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第55回欧州糖尿病学会。SGLT2 阻害薬とGLP-1受容体作動薬。
こんにちは。

第55回欧州糖尿病学会
European Association for the Study of Diabetes(EASD) - 55th Annual Meeting 2019

が、
2019年9月16日(月)〜20日(金)
Fira de Barcelona(スペイン、バロセロナ)
で、開催されました。

それに先立つ2019年8月31日、
欧州糖尿病学会(EASD)は欧州心臓病学会(ESC)と合同で、
新たな糖尿病治療ガイドラインを公表しました。

(2019ESC/EASDガイドライン:血糖降下薬の選択)
その特徴の一つは、新たな血統降下薬選択のアルゴリズムです。
前回ガイドライン公表の2013年以降に報告された
数多くの心血管系アウトカム試験(CVOT)の結果が反映されていて、
画期的な変化がありました。

結論から言えば、
長年第一選択剤であったメトホルミンの位置づけが大きく後退し、
代わってSGLT2 阻害薬とGLP-1受容体作動薬
心血管疾患既往または心血管高リスク例への使用が軒並み推奨されました。
いずれも推奨クラスIaですから、明確なエビデンスがもとになっています。

具体的には、心血管系(CV)疾患既往例、あるいは心血管系(CV)疾患の1次予防でも
高リスク群には、メトホルミンは推奨されなくなりました。
新ガイドラインでは、「心血管系(CV)疾患の1次予防あるいは中等度心血管系(CV)疾患リスクを有する過体重2型糖尿病」例にはメトホルミンが推奨されています。

つまり、一定以上のリスクがある症例には、
最初から、メトホルミンではなく、<SGLT2 阻害薬かGLP-1受容体作動薬>が推奨されるということです。
こうなると、私の見解では、
軽症例でも最初からメトホルミンではなくて、<SGLT2 阻害薬かGLP-1受容体作動薬>
を使いたいし、最近はそうしています。

「SGLT2 阻害薬内服で、尿が出すぎて困る」という方には
GLP-1受容体作動薬なら尿量に影響がないので切り替えます。

GLP-1受容体作動薬には
<ビクトーザ、ビュデリオン、バイエッタ、リキスミア、トルリシティ>
があります。全て皮下注射薬です。
1日1回、1日2回、週に1回の3パターンがありますが、
私は自分自身が面倒くさがりなので、もっぱら、週に1回の注射を処方してます。
SGLT2阻害薬には、
スーグラ、ルセフィ、アプルウェイ・デベルザ、カナグル、フォシーガ、ジャディアンス
があります。

現在、糖尿病薬として
①注射薬:GLP-1受容体作動薬 インスリン
②内服薬:SGLT2阻害薬、DPP-4阻害剤、メトホルミン、SU剤、グリニド系薬剤、αGI、ピオグリタゾン


があります。
注射薬なら、GLP-1受容体作動薬のほうが、インスリンより望ましいですし、
<GLP-1受容体作動薬+糖質制限食>で、インスリンがゼロになった症例も
複数例あります。
過剰のインスリンは「百害あって一利なし」なので、
<GLP-1受容体作動薬+糖質制限食>の活躍の場はおおいにあると思います。

グリニド系薬剤(グルファスト、スターシスなど)と
αGI(グルコバイ、アカルボース、ベイスン、ボグリボース、セイブルなど)は、
糖質セイゲニストにとっても、やむを得ない糖質摂取直前30秒に内服して
食後高血糖をあるていど予防するという役割があります。

SGLT2 阻害薬の効果には切れがありますが、
DPP-4阻害剤、メトホルミン、ピオグリタゾンの効果には切れがありません。
<SGLT2 阻害薬+糖質制限食>で、
劇的に早朝空腹時血糖値が改善することがあります。
ピオグリタゾンは体重増加、浮腫の副作用と男性への膀胱癌の懸念があり、
使いにくいです。
SU剤も食後高血糖を防がず、空腹時低血糖を誘発するリスクがあるので
私はほとんど使用しません。

