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糖質制限食実践中に生じることがある好ましくない症状・変化について⑥高血糖の記憶
こんにちは。

糖質制限食実践中に好ましくない症状が出現することがあります。
「全身倦怠感」「こむら返り」「高尿酸血症」「高LDLコレステロール血症」
「便秘」「高血糖の記憶」

などです。

これらのほとんどは予防あるいは対処可能なので、
その方策などを説明しようと思います。
今回は、糖質制限食実践中に生じることがある好ましくない症状・変化について⑥「高血糖の記憶」についてです。

「高血糖の記憶」そのものは、消えないので対処しようがないようにも思えますが、
糖尿人においては、前もって、頸動脈エコーや心臓の検査などをしておくことは大切です。
例えば、高血糖の記憶により冠動脈狭窄などがあった場合、
検査で発見されれば、心筋梗塞を起こす前にステントを入れて予防することが可能です。

⑥<高血糖の記憶>

糖質制限食実践中に生じることがある好ましくない症状・変化について⑥は、
「高血糖の記憶」についてです。
糖尿病血管合併症のメカニズムを特徴的に説明する、
高血糖の記憶(hyperglycemic memory)と呼ばれる概念があります。
「高血糖の記憶」とは、過去の高血糖レベルとその曝露期間が生体に記憶され、
その後の血管合併症の進展を左右するという考え方です。

ヒトの糖尿病において、この「高血糖の記憶」の存在を示すエビデンス(証拠)として、
米国の1型糖尿病患者の大規模臨床研究・DCCTの
フォローアップ試験であるEDIC-DCCTの報告があります。
DCCTでは、1型糖尿病患者を従来の通常療法群と、
より厳格に血糖管理を行う強化療法群に分け、平均6.5年間追跡しました。
その結果、通常療法群に比べ強化療法群で平均HbA1c値が1.9%低下
し、強化療法群で血管合併症の進展リスクが大幅に減少しました。(*)

同研究終了後に行われたEDIC-DCCTでは、通常療法群にも強化療法を実施し、
両群をさらに平均11年間追跡しました。
つまり「継続的な強化療法群」と「通常療法→強化療法群」の2つのグループの比較が、
DCCT終了後11年間行われたことになりますね。
その結果、開始から3~4年で両群の平均HbA1c値がほぼ同等となったにも関わらず、
11年間の心筋梗塞、脳卒中、心血管死のリスクは
「継続的な強化療法群」の方が
やはり低かった(相対リスク57%低下)ことが報告されたのです。(**)

すなわち、糖尿人において一定期間血糖コントロールが不良であれば、
高血糖の記憶が「借金」のように生体内に残り、
その後良好なコントロールが得られても、
血管合併症リスクの差は縮まらないことが示されたわけです。
この借金の正体が、組織沈着「AGEs」ではないかと言われています。
まだ仮説ではありますが、組織に沈着したAGEsが血管を傷害し続け、
動脈硬化の元凶となり「高血糖の記憶」を最もよく説明するとされています。(***)
高血糖の記憶・借金を残さないためには、
糖尿病発症の初期の段階から血糖コントロールを保つことが大切です。
当然、早ければ早いほどいいわけです。

体内で蓄積されるAGEsの量について考察してみると、
「AGEsの蓄積量=血糖値の高さ×持続期間」で予測できると思われます。
糖尿人の皆さん、カロリー制限食(高糖質食)では必ず、
食後高血糖が生じAGEsも蓄積していき、将来に借金を残します。
是非、糖質制限食で速やかな血糖コントロールを目指して下さいね。

「高血糖の記憶」が存在すれば、例え糖質制限食で血糖コントロール良好になっても、
半年後や1年後や2年後に、過去の借金の動脈硬化のために、
狭心症や心筋梗塞など糖尿病合併症をおこしえるということです。

(*)N Engl J Med 1993; 329: 977-986
(**)N Engl J Med 2005; 353: 2643-2653
(***)AGEs
ブドウ糖や果糖は生体内で蛋白質にへばり付く性質を持っています。
血糖は、糖化反応により血管壁のコラーゲンなど様々なタンパク質に付着します。
糖とタンパク質の結合物は変性してアマドリ化合物となります。
ここまでが糖化反応系の初期段階で、HbA1cやグリコアルブミンも
このアマドリ化合物の一種です。
この段階だとまだ分解・代謝が可能です。
このアマドリ化合物は糖化反応の後期段階になると、さらに変性してAGEsとなります。
Advanced Glycation End-productsの頭文字をとってAGEsと呼ばれます。
日本語では終末糖化産物と訳されています。
AGEsは分解・代謝は困難であり、消えない借金となります。
AGEsは、糖尿病合併症を引き起こす、重大な原因の1つです。


江部康二
コメント
循環器科紹介への基準
いつも貴重な教育ありがとうございます。
産業医をやっている小宮と申します。先生のセミナーにも参加させて頂き、大変感銘を受けました。
【質問】
具体的に先生が循環器科にご紹介される、「HbA1cの値x期間」はどのくらいであるのか?その目安がございましたら、ぜひご教示頂きたく存じます。
2019/08/30(Fri) 12:46 | URL | 小宮周平 | 【編集
糖の吸収速度とインスリンの分泌量について
今回は糖の吸収速度と血糖値の変動についての疑問です。お手間を取らせまして申し訳けございませんが、お知恵をお貸しください。

