2020年05月18日 (月)
こんにちは。
駐在君から、ランセットに発表された『新型コロナとBCG仮説』の論文
「新型コロナウィルスの影響を軽減するためBCGワクチン摂取が検討されている。」
の、全訳をコメントして頂きました。
ありがとうございます。
大変助かります。
本ブログ読者の皆さんと私にもおおいに役に立ちます。
ランセットでも新型コロナに対するBCG効果を取り上げてくれるとは
嬉しい限りです。
BCGワクチンは膀胱がんのルーチンに使用されていますので、
一定の効果はすでに証明されていると言えます。
免疫には、『自然免疫』と『獲得免疫』があります。
BCGは、インターロイキン-6を介して自然免疫を強化するといった効果を有し、
これを訓練免疫と呼びます。
BCGは、新型コロナだけでなく、
いろんな感染症の予防に役立つ可能性があるようです。
オランダとオーストラリアの無作為化対照試験(RCT)が現在進行中ですが、
この著者の、
『BCG-デンマーク株よりもBCG-東京株の方が好ましい可能性がある』というのは
なかなか鋭い指摘です。
また、駐在君がご指摘のように、
後半はWHOの見解に忖度してトーンが変わっています。
前半の著者自身の素直な見解のほうが好ましいです。
【20/05/17 駐在君
ネイチャーに続いて、ランセットにもBCG仮説の論文が発表されました。
興味深い内容なので全訳を下記します。
前半部と後半部でトーンが変わりますが、前半部は論文著者の見解、
後半部はWHOの見解に配慮した内容です。
オーストラリアやオランダの臨床試験は残念ながらデンマーク株のようです。
(WHOは西欧先進国のBCG摂取中止に関与してきた歴史があります。)
https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(20)31025-4/fulltext#back-bib9
「新型コロナウィルスの影響を軽減するためBCGワクチン摂取が検討されている。」
BCGワクチンは、結核に対する特異的な効果に加えて、
免疫系に対する有益な非特異的 (標的から外れた) 効果を有し、
他の広範囲の感染から防御する。
また膀胱がん治療のルーチンにも使用されている。
このことから、BCGのワクチン接種が、
医療従事者やその他の脆弱な人々を重症コロナウイルス病(COVID-19) から
保護する役割を果たす可能性があることが示唆されている。
またランダム化比較試験ではBCGワクチンの免疫調節特性が呼吸器感染症を予防できるという証拠を提供している。
死亡率の高いギニア ビサウでは、BCGデンマークにより、
主に肺炎および敗血症による死亡が少なかったことから、
全原因新生児死亡率が38%低下した(95% CI 17~54)。3
南アフリカでは、BCGデンマークにより青年の気道感染が73% (95% CI 39~88)減少した。
重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2型 (SARS-CoV-2) は
一本鎖プラスセンスRNAウイルスであり、
BCGワクチンはこの構造をもつ他のウイルスによる感染の重症度を
軽減することが対照試験で示されている。
例えば、BCGワクチンは、オランダの志願者5例において
黄熱病ワクチンウイルス血症を71% (95% CI 6~91)減少させ、
マウスを用いた2件の試験において
メンゴウイルス(脳心筋炎ウイルス)感染の重症度を顕著に減少させた。
BCGワクチンの有益なオフターゲット効果の根底にある機序の多くが
現在理解されている。
BCGワクチンおよび他のいくつかの生ワクチンは、
その後の感染に対する自然免疫応答を増強する
代謝的およびエピジェネティックな変化を誘導し、これを訓練免疫と呼ぶ。
したがって、BCGワクチンはSARS-COV-2への曝露後のウイルス血症を軽減し、
その結果COVID-19の重症度が低下し、回復が早まる可能性がある。
オランダとオーストラリアでは、BCG-デンマークが
医療従事者におけるCOVID-19の発現率と重症度を低下させるかどうか、
および、その影響を評価するための無作為化対照試験が
進行中である(NCT 04327206、NCT 04328441)。
しかしBCG-デンマークよりもBCG-東京の方が好ましい可能性がある。
これらの試験が完了するまでは、
ランダム化比較試験においてのみCOVID-19にBCGワクチンを使用する
というWHOの推奨を遵守することが非常に重要である主な理由が4つある。
第一に、BCGワクチンはすでに不足しており、無差別に使用することは、
高リスク地域の結核から子どもを守るために必要な供給を危うくする可能性がある。
第二に、BCGが有効であるかどうかは不明である。
