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<糖質制限食>VS<糖質たっぷりカロリー制限食>
糖質制限食VS糖質たっぷりカロリー制限食
糖質が血糖値を上昇させインスリンを追加分泌させる

おはようございます。江部康二です。

本ブログは糖尿人に
糖質制限食(糖質12%、脂質56%、タンパク質32%)を推進する立場ですが、
世の中は相変わらず、
糖質たっぷりのカロリー制限食(糖質60%、脂質20%、タンパク質20%)を
推奨する病院が圧倒的に多いです。

いろんな意見があり、論争することは医学の発展において健全なことと思います。しかし、論争の前に人体の生理・代謝などの基本的なところを理解することも重要です。

今回は<糖質・脂質・タンパク質の摂取>と<血糖値上昇・インスリン分泌>に関して、人体の生理・代謝における事実を説明します。

しつこいようですが、以下に述べることは、論争の余地のない事実ですので、<糖質たっぷりのカロリー制限食推奨派>の方々にも是非、ご理解いただきたいと思います。


食べ物が消化・吸収されたあと、糖質は100%、タンパク質は50%、脂質は10%弱が血糖に変わります。 

糖質は、摂取直後から急峻に血糖値を高く速く上昇させ、2時間以内にほとんどすべてが吸収されます。一方、タンパク質の血糖値上昇のピークは食後約3時間で、脂質は消化・吸収に丸一日かかることもあります。

これらは、カロリーとは無関係な三大栄養素の、生理学的特質です。

インスリンには24時間、少量常に分泌されている基礎分泌と、血糖値が上昇したときに大量に出る追加分泌があります。

糖質、脂質、タンパク質のうち糖質だけが、血糖値を急峻に上昇させます。従って、糖質を摂取した時には、インスリンが追加分泌されます。

しかし、脂質やタンパク質は、血糖値をほとんど上昇させないので、インスリンの追加分泌は、ほとんどありません。

つまり、人(糖尿人も正常人も)において、インスリンの追加分泌が多量に必要となるのは、糖質を摂取した時だけです。

これらは、すべて論争の余地のない、生理学的事実です。

以下は、2型糖尿病Aさんのデータです。通常食は糖質ありです。

通常食  350kcal、糖質60%で約52.5g、脂質20%、タンパク質20%
糖質制限食  350kcal、糖質10%で約8.75g、脂質60%、タンパク質30%

通常食と糖質制限食は、いずれも350kcalで、勿論、同一人のデータです。
糖質制限食だと血糖値の上昇は極めて少なく、インスリンの追加分泌もごく少量ですね。


               食前   30分後   60分後   90分後   120分後
通常食血糖値      121     206     304     250      198
通常食IRI         2.2      6.2     19.1     23.1     21.6

糖質制限食血糖値    124     140    142     129     135
糖質制限食IRI       3.5      4.6     6.7      6.9     5.2


同様に2型糖尿人Bさんのデータです。2年前初診時糖尿病でしたが現在正常人です。

               食前   30分後   60分後   90分後   120分後
通常食血糖値      108     148     189     142      126
通常食IRI         3.8      35.2     58.5     55.1     24.9

糖質制限食血糖値    113     115    116     108     107
糖質制限食IRI       4.1      10.1    11.7     10.6    13.5

Bさんの場合、2年間の糖質制限食で、糖質を負荷しても、血糖値は正常パターンに回復しています。

このとき、基礎分泌3.8→追加分泌ピーク58.5まで多量のインスリンがでています。
実に、基礎分泌の15倍強のインスリンが、追加分泌されています。ヾ(゜▽゜)

糖質制限食でも、約8.75gほど野菜分の糖質が含まれているので、一応、基礎分泌の2~3倍のインスリン追加分泌がありますが、通常食に比べれば微々たるものですね。


正常人が通常の食事をすれば、おおむねBさんのデータのようなインスリンの大量追加分泌が、一日に最低3回、間食をすれば5回以上起こっているわけです。

このようなインスリンの大量追加分泌が40年、50年と続けば、遂には膵臓が疲弊して、分泌能力が低下して糖尿病を発症するのは、想像に難くないですね。

結論です。

カロリーをいくら制限しても、糖質を摂取してしまえば、食後高血糖と多量のインスリン追加分泌を生じます。糖質制限食なら食後高血糖は生じず、インスリン追加分泌もごく少量ですみます。