このように考察してくると、欧州糖尿病学会推奨のように、
リスクがある症例には
「SGLT2 阻害薬かGLP-1受容体作動薬」
の使用が好ましいですし、
リスクが低い症例でも最初から
「SGLT2 阻害薬かGLP-1受容体作動薬」
の使用が良いと思います。

私は、今後は、心血管疾患のリスクが高くても高くなくても
糖質制限食単独で血糖コントロールが改善しない場合は
積極的に「SGLT2 阻害薬かGLP-1受容体作動薬」を処方しようと思います。




江部康二
コメント
糖尿病と顔面神経麻痺
江部先生、現在はステロイドを内服治療中です。
一週間前の月曜日に発症して、
目元の腫れと口元が凄く歪んでました。
目元の腫れはほぼなくなり、
口元は喋った時に少し歪んでいるぐらいにまで
良くなりました。
ステロイドは、点滴と内服液で大きな差はあるのでしょうか?
2020/02/24(Mon) 14:53 | URL | 久堀 | 【編集
Re: 糖尿病と顔面神経麻痺
久堀 さん

顔面神経麻痺、ステロイド内服外来治療で改善が無い時は、
入院してステロイド点滴治療が有効です。

点滴治療の場合は、内服より大量のステロイドを投与することが可能なので、有効性も高まるのです。
しかし、久堀さんの場合、すでに内服治療でかなり良くなっているので、
「入院点滴治療」の必要性はないと考えられます。

このまま外来内服治療で大丈夫と思います。
2020/02/24(Mon) 18:47 | URL | ドクター江部 | 【編集
江部先生、ご意見頂きありがとうございます。

明日、また病院に行き相談して来ます。
2020/02/24(Mon) 20:48 | URL | 久堀 | 【編集
糖質制限食と脂肪肝について
こんにちは。以前、質問させていただきましたカナダの食いしん坊です。
今回は、糖質制限食と脂肪肝について質問があります。
今年の1月の下旬に、血液検査をした所、初めて肝臓の数値が75U/L と出ました。
超音波検査をした結果、脂肪肝になっていました。
今まで4年間、糖質制限食を続けて、時々、糖質のある食事をすることもありますが、まさか自分が脂肪肝になるとは思いませんでした。
主治医に、コレステロールの薬を飲むことと食生活を見直しを勧められました。

ここ数ヶ月、朝食に、卵3−4個にたっぷりのバターと生クリームで作ったスクランブルエッグを食べていました。
昼は、サラダにマヨネーズベースのドレッシング、焼いた肉又は燻製の魚、チーズ。
おやつに、自家製の糖質オフケーキ。
飲酒は、週末のみ赤ワインを750mlボトル半分。
基本、食事は2食で、朝、昼。

5ヶ月前に、ランタスを5−14単位/日追加でとるようになりました。先生がお勧めされていたSGLT2阻害薬は、処方してもらえず、その代わりにランタスをとる事に(本当は嫌だったのですが)。

今年の1月の下旬に採血した時のコレステロール値です。
Triglyceride 0.84mmol/L
Cholesterol 5.27mmol/L
HDL Cholesterol 1.21mmol/L
Non HDL Cholesterol 4.06mmol/L
LDL Cholesterol 3.68mmol/L
Cholesterol/HDL CholesterolLipid Target Values 4.4

また、2月21日に再度血液検査をしました。以下はその時の肝臓の数値です。
Bilirubin Total 8umol/L
Alkaline Phosphatase 33U/L
Alanine Aminotransferase 55U/L
Aspartate Aminotransferase 29U/L