日常的にBCG予防接種を受けている国では
COVID-19が少ないことを示唆する生態学的研究からの知見は、
それらが個人データではなく人口に基づいており、
交絡しやすいため、弱い証拠である。
また、小児期に数十年前に投与されたBCGワクチンが
現在のCOVID-19を改善する可能性は低い。
この理由の1つは、BCGワクチンの有益なオフターゲット効果が、
その後の別のワクチンの投与によって変化する可能性があることである。
第三に、BCGワクチンがCOVID-19に有効でない場合、
BCG接種は誤った安心感を生む可能性がある。
第四に、少数の重症患者ではBCGによる免疫のアップレギュレーションが
COVID-19を悪化させる可能性があるため、
ランダム化試験では慎重な安全性モニタリングが必要である。
BCGワクチンまたは訓練された免疫の別の誘導物質が、
疾患特異的ワクチンが開発される前に
ギャップを埋めるための非特異的な保護を提供する場合、
これはCOVID-19および将来のパンデミックへの対応における
重要なツールとなるであろう。
NCはBRACE試験 (NCT 04327206) の主研究者であり、
MGNはBCG‐CORONA試験 (NCT 04328441) の主研究者の1人である。
TAGはWHOの事務局長であり、ASは競合する利害関係はないと宣言している。】
江部康二
駐在君から、ランセットに発表された『新型コロナとBCG仮説』の論文
「新型コロナウィルスの影響を軽減するためBCGワクチン摂取が検討されている。」
の、全訳をコメントして頂きました。
ありがとうございます。
大変助かります。
本ブログ読者の皆さんと私にもおおいに役に立ちます。
ランセットでも新型コロナに対するBCG効果を取り上げてくれるとは
嬉しい限りです。
BCGワクチンは膀胱がんのルーチンに使用されていますので、
一定の効果はすでに証明されていると言えます。
免疫には、『自然免疫』と『獲得免疫』があります。
BCGは、インターロイキン-6を介して自然免疫を強化するといった効果を有し、
これを訓練免疫と呼びます。
BCGは、新型コロナだけでなく、
いろんな感染症の予防に役立つ可能性があるようです。
オランダとオーストラリアの無作為化対照試験(RCT)が現在進行中ですが、
この著者の、
『BCG-デンマーク株よりもBCG-東京株の方が好ましい可能性がある』というのは
なかなか鋭い指摘です。
また、駐在君がご指摘のように、
後半はWHOの見解に忖度してトーンが変わっています。
前半の著者自身の素直な見解のほうが好ましいです。
【20/05/17 駐在君
ネイチャーに続いて、ランセットにもBCG仮説の論文が発表されました。
興味深い内容なので全訳を下記します。
前半部と後半部でトーンが変わりますが、前半部は論文著者の見解、
後半部はWHOの見解に配慮した内容です。
オーストラリアやオランダの臨床試験は残念ながらデンマーク株のようです。
(WHOは西欧先進国のBCG摂取中止に関与してきた歴史があります。)
https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(20)31025-4/fulltext#back-bib9
「新型コロナウィルスの影響を軽減するためBCGワクチン摂取が検討されている。」
BCGワクチンは、結核に対する特異的な効果に加えて、
免疫系に対する有益な非特異的 (標的から外れた) 効果を有し、
他の広範囲の感染から防御する。
また膀胱がん治療のルーチンにも使用されている。
このことから、BCGのワクチン接種が、
医療従事者やその他の脆弱な人々を重症コロナウイルス病(COVID-19) から
保護する役割を果たす可能性があることが示唆されている。
またランダム化比較試験ではBCGワクチンの免疫調節特性が呼吸器感染症を予防できるという証拠を提供している。
死亡率の高いギニア ビサウでは、BCGデンマークにより、
主に肺炎および敗血症による死亡が少なかったことから、
全原因新生児死亡率が38%低下した(95% CI 17~54)。3
南アフリカでは、BCGデンマークにより青年の気道感染が73% (95% CI 39~88)減少した。
重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2型 (SARS-CoV-2) は
一本鎖プラスセンスRNAウイルスであり、
BCGワクチンはこの構造をもつ他のウイルスによる感染の重症度を
軽減することが対照試験で示されている。
例えば、BCGワクチンは、オランダの志願者5例において
黄熱病ワクチンウイルス血症を71% (95% CI 6~91)減少させ、
マウスを用いた2件の試験において
メンゴウイルス(脳心筋炎ウイルス)感染の重症度を顕著に減少させた。
