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ヒトとビタミンC-糖質はどこまで減らせる?
こんにちは。
「糖質制限食」という言葉は随分浸透してきましたが、
それでは糖質はどこまで減らせるのでしょう?

まず、理論的に考察すると、
人体内で合成できない必須アミノ酸、必須脂肪酸、必須ビタミン、必須ミネラルは
食事から摂る必要があります。

一方、必須糖質と呼ばれる物質は存在しません。
糖質摂取ゼロでも、肝臓でアミノ酸・乳酸・グリセロールなどから糖新生して
ブドウ糖を確保できるからです。

血糖を必ず基準値に保つ必要があるのは、赤血球のためです。
赤血球はミトコンドリアを持っていないので、ブドウ糖しかエネルギー源にできません。
脳は、ミトコンドリアを持っているので、ブドウ糖とケトン体をエネルギー源にできます。

国際食事エネルギーコンサルテーショングループの報告では、
「炭水化物(この場合は糖質とほぼ同義)の理論的な最小必要量はゼロである」(*)
と明記されています。
すなわち、理論的には、ヒトは糖質摂取ゼロで生きていけることになります。

しかしながら、哺乳類の中でヒトとサルとモルモットだけが、ビタミンCを作れません。
従って、食事からビタミンCを摂取しなくてはなりません。
進化の過程の食生活を通して、そのような身体を獲得したと考えられます。
それでは年間を通して、食べることができるビタミンC源には
どのようなものがあるでしょう。
チンパンジーと分岐して以降約700万年間、人類は狩猟・採集を生業としており、
日常的な食料は、魚貝類、小動物や動物の肉・内臓・骨・骨髄、
野草、野菜、キノコ、海藻、昆虫などです。
ときどき食べることができたのは、
ナッツ類(種実類)、果物、山芋・百合根などの根茎類でしょうか。

上記のなかで、ビタミンCが豊富なのは、野草、野菜、果物です。
果物は、実りの秋といいますが、実は年間通して旬の物があります。
ただ野生種で小さいし、木になる果物は、サルやチンパンジーなどと競合しており、
樹上生活者の猿のおこぼれくらいが人類の手に入ったのでしょうが、
日常的なビタミンC補充には、足らなかったと思います。
野イチゴなどが、人類の先祖のほうが手に入れやすかったと思いますが、少量でしょう。
その点、野草は年間通して、確実に獲得できるビタミンC供給源だった可能性があります。
種子類のなかでは、シイ、ギンナン、クリなどにはビタミンCが豊富に含まれています。

ともあれ、農耕前の人類は野草、果物、ナッツ類などから、
年間を通してビタミンCを補充していたのでしょう。

サルも基本的には、ヒトと同じような食物からビタミンCを摂取していたのだとと思いますが、
果物獲得に関してはヒトより有利ですね。
モルモットは完全な草食性動物で、野生では、野草や草の実、穀類などを食べています。
モルモットの場合は、ビタミンCの供給源は、ほとんど野草だったと考えられます。

このように考えてくると、ヒトにおいても、
野草がビタミンC補給には、一番頼りになっていた気がします。
結論としては、ビタミンCを補充するための食材(野草、果物、ナッツ)には、
少量ながらも必ず糖質が含まれているということになります。
従って、理論的に糖質ゼロでOKでも、人類700万年間の進化の過程で、
現実には充分量のビタミンCを得るためには
糖質(野草、果物、ナッツ)も必然的に摂取していたこととなります。

従って、人類において、
理論的には必須糖質はゼロでも、
現実には少量の糖質を必然的に摂取していたということです。

高雄病院で推奨する「スーパー糖質制限食」ですが、
給食のメニューにおいて、
葉野菜などを中心に約「8~15g」くらいの糖質が含まれています。
その野菜分でビタミンCや食物繊維も補充できるので、サプリは要らないのです。
糖質が約「8~15g」と少量なのは、食後高血糖予防や平均血糖変動幅増大予防、
そしてインスリン過剰追加分泌を抑えるためです。

ちなみに、生肉・生魚が主食のころのイヌイットは、
野菜と果物摂取がほぼなしで、ビタミンC不足であり、
イヌイットの血中ビタミンC濃度は、壊血病危険ラインの0.2mg/dl未満の場合も多く、
歯肉出血が高率に見られたそうです。
イヌイットの場合は、血中ビタミンC濃度が低値であることは、
壊血病と新生児高チロシン血症のリスクを高めていました。(**)
しかし、イヌイットが壊血病で死亡することはありませんでした。
一方、イヌイットレベルの血中ビタミンC濃度だと、
大航海時代(15世紀中ばから17世紀中ば)、
ヨーロッパからアフリカ、アジアなど長距離を航海する際に、
多くの船員が壊血病で亡くなっています。

