2019年12月18日 (水)
おはようございます。
2019年10月17日
日本糖尿病学会が、3年ぶりに「糖尿病診療ガイドライン 2019」を刊行しました。
このガイドラインに対して、
東京女子医科大学の馬場園哲也教授が解説を しておられます。
以下の緑の文字のサイトで見ることができます。
東京女子医科大学糖尿病センターhttp://twmu-diabetes.jp/network/diabetes-news-no173.php
DIABETES NEWS No.173
2019 November/December
この馬場園教授の解説に、私が糖質制限食の立場からのお話を付け加えてみました。
東京女子医科大学 内科学(第三)講座
(糖尿病・代謝内科)教授・講座主任
馬場園哲也
日本糖尿病学会はこのたび「糖尿病診療ガイドライン 2019」(以下 JDS2019)を刊行しました。
3年ぶりの改訂となる今回の主な変更点について述べたいと思います。
◆「標準体重」から「目標体重」へ
第3章食事療法のQ3-3「総エネルギー摂取量をどのように定めるか?」は、最も注目すべき改訂といえます。
総エネルギー摂取量を設定する際の体重について、前回までのガイドラインでは、
body mass index (BMI, kg/m2)が22となる標準体重を用いていました。
JDS2019では標準体重という言葉が目標体重と言い換えられ、
65歳未満ではこれまで通りBMI22、65歳以上ではBMI22~25と幅を持たせています。
日本人における最近のエネルギー消費量調査、日本人糖尿病患者におけるBMIと総死亡率、
さらには高齢者におけるフレイル予防などが考慮された結果といえます。
江部:この、標準体重から目標体重への変化は、良いことと思います。
65歳以上の高齢者では、痩せのほうが総死亡率を上昇させるので、BMI22~25は、それなりにリーズナブルです。
一方、ニューイングランド・ジャーナルの論文では、アジア人はBMI:23~27が、総死亡率が一番低いとされています。
1)世界ガン研究基金の報告(2007)では、ガン予防にはBMI:20~25未満 が目標。
2)ランセットの論文では欧米人はBMI:22.5~25 が総死亡率が一番低い。(*)
3)ニューイングランド・ジャーナルの論文では、アジア人はBMI:23~27 が総死亡率が一番低い。(**)
(*)
Prospective Studies Collaboration
PSC, Whitlock G, et al. Lancet 2009; 373: 1083-96
(**)
Zheng W, et al.N Engl J Med. 2011 Feb 24;364(8):719-29.
Association between body-mass index and risk of death in more than 1 million Asians.
◆炭水化物の摂取量
低炭水化物食の議論は続いており、その有効性と安全性についてはいまだエビデンスが不十分といえます。
Q3-5「炭水化物の摂取量は糖尿病の管理にどう影響するか」に対するステートメントは、
「炭水化物摂取量と糖尿病の発症リスク、糖尿病の管理状態との関連性は確認されていない」と、
前回とほぼ同様の記載となっています。
江部:結局、糖質制限食に関しては今まで通りですね。
米国糖尿病学会が、2013年10月、「栄養療法に関する声明」において
糖質制限食を、地中海食、ベジタリアン食、脂肪制限食、高血圧食と共に、容認し、
2019年4月、コンセンサスレポートで、糖質制限食がエビデンスが最も多いと明言したのとは、おおきな違いがあります。
①血糖に直接影響を与えるのは糖質だけで、蛋白質・脂質は与えない。
②食後高血糖と平均血糖変動幅増大が糖尿病合併症の元凶である。
③糖質を50~60%摂取する日本の糖尿病食では、食後高血糖と平均血糖変動幅を予防することは、理論的に困難である。
ガイドラインには、①②③という極めて重要な生理学的事実やエビデンスの解説が欠落しているのは残念です。
◆血糖降下薬の選択
昨年アメリカ糖尿病学会(ADA)とヨーロッパ糖尿病学会(EASD)が発表したコンセンサスガイドラインでは、
メトホルミンを第一選択薬とすることが踏襲され、
加えて最近のエビデンスに基づいて各糖尿病薬間の差別化を図ったアルゴリズムが示されました。
(DIABETES NEWS No.167「ADAとEASDからの2型糖尿病患者の高血糖管理に関するコンセンサスレポート」参照)。
また本年9月には、ヨーロッパ心臓病学会(ESC)とEASDの共同によるガイドラインが改訂され、
心血管病の既往があるかそのリスクが高い患者では、
