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「糖質制限食」と「従来の糖尿病食」とEBMについて
【19/04/17 西村典彦
日本糖尿病学会のガイドラインについて
「糖尿病診療のエビデンス」能登 洋著 (58ページ)によると
「炭水化物50〜60%エネルギー、タンパク質20%エネルギー以下を目安とし残りを脂質とする」と言う日本糖尿病学会のガイドラインの根拠は炭水化物については血糖や脂質を評価したRCT主体のメタアナリシスに基づいていると記載されていますので、本当ならエビデンスレベルは高かそうです。
しかし、ガイドラインに従っても日本の糖尿病患者は減る気配はなく、私自身もそんなに炭水化物を食べれば血糖値をコントロールできなくなるのは経験上わかっています。
メタアナリシスに基づいているならばメタアナリシス自身に問題がある、もしくは目指すものが違う(合併症以外のファクター)と思われますが、どのような点に誤りやバイアスがあるのでしょうか。】


西村典彦 さん

「糖尿病診療のエビデンス」能登 洋著 は、2015年刊行ですね。
「糖尿病診療ガイドライン2016」の食事療法の部分、 37ページに
Q3-1 糖尿病における食事療法の意義と最適な栄養素のバランスは
どのようなものか?
に対し、
「摂取エネルギーのうち、炭水化物を50-60%、たんぱく質20%以下
を目安とし、残りを脂質とする。」
と記載しています。
しかし、推奨グレードの表示はなしです。
従って、エビデンスはないに等しいと思われます。
「糖尿病診療ガイドライン2016」は
2016/5/23刊行です。

能登先生、2018年には、
山田悟先生と一緒に、糖質制限食肯定の論文を書いておられます。


さて、
EBMが現在、医学界を席巻しています。

<EBMとは>

Evidence Based Medicine(証拠に基づく医学)を略してEBMと言います。
EBMだけに頼る医療には、明確に限界があります。
一方、EBMを無視する医療にも、明確に限界があります。
ともあれ今回の記事は、EBMについて考察してみます。

医学界において、evidence(エビデンス、証拠、根拠)となるのは、
基本的に医学雑誌に掲載された論文です。
ニューイングランド・ジャーナル、ランセット、米国医師会雑誌など、
定評ある医学専門誌に掲載された論文であることも、
evidence(エビデンス、証拠)の大きな要素となります。

その論文も
①無作為割り付け臨床試験(RCT)
②前向きコホート研究

の二つが信頼度の高いものとなります。
その論文も「糖尿病診療ガイドライン2016」によれば、

・レベル1+: 質の高いランダム化比較試験(RCT)およびそれらの
メタアナリシス(MA)/ システマティック・レビュー(SR)

・レベル1:それ以外のRCTおよびそれらのMA / SR

・レベル2:前向きコホート研究およびそれらのMA / SR 
     (事前に定めた)RCTサブ解析

・レベル3:非ランダム化比較試験 前後比較試験
      後ろ向きコホート研究
      ケースコントロール研究およびそれらのMA / SR
      RCT後付けサブ解析

・レベル4:横断研究 症例集積

*質の高いRCTとは
(1)多数例
(2)二重盲検、独立判定
(3)高追跡率
(4)ランダム割り付け法が明確

などをさす。 

といった順番で、信頼度に差をつけられています。
これを研究デザインのヒエラルキーと呼ぶそうです。
他にコンセンサスがありますが、コンセンサスは、
実証的研究に基づかない権威者の意見や合意なので、エビデンスとは言えません。
一般にエビデンスレベルが高い研究論文と言うときは、

(1) レベル1+ / レベル1
(2) レベル2

に基づく論文のことをさします。

症例報告も大切な医学研究の一つなのですが、
ことEBMというときは、「無作為割り付け臨床試験(RCT)」と「前向きコホート研究」
だけ考慮すればいいということです。

かつて、医学界では
実証的研究に基づかない権威者の意見や合意(コンセンサス)が幅を利かしていて、
学会発表などでも、有名大教授で権威者の先生が「私はこう思う」といったら、
水戸黄門の印籠みたいなもので「ヘヘー、恐れ入りました」という事で
一件落着という世界だったのです。

権威者が、何人か寄り集まって、ガイドラインの内容を決めると、
コンセンサスによる決定となります。
これは、上述のヒエラルキーからみると、エビデンスレベルは最低、
エビデンスなしということです。

権威者の意見や、コンセンサスに基づく見解などに頼っているのは、
非科学的であるという批判が、世界中の医学界で続出して、
それではよろしくないということで、
evidence based medhicine(証拠に基づく医学)→略してEBMが登場したわけです。

<従来の糖尿病食にはエビデンスがない>
前振りが長かったですが、
「糖尿病診療ガイドライン2016」の食事療法の部分、 37ページに

Q3-1 糖尿病における食事療法の意義と最適な栄養素のバランスは
どのようなものか?

