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「医療従事者対象糖質制限食セミナー in 大阪」のご報告。

こんばんは。

2020年2月9日(日)
日本糖質制限医療推進協会主催 
医療従事者対象糖質制限食セミナー in 大阪

を、
開催致しました。
約50名の参加者で、活発な議論が交わされ、
とても有意義なセミナーとなりました。
医師17名をはじめ、歯科医師、管理栄養士、看護師、薬剤師、整体師、針灸師などの
医療従事者の方々に、ご参加頂きました。



第1部
高雄病院の橋本眞由美 管理栄養士による講義で、
高雄病院の糖質制限食と栄養指導について、症例も交えてお話ししました。

第2部
江部康二による講義で、糖質制限食指導に必要な生理学的基礎理論や最新の知識、
高雄病院での臨床例について解説しました。
<GLP-1受容体作動薬(1/週、皮下注)+糖質制限食>
にて持効型インスリン20単位を中止できた症例も発表しました。
また、SGLT2阻害薬内服による著効例も報告しました。


2018年の米国糖尿病学会(ADA)/欧州糖尿病学会(EASD)の合同レポートにおいて、
第一選択薬のメトホルミンに次いで使用されるべき薬剤は、
ほぼSGLT2阻害薬かGLP-1受容体作動薬かの二択とされました。
この2種類の薬剤の位置づけがとても重要となってきたわけです。

第3部
発表・討議で、4名の医師と2名の管理栄養士の方にご発表いただき、
ディスカッションを行いました。
糖質制限な多彩な症例に基づき、活発な議論が行われました。

以下は、第3部の抄録です。


『職場での「食後血糖測定」「糖質制限ランチ会」』
トータルヘルス株式会社(福岡) 代表取締役 林田耕治 医師(産業医)


弊社は14社と嘱託産業医契約があり、産業医2人保健師3人のスタッフで約3,500人の労働者の健康管理を行っています。健康診断後の保健指導が主たる業務ですが、肥満・高血糖・高血圧・肝障害・高中性脂肪血症といった所見のある方々に「糖質制限」を指導しています。
糖尿病対策を進めるために始めたのが①食後血糖測定と②糖質制限ランチ会です。
①食後血糖測定は、空腹時血糖100以上またはHbA1c6.0以上の人を対象にして、会社で「いつも食べているお昼ごはん」を食べた後に、食後の血糖値を測定して、食後高血糖が発生していないかどうかをみて、糖質制限指導に繋げています。
②糖質制限ランチ会は、食後血糖の高かった人を対象にして、会社で「糖質の少ない食事」を実際に食べてもらい、食後血糖を測定して、糖質をとらなければ血糖値が上がらないことを体験してもらいます。
食後血糖測定と糖質制限ランチ会の実際についてご紹介いたします。


林田先生、段階を踏んで、糖質制限食のスムースな導入を可能にしておられ、
とてもリーズナブルと思いました。
これなら、職場に徐々に糖質制限食が浸透していき、
糖尿病やメタボがメキメキと改善していくことでしょう。


『糖質制限と薬理学的糖質制限により治療中の18例についての検討』
うずまさ診療所、クリニックこまつ、萱島生野病院(京都、大阪) 内科 影山広行 医師


 私自身のアンチエイジングにはスーパー糖質制限を取り入れていますが、諸般の事情から糖尿病患者の治療には緩やかな糖質制限と筋力強化を指導しつつ、必要に応じて、SGLT2阻害剤、α-GI、メトホルミンを中心とする薬物治療を加えて治療しています。私の造語の薬理学的糖質制限とは前述の糖尿病治療薬を中心とする薬物治療を意味しており、体内環境はさらに高度な糖質制限に近づくと推察され、薬物治療が必要な糖尿病患者はほとんどこの方法で治療しています。今回は、糖質制限指導のみ、薬理学的糖質制限を加えたものは以前のSU剤の使用の有無で治療効果を検討しました。ドロップアウトはおらず、全例で治療効果は良好ですが、SU剤が使用されていた群では体重減少は著明ながら、HbA1cの降下はやや不十分でした。薬理学的糖質制限が加わることで、糖質制限に体を慣らすアシスト作用があるという印象をもっています。最後に、糖質制限と相性のよい糖尿病治療薬や糖質制限の好適応について考察しつつ、糖質制限食を修正し、さらなる最適化の可能性についても提案させていただきます。


