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グルコーススパイク(急激な食後高血糖)
こんばんは。

朝は寒かったけれど、昼からとてもいいお天気で、暑いくらいになった京都です。温度差が結構あるので、皆さん体調にご注意下さいね。

さて今回は、グルコーススパイクに関して、ワキさんからコメント・質問をいただきました。

食後血糖値上昇
はじめまして。8月の末に人間ドックで糖尿病を発見した新米糖尿人です。生来の凝り性ですので、血糖値をこまめに自己測定しながら楽しく(?)コントロールしています。自分の体に無頓着でしたが、糖尿をきっかけにコントロールすることの楽しさを知りました。体も今の方が随分好調です。病気も悪いことばかりじゃないですねぇ。

さて、グルコーススパイクについて質問させてください。
どこにも載ってなかったので・・・。

グルコーススパイクとは、食後の血糖値の急激な上昇であると定義されていますが、たとえば・・・

1)食前 120 → 食後 170
2)食前 70 → 食後140

この場合、1)はその差50、2)はその差70。

血糖値としては2の方がコントロール優良だと思うのですが、空腹時と、食後の差は大きくなります。この差の絶対値が大きい方が欠陥への悪い影響が大きいとすれば、食前(空腹時)の血糖値を下げすぎないように(たとえば2の場合空腹時血糖を90~100にコントロールする)方が、良いのでしょうか?

藪から棒に質問で恐縮です・・・。
是非ご教授ください。

by ワキ 2008/09/27 15:40』


ワキさん、コメントありがとうございます。

「1)食前 120 → 食後 170
2)食前 70 → 食後140
この場合、1)はその差50、2)はその差70。」


このどちらが良くないかという、質問ですが、これを直接比較検討したような文献はありません。従って断定はできませんが、以下私の考えを述べます。

まず、グルコーススパイクですが、基本的には急激な食後高血糖のことをいいます。グルコーススパイクは、境界領域~糖尿病を中心に広くみられます。

スパイク(spike)とは、とがったものを示す単語です。糖質摂取後2~3時間程度の短時間だけ持続して、ほぼ元の血糖レベルにまで戻る、鋭角に尖った山のような血糖上昇を指します。

食後高血糖ですから、基本的には140mg/dl以上をいいます。つまり、食後140mg未満は高血糖とは言わないし、正常範囲ですので細胞障害や血管壁への害はないと思います。

文献的には食後2時間血糖値が180mg/dlを超えてくると心・脳の大血管合併症進行のリスクが高まります。

また、食後1時間値が180mg/dlを超えても、心血管系の合併症が増えるとする文献もあります。
従いまして、グルコーススパイクも、基本的には食後血糖値が180mg/dlを超えるレベルで、空腹時血糖値食後血糖値の差が大きいほど、良くないと考えられます。

動物実験レベルでは、血糖の上昇・下降を繰り返す血糖変動(グルコーススパイク)では、慢性的持続的な高血糖より、細胞傷害機序が強く働くことが示唆されています。

一般的な境界人や糖尿人の食生活においては、糖質を摂取したときに、一日に数回グルコーススパイクを起こしているパターンであり、持続的高血糖というのは通常はありえません。

糖質、脂質、タンパク質のうち、糖質だけがグルコーススパイクを生じます。従って境界人や糖尿人が、カロリー制限食(高糖質食)を食べれば、必ずグルコーススパイクを起こします。

つまり、恐るべきことに日本のほとんどの病院で、グルコーススパイクを起こす食事療法を、画一的にわざわざ糖尿人に指導しているわけです。(=_=;) 

勿論、糖質制限食ならグルコーススパイクは生じません。ヾ(^▽^)

なお、食後高血糖が、動脈硬化の最も重要なリスクの一つであることは、間違いありませんが、
空腹時血糖値110mg/dl未満に保つことも、合併症の進行を防ぐ上で、意味があることとされています。

江部康二

テーマ:糖尿病
ジャンル:ヘルス・ダイエット
コメント
α-グルコシダーゼ阻害薬について
江部先生
いつも為になる情報をありがとうございます。軽い耐糖能異常のPannyです。

ベイスンなどのα-グルコシダーゼ阻害薬は糖の吸収を阻害してくれると勝手に勘違いしていたのですが、“小腸からの糖質の分解・吸収を遅延させて、食後高血糖を防ぐ効果がある”のですね。

そこで今日の記事に関連しての質問なのですが、

・食後急に血糖値が上がる代わりに緩やかに長い時間をかけて上がる利点は、細胞傷害を防ぐことが目的なのでしょうか?

