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「インスリン低値だけども早朝空腹時血糖値は正常」→良いことです。
こんにちは。

先月来られた糖尿病の新患さんですが、
ブドウ糖負荷試験の結果を持参されました。

・空腹時血糖値:88mg/dl  インスリン:2.8μU/mL(3~15)
・30分血糖値:154     インスリン:3.1
・60分血糖値:185    インスリン:36.9
・120分血糖値:146    インスリン:51.6


主治医は、「インスリンが出ていないのに血糖がそれほど高くない。インスリン分泌指数(⊿IRI/⊿BS)が0.00以下なんてあまり見かけない。不思議な結果だ」と言い、ブドウ糖負荷試験の再検査を指示されたそうです。
ジャヌビアと、たまに外食時にベイスンを服用しておられます。
糖質は昼少しのみでかなり頑張っているそうです。

1)⊿IRI/⊿BS:0.0045 であり、インスリン分泌指数は確かに低いですね。
2)HOMA-β:40.32 と正常で、インスリン追加分泌能第2相は大丈夫です。
3)HOMA-R:0.6と正常で、インスリン抵抗性の指標も大丈夫です。


75gブドウ糖負荷試験は、2時間血糖値が146mg/dlと境界型です。
インスリン基礎分泌がやや低めですが、
早朝空腹時血糖は正常なのでうまく折り合いがついていて、好ましいです。
従って、もう一回ブドウ糖負荷試験を実施する必要はないと思います。

基礎インスリンが低くて、早朝空腹時血糖が正常なのは、
基礎分泌インスリンが高めで早朝空腹時血糖が正常な状態より良いことなのです。
インスリンは血糖値が正常であれば、低ければ低いほど、身体には優しいのです。
基礎インスリンが低くて、早朝空腹時血糖が正常なのは、
糖質制限食の影響かもしれません。

インスリンには、24時間少量持続的に出ている基礎分泌と、
糖質を摂取したときに大量にでる追加分泌があります。

一般に、空腹時のIRI(インスリン)は、基礎分泌とインスリン抵抗性の評価に用います。
負荷後のIRI(インスリン)は、追加分泌の評価に用います。

追加分泌のインスリンには、即分泌される第1相と少し遅れて出る第2相があります。
正常人は、血糖値が上昇し始めたら即インスリンが追加分泌されます。
この第1相反応は、もともとプールされていたインスリンが5~10分間分泌されて、
糖質摂取時の急激な食後高血糖を防いでいます。
その後、膵臓のベータ細胞は、第2相反応と呼ばれる持続するインスリン分泌を行います。
糖尿人の場合は、第1相が欠落・不足していたり、
第2相も、不足・遷延したりすることが結構あるようです。

HOMA-βは、空腹時血糖値と空腹時インスリン値で計算するのですが、
経口血糖負荷試験時の2時間値のインスリン分泌量と、
よく相関することがわかっています。

インスリン分泌指数が低いので、
この方は、第1相がかなり低値で糖尿人のよくあるパターンと言えます。
一方HOMA-βが正常ということは、
インスリン追加分泌の第2相は正常にでていることになります。
罹病期間の長い糖尿人では、HOMA-βが基準値を下回ることが多いです。

それから、負荷後60分血糖値が180mg/dlを超えているので、
将来糖尿病を発症しやすいです。
現在は境界型ですが、糖質制限食で、将来の糖尿病発症を予防しましょう。

通常は、インスリン抵抗性があるとき、インスリンが多く出るようになります。
インスリン抵抗性はHOMA-IRで計算しますが、
空腹時のIRI(インスリン)が上限近い、
あるいはそれ以上あればそれだけでもインスリン抵抗性がある可能性が高いです。
空腹時のIRI(インスリン)の基準値は、施設にもよりますが3~15μU/mLくらいです。

この方は、HOMA-R:0.6と正常でインスリン抵抗性はなく、正常です。
そして少量のインスリンで空腹時血糖コントロールができており、
とても好ましい状態と言えます。
つまりインスリンの効きがいいので、少量のインスリンで事足りているわけです。
従って、空腹時血糖値に関しては全く問題ないと思います。

私は、農耕以前(穀物摂取なし)の人類の早朝空腹時のインスリン値は、
1.5~6.0μU/mlくらいが基準値ではなかったかと考えています。
つまり、空腹時IRI:10μU/mlなどは、基準値(3~15μU/ml)内ですが、
すでに肥満などによるインスリン抵抗性があるのではないかと思うのです。