影山先生は、なかなか『スーパー糖質制限食』を実践するのが困難な患者さんに
対して、薬物療法を導入しての「アシスト糖質制限食」を指導されています。
現実に、このタイプの患者さんが結構おられるので、
とても実践的なアプローチであり、18例中、脱落者はなしとのことでした。

『糖尿病患者よ、糖尿病専門医より逃げよ(そのインスリン、本当に必要ですか?)』
たかはし整形外科医院(香川) 髙橋裕彦 医師


2017年より、インスリン治療をやめて、糖質制限を指導し、コントロールできた症例が30例になりました。そのほとんどの例が糖尿病専門医のもとでコントロールされている症例であり、漫然とインスリン治療を行なっている患者がほとんどである。インスリン治療では食後高血糖が予防できないことをCGM(フリースタイルリブレプロ)で示し、患者に提示し、糖質制限との差を実感してもらい、治療を開始した。
ほとんどの患者で糖質制限当日より、血糖値のフラット化がみられ、良好なコントロールを示した。ただし、CGMも約300例経験し、トラブルの原因もはっきりしてきたので、それも含めて報告する。2型糖尿病でインスリン治療を行なっている患者の9割は中止できると思われるので、合併症が出現する前に1日も早く糖尿病専門医のもとから逃げることが賢明と思われた。


高橋先生は、おそらく香川県で一番多く、CGM(フリースタイルリブレプロ)を使用されている医師です。<GLP-1受容体作動薬(1/週、皮下注)+糖質制限食>で、3年間で30人の糖尿病患者さんのインスリンゼロを達成しておられます。素晴らしい成果であり、
相変わらず『従来の糖尿病食(カロリー制限高糖質食)』を唯一の食事療法として指導している多くの糖尿病専門医には、到底不可能な実績と言えます。



『整形外科的疾患及び内科的疾患に対する、3165例の肥満外来の実践(糖質割合33%)』
発表者 医)中村整形外科リハビリクリニック(兵庫)
管理栄養士  河嶋智子、土橋美香、成田温子
理学療法士  増田兼也(他3名)
整形外科医師 中村巧


【背景】 第一次健康日本21(2001~12)で日本内科学会のメタボリックシンドローム(代謝症候群)、2007年から日本整形外科学会のロコモティブシンドローム(運動器症候群)、2014年から日本老年医学会からフレイルが追加され、2020年から全国規模でフレイル健診が始まる。メタボ・ロコモ・フレイルは、寿命の延伸、高齢者のQOLの維持増進、医療費の低減を図る、高齢化社会日本で最も重要な三大症候群といえる。メタボ・ロコモ・フレイルに健康的な減量が必要である。ロコモの主な原因である変形性脊椎症・腰部脊柱管狭窄症・腰椎椎間板ヘルニア、変形性膝・股関節症患者に多い量的肥満に関しては、減量は重要視されているが整形外科の臨床現場では全くアプローチされていない。

【目的】当院では糖質制限食(糖質33%)による栄養指導、油圧式マシーンによる筋トレや有酸素運動による運動療法や理学療法により徹底した減量を実行しており、ロコモが改善される場合が多い。これらの症例を提示し、整形外科領域におけるロコモ患者に対する糖質制限食と運動療法による減量治療の有効性を報告する。

【方法】 当院では約20年間に3165例の肥満外来を行った。発症時の体重・BMI(平均値)、評価表(日本整形外科学会腰痛治療成績判定基準・股関節治療成績機能判定基準・変形性膝関節症治療成績判定基準、以下は判定基準)による点数(平均値)を治療前後でそれぞれ比較した。①脊椎疾患59例、②変形性膝関節症97例、③変形性股関節29例の計185例である。1)体重・体組成の計測、エコー検査で皮下脂肪厚や内臓脂肪厚、脂肪肝の程度を測定。2)1日2回測定し、グラフ化体重日記を習慣にする。3)毎月1回個別で管理栄養士と医師の両者がアドバイスを行う。また、マズローの五段階欲求により明確な短期・中期・長期目標を初期に行う。