メトホルミンではなく初めからSGLT2阻害薬かGLP-1受容体作動薬を使用することが推奨されています。
JDS2019では、Q5-2「血糖降下薬の選択はどのように行うか?」に対して
「薬物の選択は、それぞれの薬物作用の特性や副作用を考慮に入れながら、
各患者の病態に応じて行う」というステートメントが返され、
第一選択薬を特に指定しない従来の考え方が踏襲されました。
その理由として、日本人と欧米人では2型糖尿病の病態やライフスタイルが異なることなどが挙げられています。
江部:日本人においても、 SGLT2阻害薬とGLP-1受容体作動薬が、血糖コントロールに有効で、他剤とは明白に差があります。
従って、心血管病の既往があるかそのリスクが高い患者だけでなく、食事療法だけでコントロール良好が達成できていない全ての糖尿病患者に、SGLT2阻害薬とGLP-1受容体作動薬が第一選択剤と思われます。
◆糖尿病(性)腎症
2018年に日本腎臓学会が刊行した「エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン 2018」で提唱された糖尿病性腎臓病(DKD)という概念は、その定義や糖尿病性腎症との違いが不明確であることから混乱が生じています(馬場園哲也:DITN No.480,2018)。
JDS2019ではこれまで同様、糖尿病性腎症という疾患名が引き続き用いられました。
今後両学会の意見調整が必要です。
江部:日本では糖尿病腎症に、低蛋白食が推奨されています。
米国糖尿病学会は、2013年10月の「食事療法に関する声明2013」で、エビデンスがないので糖尿病腎症に低蛋白食は推奨しないと明言していて、
2019年4月のコンセンサス・レポートにおいても、同様の見解でした。
従って、高雄病院では、糖尿病腎症の患者さんに対しても糖質制限食(高蛋白食)を推奨しています。血糖コントロールを良好にすることが腎症悪化予防に有効と考えられるからです。勿論患者さんによく説明して毎月検査をしながら実施します。
2019年10月17日
日本糖尿病学会が、3年ぶりに「糖尿病診療ガイドライン 2019」を刊行しました。
このガイドラインに対して、
東京女子医科大学の馬場園哲也教授が解説を しておられます。
以下の緑の文字のサイトで見ることができます。
東京女子医科大学糖尿病センターhttp://twmu-diabetes.jp/network/diabetes-news-no173.php
DIABETES NEWS No.173
2019 November/December
この馬場園教授の解説に、私が糖質制限食の立場からのお話を付け加えてみました。
東京女子医科大学 内科学(第三)講座
(糖尿病・代謝内科)教授・講座主任
馬場園哲也
日本糖尿病学会はこのたび「糖尿病診療ガイドライン 2019」(以下 JDS2019)を刊行しました。
3年ぶりの改訂となる今回の主な変更点について述べたいと思います。
◆「標準体重」から「目標体重」へ
第3章食事療法のQ3-3「総エネルギー摂取量をどのように定めるか?」は、最も注目すべき改訂といえます。
総エネルギー摂取量を設定する際の体重について、前回までのガイドラインでは、
body mass index (BMI, kg/m2)が22となる標準体重を用いていました。
JDS2019では標準体重という言葉が目標体重と言い換えられ、
65歳未満ではこれまで通りBMI22、65歳以上ではBMI22~25と幅を持たせています。
日本人における最近のエネルギー消費量調査、日本人糖尿病患者におけるBMIと総死亡率、
さらには高齢者におけるフレイル予防などが考慮された結果といえます。
江部:この、標準体重から目標体重への変化は、良いことと思います。
65歳以上の高齢者では、痩せのほうが総死亡率を上昇させるので、BMI22~25は、それなりにリーズナブルです。
一方、ニューイングランド・ジャーナルの論文では、アジア人はBMI:23~27が、総死亡率が一番低いとされています。
1)世界ガン研究基金の報告(2007)では、ガン予防にはBMI:20~25未満 が目標。
2)ランセットの論文では欧米人はBMI:22.5~25 が総死亡率が一番低い。(*)
3)ニューイングランド・ジャーナルの論文では、アジア人はBMI:23~27 が総死亡率が一番低い。(**)
(*)
Prospective Studies Collaboration
PSC, Whitlock G, et al. Lancet 2009; 373: 1083-96
(**)
Zheng W, et al.N Engl J Med. 2011 Feb 24;364(8):719-29.