ただ、インンスリンがないと、人は死亡します。
実際、1921年にインスリンが合成されるまでは、
1型糖尿病で内因性インスリンゼロの場合は平均余命は半年程度でした。

一方、インスリンは肥満ホルモンであり、過剰分泌では発癌性があり、
アルツハイマー病のリスクともなり、老化のリスクでもあります。
つまり、インスリンというホルモンは人体に絶対に必要なのですが、
血糖コントロールができている限りにおいて、
その分泌が少なければ少ないほど身体には優しいのです。
言い換えれば、インスリン分泌が少なくてすむ食生活を心がけていれば、
肥満、癌、アルツハイマー病、老化、動脈硬化などのリスクは減少するのです。

①インスリン分泌指数
インスリン追加分泌のうち初期追加分泌能はインスリン分泌指数で見る。
Insulinogenic index(⊿IRI/⊿BS)=(負荷後30分IRI値-負荷前IRI値)/ (負荷後30分血糖値-負荷前血糖値)
0.4以上は初期追加分泌能維持。2型ではほぼ0.3以下となります。

②HOMA-β
<HOMA-β=360×空腹時インスリン値(μU/mL)/空腹時血糖値(mg/dL)-63>
インスリン基礎分泌の指標の一つである。
肥満していない健常者のHOMA-βの基準値は、50~120くらいとのことです。

③HOMA-IR (インスリン抵抗性指標)
<HOMA-R=空腹時血糖値(mg/dL)×空腹時インスリン値(μU/mL)/405 >
1.6以下が正常、2.5以上は抵抗性あり。
空腹時血糖値140mg以下なら信頼度高い。
一方、空腹時血糖値141mg以上でも、HOMA-Rが高値であれば、
インスリン抵抗性が疑われます。

④Cペプチドインデックス
既にインスリン注射を打っている場合はCペプチドインデックスを用います。
CPI= <空腹時血中CPR値(ng/㎖)/空腹時血糖値(mg/㎗)> × 100
CPI>1.2 の場合、食事療法・運動療法を基本として
経口薬でコントロールが可能な状態です。
CPI<0.8の場合はインスリン療法が必要と言えます。

(☆)
参考
改訂第7版「糖尿病専門医研修ガイドブック」日本糖尿病学会編(診断と治療社)2017
134、135、136ページ

江部康二
コメント
インスリン基礎分泌!!
都内河北 鈴木です。

『インスリン基礎分泌』の知識は、現在通院のKО病院へ行ってから、
知りました!!

本日の文中の『血糖コントロールできている限りにおいて、
その分泌が少なければ少ないほど身体には優しいのです。』

結果私は、江部先生『糖質制限理論』実践で、
『生還、覚醒、再覚醒、』している現在があるのかと、考えます!!!

私の21年間の後半、2005年から7年間から現在も
「日本糖尿病学会」は、
学習が皆無なのは、日本国民の為にも、
名称に一大事かと考えます!!

何故なら私自身が、改善皆無で、殺されかけた患者が、
『生還、覚醒、再覚醒、』している結果が、証明しているからです!!!

<<本日記事内容も、重要な事で、再認識しておきます!!>>

江部先生には、『生還、覚醒、再覚醒、』している事に、感謝尽きません!!
ありがとうございます。
敬具


2020/09/06(Sun) 21:30 | URL | 都内河北 鈴木 | 【編集
はじめまして
糖質制限のお陰で血糖値が改善して本当に感謝してるので、一言お礼を言いたくて投稿しました。

今年1月に網膜症になり病院に行ったら、HbA1cが12.1、空腹時血糖値が245と、糖尿病が発覚しました。

身内に糖尿病の者が多いけど、「自分だけは大丈夫」と変な自信を持ってたのですごくショックを受け、江部先生の著書、ブログ、YouTubeで報道特集の動画などを見て、糖質制限を始めました。

1月中旬からスタンダード、2月中旬からはスーパー糖質制限を続けていますが、先月8月にはHbA1cが5.8、空腹時血糖値124となり、1月に糖尿病が発覚してから僅か7ヵ月間でかなり改善してきました。

網膜症の進行を抑える為にも今後もスーパー糖質制限を続けていくつもりです。

今後も先生の著書やブログを楽しみにしています。本当にありがとうございました!

2020/09/07(Mon) 01:34 | URL | 高野豆腐 | 【編集
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