【結果】 減量により判定基準による点数(減量前→減量後)は、脊椎疾患59例は18.8/29点→25.9/29点と約70%、変形性股関節29例は63.9/100点→82.7/100点と約52%、変形性膝関節症97例は78.3/100点→94/100点と約72%良好に改善した。現在通院している患者の内、疾病別服薬の減薬および中止した患者は、高血圧症患者219人中18人、脂質異常症患者138人中27人、糖尿病患者71人中12人であった。

【結論】 整形外科領域ではロコモティブシンドロームの認知度の向上とともに、より積極的に運動指導がされる傾向にある。しかし、「減量」に関して、整形外科的には重要視はされているものの、臨床現場では全くアプローチされていないのが現状である。整形外科領域でも減量指導を戦略的に取り入れることが肝要である。高齢者の多剤併用が大きな問題となりつつある(polypharmacy)。整形外科的疾患患者に対する糖質制限食と運動による戦略的な減量を広めていきたい。

20年間で3165例の肥満患者を診察し治療した、極めて貴重な臨床報告です。
河嶋管理栄養士、成田管理栄養士にご報告頂きました。
①脊椎疾患59例、②変形性膝関節症97例、③変形性股関節に対して、
医師と管理栄養士のアドバイス、マズローの五段階欲求による目標設定を通じて
『糖質制限食』と『運動療法』の実践で大きな成果を達成されています。
高血圧患者、脂質異常症患者、糖尿病患者にも成果をあげておられます。



『劇症型潰瘍性大腸炎に対する補助療法としての糖質制限輸液、食による寛解導入、維持の経験』
西部総合病院(埼玉) 外科 村上博史 医師


【諸言】
劇症型潰瘍性大腸炎に対し、標準治療に加え糖質制限輸液、食事により寛解導入、維持、ステロイド離脱を達成した2例を経験した。

【症例】
症例1:男性。血性下痢、腹痛にて12月24日入院。
血圧103/77mmHg、脈拍101/min。排便18回。体温38.6度。
CF像等より劇症型潰瘍性大腸炎と診断。
プレドニゾロン(以下Prd)80mg静注開始。症状改善に合わせ漸減、1月12日Prd 30mgで食事開始。1月27日経口Prd 20mgで退院。3月29日Prd離脱。
輸液、摂食の糖質カロリー比(以下CTR)は、内視鏡診断後0輸液。点滴、経口併用時30、経口単独時は43から18に減量。
退院後の食事写真から栄養士が推測した1日の平均総カロリー量(TC)は1472kcal、CTR15.9。

症例2:女性。2月14日血性下痢、腹痛にて入院。
血圧81/60mmHg、脈拍182/min、排便17回。体温38.1度。
CF像等より劇症型と診断。
Prd60mgの静注を開始。症状改善に合わせ漸減、3月9日Prd20mg、排便1回にて食事開始。3月16日大量下血。Prd依存性と診断。Prd30mgに増量。3月20日抗TNF-α剤(以下Ifx)250mg導入。下血消失し経口Prd15mgで3月28日退院。8月28日Prd離脱。
輸液、摂食のCTRは3月1日より輸液単独時7.1。経口点滴併用時30.3。点滴終了後は48.8。
退院後の1日の平均TCは1441kcal、CTRは12.1。

【考察】
体内で余剰となった炭水化物がタンパク質と結合し糖化され、終末糖化物質になると活性酸素が生成され炎症性サイトカインを発現させる。重症例に対するIfxは炎症性サイトカインTNF-αに対する分子標的薬であり、通常の糖中心の輸液は理に合わない。
倫理上、どの程度の輸液CTRを落としどころにするかの検討が必要。糖質制限食は管理部門も含めた協力が必要で、慎重な対応を要する。