どうして脂肪肝になってしまったのでしょうか? 
また、今後、糖質制限食を続けていく上で、動物性脂肪を減らし、植物性脂肪に変え、バター、チーズや肉も控えた方が良いのでしょうか?
アドバイスお願い致します。
2020/02/25(Tue) 08:50 | URL | カナダの食いしん坊 | 【編集
先生のブログと著作に出会い命を救われた者です。感謝の気持ちを、このコメント内で書き記す事はとても出来ず、只々、感謝々と申し上げるに止まる事をお許し願います。
『2017年02月06日 (月)SGLT2阻害薬とケトン体。SGLT2阻害薬は薬物による糖質制限か?』の記事に触発され2017.5月より仙台・橋本医院長にご相談しSGLT2を服用、加療中です。「スーパー」で徹底的に糖質制限食事療法実施中なので、服用目的は暁現象の改善で、夕食時に服用しております。総ケトン体値⇒服用前2017.2.14「208」⇒服用後2017.4.14「1440」と劇的に高値となりました。2019.4.6「1230」・2019.10.11の値「4000」です。最近の早朝血糖値は「85〜132」と平均値は低下していますが、バラつきが有り一定しません。お酒は江部先生を「見習い」毎日純エタノール換算20g〜50gを欠かさずに「服用」しております(笑)でも肝機能は全て正常値です。SGLT2服用で糖新生が亢進?⇒総ケトン体値が上昇⇒各細胞の代謝促進⇒暁現象の改善と云う好循環状況にあるのか?⇔糖尿病は治るのか?糖質を摂取すれば単なる糖尿病人でしかないのか?疑問は霧散いたしません(-.-;)
2020/02/25(Tue) 18:13 | URL | 感謝感謝 | 【編集
Re: 糖質制限食と脂肪肝について
カナダの食いしん坊 さん

検査データが日本はmg/dlです。
各データの、基準値を教えて下さい。

脂肪肝はインスリン注射(ランタス)のせいと思います。
インスリンを中止してもらいましょう。

代わりに、SGLT2阻害薬又はGLP-1受容体作動薬(週一回皮下注射)を
使用しましょう。

以下のブログ記事を参考にして下さい。

第55回欧州糖尿病学会。SGLT2 阻害薬とGLP-1受容体作動薬。
2020年02月24日 (月)
http://koujiebe.blog95.fc2.com/blog-entry-5169.html
2020/02/25(Tue) 21:40 | URL | ドクター江部 | 【編集
Re: タイトルなし
感謝感謝 さん

糖尿病と診断された時点で、膵臓のβ細胞が2割くらいは壊れています。
この分は、基本的には治りません。

例えば、私は52歳糖尿病発症時に、β細胞は2~3割は壊れていたと思います。
スーパー糖質制限食で、70歳までHbA1cは5.6~5.8%ていどでコントロール良好を維持しています。
しかし、一旦壊れたβ細胞は治ることはないと思います。

つまり江部康二は、「糖質を食べたら糖尿人」「糖質制限なら正常人」ということですね。

感謝感謝さんも、血中ケトン体が高値で脂肪がよく燃えていて
早朝空腹時血糖値も85~132mg/dlなら、まず問題ないと思います。
2020/02/25(Tue) 21:50 | URL | ドクター江部 | 【編集
コレステロール 変換
To convert cholesterol levels:-
Cholesterol mg/dl = mmol/l x 38.6
Cholesterol mmol/l = mg/dl ÷ 38.6
To convert triglyceride levels:-
Triglyceride mg/dl = mmol/l x 88.5
Triglyceride mmol/l = mg/dl ÷ 88.5
Examples
Cholesterol 5 mmol/l = 193 mg/dl (ie 5 X 38.6)
Cholesterol 3 mmol/l = 116 mg/dl (ie 3 X 38.6)
Triglyceride 2mmol/l = 177mg/dl ( ie 2 X 88.5)
2020/02/26(Wed) 04:47 | URL | A | 【編集
Re: コレステロール 変換
A  さん

ありがとうございます。
助かります。
2020/02/26(Wed) 07:37 | URL | ドクター江部 | 【編集
お忙しい中、迅速な返答ありがとうございます。
こちらが、基準値となります。
Triglyceride <1.7 mmol/L
Cholesterol <5.2 mmol/L
HDL Cholesterol >0.9 mmol/L
LDL Cholesterol <3.5 mmol/L

