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1型糖尿病と食事療法 その2
こんにちは。
今回の記事は、1型糖尿病と食事療法 その2です。

成人で糖質制限食がつらくなければ、
バーンスタイン医師と同様にスーパー糖質制限食が、一番のお奨めです。

人類約700万年間の歴史で、農耕以前の700万年は、人類みんな糖質制限食ですので、
本来の食生活に戻るということです。

スーパー糖質制限食だと、「毎食前の超速効型インスリン(追加分泌インスリンの代わり)」は量的に1/3以下に減らせることが多いです。

「約24時間持続型インスリン(基礎分泌インスリンの代わり)」は同量の場合もあれば、
1/2程度まで減らせることもあります。 

ただ1型糖尿病は小児期の発症が多く、学校での給食等もあり、
糖質制限食が困難な場合もあります。
その場合は糖質管理食で良いと思います。
糖質管理食では、摂取する糖質量に応じて、食前のインスリンの単位を調整します。

小児の1型糖尿病は、家にいる時は、糖質制限食でインスリンの量を減らす、
給食時はインスリンの量を増やして糖質管理食的に摂取する、
というようなパターンも有効かと思われます。

インスリンの量は、少なくてすむほど血糖コントロールも良くなりますし、
身体への影響は少ないので、工夫してみる価値はあるでしょう。
過剰のインスリンは酸化ストレスとなり、
がん、老化、動脈硬化、肥満、アルツハイマー病などのリスクとなります。

カロリー計算だけに頼って、インスリンの量を決めるのは、
食後血糖値の予測が不可能ですので危険です。

1型糖尿病は、血糖値が乱高下するというように言われていますが、
これは血糖値を直接上昇させる糖質摂取量の計算をしないからそうなるのです。

糖尿病専門医の先生方も1型糖尿病患者さんに対して、
血糖値乱高下を避けるために糖質制限食は無理でも、
せめて糖質管理食は導入して欲しいものです。


江部康二


以下の青字の記載は、中嶋一雄先生の、糖尿病学会誌に掲載された論文です。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/tonyobyo/61/11/61_787/_article/-char/ja/
編集者への手紙
1 型糖尿病患者における糖質制限について
中嶋 一雄

Key words:1 型糖尿病,食事療法
〔糖尿病 61(11):787~788,2018〕

近年糖尿病の食事療法に糖質制限食が注目され,米国のジョスリン糖尿病センターでは,2004 年より食事療法勧告において炭水化物を 40 %エネルギーと定めている1).
米国糖尿病学会は 2013 年 10 月より,食事療法においてあらゆる栄養素比率を選択することが可能であるとの見解を出した2).

本誌 60 巻 6 号に「厳密な糖質制限と持効型溶解インスリン 1 回法を約 15 年継続している罹病歴 33 年の 1型糖尿病の 1 例」と題する症例報告3)が掲載された.日本糖尿病学会により推奨される食事療法(炭水化物 50-60 %)を摂取し必要なインスリンを追加することが標準的な糖尿病の治療であり推奨することを説明したとある.一方,1 型糖尿病における糖質制限については統一見解には至っていないと思われる.

1 型糖尿病とてんかんの合併例に,超低炭水化物食であるケトン食療法を実施して,血糖維持と痙攣発作がいずれも改善し安定した状態を得られたと,すでに複数の症例が報告されている4~6).

2018 年になり,1 型糖尿病と低炭水化物食との研究について系統的レビューが発表された7).炭水化物を45 %エネルギー以下とした論文のレビューを実施したが,HbA1c の低下がみられた論文とみられなかった論文とが混在しており,エビデンスとしては限界があるため全体として結論は下せず,さらなる臨床研究をすすめる必要があると記載されている.

一方,近年に使用開始された Flash glucose monitoring(FGM)とインスリンポンプを併用して,1 型糖尿病患者にそれまでの 1 日量 100-150 g から,30-50 g 迄に減量した低炭水化物食を実施した症例報告も行われている8).
本例ではインスリンの 1 日量が 50 単位から30 単位に減量でき,FGM により記録された毎日の平均血糖値は改善し,脂質異常等の合併症も生じなかったとある.FGM による血糖変化の観察と適切なインスリン調節が安全な血糖維持をもたらしたと考えられ,頭痛は減少し睡眠も良好化し情動面が改善するなど,本人の QOL も向上した.1 型糖尿病患者における糖質制限についてさらなる臨床研究が望まれる

