2008年10月09日 (木)
おはようございます。
昨夜、赤ワインをやや飲み過ぎて、寝坊してあせっている江部康二です。σ(=_=;)ヾ
さて今回は、Pannyさんから、α-グルコシダーゼ阻害薬についてコメント・質問をいただきました。
『α-グルコシダーゼ阻害薬について
江部先生
いつも為になる情報をありがとうございます。軽い耐糖能異常のPannyです。
ベイスンなどのα-グルコシダーゼ阻害薬は糖の吸収を阻害してくれると勝手に勘違いしていたのですが、“小腸からの糖質の分解・吸収を遅延させて、食後高血糖を防ぐ効果がある”のですね。
そこで今日の記事に関連しての質問なのですが、
・食後急に血糖値が上がる代わりに緩やかに長い時間をかけて上がる利点は、細胞傷害を防ぐことが目的なのでしょうか?
>動物実験レベルでは、血糖の上昇・下降を繰り返す血糖変動(グルコーススパイク)では、慢性的持続的な高血糖より細胞傷害機序が強く働くことが示唆されています。
その他、ベイスン等のα-グルコシダーゼ阻害薬について教えていただけますと幸いです。
・飲んだ直後からどのくらいの間効果がありますか?
・ベイスン等を飲むことによって、(人によって違うと思いますが)飲まない場合と、血糖値と時間の推移にどのような差が出るのでしょうか?
by Panny 2008/10/03 04:22』
Pannyさん。コメントありがとうございます。
「・食後急に血糖値が上がる代わりに緩やかに長い時間をかけて上がる利点は、細胞傷害を防ぐことが目的なのでしょうか?」
その通りです。
食後の急峻な血糖値の上昇(グルコース・スパイク)が、活性酸素を増やし、活性酸素処理機能を低下させて、二重に<酸化ストレス>を増大させます。
酸化ストレスとは、「生体の酸化反応と抗酸化反応のバランスが崩れ、酸化反応が亢進した状態」のことで、当然生体にとって好ましくない現象です。
酸化ストレスは、細胞のDNA、細胞膜上のリン酸脂質、蛋白質、糖質を傷害し、血管傷害を進行させます。酸化ストレスにより血管内皮の細胞が傷害され、動脈硬化が進行していき、将来の大血管障害(心筋梗塞、脳梗塞)のリスクとなります。
実際、IGT(食後2時間血糖値140~199mg/dl)のグループ1400人を対象に、「心血管疾患」の発症率をプラセボ群とアカルボース群とで3.3年間比較した研究においてアカルボース(グルコバイ)群で相対的に53%、心血管イベントを抑制し得ることがわかりました。
**
「STOP-NIDDM」試験
Journal of the American Medical Association(JAMA)誌7月23/30日号
「・飲んだ直後からどのくらいの間効果がありますか?」
作用時間は、直後から~おおよそ120分くらいと考えられます。本来、食直前内服ですが、服用を忘れていて食中(食後15分)に飲んでも、あるていど効きます。初期の血糖上昇抑制がやや少なくなります。また食前30分だと、早すぎて効果が落ちます。
「・ベイスン等を飲むことによって、(人によって違うと思いますが)飲まない場合と、血糖値と時間の推移にどのような差が出るのでしょうか?」
αグルコシダーゼ阻害薬は二糖類(麦芽糖・ショ糖・乳糖など)がグルコースに変換されるのを阻害します。ベイスンやセイブルはαグルコシダーゼ阻害作用のみを有します。
グルコバイはそれに加え、αアミラーゼ阻害作用によりデンプンがオリゴ糖に変換されるのも阻害するため、より強力に食後高血糖を改善します。
常用量で、
グルコバイは1時間値を50mg、2時間値を40mg
ベイスンは1時間値を40mg、2時間値を30mg
セイブルは1時間値を60mg、2時間値を20mg
ていど下げるとされています。しかし、それほど下がらない人もあります。セイブルは、1時間値を下げるけれど、2時間値はあまり下げないのが特徴です。
いずれの薬も結構個人差が大きいですし、印象としては、上記の数字ほど下がらない人のほうが多いです。
私の場合、ベイスンは0.2mgを3錠と常用量より多く飲んでも無効でした。勿論、ベイスンが効く人もいますよ。グルコバイは50mgを2錠だと1時間値を10~20mg、常用量より多い3錠だと40mgていど下げました。
腹部症状が無くて平気な人もおられますが、私はお腹が張ってしんどくなるので、今は飲んでいません。
江部康二
昨夜、赤ワインをやや飲み過ぎて、寝坊してあせっている江部康二です。σ(=_=;)ヾ
さて今回は、Pannyさんから、α-グルコシダーゼ阻害薬についてコメント・質問をいただきました。
『α-グルコシダーゼ阻害薬について
江部先生
いつも為になる情報をありがとうございます。軽い耐糖能異常のPannyです。
ベイスンなどのα-グルコシダーゼ阻害薬は糖の吸収を阻害してくれると勝手に勘違いしていたのですが、“小腸からの糖質の分解・吸収を遅延させて、食後高血糖を防ぐ効果がある”のですね。
そこで今日の記事に関連しての質問なのですが、
・食後急に血糖値が上がる代わりに緩やかに長い時間をかけて上がる利点は、細胞傷害を防ぐことが目的なのでしょうか?
