FC2ブログ
スーパー糖質制限食とケトン食の違い、それぞれの役割
こんにちは。
西村典彦さんから、「スーパー糖質制限食」「ケトン食」について
コメント・質問を頂きましたので、考察してみます。

【19/12/09 西村 典彦
糖質制限の基本的な理解
いつもお世話になっております。

初心に帰って基本的な質問です。
江部先生の糖質制限メソッドでは、スーパー、スタンダード、プチと
糖質量に合わせて3段階ありますが、
改めて「食品別糖質量ハンドブック」を見ますと、
まず、それぞれのPFC比率が記載(P10)されています。

そこで改めて基本的な質問ですが、

(1)3段階の糖質量は、
 どのような意味があるのでしょうか(特にスーパー糖質制限について)。
  食後血糖値を上げないと言う意味であれば、
 上がらないのであればもう少し多くても効果は同じなのでしょうか。
  ※総カロリーは厚労省の指針に従ったとします。

(2)例えば、糖質量的にはスーパーであってもPFC比率は、それぞれだと思いますが、
 PFC比率も糖質制限の効果に関して影響があるのでしょうか。

今回は、ごく基本的な質問ですが、耐糖能が改善傾向にあり、
今後、どのような方法(微調整)をとるのが良いか模索しています。】



西村 典彦 さん

(1)
スーパー糖質制限食では、1回の食事の糖質量を20g以下を目指します。
これは、糖尿病患者さんでも、過半数において、
食後の血糖値が160~180mg/dlを超えないようにという意図で設定しています。

言い換えれば、境界型やごく軽症の糖尿病なら、
1回の食事の糖質量を30~40gとしても
食後血糖値が160~180mg/dlを超えないならば、許容できるということです。

糖尿病ではなくて、ダイエット目的なら、
例えば、スーパー糖質制限食で、5kg減量して目標達成なので
その後はプチで体重をキープするといったパターンが考えられます。

(2)
ケトン食(Fが87%、PとCで13%)
スーパー糖質制限食(P32%、F56%、C12%)

です。
ケトン食は治療食です。
スーパー糖質制限食は治療食兼健康食です。
以下をご参照頂けば幸いです。

ケトン食とスーパー糖質制限食、違いは?
2018年02月01日 (木)
http://koujiebe.blog95.fc2.com/blog-entry-4466.html


【19/12/09 西村 典彦
Re: Re: 糖質制限の基本的な理解
回答ありがとうございます。

ケトン食は治療食、スーパー糖質制限食は治療食兼健康食との事ですが、治療食とは健康の一部を犠牲にして又は短期間だけ、治療のための栄養が偏った食事であると認識していますが、ケトン食を続けると健康に対してどのような弊害があるのでしょうか。】


西村 典彦 さん

古典的ケトン食は、元々、
「小児難治性てんかん」に対する治療食でした。
てんかん治療のための内服薬が、効果がないとき、
ケトン食が導入されて、かなりの効果をあげてきました。

ケトン食療法には、低血糖、嘔気・嘔吐、便秘・下痢、体重減少、
活動性低下などが副作用として生じる場合があります。
てんかん情報センター
http://epilepsy-info.jp/question/faq7-3/


一定の副作用はあり得ますが、
「GLUT1欠損症」においては、ケトン食が唯一の治療法です。
脳細胞の糖受容体は、GLUT1ですが、
その働きが良くない場合は、脳はブドウ糖をエネルギー源として
上手く利用できないので、失神、てんかん発作、発育不全などを生じます。
しかし、ケトン食なら脳はケトン体をエネルギー源とするので
普通に発育・成長が可能です。

ケトン食は、
メイヨークリニック(米国)のワイルダー博士によって1921年に作られました。
世界的に権威のある治療ガイドラインの
COCHRANE LIBRARY(コクランライブラリー)10年版と、
NICE(英国国立医療技術評価機構)が発行するガイドライン11年版で、
ケトン食療法は難治性小児てんかんの治療法に採用されています。
また日本でも2016年4月、難治性てんかん患者を対象に保険適用になりました。


<スーパー糖質制限食とケトン食の違い、それぞれの役割>

 スーパー糖質制限食とケトン食の違い、役割を考えてみます。

<スーパー糖質制限食>
スーパー糖質制限食とは、三食とも主食なしのおかずばかりという食事です。
スーパー糖質制限食は、糖尿病やメタボなど
さまざまな生活習慣病の予防と治療に効果があります。
高雄病院給食メニューの平均値では、
スーパー糖質制限食は糖質12%、脂質56%、タンパク質32%の割合です。

 糖質制限で糖質摂取が相対的に減少すると、
脂肪の分解が進んで肝臓がケトン体を作り、血液や尿の中に放出します。
高雄病院のスーパー糖質制限食を食べると、
総ケトン体の数値が400~1200~2000μmol/Lほどになる人が多いようです。
総ケトン体の基準値は26~122μmol/L です。

 私自身も、いつも同じような食事(スーパー糖質制限食)をしているつもりなのですが、
総ケトン体値は、200~1200まで結構ばらつきます。
ココナッツオイルやMCTオイルなど中鎖脂肪酸を摂取すると
ケトン体は上昇しやすくなります。
またケトン体の日内変動もあるようです。
ケトン食レベルの食事では、ケトン体数値は確実に上昇します。