BCGワクチンの有益なオフターゲット効果の根底にある機序の多くが
現在理解されている。
BCGワクチンおよび他のいくつかの生ワクチンは、
その後の感染に対する自然免疫応答を増強する
代謝的およびエピジェネティックな変化を誘導し、これを訓練免疫と呼ぶ。
したがって、BCGワクチンはSARS-COV-2への曝露後のウイルス血症を軽減し、
その結果COVID-19の重症度が低下し、回復が早まる可能性がある。
オランダとオーストラリアでは、BCG-デンマークが
医療従事者におけるCOVID-19の発現率と重症度を低下させるかどうか、
および、その影響を評価するための無作為化対照試験が
進行中である(NCT 04327206、NCT 04328441)。
しかしBCG-デンマークよりもBCG-東京の方が好ましい可能性がある。
これらの試験が完了するまでは、
ランダム化比較試験においてのみCOVID-19にBCGワクチンを使用する
というWHOの推奨を遵守することが非常に重要である主な理由が4つある。
第一に、BCGワクチンはすでに不足しており、無差別に使用することは、
高リスク地域の結核から子どもを守るために必要な供給を危うくする可能性がある。
第二に、BCGが有効であるかどうかは不明である。
日常的にBCG予防接種を受けている国では
COVID-19が少ないことを示唆する生態学的研究からの知見は、
それらが個人データではなく人口に基づいており、
交絡しやすいため、弱い証拠である。
また、小児期に数十年前に投与されたBCGワクチンが
現在のCOVID-19を改善する可能性は低い。
この理由の1つは、BCGワクチンの有益なオフターゲット効果が、
その後の別のワクチンの投与によって変化する可能性があることである。
第三に、BCGワクチンがCOVID-19に有効でない場合、
BCG接種は誤った安心感を生む可能性がある。
第四に、少数の重症患者ではBCGによる免疫のアップレギュレーションが
COVID-19を悪化させる可能性があるため、
ランダム化試験では慎重な安全性モニタリングが必要である。
BCGワクチンまたは訓練された免疫の別の誘導物質が、
疾患特異的ワクチンが開発される前に
ギャップを埋めるための非特異的な保護を提供する場合、
これはCOVID-19および将来のパンデミックへの対応における
重要なツールとなるであろう。
NCはBRACE試験 (NCT 04327206) の主研究者であり、
MGNはBCG‐CORONA試験 (NCT 04328441) の主研究者の1人である。
TAGはWHOの事務局長であり、ASは競合する利害関係はないと宣言している。】
江部康二
江部先生、こんばんは
昨日、NHKでこのような番組が放送されました。
新型コロナ、数千にものぼる論文を一人の医師や研究者が
読むのは難しいです。そこで、数多くの論文をAIを使って
分析する作業が始まっています。
IPS細胞で有名な山中伸弥さんも出演されておられます。
先生、お手隙でしたらご覧下さい。
NHKスペシャル「新型コロナウイルス ビッグデータで闘う」
https://youtu.be/_9vWciZc2I0
昨日、NHKでこのような番組が放送されました。
新型コロナ、数千にものぼる論文を一人の医師や研究者が
読むのは難しいです。そこで、数多くの論文をAIを使って
分析する作業が始まっています。
IPS細胞で有名な山中伸弥さんも出演されておられます。
先生、お手隙でしたらご覧下さい。
NHKスペシャル「新型コロナウイルス ビッグデータで闘う」
https://youtu.be/_9vWciZc2I0
BCG仮設は、エビデンスがあり信憑性があると思います❢シェア致します。
久堀 さん
視聴しました。
大変参考になりました。
視聴しました。
大変参考になりました。
2020/05/19(Tue) 11:59 | URL | ドクター江部 | 【編集】
久堀 さん
情報をありがとうございます。
情報をありがとうございます。
2020/05/19(Tue) 12:00 | URL | ドクター江部 | 【編集】
永持宏治 さん
「新型コロナとBCG仮説」
強い相関性があることは事実ですが、まだエビデンスにはなっていません。
オーストラリアやオランダの「無作為化試験」の結果により
論文報告されて、結果がでれば、エビデンスとなると思います。
「新型コロナとBCG仮説」
強い相関性があることは事実ですが、まだエビデンスにはなっていません。
オーストラリアやオランダの「無作為化試験」の結果により
論文報告されて、結果がでれば、エビデンスとなると思います。
2020/05/19(Tue) 12:04 | URL | ドクター江部 | 【編集】
ふと思ったのですが、先生は診察中マスクをされていますか?