【結語】
潰瘍性大腸炎に対する治療法は選択肢が増えたが、いずれもが免疫抑制系治療であり、免疫抑制を伴わない糖質制限治療の症例の蓄積、評価が期待される。


村上先生には、潰瘍性大腸炎という難病の中で劇症型という最重症タイプの治療報告をして頂きました。
極めて貴重な臨床価値の高い発表と言えます。終末糖化産物(AGEs)により、
活性酸素が生成されて、炎症性サイトカイン(TNF-α)を発現させるということで、
現状医療のブドウ糖中心の点滴に対して問題提起しておられます。入院治療で症状改善したあとは、
2例とも、退院して糖質制限食実践で、プレドニンの減量・離脱に成功しておられます。
糖質制限食が潰瘍性大腸炎に有効であることは私も経験しています。
今後は、糖質制限な点滴(脂肪製剤やアミノ酸製剤)も含めて
潰瘍性大腸炎と糖質制限食の評価・検討例が蓄積していけばと思います。



江部康二
コメント
糖質制限・高血圧?
江部先生こんばんは。
今更ながら、先生のご著書「江部先生、糖質制限は危ないって本当ですか?」を購入いたしました。明日には届くのでより知識を深めたいと思います。

今回実家の母の事でご意見を伺いたいと思います。
74になりますが、「健康でいなくちゃいけない」と
肉や卵や脂を避ける生活、魚中心、玄米ご飯や蕎麦の実の入ったご飯を一生懸命食べています。今更この食生活を変えるのは不可能と思いますが、20年近く前から突然の血圧上昇で半日から1日寝込んでしまう、というのを度々繰り返しています。
いわゆる高血圧症ではないようで、降圧剤を処方されているわけでもなし。
何かのきっかけで180くらいまで上がってしまって起きていられなくなり、そのうち下がりますがそれを度々繰り返します。血圧が元に戻ればケロっとしています。
何かわからないこの症状、糖質制限で改善する可能性はありますか??
何でもかんでも糖質が原因だとも言えないかとは思いますが…

ちなみに母は20年程前からリピトールを服用しています。それが関係しているかいないかも分かりません。

健康でいなくては…と、色々気を使っているようではありますが、会うたびに衰えていてとても元気だとは思えません。
糖質制限で改善するような症状に当てはまりますか?
主治医には糖質制限のお話をしても相手にされません。

2020/02/10(Mon) 21:41 | URL | ゆり | 【編集
Re: 糖質制限・高血圧?
ゆりさん

突然の血圧上昇というのがよくわかりませんが、20年続いていて
主治医もご存じで、経過を見ておられるのでしょうか。

御母上、
「肉や卵や脂を避ける生活、魚中心、玄米ご飯や蕎麦の実の入ったご飯を一生懸命食べています。」

近年は、厚生労働省も、高齢者ほど、<肉や魚>を積極的に食べて、筋力低下を予防することを提唱しています。
まずは、夜だけでも、糖質なしで魚や肉や卵や油脂もしっかり摂取して「プチ糖質制限食」で始められてたらどうでしょう。

日本でも
昭和30年代までは高血圧による脳卒中が死亡原因の第一位でした。。
昭和40年(1965)頃から米の摂取量が減少し、高度経済成長により、社会が裕福になり
肉や牛乳・乳製品が急速に増えて脂肪摂取増加しました。
昭和55(1980)年頃までこの傾向が続いて、以降は不変です。
この間、脳卒中による死亡率が急速に減り始め、昭和55年には半減し、その後も減少しました。
2020/02/11(Tue) 08:21 | URL | ドクター江部 | 【編集
先生、ご返信ありがとうございます。
そうです、突然の血圧上昇→その後すぐもとにもどる… 長いこと経過観察になっております。特に原因も分からず、です。

先生の仰るよう、まずは軽い糖質制限をそれとなく勧めてみようかと!なかなか、お肉の脂や卵は良くない、という洗脳?が解けないみいですが…

野菜はもちろん肉や魚、卵もしっかり食べて元気になってくれればそれで解決なんです。

ありがとうございました。
母には先生のブログも是非みてもらいたいです。
2020/02/11(Tue) 11:51 | URL | ゆり | 【編集
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