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CGMとSU剤。SU剤の使用は激減。
こんにちは。

東京女子医科大学糖尿病センターメールマガジン2019 September/October DIABETES NEWS No.172  
に、
「今、スルホニル尿素剤をどう使うか」という記事が掲載されました。 
東京女子医科大学東医療センター内科 教授 佐倉 宏 氏が執筆されています。
その中で、「スルホニル尿素薬は低血糖のリスクがあるため使用頻度は少なくなってきている。」 と述べておられます。一方で、「実際に、昨年私の外来で経口血糖降下薬の使用状況を調べたところ、
患者1人あたり平均2.14種類の経口血糖降下薬が投与しており、
スルホニル尿素薬は約30%の患者に第2~第4選択薬として併用投与していた。」
とも、
述べておられます。
私も、佐倉宏 教授と、同様の見解なのですが、
スルホニル尿素剤の使用頻度は、激減しています。
これには、CGMの登場が、大きく影響しています。

CGM(Continuous Glucose Monitoring:持続ブドウ糖測定)

ブドウ糖値を数日間連続的に測定できる持続ブドウ糖測定装置が、
2012年4月から日本でも保険適応となり、
日常臨床で使用できるようになりました。

ブドウ糖値の日内変動を24時間通して把握できるので、
SMBG(血糖自己測定器)やHbA1cによるデータとは異なる情報を得ることができます。

血糖ではなく皮下間質液中のブドウ糖値を連続測定するのですが、
血糖値と同様とみなしてよいと思われます。
2000年頃、欧米で開発され使用されるようになりました。

このCGMによる検査で、
我が国において長年、糖尿病治療の第一選択剤として使われてきたSU剤には、
大きな問題があることが判明しました。

すなわち、SU剤は、食後高血糖を、ほとんど予防できていないし、
なおかつ空腹時の低血糖を生じやすいという二重の欠点があることが判明したのです。

そのため、現在SU剤の使用は、日本中で激減しています。

もともとSU剤は、疲れたβ細胞を鞭打つ側面がありますから、
本来、少量投与に越したことはないのです。

そしてもし、グリペンクラミド(オイグルコン、ダオニール:第2世代SU剤)や
第一世代のSU剤(ジメリンなど)を服用しておられる方がいたら、
心筋障害のリスクがあるので即刻中止することをお奨めします。

アマリールやグリミクロン(第3世代)も、
HbA1cの改善効果だけはあるものの、上述の様に
食後高血糖をマッチング良く防ぐことができないことと、
空腹時には低血糖を招きやすい欠点が、CGMにより明らかとなってきました。
SU剤は12~24時間と作用時間が長いのも低血糖になりやすい理由の一つです。

つまり、SU剤は「平均血糖変動幅増大」「食後高血糖」という最大の酸化ストレスリスクを予防できていないどころか、
悪化させている可能性が極めて高いのです。

HbA1cが一見改善したように見えても、実は極めて質の悪いHbA1cなのです。

CGMにより検査してみると、SU剤を内服して食事しても、
食後高血糖はほとんど防げていなくて、
空腹時の低血糖を生じていることが多かったのです。

例えば、夕食前にSU剤を内服して、従来の糖尿病食(高糖質食)を摂取すると、
食後1時間とか2時間の血糖値は軽く200mg/dlを超えてきます。
なおかつ、夜中の午前3時頃には、
50~60mg/dlなどの低血糖を高率に生じていたのです。

平均血糖値(HbA1c)は、一見6.5%とか良好でも、
SU剤を内服している場合は、「食後250mg/dlと空腹時50mg/dl」などの平均値をみているわけで、
極めて質の悪いHbA1cなのです。

これでは、わざわざ平均血糖変動幅を増大させて食後高血糖は防げず、
空腹時低血糖を頻回に起こすという百害あって一利なしの薬物ということになります。

「平均血糖変動幅増大」という最大の酸化ストレスリスクを
もっとも生じやすい薬物がSU剤といえます。

このため私自身は、7年前からSU剤の中止を開始し、
グリニド系薬剤(速効型インスリン分泌促進剤、グルファストやスターシスなど)や
αグルコシダーゼ阻害剤(グルコバイ、ベイスン、セイブルなど)に変更しました。

今では、SU剤の使用は、ほとんど皆無ですが、
ごくまれに、アマリールが有効な患者さんがおられることはあります。
私が主治医である糖尿病患者さんは、400人以上はおられますが
そのうちアマリールを使用しているのは、1~2例です。
それも、0.5mgを1錠とか、ごく少量に抑えて処方しています。


江部康二
コメント
10年前はSU剤大量投与
私らこ が糖尿病合併症を発症した10年前、既に糖尿病合併症治療中の父は、アマリール大量投与中でした。
「薬は正しく飲んで、有酸素運動を毎日するよう」とのことでしたが、全く良くならないばかりか、薬が増えていて、合併症のアルツハイマー型認知症原因で赤信号無視で車に撥ねられて、骨折しました。

◎SU剤で糖尿病の進行は防げない

骨折後、スーパー糖質制限食実行の上、転院させました。勿論、SU剤は止めました。
2019/09/18(Wed) 14:01 | URL | らこ | 【編集
Re: 10年前はSU剤大量投与
らこ さん

御父上、SU剤やめて、正解です。
2019/09/18(Wed) 22:58 | URL | ドクター江部 | 【編集
SU剤は、食後高血糖を防がず、夜間低血糖を作るんですか?

じわじわ心臓と血管に地味にダメージ蓄積するだけなんですか?
もしかしたら 寝たきりのかたの 寝たきりの原因を作ってるかもしれないんですか?

嘔吐して食事が全く取れない、かつ、簡易血糖測定器で90の時、
アマリールはどうしたら? アマリールは血糖低下弱いし インスリン分泌は必要なので、飲むという感じですか?
2019/09/20(Fri) 00:39 | URL | yu | 【編集
Re: タイトルなし
yu さん

「SU剤は、食後高血糖を防がず、夜間低血糖を作るんですか?
じわじわ心臓と血管に地味にダメージ蓄積するだけなんですか?
もしかしたら 寝たきりのかたの 寝たきりの原因を作ってるかもしれないんですか?」


その通りです。
SU剤は、原則としては、使用しない方が良い薬です。
ごくまれに(100人に1人くらい)少量のアマリール、0.5mg、1錠くらいが有効な場合があります。


「嘔吐して食事が全く取れない、かつ、簡易血糖測定器で90の時、
アマリールはどうしたら? アマリールは血糖低下弱いし インスリン分泌は必要なので、飲むという感じですか?」

このようなときは、絶対に飲んではいけません。低血糖を生じる可能性が極めて高いです。
2019/09/20(Fri) 08:07 | URL | ドクター江部 | 【編集
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