ビタミンCには様々な効果がありますが、「抗酸化作用」も重要な役割です。
イヌイットは、生魚・生肉の伝統的食生活時代は、
<高血糖、血糖変動幅増大、高インスリン血症>という酸化ストレスリスクの三悪が、
ほぼなかったので、ビタミンCの必要量も節約できていたものと思われます。

従いまして、糖質セイゲニストにおいては、かつてのイヌイットと同様に
酸化ストレスが少ないので、ビタミンC必要量も少なくてすむ可能性があります。
しかしながら理論的には兎も角として、
私自身は食物繊維とビタミンC補給を兼ねて、しっり野菜も食べています。


(*)
Eur J Clin Nutr. 1999 Apr;53 Suppl 1:S177-8.
Report of the IDECG Working Group on lower and upper limits
of carbohydrate and fat intake. International Dietary Energy
Consultative Group. Bier DM, Brosnan JT, Flatt JP, Hanson R
W, Heird W, Hellerstein MK, Jequier E, Kalhan S, Koletzko B,
Macdonald I, Owen O, Uauy R.

(**)
Neonatal hypertyrosinemia and evidence of deficiency of asco
rbic acidin Arctic and subarctic peoples
624-626 CMA JOURNAL/OCTOBER 4,1975/VOL.113
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC1956727/pdf/canm
edaj01544-0034.pdf



江部康二
コメント
腓骨脛骨近端骨折日記
やっと今日のレントゲンで明日から松葉杖での体重30%負荷歩行までこぎつけました。糖質制限は堅持しています。
2019/06/03(Mon) 17:27 | URL | 甘いミカン | 【編集
空腹時血糖値がなぜだか上がってきました
江部先生、

A1Cが7.2で、糖質制限実践中のももです。いつもありがとうございます。

朝の空腹時血糖値が下がってきたと喜んでいたのですが、あれから、120台、130台が続き、そうかと思えば昨日などは101という値で、100台はめったに出なかったので、喜んでいました。

ところが今朝は、149という数字が出て、あれだけ食事を気を付けているのに、空腹時だけどうして下がらないのか、悩んでいます。

日中の食事は、食後1時間で、大体30から50くらい上がります。なので、糖質はあまりとっていないと思います。体調もとてもよくなったのを実感しています。
でも寝ている間の肝臓の糖新生がコントロールできていないようです。
これからも食事制限は続けて、空腹時血糖値をモニターしますが、もしこのまま130から140台が続いたら、服薬を考えたほうがいいでしょうか。
その際はメトホルミンが第一選択として考えられるお薬になりますか?
あまり数字に一喜一憂しないようにしようとは思っていますが、やはり気になります。

寝る前にワインとか、焼酎とかも空腹時血糖値を下げるのにいい影響がありますか? 以前の記事でワインの効用があった、という方のコメントを見ましたので、試そうかと思っています。あんまりお酒は飲まないほうですが。

寝ている間のことはどうしようも打つ手がなくて、最近悩んでいます。

ご意見、いただけたら嬉しいです。
2019/06/04(Tue) 03:52 | URL | もも | 【編集
Re: 腓骨脛骨近端骨折日記
甘いミカン さん

良かったですね。
順調な回復と思います。
2019/06/04(Tue) 07:06 | URL | ドクター江部 | 【編集
Re: 空腹時血糖値がなぜだか上がってきました
ももさん

米国糖尿病学会は、
アルコール24g(30ml)/日を食事と共に摂る程度なら適量としていますが、
ビール(5%)なら600ml
ワイン(15%)なら200ml
ウイスキー(43%)なら70ml
焼酎(25%)なら120ml
糖質ゼロ発泡酒(4%)なら750ml
に相当します。


このくらいの量のワインなら、健康増進効果も期待できるので
薬よりよいと思います。

あと「インターバル速歩」も、お薦めです。
2019/06/04(Tue) 07:40 | URL | ドクター江部 | 【編集
空腹時血糖値がなぜだか上がってきました
江部先生、

お忙しいところ、お返事をどうもありがとうございます。

今夜から、ワインを適量飲んでみます。

犬の散歩には行くのですが、犬に合わせての歩行なので、ゆっくりになっていました。
自分だけでの速歩ウォーキングをやってみます。
薬に頼らないですむよう、頑張ります。

どうもありがとうございました。
2019/06/04(Tue) 08:23 | URL | もも | 【編集
野菜より"ふすまパン"かな?
江部先生の精力的な糖質制限普及・推進活動が無ければ、今の自分は無かったと深く感謝しております。

また、ブログ記事では毎回勉強さて頂き、糖質制限理論に対する理解・知識を深めることが出来、有難うございます。

早速ですが、今回の記事において、江部先生は、

>>従いまして、糖質セイゲニストにおいては、
>>かつてのイヌイットと同様に酸化ストレスが
>>少ないので、ビタミンC必要量も少なくてすむ
>>可能性があります。

