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インフルエンザワクチンの考察。
こんばんは。 
今日は9月12日(土)で、江部診療所で午前中は外来診療でした。
2~3人の患者さんに「今年のインフルエンザワクチンは、いつから接種できますか?」と聞かれました。
 9月9日(水)の夜診でも、同様の質問を受けました。
8月下旬に、厚生労働省が高齢者や子どもなど優先度が高い人たちに対して、
早めにインフルエンザワクチンを接種するよう呼びかける方針を示したことの影響と思われます。

 また、今年の冬はインフルエンザと新型コロナウイルス感染症が同時に流行する可能性があるため、
インフルエンザワクチンを早めに接種したいと思う患者さんもおられるようです。
ワクチン接種後、抵抗力がつく まで2週間かかるとされ、効果が持続する期間は約5か月間ですので、
10月初めに接種すれば、翌2021年の3月初めまではカバーできます。
江部診療所では、例年より1ヶ月早く、10月初めくらいから接種開始を考えています。

さて、インフルエンザワクチンを接種したことがある人も
接種したことがない人もいると思います。
是非、知っておいて欲しいことは、
インフルエンザワクチンは万能ではないということです

すなわち感染防御力は基本的になくて、
重症化を防ぐことが期待されるていどの効能
です。
ワクチンを打っている人も打っていない人も、
手洗い、うがい、マスクがインフルエンザ予防の基本ですね。
特に、手洗いが思った以上に有効です。
ドアノブや電車のつり革など様々なものに触れることにより、 
自分の手にもウイルスが付着している可能性があります。
外出先から帰宅時や調理の前後、食事前などこまめに手を洗いましょう。
咳やくしゃみで飛んだ飛沫が服についても、数時間で感染力を失うとされています。
外出から帰宅したら着替えすることも予防に役立ちます。

以下の青字は、厚生労働省サイトの記載です。
インフルエンザの予防にはみんなの「かからない」、
「うつさない」という気持ちが大切です。
手洗いでインフルエンザを予防して、かかったら、
マスク等せきエチケットも忘れないでください。
インフルエンザにかかった人は、
必ずマスクをして他人にうつさないように配慮が必要です



<インフルエンザワクチンの有効性>

インフルエンザワクチンは、A型にもB型にも対応しています。
しかし、実は現行のインフルエンザワクチンには、
水際で感染をシャットアウトするような効果はありません。
感染した後、重症化を防ぐ効果が期待されるという程度なので、過信するのは禁物です。

理論的に考えても、ワクチンを接種することにより
IgG抗体が血液・体液中に産生されますが、
粘膜面を防御しているIgA抗体は全くできません。
従って、インフルエンザウィルスが、
咽や鼻の粘膜を突破して細胞内に侵入した後(感染が成立した後)、
はじめてIgG抗体が駆けつけて戦うことになります。
欧米では、鼻への噴霧ワクチンで、粘膜面のIgA抗体をつくる試みもされていますが
あまり上手くいっていません。
IgA抗体を充分量増やす技術が難しいようです。

下記の青字は国立感染研究所のホームページからの抜粋です。

【7.インフルエンザワクチンの問題点
(2)「現行ワクチンの感染防御効果や発症阻止効果は完全ではありませんので、
ワクチン接種を受けてもインフルエンザに罹患する場合があり、
この場合には患者はウイルスを外部に排泄し、感染源となります。
従って、集団接種を行っても社会全体のインフルエンザ流行を
完全に阻止することは難しいと考えられます。」

(6)「現行のインフルエンザワクチンは皮下接種されています。
しかし、不活化ワクチンの皮下接種では、
インフルエンザウイルスの感染防御に中心的役割を果たすと考えられる
気道の粘膜免疫や、
回復過程に重要であると考えられる細胞性免疫がほとんど誘導されません。
これは、インフルエンザウイルスの感染そのものを防御すると言う面では
大きな短所であると考えられています。
しかし、この様な欠点を持ちながらも、先に述べたように、
ハイリスク群に対する現行インフルエンザワクチンの効果は明らかに認められています。
また、ワクチンの皮下接種でも血中の抗体産生は十分に刺激できるので、
インフルエンザに続発する肺炎などの合併症や
最近問題となっているインフルエンザ脳炎・脳症の発生を抑えることには
期待出来ると考えられています。」】



<集団感染>

 東京・練馬区の特別養護老人ホームで、
入所者49人が年末から年始(2017/2018)にかけて相次いでインフルエンザに感染していることがわかりました。
このうち、症状が重かった6人が医療機関に入院したということですが、
現在は回復しているということです。
 前橋市は2017年12月28日、
同市内の病院の入院棟にいた入院患者26人と職員4人の計30人がインフルエンザに集団感染し、このうち80代の女性が死亡したと発表しました。
これらの集団感染において、ほとんどの人はインフルエンザワクチンを接種していました。
このように、感染防御にはワクチンは、
実際にまったく無力だったことが明らかとなりました。

