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眼科と糖尿病網膜症。従来の糖尿病食と糖質制限食の差。
【19/06/04 西川潤子
江部先生の講演を聞いてみたい!
先生のご本で勉強させていただいている眼科医です。
6月9日の徳島入りを検討していたのですが、往復7,8時間要する、とわかり、断念しました。
糖尿病患者さんに栄養指導をしても、結果が出ず、
透析や、コントロールの悪化に悩んでいました。
糖質制限を数か月前に知ってから、患者さんには、肉魚何ぼ食べてもいいから、
白米、パン、うどん、焼きそばたべるな!を声を大にして、指導しております。
先生のお話を直に聴く機会があれば、ぜひ、参加したいと願っております。
大阪近辺での講演ご予定は、近々ありますでしょうか。ご教授お願い申し上げます。】


こんにちは。
眼科医の西川潤子先生から、コメントを頂きました。
ありがとうございます。

確かに、糖尿病網膜症の患者さんが、糖尿病内科から眼科に紹介されたとしても、
食事は「従来の糖尿病食(低カロリー高糖質食)」です。
これでは眼科医がいくら努力しても、「糖質摂取+薬物療法」による
『血糖値の乱高下と酸化ストレス』は防ぎようがないので
糖尿病網膜症も悪化の一途を辿るしかありません。

また従来の糖尿病治療において、短期間でHbA1cが急速に改善すると、
かえって糖尿病網膜症が悪化することが知られていますが、
やはり、血糖値の乱高下による多大な酸化ストレスリスクのためと思われます。

確かに、インスリン注射やSU剤などにより急速に血糖値が改善した場合、
改善速度が速いほど、網膜症の悪化率が高かったという論文報告があります。
実際に日常臨床上、糖尿人を診察しておられる医師においては
経験があることと思われます。
とは言え、一時的な悪化はあっても、
長期的には血糖コントロールが良い方が網膜症にも良いということも報告されています。

それでは 糖質制限食によって、血糖値が急速に改善した場合はどうなのでしょう?
網膜症の悪化や眼底出血の心配はないのでしょうか?
実は当初、私達も糖質制限食で
インスリン注射以上に速やかに血糖コントロールが良くなるので、
このことを懸念していました。
幸い、1999年、高雄病院で糖質制限食開始以来の経験で、
糖質制限食による改善では基本的に網膜症の悪化はありませんでしたので、
今は全く心配はしていません。

しかし、

(A)インスリン注射やSU剤による急速なHbA1c改善:網膜症悪化や眼底出血あり。
何故、網膜症の悪化や眼底出血があるのか、現時点では原因不明。

(B)糖質制限によるより急速なHbA1c改善:網膜症の悪化なし
こちらも、何故、網膜症が悪化しないのか現時点では理由は不明。


同じようにHbA1cが改善するのに、なぜこうも違うのか、疑問が残ります。
平均血糖値(HbA1c)が同じように良くなるにもかかわらず、
インスリンやSU剤の投与による場合と糖質制限食による場合で、
このように明暗がわかれるのには、必ず理由があるはずです。

それで、以下、あくまでも仮説ですが考察してみました。
以前は、長年にわたって血糖コントロールの評価基準として、
空腹時血糖値とHbA1cが使用されてきました。

しかし、近年の信頼度の高い研究により、空腹時血糖値とHbA1cがコントロール良好でも、
糖尿病合併症は防げないことがわかってきたのです。
それどころか、糖質を普通に摂取しながら、インスリン注射やSU剤で厳格に治療すると、
総死亡率が上昇するという信頼度の高いエビデンスが報告されました。(*)
すなわち、食後高血糖と平均血糖変動幅の増大が、最大の酸化ストレスリスクであり、
糖尿病合併症の元凶ということがわかってきたのです。
空腹時血糖値とHbA1cだけによる評価では、
食後高血糖と平均血糖変動幅の増大は全く知ることができないのです。