テーマ:糖尿病
ジャンル:ヘルス・ダイエット
コメント
お久しぶりです
日々スタンダード糖質制限食と格闘しているこころです

今日 新聞に載ってたんですが 糖質80%カットのパンが鳥越製粉から出ているそうですね

このパンは スタンダード糖質制限をしてても(私の場合は昼を主食あるにしています)朝でも食べても良いものなのでしょうか

http://www.the-torigoe.co.jp/pan/index.html

食べ物の幅が広がらないかなぁと毎日アンテナをピ~~ンと張ってます
2008/09/12(Fri) 09:22 | URL | こころ | 【編集
No title
こころさん。

鳥越製粉の糖質80%カットのパンは通常のパンよりは圧倒的に糖質少ないです。

しかし糖質制限ドットコムの
ローカーボふすまパンは
糖質95%カットです。
こちらに比べれば血糖値少し上昇ですね。
2008/09/12(Fri) 19:58 | URL | 江部康二 | 【編集
初めまして
初めてメールを差し上げます。
私は2年前心身症と診断されましたが、幸い、2年前、某クリニックにて栄養療法(ナイアシン療法)に出会い、軽快しています。この病院で糖負荷検査(3時間の血糖値測定)を受けた結果、低血糖症であることがわかりました。糖負荷後1時間で血糖値が40~50に下がったと記憶しています。糖尿病にはなっていません。このため、朝晩400mgずつナイアシンを服用しつつ、間食なし、果物、お菓子等の甘味やアルコールは一切食べないようにしています。たまに、甘いものを食べてしまうと、1時間ほどで頭痛がする場合があります。最近ナイアシン療法を始める前よりも、甘いものに対する反応がひどくなってなっているように思います。主治医は食べ慣れていないからだといっていますが、少々不安です。このまま、甘いものを食べることができない生活が続くこともつらいものがあります。飲み会等の付き合いも多少はあります。膵臓が疲弊して糖尿病になるというお話がありますが、低血糖症に対する対策はないものでしょうか?
2008/09/12(Fri) 22:34 | URL | 特許屋 | 【編集
この実験は素人には出来ません
ドクター江部

よくぞ書いていただきました。
多くの(自覚ある)糖尿人は「血糖自己測定機」を持っておりますが、「IRI自己測定機」は持っておりません。(その存在を聞いたこともないし(^^)、あってもお幾ら?)

多くの糖尿人、多くの糖尿専門ドクター、いずれもそれぞれの経験に基づいたそれぞれの考えがあるでしょう。(ドクター江部が日本糖尿病学会に所属しないことは承知しております)

患者もドクターも何より人間としての個体差があることが大前提ではありますが、そのような人々の中に刻々の「血糖値」を点としてとらえ、その血糖「点」を上げないことを良しとする風潮があることに違和感を禁じ得ません。

「血糖の最高点を上げないこと」を目指し、その為に、例えば「耐糖能」試験の前にある程度の糖質をとれば「耐糖能試験の成績が上がる」ことを根拠に、それなりの糖質をとる日常生活を良しとするのはいかがなものでしょう。

重要なテストの点がよければ人生が幸せになるという、(言わば瞬発的な)「点数至上主義」、糖尿病的に言い換えれば「血糖『最高値』値至上主義」、アメリカンっぽく表現すればQOLではなくPBSL(Points of Blood Sugar Level)でしょうか。(無理があるか(^_^;))

わたし個体的には、血糖の最高瞬間「点」ではなく、血糖「面」こそが大切であると考えるに至りました。
http://1042police.blog116.fc2.com/blog-entry-42.html

