2021年06月18日 (金)
ブログに頂くコメントや質問ですが、
マスメディアのサイトやヤフーニュースなどの記事に対しては
私なりの意見を述べることは可能な場合が多いと思います。
一方、ユーチューブや個人的なサイトなどの記事に関しては、
私に判断が困難な場合もあり、
コメントや質問を削除させて頂くことがありますので、
ご了承頂ければ幸いです。
また、いったん、ブログに載せたコメントも、
相応しくないと判断すれば、その時点で削除しますので、
ご了承頂ければ、幸いです。
こんにちは。
「インフラマソーム」という概念が注目されています。
私も浅学にして、あまりよく知らなかったのですが、
最新の注目される研究分野のようです。
とても難しいのですが、学術用語をできるだけなしにして
私にもわかる範囲で概略を説明したいと思います。
細胞内の“異物”により活性化し、
炎症反応を誘導するタンパク質複合体が「インフラマソーム」です。
以下、京都大学のサイトから引用
http://www.kyoto-u.ac.jp/static/ja/news_data/h/h1/news6/2013_1/131104_1.htm
「インフラマソームの形成は病原微生物の感染によって誘導され、それに基づく炎症応答は多くの場合、感染防御に有効であり、インフラマソームは腸内細菌叢の制御および腸管上皮バリアの保護に働き、腸管の恒常性維持に寄与するとも考えられています。
一方、インフラマソームが示す負の側面も知られており、刺激因子の種類によっては、過剰なインフラマソーム形成が不適切かつ持続した炎症を惹起し、動脈硬化、痛風、2型糖尿病、アルツハイマー病などの各種疾患の発症に関わります。
また、ある種の自己炎症疾患の発症はインフラマソーム構成タンパクの突然変異が関与することも示唆されています。そのため、インフラマソームの形成または活性の制御機構を解明することは、病態機構の理解を深め、診断や治療へ貢献するものと期待されます。」
このようにインフラマソームは、感染防御に役立つ側面もあるのですが、
近年研究されて問題となっているのは、負の側面のほうです。
インフラマソームは、病原微生物以外にも
アスベストなどの外来性因子、尿酸結晶などの内在性因子により活性化され、
感染症、糖尿病、動脈硬化、自己免疫疾患、虚血傷害など、様々な疾患の発症と進行に中心的役割を果たしています。
さて、ここからが本題です。
「絶食や低炭水化物食、激しい運動で炎症が抑制されるのは
ケトン体(とくにBHB)による効果の可能性が示唆された」
という論文が、Nature Medicineという国際医学雑誌に掲載されたのです。(*)
ネイチャー・メディスンはインパクトファクターが27と高くて
大変権威ある医学雑誌です。
論文によれば、β-ヒドロキシ酪酸(BHB)が、
インフラマソームと呼ばれる炎症関連の分子複合体の一部であるNLRP3を
直接的に阻害していたということです。
β-ヒドロキシ酪酸(BHB)は、ケトン基は持っていないのですが、
慣例上ケトン体の一種に分類されています。
結論としては、
『ケトン体の一種であるβ-ヒドロキシ酪酸(BHB)が炎症の要となるインフラマソームを直接阻害することで炎症を抑制する可能性が示唆された』
ということです。
炎症を抑制することにより、感染症・糖尿病・動脈硬化・自己免疫疾患・虚血傷害など、様々な疾患の改善に、
ケトン体(BHB)が役に立つ可能性があることとなります。
スーパー糖質制限食で、糖尿病や肥満だけではなく、
アレルギー疾患など含めて様々な生活習慣病が改善する要因として
血中ケトン体が上昇してインフラマソームを阻害することが
関与している可能性が示唆されます。
(*)
http://www.nature.com/nm/journal/v21/n3/full/nm.3804.html
The ketone metabolite β-hydroxybutyrate blocks NLRP3 inflammasome-mediated inflammatory disease
Nature Medicine 21, 263-269 (2015) doi:10.1038/nm.3804
江部康二
マスメディアのサイトやヤフーニュースなどの記事に対しては
私なりの意見を述べることは可能な場合が多いと思います。
一方、ユーチューブや個人的なサイトなどの記事に関しては、
私に判断が困難な場合もあり、
コメントや質問を削除させて頂くことがありますので、
ご了承頂ければ幸いです。
また、いったん、ブログに載せたコメントも、
相応しくないと判断すれば、その時点で削除しますので、
ご了承頂ければ、幸いです。
こんにちは。
「インフラマソーム」という概念が注目されています。
私も浅学にして、あまりよく知らなかったのですが、
最新の注目される研究分野のようです。
とても難しいのですが、学術用語をできるだけなしにして
私にもわかる範囲で概略を説明したいと思います。
細胞内の“異物”により活性化し、
炎症反応を誘導するタンパク質複合体が「インフラマソーム」です。
以下、京都大学のサイトから引用
http://www.kyoto-u.ac.jp/static/ja/news_data/h/h1/news6/2013_1/131104_1.htm
