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脂質摂取比率が増えて、糖尿病の増加が縮小し、糖尿病予備軍は減少。
【19/07/24 西村典彦
久山町研究について
改めて久山町研究のサイトを見てみました。
http://www.hisayama.med.kyushu-u.ac.jp/column/index.html

上記ののコラムに糖尿病の有病率についてのコメントがありますが、このコラムでは動物性脂肪の摂取が糖尿病の増加の原因であると結論づけています。高糖質については触れられていませんが、研究者に糖質60%前後の摂取が高糖質と言う認識がないのでしょうか。
また、動物性脂肪の摂取が糖尿病の増加につながると言う解釈は正しいのでしょうか。】


こんにちは。
西村典彦さんから、久山町研究の情報をコメント頂きました。
確かに久山町研究のサイトでは、
総脂質摂取量の増加や動物性脂質の過剰摂取は糖尿病発症の危険因子という仮説が
提唱されていますが如何なものでしょう。

久山町研究のサイトの仮説に反論するために、
日本全体の三大栄養素の摂取比率の推移と糖尿病有病数や予備軍有病率の推移を
検討してみました。
すると
脂質摂取比率が増えて、炭水化物摂取比率が減少して、
糖尿病増加数が急減し、糖尿病予備軍数は減少していました。


厚生労働省は、毎年国民健康・栄養調査を実施しています。
その中で、4~5年に1回、糖尿病有病数を集計しています。
今回2016年の糖尿病有病数は、2012年に比し、約50万人増加で、
前回と同じぐらいです。
2017年9月21日に厚生労働省が発表しました。

slide3.jpg

1990年:560万人
1997年:690万人(130万人増加)
2002年:740万人(50万人増加)
2007年:890万人(5年間で150万人増加)
2012年:950万人(5年間で60万人増加)
2016年:1000万人(4年間で50万人増加)

これで見ると、2002年→2007年の増加数が、半端じゃないですね。

2007年→2012年の増加は、60万人で
1997年→2002年の増加、50万人と似たようなもので、
2002年→2007年の増加、150万人に比しかなり少ないです。

2012年→2016年の増加、4年間で50万人は前回と同じくらいです。

糖尿病予備軍は、2012年に約1100万人で、2007年から約220万人減少で、
国民健康・栄養調査が始まって以来の初めての減少でした。
さらに2016年は糖尿病予備群は約1000万人で、
2012年から約100万人減少で、前回と同様の傾向です。

冷静に考えて、糖尿病増加の勢いが、弱まったことになります。

実はずっと増え続けいた炭水化物摂取比率が、
2008年から2010年にかけて、60.4%から59.4%に減っています。
2010年から2012年にかけては、59.4%から59.2%に減っています。
2012年から2015年にかけて、さらに59.2%から58.4%に減っています。

そして、ずっと減少傾向だった脂質摂取比率が、
2008年から2010年にかけて、24.9%から25.9%に増えているのです。
さらに2010年→2012年→2015年と、25.9→26.2→26.9%と増えています

slide2.jpg

そして、これを受けて、20007年から2012年にかけて糖尿病の増加が急減して、
糖尿病予備群は220万人も減少しているのです。
2012年から2016年も糖尿病は増加していますが、歯止めがかかっていて
予備群も前回の調査に続いて減少です。

保健所や一般の医師・栄養士の食事指導は、
旧態依然たる日本糖尿病学会推奨で唯一無二のカロリー制限食で、
数十年来不変ですので、今更この影響はないと思います。

なお、2000年~2015年まで日本の人口は
1億2700万~1億2800万くらいで大きな変化はありません。
そして、この間、高齢化はどんどん進んでいるので、普通に考えると
高齢者に多い病気である糖尿病は、より増加し易い状況だったと言えます。
それが歯止めがかかったというわけです。


<日本の総人口の変遷>
平成12(2000) 126926人
平成17(2005)127768
18 127901
19 128033
20 128084
21 128032
22 128057
23 127799
24 127515
25 127298
26 127038
平成27(2015) 127095人