>動物実験レベルでは、血糖の上昇・下降を繰り返す血糖変動(グルコーススパイク)では、慢性的持続的な高血糖より細胞傷害機序が強く働くことが示唆されています。


その他、ベイスン等のα-グルコシダーゼ阻害薬について教えていただけますと幸いです。

・飲んだ直後からどのくらいの間効果がありますか?
・ベイスン等を飲むことによって、(人によって違うと思いますが)飲まない場合と、血糖値と時間の推移にどのような差が出るのでしょうか?




2008/10/03(Fri) 04:22 | URL | Panny | 【編集
糖尿病とグリコランについて
江部先生おはようございます。
ゆうです。
また質問があります。

私は今グリコランを服用しておりますが、HbA1C5,4・食後2H160の症状で今後も必要なものなのでしょうか。
仮に主治医が投薬を中止しなかった場合、服用がかえって体を害してしまうのということはないのでしょうか。
さらに、例えばですが少し糖質を摂りすぎてしまったというような場合に自己判断で頓服的な服用は、やってもいいことなのでしょうか。(その場合の効果や体への影響からみて)
急ぎませんのですみませんが宜しくお願いいたします。
2008/10/03(Fri) 06:08 | URL | ゆう | 【編集
天変地異?
こんにちは
糖質制限のおかげで、現在HbA1c5%台体調良好に過ごせています。先生に感謝感謝です。

ところが、耳・目・頭全てを疑いたくなるような記事を見つけてしまいました。

<2010. 2. 12
<Lancet誌から
<2型糖尿病患者の死亡率はHbA1c7.5%前後が最も低い
<英国で行われた後ろ向きコホート研究の結果
・治療中の2型糖尿病患者の全死因死亡や大血管イベントのリスクは、HbA1c値が7.5%前後のグループで最も低い―。そんな後ろ向きコホート研究の結果を、英Cardiff大学のCraig J Currie氏らがLancet誌2010年2月6日号に報告した。
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/hotnews/lancet/201002/514118.html

低いほどよいと思われていた2型糖尿病患者のHbA1c値が、実はそうではなかった?とはかなり驚きました。
値7.5を底にして、左右に向かうほどリスクが上昇するというのは、それぞれが高血糖および低血糖の頻発であり、それゆえにリスク上昇へと繋がっている、と解釈すべきか。
そうであるならば、高・低血糖いずれもがそのトリガーは「多量の炭水化物」に他ならず、血糖値の振幅を最小にすべくは、やはり、“少ない量”の炭水化物(糖質)および薬物、と考えてしまいます。

先生の御見解をお聞かせいただければ幸いです。
(乱文にて失礼しました)


2010/02/14(Sun) 10:53 | URL | タイヤキ | 【編集
Re: 天変地異?
タイヤキ さん。

HbA1c5%台と好調、良かったですね。

<Lancet誌から
<2型糖尿病患者の死亡率はHbA1c7.5%前後が最も低い

この論文は興味深いですね。
検討して、記事にしたいと思います。
2010/02/15(Mon) 15:28 | URL | 江部康二 | 【編集
空腹血糖値がないのは?
こんばんは

 【HbA1c 7.5%が死亡率最低】

この言葉がどうしても気になり、再度記事を見直しましたところ
調査対象者は、50歳以上の2型糖尿病患者 でした。

ここで重要なのは、加齢とともに空腹血糖値は上がるということです。
http://kenkocom.blog.shinobi.jp/Entry/48/
記事中、調査対象者の空腹平均血糖値はありませんでしたが
若年層に比してより高いのものであると推定されます。
そうすると、調査対象者でA1cが低値であった方は
空腹値に対して大幅な血糖低下が起きていることを指している、と推測されます。
(もちろん、空腹値が低値でA1cも低値の方もいたとは思いますが)
これは、逆グルコーススパイクとでもいうべきもので
この大幅な血糖値振幅が、A1c低値死亡率上昇の要因では と推測。

記事では最後に
【糖尿病治療ガイドラインを見直してHbA1cを特定の値より下げすぎないよう指示する必要が出てくる】
とありますが、これが真に実施されるなら、現在増加中の若年2型DM患者に対して
「あなたの空腹血糖は110~130だが、A1cを7.5%にしなくてはならない。
 なので、もっと糖質の多い食べ物を摂りなさい(食後高血糖)。」なる指導が起こるかも知れません。

血糖値は、空腹時低く・振幅小さく、がベストではないでしょうか。
2010/02/21(Sun) 19:49 | URL | タイヤキ | 【編集
Re: 空腹血糖値がないのは?
タイヤキさん

私も、低血糖と高血糖の繰り返しで、結果として平均血糖値HbA1cはまあまあという
危険なグループがいた可能性が高いと思っています。
2010/02/21(Sun) 21:29 | URL | ドクター江部 | 【編集
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