「インフラマソームの形成は病原微生物の感染によって誘導され、それに基づく炎症応答は多くの場合、感染防御に有効であり、インフラマソームは腸内細菌叢の制御および腸管上皮バリアの保護に働き、腸管の恒常性維持に寄与するとも考えられています。
一方、インフラマソームが示す負の側面も知られており、刺激因子の種類によっては、過剰なインフラマソーム形成が不適切かつ持続した炎症を惹起し、動脈硬化、痛風、2型糖尿病、アルツハイマー病などの各種疾患の発症に関わります。
また、ある種の自己炎症疾患の発症はインフラマソーム構成タンパクの突然変異が関与することも示唆されています。そのため、インフラマソームの形成または活性の制御機構を解明することは、病態機構の理解を深め、診断や治療へ貢献するものと期待されます。」
このようにインフラマソームは、感染防御に役立つ側面もあるのですが、
近年研究されて問題となっているのは、負の側面のほうです。
インフラマソームは、病原微生物以外にも
アスベストなどの外来性因子、尿酸結晶などの内在性因子により活性化され、
感染症、糖尿病、動脈硬化、自己免疫疾患、虚血傷害など、様々な疾患の発症と進行に中心的役割を果たしています。
さて、ここからが本題です。
「絶食や低炭水化物食、激しい運動で炎症が抑制されるのは
ケトン体(とくにBHB)による効果の可能性が示唆された」
という論文が、Nature Medicineという国際医学雑誌に掲載されたのです。(*)
ネイチャー・メディスンはインパクトファクターが27と高くて
大変権威ある医学雑誌です。
論文によれば、β-ヒドロキシ酪酸(BHB)が、
インフラマソームと呼ばれる炎症関連の分子複合体の一部であるNLRP3を
直接的に阻害していたということです。
β-ヒドロキシ酪酸(BHB)は、ケトン基は持っていないのですが、
慣例上ケトン体の一種に分類されています。
結論としては、
『ケトン体の一種であるβ-ヒドロキシ酪酸(BHB)が炎症の要となるインフラマソームを直接阻害することで炎症を抑制する可能性が示唆された』
ということです。
炎症を抑制することにより、感染症・糖尿病・動脈硬化・自己免疫疾患・虚血傷害など、様々な疾患の改善に、
ケトン体(BHB)が役に立つ可能性があることとなります。
スーパー糖質制限食で、糖尿病や肥満だけではなく、
アレルギー疾患など含めて様々な生活習慣病が改善する要因として
血中ケトン体が上昇してインフラマソームを阻害することが
関与している可能性が示唆されます。
(*)
http://www.nature.com/nm/journal/v21/n3/full/nm.3804.html
The ketone metabolite β-hydroxybutyrate blocks NLRP3 inflammasome-mediated inflammatory disease
Nature Medicine 21, 263-269 (2015) doi:10.1038/nm.3804
江部康二
江部 先生
お世話になります
先生に血液検査 うけたものです
MCV 少しOVERしていたのですが。
これ気を付けないといけないですよね
らこ様の返答コメントを読んで 気をひきしめて
酒やめないといけないと思いました。
診察ありがとうございました。
お世話になります
先生に血液検査 うけたものです
MCV 少しOVERしていたのですが。
これ気を付けないといけないですよね
らこ様の返答コメントを読んで 気をひきしめて
酒やめないといけないと思いました。
診察ありがとうございました。
絶食とはどのくらいの時間ですか?
いつも有用な情報をありがとうございます。
先回はアドレスをくっつけてしまい申し訳ありませんでした。
現在、薬なしで9ヶ月になる糖尿人です。HbA1cは、6%前半を行ったり来たりです。
今日のブログにありました「絶食や低炭水化物食、激しい運動で炎症が抑制されるのは
ケトン体(とくにBHB)による効果の可能性が示唆された」の部分で、「絶食」とはどれくらいの時間を指しているのでしょうか。よろしければお教えください。
いつも有用な情報をありがとうございます。
先回はアドレスをくっつけてしまい申し訳ありませんでした。
現在、薬なしで9ヶ月になる糖尿人です。HbA1cは、6%前半を行ったり来たりです。
今日のブログにありました「絶食や低炭水化物食、激しい運動で炎症が抑制されるのは
ケトン体(とくにBHB)による効果の可能性が示唆された」の部分で、「絶食」とはどれくらいの時間を指しているのでしょうか。よろしければお教えください。
2021/06/18(Fri) 22:13 | URL | 末次 孝 | 【編集】
江部先生こんにちは!いつもブログを拝見して参考にさせてもらってます^^
スーパー糖質制限食を続けていて、しばらくは調子が良かったのですが、最近になって便が固くコロコロしてる時が多くなってきました。
水溶性(難消化性デキストリン)・不溶性(おからパウダー)などの食物繊維を多めにとって脂質の量を増やしても改善されませんでした。
糖質をほぼ取らない生活なので、便の量が少なくなるのは当然として、毎回のように便がコロコロした形になってしまうのはまだ脂質や食物繊維の量が足りてないということでしょうか?