そもそもインフルエンザワクチンは
「感染防御はできないが、重症化を防ぐ」ということが効能です。
感染を防ぐためには、「手洗い、うがい、マスク」が必須です。


<誤解>

ところが、相変わらず多くの患者さんや医師が、ワクチンを接種していれば、
水際で感染防御できると誤解しておられるのです。
私は、過去10年間以上、友人の医師などに、
感染防御はできないと口を酸っぱくして言い続けてきたのですが、
皆なかなか信じてもらえませんでした。
どこかで誤った情報が流され続けていたのでしょうね。
ここ数年、新聞などでもやっと、
「感染防御はできないが、重症化を防ぐ」という真実が報道されるようになりました。
逆に言えば、過去10年以上、
あたかも感染防御できるような内容の報道に終始していたわけで、
そのことに関して自己批判も反省もないのは如何なものでしょう。

インフルエンザワクチン注射を希望する患者さんがこられたら、
私はこのことを説明して、
「手洗いやうがい、人混みを避けるなど、基本的なことが感染防御には大事なので、
ワクチンを接種したからといって油断しないでくださいね。」

と付け加えます。

<必要性>
別に私は、ワクチンが無意味といっているのではありません。
65歳以上の高齢者、呼吸器系や循環器系に慢性疾患を持つ患者、
糖尿病、腎臓病などの慢性疾患の患者、免疫低下状態の患者などでは、
インフルエンザに罹患し重症化すれば、肺炎などの重篤な合併症になり、
生命に危険が及ぶこともありますから必要だと思います。
若い人でも、受験生などは重症化したら困りますから、
接種する意味はありますね。

<感染防御>
①医療関係者は、インフルエンザ患者を診察するときはマスクをする。
 診察が終わったら必ず手洗いをし、使い捨て紙タオルでふく。
 マスクをはずしたときはうがいをする。
②急性の咳や熱がでている当事者はエチケットとして、マスクをする。
③満員電車の中など避けようがない密閉された場所にいくときはマスクをして乗る。
④人混みにでたあとは、手洗い・うがいを励行する。
⑤家族が一人インフルエンザに罹患したら、家の中でも当事者はマスクをする。
  その一人は、違う部屋で寝る。
⑥咳で飛沫が飛ぶのは約1mであるので当事者から距離を取る。
⑦鼻水や痰を封じ込めるためにティッシュを使用し、使用後のティッシュは、
 できればノンタッチごみ箱に廃棄すること

ブログ読者の皆さん、インフルエンザワクチンを接種している人も、
感染防御効果はないことをしっかり認識して、
上記①~⑦を励行してくださいね。

これが実行されていれば、上述のような院内感染が猛威をふるうことはなかったでしょう。

<終わりに>
インフルエンザワクチン接種に、賛成の人も反対の人もあると思います。
ブログ読者の皆さんには、
インフルエンザワクチンの真実を知ってもらいたくて記事にしました。

江部康二
コメント
コロナワクチンもかな
江部先生、私も土曜出勤でした。
お疲れ様でした。

私も、インフルエンザワクチンについて
周りに説明してきましたが、
変人扱いされます。
※会社の集団ワクチン断るの私だけ
※全てのワクチン否定していません
↑ここが特に理解されません

コロナワクチンも同様なんでしょうね。

江部先生は文章がお上手で、
発信力もあるので、頼もしく感じます。

江部先生の患者は、コロナでリスクが
高い人が多く、気を使っておられると
思います。社会全体では幸いにもエボラ
のように恐れなくてよさそうで安心して
います。

いつもブログ楽しみです(^∇^)
イナガキ
2020/09/13(Sun) 11:47 | URL | イナガキ | 【編集
岩田健太郎教授が語る
2017–18年の冬のアメリカのインフルエンザ・ワクチンの効果は36%でした

https://www.kk-bestsellers.com/articles/-/11289/
2020/09/13(Sun) 13:15 | URL | 中嶋一雄 | 【編集
Re: コロナワクチンもかな
イナガキ さん

粘膜にある、IgA抗体は、なかなかワクチンに成功した例はないようです。
インフルエンザワクチンもIgG抗体です。

新型コロナワクチンも、粘膜にあるIgA抗体は困難であり、できてもIgG抗体と思います。
従って、効果もインフルワクチンと似たようなもので多くは期待できないと思います。
2020/09/13(Sun) 18:45 | URL | ドクター江部 | 【編集
Re: 岩田健太郎教授が語る
中嶋一雄 先生

情報をありがとうございます。

岩田教授のご見解は
『インフルエンザ・ワクチンの効きって実は「ビミョー」なんです。』

とのことですが、結論的には一定有効ということですね。
2020/09/13(Sun) 22:07 | URL | ドクター江部 | 【編集
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