>>しかしながら理論的には兎も角として、
>>私自身は食物繊維とビタミンC補給を兼ねて、
>>しっり野菜も食べています。

と書かれていますが、ビタミンCについては、江部先生も既に御覧になられているとは思いますが、夏井先生の記事( http://www.wound-treatment.jp/new_2019-05.htm#0524-4 )にも有る通り、江部先生の言う通りだと思います。

一方、食物繊維について、私は江部先生とは違った?見解を持っております。

葉野菜として例えばホウレン草の場合、文科省の「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」によれば、下記の通りとなります。

 野菜類/ほうれんそう/葉、通年平均、ゆで(100g当たり)
  ・水溶性食物繊維:0.6g
  ・不溶性食物繊維:3.0g
         計:3.6g

 野菜類/ほうれんそう/葉、通年平均、油いため(100g当たり)

  ・水溶性食物繊維:0.8g
  ・不溶性食物繊維:3.8g
         計:4.6g

ところで、私は生野菜は苦手で、かと言って茹でたり炒めたりは面倒臭いので、食物繊維の補給にふすまパンを利用しています。

ちなみに、私が食しているのはローソンのブランパン((2個入り) https://www.lawson.co.jp/recommend/original/detail/1350283_1996.html )ですが、

 ・糖質  : 4.4g
 ・食物繊維:11.2g

となります。

ビタミン類・ミネラル類については別途考慮する必要が有るかも知れませんが、食物繊維補給については、こちらの方が効率が良く、その分タンパク質や脂質の補給を増量出来ることになるので、良いのかな?と思います。

しかし、ふすまパンについては、その食べ方のアレンジ次第になるのでしょうが、江部先生が常に提唱しておられる★美味しく楽しく糖質制限★と言うセオリーで見ると、意見が分かれるかも知れません。

以上、長々と書き連ねてしまいましたが、今後とも江部先生の年齢を感じさせない(^_^:)御活躍を期待しております。
2019/06/04(Tue) 11:46 | URL | 名無し | 【編集
Re: 野菜より"ふすまパン"かな?
名無し さん

ふすまパン、糖質制限OK食品と思います。
私も時々食べています。

高雄病院のスーパー糖質制限食は、1回の食事の糖質量を20g以下が目安です。
この範疇であれば、いろいろ食べて大丈夫です。

ナッツ類も、そこそこ食物繊維がありますね。
2019/06/04(Tue) 12:59 | URL | ドクター江部 | 【編集
江部先生
遅くなりましたが、先月26日の藤沢でのセミナーは大変お疲れさまでした。質問が多かったため、個人的には控えさせていただきましたが、先生のお話を大変興味深く聴かせていただき、改めて大変勉強になりました。
ありがとうございました。
今日は、実は87歳の高齢の母親についての質問で大変恐縮です。
先月中旬に体調不良で病院に行きましたところ、胃潰瘍と貧血、腎機能低下で即2週間弱の入院となりました。
入院時の血液検査でHb が6.7、eGFRは透析ぎりぎりの29.2、HbA1cは5.5 空腹時血糖値は197でした。
退院後、今までの薬(リクシアナ等)に加えて潰瘍や鉄分などの薬の服用を始め、スーパーではありませんが糖分を控え、少なかったたんぱく質も以前よりは摂るようにしたところ、直近の血液検査の数値は、Hbが10.7に改善、eGRFは39.48に改善、HbA1cは4.4とむしろ低くなりましたが、空腹時血糖値だけが201まで上がってしまいました。
このように貧血や腎機能がまだ悪い状態で、HbA1cが低くなっても、血糖値がこのように高止まりしている場合は、やはり高齢者であってもカロリー不足を防ぎ、スーパー糖質制限をすべきなのでしょうか?
お忙しいところ大変申し訳ございませんが、お時間ございます時に先生のアドバイス簡単に頂戴できれば幸いです。 何卒よろしくお願い申し上げます。
2019/06/04(Tue) 15:08 | URL | TAK | 【編集
Re: タイトルなし
TAK さん

藤沢セミナーへのご参加、ありがとうございました。

貧血がある場合、HbA1cは、やや不正確となります。

グリコアルブミンは、貧血に影響されない糖尿病の検査なので、そちらを調べてみましょう。

87歳という年齢を考慮すれば、今の緩やかな糖質制限で良いと思います。
一方、スーパー糖質制限食がつらくなければ、勿論そちらでも良いです。
2019/06/04(Tue) 18:51 | URL | ドクター江部 | 【編集
ありがとうございます
江部先生、早速に返信頂戴いたしまして御礼申し上げます。本日母親が再度、ご指摘いただいた項目の血液検査を行いました。結果は後日となりますが、引続きのご指導何卒よろしくお願い申し上げます。
今後も、先生のブログやセミナーを楽しみにしております。
2019/06/06(Thu) 14:33 | URL | TAK | 【編集
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