例えば、糖質量30gのドリンクを飲んだ場合と同じ糖質量の食事をした場合、「同じ時間」をかけて摂取してもドリンクは食事に比べて「短時間」で血糖値が上がり、しかもピークがより高くなります。
そこまでは、液体の方が急激に吸収され、そう言う数値を示すのは理解できます。

しかし、その後、ドリンクの場合は急激に血糖値が下がりますが、食事の場合はダラダラと時間をかけて下がっていきます。

血糖値を下げるのはインスリンだとすれば、私の場合は、食事に比べてドリンクを摂取した時は短時間に多く分泌されると解釈できます。

ドリンクなら急激に下げる能力(インスリンの分泌)があるにもかかわらず、食事の場合は、ダラダラと時間がかかるのはなぜでしょう。
ドリンクは急激に吸収されて血糖が増えたことに対処できず、ダラダラと時間がかかるのなら理解できますが、実際にはその反対になっています。

因みに昨年5月に実施したOGTTは下記の通りです。
インスリン(μU/mL)
空腹時 6.9
30分 19.2
60分 28.7
120分 54.2

血糖値(mg/dL)
空腹時 121
30分 232
60分 263
120分 259

HOMA-R 2.1
2019/08/30(Fri) 12:46 | URL | 西村 典彦 | 【編集
Re: 循環器科紹介への基準
小宮周平 先生

医療従事者向けセミナーへのご参加、ありがとうございます。

具体的に先生が循環器科にご紹介される、「HbA1cの値x期間」はどのくらいであるのか?

①HbA1c7%以上が、5年間以上続いていれば、必ず循環器受診を薦めています。
②食後高血糖が見過ごされていた可能性がある患者さんは、基本的に循環器受診を薦めます。
 例えば、健診で、HbA1cと空腹時血糖はずっと正常だったが、2年前から空腹時血糖値がとうとう境界型レベルになった。
 というかたは、食後高血糖が数年間見過ごされていた可能性が高いです。
 食後高血糖数年間で、冠動脈狭窄のリスクとなります。
③また糖尿病の新患さんは、「眼科検診、頸動脈エコー、循環器検診」を、基本、薦めます。
2019/08/30(Fri) 17:32 | URL | ドクター江部 | 【編集
Re: 糖の吸収速度とインスリンの分泌量について
西村 典彦 さん

「糖質量30gのドリンク摂取」に対して、「ブドウ糖の粉末のみ30g摂取」

なら、摂取後血糖値の変動(上昇・下降)は、同じと思います。

「糖質量30gのドリンク」に対して、「糖質30g+脂質10g+たんぱく質15g+食物繊維5g」

といった「ブドウ糖30gを含む食事」との比較なら、違うパターンになると思います。
すなわち「ブドウ糖30gを含む食事」の場合は、糖質の吸収はがゆっくりになるので、インスリンの分泌も、血糖値の上昇も下降もゆっくりになると思います。

75gのブドウ糖のドリンク試験で、ブドウ糖の量が75gと多いと
血糖値の下降もゆっくりになってますね。
2019/08/30(Fri) 17:51 | URL | ドクター江部 | 【編集
膝の痛み
参考にさせていただいています。

長年、膝の痛みに苦しんでいました。
痩せていても20代でもおかまいなしに、
動くと痛く、医者には異常なしと言われ
諦めていました。
ここ1週間ほど前から、低糖質ダイエットを始めました。
痩せるのは、まだまだなのですが、
ビックリすることに膝の痛みが無くなりました。
原因がわからないので、たまたまなのか、
肉を毎日入れているせいなのかさっぱりわからないのでお聞きします。
低糖質ダイエットで、膝の痛みがなくなる事が
ありますでしょうか?
2019/08/30(Fri) 23:59 | URL | 平田 | 【編集
Re: 膝の痛み
平田 さん

糖質制限食で、全身の血流・代謝が良くなるので、
膝の痛みが改善した可能性はあると思います。
2019/08/31(Sat) 14:26 | URL | ドクター江部 | 【編集
Re:膝の痛み・改善!!
都内河北 鈴木です。

膝の痛みですが、
私も糖尿病重症化している2005年以降に転院してから、
「日本糖尿病学会」公認医に、
「膝の痛み」を訴えましたが、何の解決策も無かったです!!

階段では上がる時より、降りる時の痛みは、激しかったです!!

2012年10月1日江部先生「糖質制限理論」理解把握して実践で、
「生還」する3か月足らずには、
膝の痛みは、知らぬうちに解消していました!!

悪化から殺されかけた私が、改善したのですから、
現在の「日本医療の既存医学」よりは、

薬不要で改善効果は、
「糖質制限理論」の糖質排除は、【効果大】だと実体験しましたので、
健康に成りたい人は理解把握して実践してみるべきだなと考えます!!!

私は江部先生に、「生還、覚醒、再覚醒、」でき、感謝尽きません!!
ありがとうございます。
敬具




2019/08/31(Sat) 19:50 | URL | 都内河北 鈴木 | 【編集
Re: Re:膝の痛み・改善!!
都内河北 鈴木 さん

鈴木さんも、糖質制限食で膝の痛みが解消ですか。
良かったです。
2019/09/01(Sun) 11:00 | URL | ドクター江部 | 【編集
膝の痛みは発症しなかった
アルツハイマー型認知症を発症したほどの 私らこ ですが、膝の痛みは発症しませんでした。
都内河北 鈴木さん、スーパー糖質制限食実行で膝の痛み が気付かぬ内に完治(寛解?)して良かったですね!!!
2019/09/02(Mon) 00:16 | URL | らこ | 【編集
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