて、
インスリン追加分泌もごく少量なので機能性低血糖をほとんど生じません。
スーパー糖質制限食なら、インスリン追加分泌は、野菜分の少量の糖質に対応して、
せいぜい2~3倍くらいまでです。
この機能性低血糖症、日本ではあまり認知されていませんが、
きっちり問診してみると、若い人でも結構おられますので注意が必要ですね。
機能性低血糖症の場合、糖質摂取後30分で140mg/dl程度に上昇した血糖値が、
60分後に80mg/dlなったりします。
これだけ血糖の変動幅が大きい(60mg)と、眠気も来そうですね。
さらに4時間~5時間に40~60mg/dlとかまで下がることがあり、
低血糖症状を生じます。
血糖値が40mg~60mg/dlなら明らかな低血糖ですが、
60mg/dl以上あって正常範囲でも、
血糖値が1時間で50mg以上下がると眠気などの症状も出やすいようです。


江部康二

コメント
まさに機能性低血糖でした
江部先生

先日は75g糖負荷試験結果の見解をコメントくださりありがとうございました。

その際先生が警告してくださった通り、またまさにこちらの記事通りの機能性低血糖が起こりました。

スーパー糖質制限食を実践していますが、
人体実験で糖質約30gと記載のおむすびを単独で1つ昼間に食べてみました。

すると1時間後251、2時間後194、そして食べ始めから4時間半後に手の震えやめまいを感じ、まさかと思い測定すると54でした。すぐにビスケットを食べ回復しました。

先生の警告がその通り起こり、こわいなと思いましたし、私は現在糖尿病型と診断されていますがほぼ糖尿病だと思っていいのかなとも思いました。

今インスリンや薬は何も処方ありません。来月また、出産した大学病院の内科(妊娠糖尿病でかかった科)で経過観察の糖負荷試験ではない血糖値、ヘモグロビンa1cの血液検査です。
2021/09/06(Mon) 17:33 | URL | みほこ | 【編集
Re: まさに機能性低血糖でした
みほこ さん

スーパー糖質制限食実践なら、薬なしで血糖コントロール良好を保てます。
75g経口ブドウ糖負荷試験を行うと、かなりの確率で<機能性低血糖>が生じるので、やめておいたほうが無難です。
血糖値とHbA1cなら大丈夫ですね。
2021/09/06(Mon) 18:48 | URL | ドクター江部 | 【編集
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