こうなると、炭水化物摂取が減って脂質摂取が増えて、
糖尿病の激増に歯止めがかかったという事実は、
糖質制限食の影響の可能性がありえますね。(^^) 


☆☆☆
国民健康・栄養調査|厚生労働省
       エネルギー    脂肪エネルギー比率  炭水化物エネルギー比率
2010年   1849kcal           25.9%           59.4%
2011     1840            26.2            59.2
2012     1874            26.2            59.2
2013     1873            26.2            58.9
2014    1863             26.3           59.0
2015    1889             26.9            58.4


江部康二
コメント
久山町研究へのコメントのお礼
回答ありがとうございます。
久山町研究の数字自体が間違いであることはないと思いますし、他の統計値から全国平均を反映しているとは言っています。
しかし、実際はそうではなかったと言う事で、久山町には固有の事情がありそうで、それはそれで興味が湧きますね。
2019/07/26(Fri) 18:51 | URL | 西村典彦 | 【編集
ありがとうございました
江部先生
いつもお世話になっています

7月10日   高雄病院での講習会に
出席した者です
先生にお会い出来て大変
嬉しく思います

先生の事は本当に命の恩人だとおもっています

もっと深く御礼申し上げないといけないですが
緊張してすこしたりなかった気がしたので
メールで非常に申しわけなしのですが御礼申し
あげます。 お許しください
また 先生にお会いできる日を楽しみしています でわ失礼いたします
2019/07/26(Fri) 20:57 | URL | 糖尿人 | 【編集
これはスパイクでしょうか
起きぬけの空腹時血糖値がだいたい80mg/dLです。
昨日久々に食後血糖値を測ってみたところ、
食後60分 155mg/dL
食後90分 122mg/dL
食後120分 108mg/dL
でした。
食べたものは豚肉と鶏肉(塩コショウのみ)合計約400g、ブロッコリー200g(+マヨネーズ)です。
これまでに低糖質のものだけ食べて食後60分の血糖値がこんなに上がったことがなかったので驚きました。これは血糖値スパイクでしょうか。
2019/07/26(Fri) 23:30 | URL | 糖尿病恐怖 | 【編集
診断について
いつも勉強させていただいております。
内科医です。

以前も質問させていただきました、Hba1c6.5%を超えているが、血糖値が、糖尿病の診断基準を満たしていない(空腹時血糖126未満、随時血糖200未満)の方についてに関連して、です。
米国では、Hba1c6.5%を超えていたら、その時点で、糖尿病の診断がつく、そのような記載がありました。
恥ずかしながらそのことについて、事実なのかはっきり検証できませんでした。
もし可能でありましたら、お教えいただけませんでしょうか。
お忙しい中本当に申し訳ありません。


2019/07/27(Sat) 06:56 | URL | としの | 【編集
Re: これはスパイクでしょうか
糖尿病恐怖 さん

たんぱく質摂取で、グルカゴンのほうがインスリンより多く分泌されるタイプと思われます。
そのためたんぱく質だけ摂取しても、血糖値が上昇します。

私も同様でグルカゴン優位なので、ささみだけ食べて実験してみると血糖値が上昇しました。

脂質と一緒にたんぱく質を摂取すると、これほどシンプルには血糖上昇しないと思います。
2019/07/27(Sat) 07:26 | URL | ドクター江部 | 【編集
Re: 診断について
としの さん

糖尿病治療ガイド2018-2019、日本糖尿病学会編・著
23ページに、糖尿病診断のフローチャートがあります。
ご指摘通り、HbA1c反復検査だけでは診断不可で、必ず、血糖値が糖尿病型の基準を満たしていることが必須条件です。

日本の糖尿病診断基準では、上記です。
米国の基準は私も知らないので、一度調べてみます。
2019/07/27(Sat) 07:41 | URL | ドクター江部 | 【編集
糖尿病恐怖さんへ
◎マヨネーズはキューピーの「普通タイプ」

でしたか?キューピー製品でも「カロリーハーフ」は砂糖入り、味の素や他社製品マヨネーズも砂糖入りです。相当量入ってます。
2019/07/27(Sat) 10:10 | URL | らこ | 【編集
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