<ケトン食>
 ケトン食は、本来は難治性てんかんの子供に用いられている治療食で、
究極の糖質制限食です。
米やパンなど炭水化物をできるだけ食べず、
砂糖の代わりに人工甘味料を使い、
卵、豆腐、肉、魚主体の食事に食用油を添加します。
そして「脂肪:非脂肪(たんぱく質+糖質)」の値を、
3:1~4:1に保つことを目標とします。

 古典的ケトン食は「脂肪:非脂肪(たんぱく質+糖質)」を表すケトン比が3:1です。
例えば、2歳くらいで930kcal/日なら、
「脂質90gに対し、非脂肪(たんぱく質+糖質)は30g」の割合です。
脂肪810kcal、非脂肪120kcalなので、脂質摂取比率は約87%と高い値です。

 ケトン食を実践すると、血中総ケトン体は4000~5000μmol/Lレベル、
基準値の40~50倍になりますが、インスリン作用が保たれていれば、
ケトアシドーシスにはならず、基本、安全です。

<ケトン食とスーパー糖質制限食の違い>
一言でいうと、ケトン食は「治療食」、スーパー糖質制限食は「治療食兼健康食」です。
 ケトン食で血中総ケトン体が4000~5000μM/Lの高い値になると、
尿中ケトン体も常に陽性になります。
つまり、体内で利用しきれない血中ケトン体が尿中に出続けるということです。
ここまで高濃度のケトン体値は、人類の祖先もあまり経験したことがないので、
余剰の血中ケトン体が、尿中に排泄されるわけです。

 スーパー糖質制限食の場合、当初は尿中ケトン体は陽性ですが、
1~3カ月ほどで陰性になります。
血中総ケトン体は400~1200~2000μM/Lほどで、
心筋や骨格筋、体細胞がしっかりケトン体を利用し、
腎臓の再吸収効率も良くなるので、尿中に排泄されなくなります。
血中ケトン体がすべて体内で利用されるのです。

 高雄病院の給食の平均値では、スーパー糖質制限食の脂質摂取比率は56%、
たんぱく質は32%、糖質は12%です。
雑食である現世人類<ホモ・サピエンス>が狩猟・採集時代に食べていたものを
目安にした糖尿病の治療食
で、
その本質は人類本来の食事、人類の健康食と言うことができます。
すなわち、糖尿病や肥満以外にも、ほとんどの生活習慣病に有効です。
このことを思えば、
実は<糖質の頻回過剰摂取とそれに伴うインスリンの頻回過剰分泌>が生活習慣病の元凶と思われます。

 これに対し、ケトン食はあくまでも治療食であり、人類本来の食事ではありません。
ケトン食は、糖質制限を徹底させたもので、
スーパー糖質制限食よりさらに、糖質摂取は少なくなります。
嘔吐(おうと)、下痢、便秘など副作用も報告されています。
安全に行うにはケトン食に詳しい医師や栄養士の指導が必要です。

<結論>
(1)ケトン食は「治療食」
(2)スーパー糖質制限食は「治療食」かつ「人類の健康食」です。


江部康二
コメント
低血糖について
こんにちは。
妊娠糖尿病から境界線型糖尿病になってしまい、そのことで質問させていただきたした。その際は、丁寧なお答えをいただき、ありがとうございました。
今は、朝ごはんに玄米50gとおかずを食べ、昼、夜はご飯なしでおから蒸しパンとおかず、小腹がすいたら低糖質の手作りおやつ、ナッツ、チーズなどを食べています。
今朝、朝食前に久しぶり(ようやく測定器を購入したので、、、)に血糖値を測ってみたら55でした。食後2時間後は69でした。
授乳していることで血糖値が下がり、それが低血糖に関わっているのでしょうか?今朝も今も低血糖の症状はないのですが、思い返してみれば、時々頭痛があります。それは、寝不足なのか低血糖の症状なのか、、、。
低血糖になると、自律神経が血糖値をあげようとするとネットでみました。
しっかりと計算してご飯を食べているわけではないのですが、おかずは砂糖の代りにラカンカットを使い、小麦粉や片栗粉は使わずに料理しているのでほとんど糖質はとっていないと思います。
また、おから蒸しパンを1日2回食べるので、たまごを3個は食べています。その他にお肉、魚、大豆(おからパウダーで大さじ3)を食べているのでタンパク質やコレステロールのとりすぎではないかと心配になります。
授乳していますが、身長159㎝に対して、体重が50.5から51キロの間をいったりきたりなので、カロリーとしては取りすぎでも少なすぎでもないと思います。授乳をやめたら、食べる量は減らさないといけないと思いますが、、、。
このままの食生活でよいのか、それとももう少し炭水化物を食べた方が良いのか教えていただけると嬉しいです。
また、境界型でなくなっていたとしても将来のことを考えたら今のような糖質制限をしていくつもりですが、それを知る方法は75gttをするしかないのでしょうか?
お時間のある時に教えていただけると嬉しいです。どうぞ宜しくお願いします。
2019/12/11(Wed) 08:17 | URL | のん | 【編集
年に数日の多くの糖質摂取のリスクについて
江部先生