人体は、酸化反応と抗酸化反応のバランスがとれていると、正常に機能します。
酸化反応が抗酸化反応を上まわった状態を酸化ストレスといいます。
酸化ストレスが、糖尿病合併症・動脈硬化・老化・癌・アルツハイマー・パーキンソン等、様々な疾病の元凶とされています。

このことは、世界中の医学界において、認められています。
糖質を普通に摂取しながら、インスリンやSU剤で厳格に治療して
HbA1cを急速に下げると、低血糖も生じやすくなるし、
平均血糖変動幅の増大も必発となります。

つまり、(A)の場合は、見かけ上はHbA1cは急速に改善したように見えても、
その実態は、「低血糖」と「平均血糖変動幅増大」という最大の酸化ストレスリスクをともなう『質の悪いHbA1c』だったのです。

従って、網膜症悪化や眼底出血を生じた可能性が高いのです。


世界的眼科外科医の深作秀春先生も私と同意見で、以下のコメントを頂きました。(**)

『まだ、糖尿病性網膜症が軽いので、糖尿病内科の専門医に糖尿病治療を委ねましょうと紹介します。
そして、内服薬やインシュリンなどを使って、
内科医は急速に血糖を下げようとするのです。
食事療法でカロリー制限もしていますが、糖質のご飯は同様に食べさせています。
つまり、ご飯を食べて高血糖になり、
それをインシュリンで無理やり下げると言う
「血糖のジェットコースター」状態となります。
その結果1か月もすると、糖尿病性網膜症は良くなるどころか、
どんどん悪化しているのです。』


一方、(B)糖質制限食でHbA1cが改善した場合には、
薬も使用していないので、「低血糖」も「平均血糖変動幅増大」もない『質のいいHbA1c』なのです。

そのため急速なHbA1c改善にもかかわらず、網膜症の悪化がないと考えられます。
これらにより、糖質制限食の場合、急速な血糖値改善にもかかわらず、
網膜症の悪化が生じにくいと考えられます。
既にインスリン注射やSU剤を内服していて、ある時に糖質制限食を開始して、
血糖値・HbA1cが急速に改善していく場合も、
インスリン注射やSU剤の量は基本的に減量されていくし、
代謝全般も改善されていくので、糖尿病網膜症は起こりにくいと思います。

糖質を摂取して、インスリンやSU剤の効能だけに依存して血糖値を下げた場合と、
糖質制限食で薬物に頼らずに自然に血糖値が改善した場合との差、
すなわち「低血糖、食後高血糖、平均血糖変動幅増大」の酸化ストレスリスクが、
両者で全く異なることがお解りいただけたでしょうか。

なお、過去の高血糖のため、すでに糖尿病網膜症が存在している時は、
糖質制限食で血糖コントロール良好を維持していれば糖尿病網膜症の進行は、
徐々に止まると思います。
そして時間をかけて、ある程度改善する可能性はあります。
しかし、糖質制限食で血糖コントロール良好となっても、
既存の糖尿病網膜症が、メキメキ治るわけではありませんので、念のため。

それから、一定の糖尿病罹病期間があって、血糖コントロールが悪かったけれど、
その時点では網膜症はないと言われていた人が、
糖質制限食を開始して血糖コントロール良好となり、
数ヶ月後眼底検査をしたら軽症単純網膜症が発見された、
というようなことがまれにあります。
これは糖質制限食開始時点で既に潜在的な網膜症はあったのが、
時間的経過で顕在化したもので、高血糖の記憶(***)によるものと思われます。
すなわち糖質制限食で網膜症になったのではなく、
過去の高血糖の借金が顕在化したものと思われます。

以上、仮説の段階ではありますが、それなりに説得力のある説明と自負しています。

(*)2011/07/18 の本ブログ記事
「ACCORD試験の死亡リスクと低血糖とSMBGサブ解析2011」
http://koujiebe.blog95.fc2.com/blog-entry-1741.html
をご参照ください。

(**)2016年05月09日 (月)の本ブログ記事
「眼科・深作秀春先生のコメント。糖尿病専門医の治療で網膜症が悪化。」
http://koujiebe.blog95.fc2.com/blog-entry-3791.html
をご参照ください。

(***)2010-11-14のブログ
「高血糖の記憶とAGE」
http://koujiebe.blog95.fc2.com/blog-entry-1432.html
をご参照ください。


江部康二
コメント
私の生還、覚醒、再覚醒、の事実効果!!
都内河北 鈴木です。

本日ブログ記事「眼科」の為にも「糖質制限理論」は、
改善効果はあるかと考えます!!