スーパー糖質制限食を続けていて、しばらくは調子が良かったのですが、最近になって便が固くコロコロしてる時が多くなってきました。
水溶性(難消化性デキストリン)・不溶性(おからパウダー)などの食物繊維を多めにとって脂質の量を増やしても改善されませんでした。
糖質をほぼ取らない生活なので、便の量が少なくなるのは当然として、毎回のように便がコロコロした形になってしまうのはまだ脂質や食物繊維の量が足りてないということでしょうか?
2021/06/19(Sat) 06:46 | URL | 光一 | 【編集】
すみません。もう一つ質問があるのですが、
>「絶食や低炭水化物食、激しい運動で炎症が抑制されるのは
ケトン体(とくにBHB)による効果の可能性が示唆された」
という論文が医学雑誌に掲載されたとのことですが、激しい運動は活性酸素を大量に出すので免疫力が落ちて健康には良くないと思っていたのですが、短時間であれば限界まで追い込むような運動(HIITやウエイトトレーニングなど)は健康上は問題無いということでしょうか?
>「絶食や低炭水化物食、激しい運動で炎症が抑制されるのは
ケトン体(とくにBHB)による効果の可能性が示唆された」
という論文が医学雑誌に掲載されたとのことですが、激しい運動は活性酸素を大量に出すので免疫力が落ちて健康には良くないと思っていたのですが、短時間であれば限界まで追い込むような運動(HIITやウエイトトレーニングなど)は健康上は問題無いということでしょうか?
2021/06/19(Sat) 07:00 | URL | 光一 | 【編集】
糖尿人 さん
アルコール性貧血は、赤血球の大きさが大きくなる大球性貧血です。
それでMCVが高くなります。
鉄欠乏性貧血は、赤血球の大きさが小さくなる小球性貧血です。
MCVは低くなります。
アルコール性貧血は、赤血球の大きさが大きくなる大球性貧血です。
それでMCVが高くなります。
鉄欠乏性貧血は、赤血球の大きさが小さくなる小球性貧血です。
MCVは低くなります。
2021/06/19(Sat) 13:51 | URL | ドクター江部 | 【編集】
末次 孝 さん
薬なしで、HbA1cが6.0%前後なら、素晴らしい成果と思います。
最後の食事からの絶食時間という、言い方もあるので、何時間という規定はないと思います。
私は朝食は「ブラックコーヒー+生クリーム10CC」で、昼夕の、1日2食です。
前日の夕食が19時~20時なら、翌日12時に昼食とすれば、
20時~翌日正午まで、16時間くらいの絶食時間です。
このパターンだと夜間睡眠中に脂肪が燃えてケトン体が 高値となった状態を、正午まで維持できるので好ましいのです。
薬なしで、HbA1cが6.0%前後なら、素晴らしい成果と思います。
最後の食事からの絶食時間という、言い方もあるので、何時間という規定はないと思います。
私は朝食は「ブラックコーヒー+生クリーム10CC」で、昼夕の、1日2食です。
前日の夕食が19時~20時なら、翌日12時に昼食とすれば、
20時~翌日正午まで、16時間くらいの絶食時間です。
このパターンだと夜間睡眠中に脂肪が燃えてケトン体が 高値となった状態を、正午まで維持できるので好ましいのです。
2021/06/19(Sat) 15:54 | URL | ドクター江部 | 【編集】
光一 さん
確かに時々、糖質制限食で便秘になる人がおられます。
水溶性(難消化性デキストリン)・不溶性(おからパウダー)などの食物繊維を多めにとって脂質の量を増やして、ほとんどの人が改善しますが、それでもだめなら、
「ココナッツオイル」「MCTオイル」摂取が良いと思います。
確かに時々、糖質制限食で便秘になる人がおられます。
水溶性(難消化性デキストリン)・不溶性(おからパウダー)などの食物繊維を多めにとって脂質の量を増やして、ほとんどの人が改善しますが、それでもだめなら、
「ココナッツオイル」「MCTオイル」摂取が良いと思います。
2021/06/19(Sat) 15:57 | URL | ドクター江部 | 【編集】
光一 さん
激しい運動も普通の運動も、ケトン体産生が増加します。
激しい運動は活性酸素を大量に出しますが、体内のSODなどの酵素で処理されます。
若いころから運動習慣のある人は、中年になっても、SODなどの酵素もかなり維持されていますので、
激しい運動をしても大丈夫と思います。