>動物実験レベルでは、血糖の上昇・下降を繰り返す血糖変動(グルコーススパイク)では、慢性的持続的な高血糖より細胞傷害機序が強く働くことが示唆されています。
その他、ベイスン等のα-グルコシダーゼ阻害薬について教えていただけますと幸いです。
・飲んだ直後からどのくらいの間効果がありますか?
・ベイスン等を飲むことによって、(人によって違うと思いますが)飲まない場合と、血糖値と時間の推移にどのような差が出るのでしょうか?
by Panny 2008/10/03 04:22』
Pannyさん。コメントありがとうございます。
「・食後急に血糖値が上がる代わりに緩やかに長い時間をかけて上がる利点は、細胞傷害を防ぐことが目的なのでしょうか?」
その通りです。
食後の急峻な血糖値の上昇(グルコース・スパイク)が、活性酸素を増やし、活性酸素処理機能を低下させて、二重に<酸化ストレス>を増大させます。
酸化ストレスとは、「生体の酸化反応と抗酸化反応のバランスが崩れ、酸化反応が亢進した状態」のことで、当然生体にとって好ましくない現象です。
酸化ストレスは、細胞のDNA、細胞膜上のリン酸脂質、蛋白質、糖質を傷害し、血管傷害を進行させます。酸化ストレスにより血管内皮の細胞が傷害され、動脈硬化が進行していき、将来の大血管障害(心筋梗塞、脳梗塞)のリスクとなります。
実際、IGT(食後2時間血糖値140~199mg/dl)のグループ1400人を対象に、「心血管疾患」の発症率をプラセボ群とアカルボース群とで3.3年間比較した研究においてアカルボース(グルコバイ)群で相対的に53%、心血管イベントを抑制し得ることがわかりました。
**
「STOP-NIDDM」試験
Journal of the American Medical Association(JAMA)誌7月23/30日号
「・飲んだ直後からどのくらいの間効果がありますか?」
作用時間は、直後から~おおよそ120分くらいと考えられます。本来、食直前内服ですが、服用を忘れていて食中(食後15分)に飲んでも、あるていど効きます。初期の血糖上昇抑制がやや少なくなります。また食前30分だと、早すぎて効果が落ちます。
「・ベイスン等を飲むことによって、(人によって違うと思いますが)飲まない場合と、血糖値と時間の推移にどのような差が出るのでしょうか?」
αグルコシダーゼ阻害薬は二糖類(麦芽糖・ショ糖・乳糖など)がグルコースに変換されるのを阻害します。ベイスンやセイブルはαグルコシダーゼ阻害作用のみを有します。
グルコバイはそれに加え、αアミラーゼ阻害作用によりデンプンがオリゴ糖に変換されるのも阻害するため、より強力に食後高血糖を改善します。
常用量で、
グルコバイは1時間値を50mg、2時間値を40mg
ベイスンは1時間値を40mg、2時間値を30mg
セイブルは1時間値を60mg、2時間値を20mg
ていど下げるとされています。しかし、それほど下がらない人もあります。セイブルは、1時間値を下げるけれど、2時間値はあまり下げないのが特徴です。
いずれの薬も結構個人差が大きいですし、印象としては、上記の数字ほど下がらない人のほうが多いです。
私の場合、ベイスンは0.2mgを3錠と常用量より多く飲んでも無効でした。勿論、ベイスンが効く人もいますよ。グルコバイは50mgを2錠だと1時間値を10~20mg、常用量より多い3錠だと40mgていど下げました。
腹部症状が無くて平気な人もおられますが、私はお腹が張ってしんどくなるので、今は飲んでいません。
江部康二
江部先生
詳しいご解説ありがとうございます。
先生のおかげで、疑問に思っていたことが一気に解決しました。