私は糖尿病の改善の為に、
2012年10月1日より始めた「糖質制限理論」食生活ですが、
21年間の重症化していた糖尿病が、
3か月足らずでインスリン投与者が、インスリン自主離脱して、
ヘモグロビン正常化しました!!

2年後、
   「眼底検査・画像で理解できる改善覚醒!!」
6年後、
   「脳梗塞・頸動脈プラ~ク減少覚醒改善!!」
8年後、今年3月4日
   「脳梗塞・以前とは別の細部複数個所・覚醒改善!!」

*眼科、脳神経外科、各院長も驚いていた顔が、今も忘れられない事実!!
*医療デ~タ全て存在します!!

以上の事から、「糖質制限理論」食生活は、
糖尿病だけでないことは理解できるかと考えます!!

時代進化を考慮する眼科医師ならば分野外だが、
可能性を感じてくれて大変嬉しく思います!!

この様な時代進化解明事実を理解把握して、
改善治療を目指す医療者が増えてくれることを、1患者として願います!!

私は、江部先生には「生還、覚醒、再覚醒、」でき、感謝尽きません!!
ありがとうございます。
敬具


2019/06/05(Wed) 13:58 | URL | 都内河北 鈴木 | 【編集
糖尿病合併症はインスリン高値による薬害
江部先生

こんにちは。今回の記事を読ませて頂いて、すでにご存知かもしれませんが、新井圭輔医師の講演動画をすぐに思い出しました。
https://youtu.be/L3n-4phbjHQ

もうだいぶ前に見た動画ですが、非常にショックを受けたので鮮明に覚えていました。

新井先生は、その当時から、糖尿病合併症はインスリン高値による薬害であると断言されています。また、網膜症はインスリンをやめて改善する!!とも強調されています。

非常に示唆に富む動画なので、まだでしたら是非ご覧頂き、先生のご意見も伺えれば幸いです。

また、蛇足ですが、下記のユーチューブチャンネルに、様々な食品やその食べ方を比較した、血糖値の実測実験の動画が、すでに40本以上アップされており、非常に参考になります。もし、ご覧になったことがなければ、是非チェックしてみてください。

トリビアオタク
https://www.youtube.com/channel/UCPj71SrfjYPMB-f6Sp69y9g
2019/06/05(Wed) 18:37 | URL | ジョー | 【編集
Re: 糖尿病合併症はインスリン高値による薬害
ジョー  さん

新井圭輔先生のご著書は、読みました。
過剰なインスリンの弊害は私も同様に思います。

一方、インスリンが必要な場合もまた、現実にあると思います。

①インスリン発見前の1型糖尿病は、余命半年でしたが、
 インスリン発見後は、長年の寿命となりました。

②藤原道長は、文献上明らかな、日本の初代糖尿病患者です。
 平安時代の藤原道長は、勿論インスリン注射はしていませんが、
 糖尿病合併症のオンパレードで、亡くなっています。
 視力低下~失明、神経障害・足病変による歩行障害、膿瘍 ・・・

トリビアオタク
https://www.youtube.com/channel/UCPj71SrfjYPMB-f6Sp69y9g


見てみます。
2019/06/05(Wed) 21:58 | URL | ドクター江部 | 【編集
医師の方と医師の方との通信。
多忙を極められている、と拝察される江部先生と質問者の西川先生との間の通信、課題について推論を含め最大限の開示に敬意を表します。「医学」というものがどういうものか、学ぶことができました。   私の妻が糖尿人で糖制限食を励行、わたしも協力しています。
2019/06/06(Thu) 11:00 | URL | 森 正博 | 【編集
Re: 医師の方と医師の方との通信。
森 正博 さん