若い頃に運動習慣のない人が、中年になって一念発起して、高強度の運動をすると危険です。
SODなどの抗酸化酵素が加齢と共にかなり減少しているからです。
激しい運動も普通の運動も、ケトン体産生が増加します。
激しい運動は活性酸素を大量に出しますが、体内のSODなどの酵素で処理されます。
若いころから運動習慣のある人は、中年になっても、SODなどの酵素もかなり維持されていますので、
激しい運動をしても大丈夫と思います。
若い頃に運動習慣のない人が、中年になって一念発起して、高強度の運動をすると危険です。
SODなどの抗酸化酵素が加齢と共にかなり減少しているからです。
2021/06/19(Sat) 16:10 | URL | ドクター江部 | 【編集】
江部先生、便秘と運動の件の返信ありがとうございます。
おおよそですが食物繊維は1日20g以上、MCTオイルは毎食後のコーヒーに5g(1日の合計15g)ずつ入れてました。
それでもコロコロ便が続く場合は日常のストレスによる自律神経の乱れで腸内環境が悪化してるとも考えられるでしょうか?
おおよそですが食物繊維は1日20g以上、MCTオイルは毎食後のコーヒーに5g(1日の合計15g)ずつ入れてました。
それでもコロコロ便が続く場合は日常のストレスによる自律神経の乱れで腸内環境が悪化してるとも考えられるでしょうか?
2021/06/19(Sat) 18:16 | URL | 光一 | 【編集】
光一 さん
MCTオイルは、かなり高価です。
便通が良くなる効果は、ココナッツオイルのほうが良いです。
試してみましょう。
MCTオイルは、かなり高価です。
便通が良くなる効果は、ココナッツオイルのほうが良いです。
試してみましょう。
2021/06/19(Sat) 19:44 | URL | ドクター江部 | 【編集】
光一さん 横から失礼いたしします。
私も何年もコロコロ便が続きまして「便秘には食物繊維」との常識にとらわれて長い間改善いたしませんでした。
そこで、試しに、食物繊維なしの肉、魚、卵、バターのみの食生活にしたところ、とたんに(2、3日で)きれいな普通便になり一年ほどになります。現在は、少量のサラダ程度の食物繊維はとっておりますが、普通便のままです。
これからも自身の便の状態を見ながら私にとっての「適量」を模索していきたいと思っておりますが、私にとっては食物繊維はさほど重要ではないのかもしれません。
「常識」と異なることも試されてはいかがでしょう。
私も何年もコロコロ便が続きまして「便秘には食物繊維」との常識にとらわれて長い間改善いたしませんでした。
そこで、試しに、食物繊維なしの肉、魚、卵、バターのみの食生活にしたところ、とたんに(2、3日で)きれいな普通便になり一年ほどになります。現在は、少量のサラダ程度の食物繊維はとっておりますが、普通便のままです。
これからも自身の便の状態を見ながら私にとっての「適量」を模索していきたいと思っておりますが、私にとっては食物繊維はさほど重要ではないのかもしれません。
「常識」と異なることも試されてはいかがでしょう。
2021/06/19(Sat) 21:59 | URL | てっちゃん | 【編集】
江部先生、返信ありがとうございます。
今MCTオイルの方の買い置きが3つあるので、併用してココナッツオイルも試してみます!
てっちゃんさん、アドバイスありがとうございます。
食物繊維を抜いたら普通便になったと聞いて正直驚きです(笑)
私自身、今現在は食物繊維は1日20g以上は摂取してる状態なので、完全に食物繊維を抜くのは怖いですがお話を聞いて試してみたくなりました。
脂質の量は増やしつつ食物繊維を抜くのを試しにやってみます。ありがとうございました^^
今MCTオイルの方の買い置きが3つあるので、併用してココナッツオイルも試してみます!
てっちゃんさん、アドバイスありがとうございます。
食物繊維を抜いたら普通便になったと聞いて正直驚きです(笑)
私自身、今現在は食物繊維は1日20g以上は摂取してる状態なので、完全に食物繊維を抜くのは怖いですがお話を聞いて試してみたくなりました。
脂質の量は増やしつつ食物繊維を抜くのを試しにやってみます。ありがとうございました^^
2021/06/20(Sun) 02:10 | URL | 光一 | 【編集】
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