著者の COI(conflicts of interest)開示:特になし

文 献
1)Chalmers KH (2004) Medical Nutrition Therapy: Joslinʼs Diabetes Mellitus 14th Edit. Kahn CR, et al (eds)
Lippincott Williams & Wilkins, Philadelphia, p 611-631
2)Evert AB, Boucher JL, Cypress M, Dunbar SA, Franz
MJ, Mayer-Davis EJ, Neumiller JJ, Nwankwo R, Verdi
CL, Urbanski P, Yancy WS Jr (2013) Nutrition Therapy Recommendations for the Management of Adults
With Diabetes. Diabetes Care 36: 3821-3842
3)長谷川夕希子,春日崇臣,奥山尚美,三浦順之助,大
屋純子,内潟安子(2017)厳密な糖質制限と持効型溶
解インスリン 1 回法を約 15 年継続している罹病歴 33
年の 1 型糖尿病の 1 例.糖尿病 60:449-455
4)Dressler A, Reithofer E, Trimmel-Schwahofer P, Klebermasz K, Prayer D, Kasprian G, Rami B, Schober E,
Feucht M (2010) Type 1 diabetes and epilepsy: efficacy and safety of the ketogenic diet. Epilepsia 51 :
1086-1089
5)Roxana L. Aguirre Castaneda, Kenneth J. Mack, Aida
Lteif (2012) Successful Treatment of Type 1 Diabetes
and Seizures With Combined Ketogenic Diet and Insulin. Pediatrics 129: e511-e514
6)Aylward NM, Shah N, Sellers EA ( 2014) The Ketogenic Diet for the Treatment of Myoclonic Astatic
Epilepsy in a Child with Type 1 Diabetes Mellitus.
Can J Diabetes 38: 223-224
7)Turton JL, Raab R, Rooney KB ( 2018 ) Lowcarbohydrate diets for type 1 diabetes mellitus: A systematic review. PLOS ONE 13: e0194987
8)Eiswirth M, Clark E, Diamond M (2018) Low carbohydrate diet and improved glycaemic control in a patient with type one diabetes. Endocrinology, Diabetes
& Metabolism Case Reports 03 2018, EDM180002

医療法人稲門会いわくら病院精神科(〒606-0017 京都府京都市左京区岩倉上蔵町 101)
連絡先:中嶋一雄(〒606-0017 京都府京都市左京区岩倉上蔵町 101 医療法人稲門会いわくら病院精神科)
受付日:2017 年 10 月 22 日╱採択日:2018 年 8 月 8 日
コメント
中嶋一雄先生の論文、拝読しました!!
都内河北 鈴木です。

中嶋一雄先生の論文を拝読して、私は2型糖尿病でしたが、
『人体へは薬投与は、最小にするべきだと考えます!!!』

本日記事を糖尿病・専門組織『日本糖尿病学会』は、
『糖質制限理論』の論文発表されて、どの様に考えるのか、
改善皆無のママ『糖質・信奉』しているかが、
いつまで時代進化・皆無でいられるかが、
『殺されかけた患者私』は、
<<【江部康二医師『糖質制限理論』(2005年発表)】>>を、
  改善有る理論を理解把握して、
  時代進化して欲しいと、考えます!!!

何故なら私は、『薬不要で、食生活』を
【江部康二医師『糖質制限理論』】食生活に変更しただけで、
『糖尿病』21年間が、服用薬11条、インスリン増量3年半余りが、
3ヵ月足らず、
インスリン自主離脱して、<<『生還、』>>できました現実!!

以降9年目現在、後遺症『眼、脳梗塞、』が、
<<『覚醒、5度の再覚醒、』している事実現実があります!!>>

<<糖尿病・専門組織『日本糖尿病学会』は、
  血糖値上昇は、何故だかを知っているのか??>>

江部先生には、<<『生還、覚醒、5度の覚醒、』>>でき、
更なる『改善』を期待できる健康状況で、9年目に生活できる事に、
感謝尽きません!!
ありがとうございます。
敬具
2021/08/20(Fri) 02:18 | URL | 都内河北 鈴木 | 【編集
1型糖尿病の食事 コントロール
江部先生、ご無沙汰しております。
その節は本当にありがとうございました。
私は江部先生に救われた一人です。

この度1型糖尿病の食事について投稿していただき、ありがとうございます。

現在、近くの糖尿病学会で力ある医師といわれる方に処方いただいております。
様々な流れから近くのクリニックに通っております。

そこのクリニックでは、1型については、糖質制限はあまり奨励していなかったのですが、

私のデータを見てびっくりされていました。AGP、変動幅がないことにびっくりされていて、『勉強になりました』といってくれ、『この財産をいかして、血糖値コントロールしていってください。』『私が見ている1型の優秀な患者でもこのような変動幅はないです。あなたはすごい。』といっていただきました。本当に参りました。という感じでした。私もあらためて糖質制限の威力を感じた次第です。
私は江部先生のお陰で、ずっと糖質制限をしてきていたので、極端なスパイクは防げているのだと思います。
そこのクリニックでは、2型には糖質制限を推奨していて、玄関の入り口には、糖質量を示したものが、沢山置いてあります。

その先生は宗田先生の学生時代の古き友のようで、
宗田先生が『江部先生とその先生と是非対談したい』と話しておりました。
実現できたら、すごいなと思っています。

1型糖尿病にも糖質制限は有効であることが、広がればと願います。
江部先生がおっしゃるように、やはり2型とは違って1型は糖質管理食がとても適していると感じています。
2021/08/23(Mon) 10:58 | URL | ちよまる | 【編集
Re: 1型糖尿病の食事 コントロール
ちよまる さん

お久しぶりです。
お元気で、何よりです。

そこのクリニックでは、1型については、糖質制限はあまり奨励していなかったのですが、
私のデータを見てびっくりされていました。AGP、変動幅がないことにびっくりされていて、『勉強になりました』といってくれ、『この財産をいかして、血糖値コントロールしていってください。』『私が見ている1型の優秀な患者でもこのような変動幅はないです。あなたはすごい。』といっていただきました。


素直なドクターで、素晴らしいです。
これからは、2型糖尿病だけでなく、1型糖尿病にも糖質制限食を導入されるかもしれませんね。
2021/08/23(Mon) 20:13 | URL | ドクター江部 | 【編集
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