今年3月の検査にて糖尿病が発覚しました。
すぐ軽い糖質制限を始め徐々に糖質量を減らし、6月からはスーパー糖質制限を実施した結果、
3月8.8%だったHbA1cが6月には5.9%、7月以降は5.3±0.2%で安定しております。
その他の肝機能数値や脂質異常についても目覚ましい改善がありました。

日々糖質制限生活を送るにあたり、疑問があるため、もしよろしければ考えをお聞かせいただけますと幸いです。

Q. 糖尿人の場合、年に数日程度の多くの糖質摂取(1食100g、1日300g程度)のリスクはどの程度なのか

多くの糖質を摂取する事で、食後血糖値が180mg/dlを超えると問題であると認識しております。(間違えていればご指摘頂けますと幸いです)
しかし、たまの旅行などで特に友人と一緒の場合、糖質制限のために入れるお店も限られますし、そんな時に相手に合わせてもらうのも忍びないです。何より、年に数回もない機会くらいはハメを外したいという気持ちがあります。
一方で、糖質の過剰摂取が良くないことを知っているからこそ、糖質は控えるべきだという考えもあります。

もちろん程度などの個人差はあると思いますが、実際、年に数日程度の食後高血糖であれば無視できるレベルなのでしょうか。
従来のカロリー制限食を実施している糖尿人は、毎日食後高血糖のリスクがあると思うので、それと比べれば問題ないとも思われますが、ぜひ先生の考えをお聞かせいただけませんでしょうか。

どうぞよろしくお願いいたします。
2019/12/11(Wed) 15:46 | URL | おもち | 【編集
Re: 低血糖について
のん さん

血糖値55mgでも低血糖症状がなければ、大丈夫と思います。

①低血糖は、SU剤内服とかインスリン注射をしている場合がほとんどです。

②極端な低カロリーの時も、低血糖はあり得ます。

③機能性低血糖は、糖質を摂取して、血糖値が急上昇して、追加分泌インスリンが大量に出た時におこります。

④肝硬変の進行した病態だと、糖新生が上手くできないので、低血糖になりやすいです。

⑤空腹での運動

⑥飲酒

⑦入浴

のんさんは、いずれも当てはまらないので、血糖値は低めですが臨床的には「低血糖」ではありません。

妊娠糖尿病から境界線型糖尿病になったということなので、
将来の糖尿病発症予防のために、糖質制限食を続けるのがよいと思います。

糖質制限食を続けるならば、75gOGTTは必要ないと思います。
2019/12/12(Thu) 08:38 | URL | ドクター江部 | 【編集
ありがとうございます(^^)
おはようございます。
早速、教えていただき、ありがとうございますm(_ _)m
低血糖でないと分かり、安心しました。あれもこれも身体の不調を糖尿病の症状ではないかと敏感になってしまっています。

糖質制限初心者なので、江部先生が出版してくださった成分表の本を見ながらお料理しています。レモンは酸っぱいし、カロリーがないから糖質もないだろう、、、というような思い込みがあり、本を見て糖質量にビックリという食材も多々あります。
これから年末年始、誘惑も増えますが、糖質制限頑張っていきたいと思います。

寒くなってまいりました。お忙しいところだと思いますが、どうぞご自愛くださいませ。
2019/12/12(Thu) 09:53 | URL | のん | 【編集
Re: 年に数日の多くの糖質摂取のリスクについて
おもち さん


年に数日程度の食後高血糖であれば無視できるレベルと思います。


私は糖尿病患者さんに、『グルコバイなどαGI剤、グルファストなとグリニド系剤』を処方することがあります。
旅行中などに、やむを得ず糖質摂取するときに、食直前30秒に内服します。
これで、食後高血糖が少し緩和されます。
2019/12/12(Thu) 16:31 | URL | ドクター江部 | 【編集
私の感触ですが欧米でのダイエットや健康増進の目的で行われる「ketogenic diet」の一般的マクロは脂質70-80%、タンパク質は20-25%、糖質は5-10%くらいの目安です。いわゆる、ketogenic diet=「てんかん治療等のケトン食」というイメージではないため、KETOしている人達がタンパク質にそこまで厳しくないように思います。例えば欧米で江部先生のスーパー糖質制限食をしながら、私はketogenic dietしてますと言っても違和感は与えないように思います。
2019/12/12(Thu) 22:04 | URL | 駐在君 | 【編集
Re: タイトルなし
駐在君

いつも興味深い情報をコメントして頂き、ありがとうございます。

ご指摘通り、
てんかん治療食としての「ケトン食」と
一般的に行われている、肥満改善や糖尿病改善や健康のための「ketogenic diet」は、異なると思います。

高雄病院のスーパー糖質制限食も、血中ケトン体は、基準値の数倍~10数倍となるので
「ketogenic diet」の範疇に入っています。
2019/12/13(Fri) 08:25 | URL | ドクター江部 | 【編集
コメントを投稿
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可