2008/09/12(Fri) 23:11 | URL | 糖質ポリス | 【編集
耐糖能と低糖質食
糖質ポリスさん。

コメントありがとうございます。
私は糖尿病専門医ではありませんが、日本糖尿病学会には所属しています。

<「血糖の最高点を上げないこと」を目指し、その為に、例えば「耐糖能」試験の前にある程度の糖質をとれば「耐糖能試験の成績が上がる」ことを根拠>
この点に関しても、そう主張する論文と関係無しとする論文があります。

60年以上前にロンドン大学病院のヒムスワースがそういう論文をだしたのですが、
その後1960年にウィルカーソンらの「低糖質食が耐糖能に与える影響を再検討して、糖質の摂取量を1日50グラムに制限しても耐糖能には大きな影響を及ぼさない」という論文がNew England Journal of Medicineという権威ある医学誌に掲載されました。
結論の異なる二つの論文がありますのではっきりしませんね。
2008/09/13(Sat) 07:17 | URL | 江部康二 | 【編集
re: 耐糖能と低糖質食
日本糖尿病学会に所属されていらっしゃったのですね。(^_^;)

糖尿病とは、耐糖能に異常をきたした状態であると思うのですが、その状態の体にさらなる負荷をかけることによって、筋肉トレーニングのように耐糖能を鍛えられるという考えには違和感を感じています。

専門家の論文が二分されているぐらいですから、我々素人がどう感じるかは、さらに人それぞれでしょう。
それぞれが、それぞれに納得できることをやるだけですね。
2008/09/13(Sat) 10:55 | URL | 糖質ポリス | 【編集
セイブルと肝機能
以前、太りたい、と相談したことのあるものです。スーパー制限+ナッツ、フルーツでもまだBMIは15ですが。。。

私は、今年1月に検診で食後血糖200、4月の精査のOGTTで1H 230、2H 200で糖尿と診断をうけ、セイブル内服を開始しました。最初の1ヶ月は、食後血糖も120から150くらいでしたが、徐々に180、220となったときに先生のブロクに出会い、スーパー糖質制限開始、セイブルを中止しました。(主治医には内緒で。。。)
ちょうど5月から7月までの2ヶ月間、カロリー制限食とセイブル内服をしたことになります。その直後7月にうけた検診結果が先日でましたが、GOT 57、 GPT 107、γーGPT 206 と、正常値から半年で急激に上昇あり、急いで違う病院で再検査を受けました。糖質制限開始とセイブル中止から、2ヶ月たっていますが、γーGTPは90とまだ高めですが、後は正常値へ、これまた一気に下がっていました。先生いわく、おそらくセイブルのせいでしょう、とのことでした。あのまま糖質制限を知らず、カロリー制限とセイブルを続けていたら、と思うと、ちょっと怖くなりました。ほっ。。。
ちなみに、空腹時血糖 60、HbA1c 4.8、インスリン精密(これが何かよくわかりません) 1.6 でした。でも、今でも玄米食パンを半分食べただけで、食後血糖は160まで上がってしまいます。。。

その先生に、糖質制限のことを話したところ、体重増加が困難なので少しは炭水化物をとって、どうしても血糖があがるなら、内服もしたほうがいいとは思うが、とりあえずは血糖と体重を見ながら続けてみたらいいと思う、とのことでした。私はもちろん今後も続けていくつもりです。

そこで、ご質問させていただきたいのですが、今まで私は炭水化物を避けにくい食事のときだけ、セイブルを内服していました。しかし、セイブルで肝機能障害となると、もちろん今後は飲みません。セイブルは、ベイスンなどと違って排泄されずに吸収されるから、との説明をうけました。その作用の違い、そして食後高血糖をおさえる効果の差はあるのか、ということについてお聞かせいただければと思います。
それによっては、別の薬の使用も相談しようかと思っています。