Association between body-mass index and risk of death in more than 1 million Asians.
◆炭水化物の摂取量
低炭水化物食の議論は続いており、その有効性と安全性についてはいまだエビデンスが不十分といえます。
Q3-5「炭水化物の摂取量は糖尿病の管理にどう影響するか」に対するステートメントは、
「炭水化物摂取量と糖尿病の発症リスク、糖尿病の管理状態との関連性は確認されていない」と、
前回とほぼ同様の記載となっています。
江部:結局、糖質制限食に関しては今まで通りですね。
米国糖尿病学会が、2013年10月、「栄養療法に関する声明」において
糖質制限食を、地中海食、ベジタリアン食、脂肪制限食、高血圧食と共に、容認し、
2019年4月、コンセンサスレポートで、糖質制限食がエビデンスが最も多いと明言したのとは、おおきな違いがあります。
①血糖に直接影響を与えるのは糖質だけで、蛋白質・脂質は与えない。
②食後高血糖と平均血糖変動幅増大が糖尿病合併症の元凶である。
③糖質を50~60%摂取する日本の糖尿病食では、食後高血糖と平均血糖変動幅を予防することは、理論的に困難である。
ガイドラインには、①②③という極めて重要な生理学的事実やエビデンスの解説が欠落しているのは残念です。
◆血糖降下薬の選択
昨年アメリカ糖尿病学会(ADA)とヨーロッパ糖尿病学会(EASD)が発表したコンセンサスガイドラインでは、
メトホルミンを第一選択薬とすることが踏襲され、
加えて最近のエビデンスに基づいて各糖尿病薬間の差別化を図ったアルゴリズムが示されました。
(DIABETES NEWS No.167「ADAとEASDからの2型糖尿病患者の高血糖管理に関するコンセンサスレポート」参照)。
また本年9月には、ヨーロッパ心臓病学会(ESC)とEASDの共同によるガイドラインが改訂され、
心血管病の既往があるかそのリスクが高い患者では、
メトホルミンではなく初めからSGLT2阻害薬かGLP-1受容体作動薬を使用することが推奨されています。
JDS2019では、Q5-2「血糖降下薬の選択はどのように行うか?」に対して
「薬物の選択は、それぞれの薬物作用の特性や副作用を考慮に入れながら、
各患者の病態に応じて行う」というステートメントが返され、
第一選択薬を特に指定しない従来の考え方が踏襲されました。
その理由として、日本人と欧米人では2型糖尿病の病態やライフスタイルが異なることなどが挙げられています。
江部:日本人においても、 SGLT2阻害薬とGLP-1受容体作動薬が、血糖コントロールに有効で、他剤とは明白に差があります。
従って、心血管病の既往があるかそのリスクが高い患者だけでなく、食事療法だけでコントロール良好が達成できていない全ての糖尿病患者に、SGLT2阻害薬とGLP-1受容体作動薬が第一選択剤と思われます。
◆糖尿病(性)腎症
2018年に日本腎臓学会が刊行した「エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン 2018」で提唱された糖尿病性腎臓病(DKD)という概念は、その定義や糖尿病性腎症との違いが不明確であることから混乱が生じています(馬場園哲也:DITN No.480,2018)。
JDS2019ではこれまで同様、糖尿病性腎症という疾患名が引き続き用いられました。
今後両学会の意見調整が必要です。
江部:日本では糖尿病腎症に、低蛋白食が推奨されています。
米国糖尿病学会は、2013年10月の「食事療法に関する声明2013」で、エビデンスがないので糖尿病腎症に低蛋白食は推奨しないと明言していて、
2019年4月のコンセンサス・レポートにおいても、同様の見解でした。
従って、高雄病院では、糖尿病腎症の患者さんに対しても糖質制限食(高蛋白食)を推奨しています。血糖コントロールを良好にすることが腎症悪化予防に有効と考えられるからです。勿論患者さんによく説明して毎月検査をしながら実施します。
江部先生いつもいつも有益な情報ありがとうございます。おかげさまで安心して糖質制限を続けることが出来ます。その結果健康と無駄の無い体型を維持出来ています、過去辛いダイエットで何度も失敗しましたが本来の普通の食事=糖質制限でなんの苦労も無く本当に先生には感謝です。反対派の人には長期的エビデンスが無いという人も居ますがそれ以外にもう反論の余地が無いのでしょうね、今後も短期的な健康を積み重ねて糖質制限派の人たちの健康状態で糖質制限が本当に正しかったことが証明されると思います。最近電子タバコ吸ってる人をよく見かけますがこれこそ長期的エビデンスが有るのでしょうか?これを認めてる国のやってる(言ってる)事なんて全てを信用なんて出来ません権力もった学会も同じようなものです。自分を守るのは自分、今後も自分で判断して糖質制限続けて行きたいと思ってます。
2019/12/18(Wed) 15:32 | URL | しょーじ | 【編集】
都内河北 鈴木です。
本日記事を読んでも、
依然進化皆無の「日本医療界」の専門組織「日本糖尿病学会」!!