コメントありがとうございます。
奥さんの糖尿病、糖質制限食でコントロール良好となると思います。
2019/06/06(Thu) 20:54 | URL | ドクター江部 | 【編集
すみません 教えて下さい。維持透析導入になる糖尿病腎症は増え続けていて、透析原因I位らしいのですが、
これは、高インスリンによる薬害、
インスリン増加させる糖尿病治療が逆に腎臓病悪化に関与してる可能性があるってことでしょうか?
マッチポンプ

2019/06/07(Fri) 08:19 | URL | ss | 【編集
Re: タイトルなし
ss さん

人工透析は毎年新たに、約36000人が導入されます。
そのうち約16000人が糖尿病腎症で、疾患別では一位です。

治療中の日本の2型糖尿病患者の平均HbA1cは
JDDM研究では、2012年の集計で、7.06%でした。

そんなに、HbA1cは悪くないのに合併症が減らないのは
「食後高血糖」と「平均血糖変動幅増大」という
2大酸化ストレスリスクを内包する
『質の悪いHbA1c』だからと思われます。

その点糖質制限食なら
「食後高血糖」と「平均血糖変動幅増大」のない
『質の良いHbA1c』なので合併症予防が可能なのです。

過剰なインスリンの弊害もありますが、
「食後高血糖」と「平均血糖変動幅増大」という酸化ストレスリスクが
合併症の元凶として大きいと思われます。
2019/06/07(Fri) 18:48 | URL | ドクター江部 | 【編集
眼科医にとって核心を突いたご教授、ありがとうございます!
江部先生
ありがとうございました、糖質制限食による速やかな血糖コントロール=血糖変動の消失、食前食後を問わず終日の血糖正常化ですね!
薬剤による血糖下げとは、別物、とわかりました。低糖質食はインシュリン分泌を促すことなく、血糖を一定値に引き下げてくれる、だから、同じHbA1cでも、食後高血糖による血管内皮障害が起こらず、インスリンによる肥満も、すい臓ランゲルハンス島の疲弊も起こらない、ということですね!わかりました!安心して、糖質制限食を眼科受診の糖尿病患者さんに指導できます。
実は、昨日も、増殖前糖尿病網膜症の方に、汎網膜光凝固を施行しました。働き盛りの男性です。聞くと、やはり、カロリー制限1200Kカロリーを指導されていたので、今までのお話と、真っ向から反対することをお話ししてもいいですか?とお断りして、受け入れてくださったので、糖質制限食を指導しました。
興味を持っていただけたので、帰りには、手元にあった高尾病院のレシピ本を、お貸しし持って帰っていただきました。今後、白内障手術も控え、網膜症の急激な進行が予測されるため、行く末が心配だったのです。
この方の未来と治療を明るいものにできそうです。ありがとうございます。
今後とも、よろしくお願い申し上げます。

西川拝
2019/06/08(Sat) 11:56 | URL | 西川潤子 | 【編集
Re: 眼科医にとって核心を突いたご教授、ありがとうございます!
西川潤子 先生

『糖質制限食による速やかな血糖コントロール=血糖変動の消失、食前食後を問わず終日の血糖正常化ですね!
薬剤による血糖下げとは、別物、とわかりました。低糖質食はインシュリン分泌を促すことなく、血糖を一定値に引き下げてくれる、だから、同じHbA1cでも、食後高血糖による血管内皮障害が起こらず、インスリンによる肥満も、すい臓ランゲルハンス島の疲弊も起こらない、ということですね!』


その通りです。

従来の糖尿病食は、「低カロリー高糖質食」なので
食後高血糖、血糖変動幅増大といった酸化ストレスリスクを生じ、糖尿病網膜症の進行を予防することは困難です。
一方、糖質制限食なら、食後高血糖、血糖変動幅増大といった酸化ストレスリスクが生じないので
合併症予防が可能なのです。
2019/06/10(Mon) 14:55 | URL | ドクター江部 | 【編集
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