私のかかりつけの医師は、コロナが深刻化する前はマスクをしていなかったと思うのです。
診療医の大多数がマスクなしだったような気がします。
WHOもマスクを推奨しないと言っていましたよね。
私のかかりつけの医師は、コロナが深刻化する前はマスクをしていなかったと思うのです。
診療医の大多数がマスクなしだったような気がします。
WHOもマスクを推奨しないと言っていましたよね。
2020/05/19(Tue) 13:43 | URL | yanosono | 【編集】
yanosono さん
①
ウィルス保有者がマスクを装着することによって、外部へのウィルスの漏れを防ぐことができます。
②
通常のマスクでは、ウィルスほど小さいと通過されるとされていますので、ウィルス感染予防効果は期待できません。
花粉くらい大きいと防ぐことができます。
一方、咳やくしゃみの飛沫を浴びて大量のウィルス感染というのは防ぐことができるので、一定の意味はあります。
感染時のウィルス量が、重症化に関係しています。
③
N95という医療用マスクは数分すると息苦しいくらいですが、それでも完璧にウィルスを防げるかどうか明確ではありません。
④
世の中には、無症状でウィルスを持っている人が、0.4~0.6~3%~6%くらいいるので、
新型コロナ流行の期間は、エチケットとしてマスクするのが良いと思います。
それで私も外出時はマスクをしています。
⑤
ご指摘通り、新型コロナ流行前は、私も多くの内科医師も、通常の外来ではマスクはしていませんでした。
☆
結論として、新型コロナ流行期間中は、マスクをするのが良いと、私は思います。
①
ウィルス保有者がマスクを装着することによって、外部へのウィルスの漏れを防ぐことができます。
②
通常のマスクでは、ウィルスほど小さいと通過されるとされていますので、ウィルス感染予防効果は期待できません。
花粉くらい大きいと防ぐことができます。
一方、咳やくしゃみの飛沫を浴びて大量のウィルス感染というのは防ぐことができるので、一定の意味はあります。
感染時のウィルス量が、重症化に関係しています。
③
N95という医療用マスクは数分すると息苦しいくらいですが、それでも完璧にウィルスを防げるかどうか明確ではありません。
④
世の中には、無症状でウィルスを持っている人が、0.4~0.6~3%~6%くらいいるので、
新型コロナ流行の期間は、エチケットとしてマスクするのが良いと思います。
それで私も外出時はマスクをしています。
⑤
ご指摘通り、新型コロナ流行前は、私も多くの内科医師も、通常の外来ではマスクはしていませんでした。
☆
結論として、新型コロナ流行期間中は、マスクをするのが良いと、私は思います。
2020/05/19(Tue) 14:36 | URL | ドクター江部 | 【編集】
都内河北 鈴木です。
マスクについて、yanosonoさんの質問への
江部先生の詳細返答には、納得します!!
江部先生『糖質制限理論』により、
『命救われ、生還、再覚醒、』していることもあり、
医学知識は他の「権威肩書ある医学知識者」より、
明確に信頼に当たるからです!!
江部先生には、『糖質制限理論』だけでなく、
健康改善への医学知識・説明には、感謝尽きません!!
ありがとうございます。
敬具
マスクについて、yanosonoさんの質問への
江部先生の詳細返答には、納得します!!
江部先生『糖質制限理論』により、
『命救われ、生還、再覚醒、』していることもあり、
医学知識は他の「権威肩書ある医学知識者」より、
明確に信頼に当たるからです!!
江部先生には、『糖質制限理論』だけでなく、
健康改善への医学知識・説明には、感謝尽きません!!
ありがとうございます。
敬具
2020/05/19(Tue) 15:56 | URL | 都内河北 鈴木 | 【編集】
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