2008/09/13(Sat) 12:59 | URL | あき | 【編集
No title
こんばんは。
私の場合、父が糖尿病なので子供のころから危機感を持っていて、糖質多めで脂肪を極力避けるカロリー制限を何年も行ってきました。その結果が妊娠糖尿病です。
なので、糖質をたっぷり摂るやり方はどうかなー?と個人的に思います。
江部先生の本の通り忠実にスーパー糖質制限食を行うようにしてからすごく調子がいいです。
以前はどんなにカロリー制限して運動してもある程度以上は痩せなかった壁を、とうとう今朝は突破してしまいました。しかも全然しんどくないです。うれしいです。
2008/09/14(Sun) 20:43 | URL |  | 【編集
No title
糖質制限食始めた今年春に、痩せ過ぎる・・と相談したエイプリルです。
今年2月のHbA1cが6.2だったのが少しずつ改善。(5月5.7、6月5.6・・)でも多くの方の体験談に見るような劇的な改善はありませんでした。
もともと痩せ型でインスリン抵抗性に問題はなかったので、ここらで下げ止まり??と思ってました。
土曜日に2ヶ月ぶりの検査の結果は自分でもビックリの5.1!!4%台も夢じゃない!!
最近モチベーションが下がって、食事は糖質制限だけど運動サボリ気味だったんですけど、また俄然やる気がでてきました。
江部先生、本当にありがとうございます。Amazonで糖尿病関係の本を検索して先生の本を見つけたとき「なにこれ、胡散臭~!」と思ったことを告白しザンゲします。
先生のブログやたくさんのDMの方のブログを励みにしながら、これからもがんばります!!


2008/09/15(Mon) 10:32 | URL | エイプリル | 【編集
相互リンクをして頂けませんか?
はじめまして!
私は「メタボリックになって知るその恐怖と完全克服マニュアル」という
サイトを作った太郎と申します。


糖質制限食は糖質たっぷりのカロリー制限食より良さそうなのが
この記事を見てわかりました。
「糖質たっぷり」というのは、ちょっと魅力なのですが
何より身体が大事ですから、見習いたいと思います。


ところで私のサイトと相互リンクをしていただけませんでしょうか。


こちらからは、既に相互リンクを完了しています。
http://uooo.info/2008/08/post.html

もし差し支えなければ、リンクを貼っていただけないでしょうか。

【私のサイト】
メタボリックになって知るその恐怖と完全克服マニュアル
http://uooo.info/

ご迷惑であれば無視していただいても構いません。


よろしくお願いいたします。
2008/09/15(Mon) 12:10 | URL | 太郎 | 【編集
冬のレシピ
エイプリルさん。

5.1%達成、おめでとうございます。 (^_^)

本のご購入もありがとうございました。

秋のレシピに続いて冬のレシピもだしますのでよろしくお願い申し上げます。
2008/09/15(Mon) 12:53 | URL | 江部康二 | 【編集
セイブル
あきさん。

2008年8月4日のブログ「グルコバイ、ベイスン、セイブルと糖質制限食」
をご参照いただけば幸いです。

グルコバイ、ベイスン、セイブルいずれもまれではありますが、
肝機能障害の副作用があります。

空腹時血糖 60、HbA1c 4.8
素晴らしいデータですね。

インスリンは血糖値を下げるホルモンで、膵臓から分泌されます。
2008/09/15(Mon) 13:58 | URL | 江部康二 | 【編集
特許屋さん
特許屋さん。
コメントありがとうございます。

データ的には「機能性低血糖症」なのですね。
機能性低血糖症では糖質摂取による血糖値上昇に対して、追加インスリンが過剰に分泌されて、しばらく後に低血糖になります。
従って糖質制限食を実践されれば血糖値の上昇もなく、インスリンの過剰分泌も無くなるので低血糖も起こらなくなりますよ。 (^_^)

甘味料に関しては、ラカントSやパルスイートなら血糖値を上昇させません。
また糖質制限ドットコムhttp://www.toushitsuseigen.com/
のスイーツなら血糖値を上昇させません。

「糖質制限食 秋のレシピ」に載っている
カメダダイエット
「0kcal DESSERT シャーベット」
「10kcal DESSERT フルーツゼリー」
も血糖値を上昇させません。
2008/09/18(Thu) 18:32 | URL | 江部康二 | 【編集
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