α-グルコシダーゼ阻害薬は、糖の吸収をほとんど阻害してくれる便利なものと勘違いしていたこともあるのですが、思ったより血糖値を下げないのですね。
ご報告が遅くなりましたが、8月初めに軽い耐糖能異常(空腹時80、1時間後169、2時間後153、HbA1C5.5)がわかりスタンダード糖質制限食を始めたのですが、1ヶ月半後の健康診断でHbA1C4.6になっていました。
驚くほどの効果だと思います。軽症の段階で糖質制限食に出会えて本当にラッキーです。これからも続けていきたいと思います。
詳しいご解説ありがとうございます。
先生のおかげで、疑問に思っていたことが一気に解決しました。
α-グルコシダーゼ阻害薬は、糖の吸収をほとんど阻害してくれる便利なものと勘違いしていたこともあるのですが、思ったより血糖値を下げないのですね。
ご報告が遅くなりましたが、8月初めに軽い耐糖能異常(空腹時80、1時間後169、2時間後153、HbA1C5.5)がわかりスタンダード糖質制限食を始めたのですが、1ヶ月半後の健康診断でHbA1C4.6になっていました。
驚くほどの効果だと思います。軽症の段階で糖質制限食に出会えて本当にラッキーです。これからも続けていきたいと思います。
2008/10/09(Thu) 21:33 | URL | Panny | 【編集】
はじめまして。
38歳男のyasuと申します。
「主食を抜けば糖尿病は良くなる!糖質制限食のすすめ」を購入して糖質制限食を9月から始めました。
ちなみに私は糖尿病ではありませんが、将来の予防と若干のダイエットが目的です。
開始して2週間後にたまたま人間ドックを受診する機会があり、バリウム検査で「逆流性食道炎」と診断されました。
初めてのの結果で驚いています。
これは、糖質制限食の影響なのでしょうか?
江部先生のご見解をお願いします。
38歳男のyasuと申します。
「主食を抜けば糖尿病は良くなる!糖質制限食のすすめ」を購入して糖質制限食を9月から始めました。
ちなみに私は糖尿病ではありませんが、将来の予防と若干のダイエットが目的です。
開始して2週間後にたまたま人間ドックを受診する機会があり、バリウム検査で「逆流性食道炎」と診断されました。
初めてのの結果で驚いています。
これは、糖質制限食の影響なのでしょうか?
江部先生のご見解をお願いします。
2008/10/09(Thu) 21:47 | URL | yasu | 【編集】
yasuさん。
逆流性食道炎と
糖質制限食は何の関係もないと思いますよ。
逆流性食道炎と
糖質制限食は何の関係もないと思いますよ。
2008/10/10(Fri) 08:10 | URL | 江部康二 | 【編集】
甘いものを食べてから、数時間すると体がだるくなり、体かジーンとし倒れそうになります。昨日、糖質負荷試験をした結果、食前血糖が、93で、30分後は119、60分後は154、90分後は147、120分後は152、180分後は98でした。インスリンは、食前2.5で、」30分後は21.2、60分後は27.4、90分後は36.8、120分後は44.6、180分後は16.6でした。医師からは、インスリン分泌遅延と言われましたが、軽い糖尿病なのでしょうか?次は9月頃受診予定ですが、とても不安です。白米やスパゲッティーをなるべく食べ、糖分は摂らない方が良いと言われましたが、改善するのでしょうか?また、一生糖分は、摂る事はできないのでしょうか?ちなみに、体重は普通です。
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