私は江部先生「糖質制限理論」理解把握、実践で、「生還、覚醒、再覚醒、」している9年目現在には、自身の「改善医療デ~タ」提示しても都内S区区役所の対応と同等レベルの進化皆無の「日本糖尿病学会の知識程度」が、
改善皆無だなと、
不思議・満載だなと思えてならないです!!!
私は江部先生「糖質制限理論」で、
「生還、覚醒、再覚醒、」でき、改善継続してます事に感謝尽きません!!
ありがとうございます・
敬具
本日記事を読んでも、
依然進化皆無の「日本医療界」の専門組織「日本糖尿病学会」!!
私は江部先生「糖質制限理論」理解把握、実践で、「生還、覚醒、再覚醒、」している9年目現在には、自身の「改善医療デ~タ」提示しても都内S区区役所の対応と同等レベルの進化皆無の「日本糖尿病学会の知識程度」が、
改善皆無だなと、
不思議・満載だなと思えてならないです!!!
私は江部先生「糖質制限理論」で、
「生還、覚醒、再覚醒、」でき、改善継続してます事に感謝尽きません!!
ありがとうございます・
敬具
2019/12/18(Wed) 19:29 | URL | 都内河北 鈴木 | 【編集】
失礼致します。
昔から健康診断のたびに、不整脈(不完全右脚ブロック)でひっかかります。たまに心臓がキューっとなる症状があります。
糖質制限を4年程していて、やめて低たんぱく質になってから、健康診断で不整脈でひっかかることはなくなりました。
今でも、時々、糖質制限を試すのですが、そうすると必ず不整脈(心臓がキューっとなる症状)が出ます。
何度か試しているので、間違いはないと思っていますが、高たんぱく食(糖質制限)と不整脈とは因果関係があるものなんでしょうか?
昔から健康診断のたびに、不整脈(不完全右脚ブロック)でひっかかります。たまに心臓がキューっとなる症状があります。
糖質制限を4年程していて、やめて低たんぱく質になってから、健康診断で不整脈でひっかかることはなくなりました。
今でも、時々、糖質制限を試すのですが、そうすると必ず不整脈(心臓がキューっとなる症状)が出ます。
何度か試しているので、間違いはないと思っていますが、高たんぱく食(糖質制限)と不整脈とは因果関係があるものなんでしょうか?
2019/12/19(Thu) 08:16 | URL | 太郎 | 【編集】
太郎 さん
そのような症状は、初めて聞きました。
通常は、高たんぱく食(糖質制限)と不整脈とは因果関係があるとは考えられません。
たまたまの偶然なのか、
太郎さんは、糖質制限食が合わないまれな体質なのかもしれませんね。
そのような症状は、初めて聞きました。
通常は、高たんぱく食(糖質制限)と不整脈とは因果関係があるとは考えられません。
たまたまの偶然なのか、
太郎さんは、糖質制限食が合わないまれな体質なのかもしれませんね。
2019/12/19(Thu) 17:58 | URL | ドクター江部 | 【編集】
| ホーム |