主治医を説得する上で、どうしてインスリンが、脂肪肝の原因になるかを伝えなくてはなりません。
何か、研究結果などを見れるサイトはないでしょうか?
2020/02/26(Wed) 11:01 | URL | カナダの食いしん坊 | 【編集
Re: タイトルなし
カナダの食いしん坊 さん

基準値が
Triglyceride <1.7 mmol/L
Cholesterol <5.2 mmol/L
HDL Cholesterol >0.9 mmol/L
LDL Cholesterol <3.5 mmol/L

カナダの食いしん坊さんのデータが
Triglyceride 0.84mmol/L
Cholesterol 5.27mmol/L
HDL Cholesterol 1.21mmol/L
Non HDL Cholesterol 4.06mmol/L
LDL Cholesterol 3.68mmol/L
Cholesterol/HDL CholesterolLipid Target Values 4.4

中性脂肪が低いので好ましいです。
HDL-C多いのも好ましいです。
これならLDL-Cが軽度高値ですが、
全て、標準の大きさの善玉LDL-Cであり、問題無いです。

インスリンが肥満ホルモンであることは、有名です。
英語で<insurin obesiy><insulin obesity hypothesis>などで検索すれば
英語のサイトが沢山でてきます。
2020/02/26(Wed) 14:59 | URL | ドクター江部 | 【編集
ご多忙にも拘わらず、ご示唆を賜り恐縮至極。『糖尿病と診断された時点で、膵臓のβ細胞が2割くらいは壊れています。この分は、基本的には治りません』⇒膵臓は再生されない事を理解しました。げに糖尿病恐るべしと改めて痛感致しました。江部先生の著作とブログに出会ったお蔭で「ご飯や麺類は淡泊で体に良い。カロリーを制限
して健康に等々」の呪縛から解放され、β細胞喪失を最小限に止める事ができました。出会わなければ、今頃、透析を開始していたと思います。現に昨年、一旦濁った水晶体は如何ともしがたく人工レンズに交換しました。「網膜に過去に出血したような小さな跡はあるものの全体的に綺麗だ」と水晶体と網膜とのアンバランスを眼科医が不思議そうにしていました。もしも出会っていなければ典型的な合併症に蝕まれ、透析開始後、十年以内に鬼籍入りし、そこに至る地獄の苦しみを受けるところでした。全て江部先生、糖質制限食事療法のお蔭です。只々、感謝感謝と申し上げる事をお許し願います。
2020/02/26(Wed) 18:33 | URL | 感謝感謝 | 【編集
先生、ありがとうございます。
早速、検索してみます。
2020/02/27(Thu) 09:02 | URL | カナダの食いしん坊 | 【編集
Re: タイトルなし
感謝感謝 さん

『網膜と水晶体のギャップあり』

ともあれ、糖尿病網膜症は改善で良かったです。
2020/02/27(Thu) 14:33 | URL | ドクター江部 | 【編集
教えて下さい。
GLP-1作動薬をずっと使用していると自己のL細胞が萎縮して自分でGLP-1を出すことができなくなるのではないのですか?
2020/02/28(Fri) 13:16 | URL | なおちゃびん | 【編集
Re: 教えて下さい。
なおちゃびん さん

<2019ESC/EASDガイドライン:血糖降下薬の選択>

ヨーロッパ糖尿病学会と心臓病学会の合同ガイドラインにおいて
長年第一選択剤であったメトホルミンの位置づけが大きく後退し、
代わってSGLT2 阻害薬とGLP-1受容体作動薬の
心血管疾患既往または心血管高リスク例への使用が軒並み推奨されました。
いずれも推奨クラスIaですから、明確なエビデンスがもとになっています。

すなわち、GLP-1作動薬に関しても、長期的な大規模研究におけるエビデンスをもとに
第一選択剤に推奨していますので、
なおちゃびんさんの心配は杞憂と思います。

2020/02/28(Fri) 17:29 | URL | ドクター江部 | 【編集
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