に対し、

「摂取エネルギーのうち、炭水化物を50-60%、たんぱく質20%以下
を目安とし、残りを脂質とする。」


と記載しています。
しかし、推奨グレードの表示はなしです。
以前の、「科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン2010」の食事療法、
31ページでは、「炭水化物は指示エネルギー量の50~60%」と、
グレードAで推奨してありますが、根拠はなんとコンセンサスで、
科学的根拠に基づいていないことが明示されていました。

2010年に比べれば2016年は、エビデンスのないことを
グレードAで推奨するという暴挙がなくなった分よしとしましょう。
ちなみに「2型糖尿病患者に運動療法は有効か?」に対しては、
血糖コントロールに有効で、推奨グレードAです。

結局、糖尿病の食事療法に関しては、
日本糖尿病学会が推奨する糖尿病食(カロリー制限高糖質食)には
エビデンスはないのです。

<糖質制限食にはエビデンスがある>

一方、ひいき目と言われるかもしれませんが
糖質制限食においては、一定のエビデンスがあります。
以下に、EBMとして信頼度の高い長期の研究を列挙します。
いずれも、糖質制限食の『長期的有効性・安全性』を保証する論文です。
なおこれらの論文は、スーパー糖質制限食に関するものではありません。
普通に食事をしている集団(糖質も食べている)において、
糖質を多く食べている群と比較的少ない群を比較したものです。
1年間の研究ならスーパー糖質制限食のRCTが少なくとも2つあります。

1)はRCT論文で8年間であり、信頼度はトップランクの研究です。
2)3)4)5)6)は前向きコホート研究であり、信頼度は上から二番目です。

糖質制限食の長期的安全性の肯定に関しては、
EBMに基づき少なくとも6つの信頼度の高い研究論文が存在するわけです。

例えば
2)は
炭水化物摂取比率36.8±6.1%グループと58.8±7.0%のグループの比較です。
炭水化物摂取の多いグループは冠動脈疾患リスクが増加です。

4)は
糖質摂取比率51.5%のグループと糖質摂取比率72.7%のグループの比較です。
糖質摂取比率が一番少ない51.5%のグループは一番多い72.7%のグループに比較すると
心血管死のリスクが59%しかありません。

いずれも糖質大量摂取の弊害(心血管リスク)を如実に示しています。
結果として糖質摂取が少ないほど心血管リスク軽減において有利になることも示しています。

6)は2017年8月にランセットに発表されました。
「炭水化物の摂取比率が多いほど、総死亡率が上昇し
脂質の摂取比率が多いほど、雄死亡率が低下」
ですから、まさに夏井睦先生の言う「炭水化物が人類を滅ぼす」ですね。


長期の研究
1)RCT論文

低糖質地中海食(LCMD)。8年間RCT論文。
糖質50%未満のLCMD群と低脂肪群の比較。
女性は1800kcal/日。男性は1800kcal/日。
新たに診断された2型糖尿病患者では、LCMDは低脂肪食と比較して、
HbA1cレベルの大きな減少、糖尿病の寛解率が高く、糖尿病治療薬の導入を遅らせた。
Diabetes Care. 2014 Jul;37(7):1824-30.
The effects of a Mediterranean diet on the need for diabetes drugs and remission of newly diagnosed type 2 diabetes: follow-up of a randomized trial.

2)前向きコホート研究
低炭水化物・高脂肪・高タンパク食に冠動脈疾患のリスクなし
一方総炭水化物摂取量は冠動脈疾患リスクの中等度増加に関連していた。
高GLは冠動脈疾患リスク増加と強く関連していた。
ニューイングランドジャーナルのコホート研究  
82802人 20年間 2006年掲載 ハーバード大学
炭水化物摂取比率36.8±6.1%グループと58.8±7.0%のグループの比較。
Halton TL, et al. Low-carbohydrate-diet score and the risk of coronary heart disease in women. New England Journal of Medicine 2006;355:1991-2002.

3)前向きコホート研究
21論文、約35万人をメタアナリシスして、
5~23年追跡して1.1万人の脳心血管イベントが発生。
飽和脂肪摂取量と脳心血管イベントハザード比を検証してみると、
飽和脂肪酸摂取量と脳心血管イベント発生は、関係がないことが判明。
Siri-Tarino, P.W., et al., Meta-analysis of prospective cohort studies evaluating the association of saturated fat with cardiovascular disease.  Am J Clin Nutr, 2010. 91(3): p. 535-46.

4)前向きコホート研究
「糖質制限食の安全性にエビデンス」
前向きコホート試験NIPPON DATA80 29年間 中村保幸
第10分位(糖質摂取比率51.5%)のグループは、第1分位(糖質摂取比率72.7%)のグループに比べて女性においては心血管死のリスクが、
59%しかないという素晴らしい結論で、糖質制限食の圧勝。
Br J Nutr 2014; 112: 916-924


5)前向きコホート研究

上海コホート研究
「糖質摂取量により4群に分けて、糖質摂取量が多いほど心血管疾患の発症リスクが高い」
11万7366人を対象に、調べた研究。
女性が6万4,854人で、平均追跡期間が9.8年。
男性が5万2,512人で、平均追跡期間が5.4年。

女性 心血管発症リスク
1、糖質摂取量264g/日未満 ---------- 1.00
2、糖質摂取量264g~282g/日未満-------- 1.19
3、糖質摂取量282g~299g/日未満-------- 1.76
4、糖質摂取量299g/日以上 ----------- 2.41

男性 心血管発症リスク
1、糖質摂取量296g/日未満 ------------ 1.00

2、糖質摂取量296g~319g/日未満 ---------- 1.50

3、糖質摂取量319g~339g/日未満 ---------- 2.22

4、糖質摂取量339g/日以上
Am J Epidemiol. 2013 Nov 15;178(10):1542-9.
Dietary carbohydrates, refined grains, glycemic load, and risk of coronary heart disease in Chinese adults.

6)前向きコホート研究
 『炭水化物の摂取増加で死亡リスク上昇』
ランセット誌のオンライン版(2017/8/29)で、
 カナダ・マックマスター大学のMahshid Dehghan博士らが報告。
5大陸18カ国で全死亡および心血管疾患への食事の影響を検証した大規模疫学前向きコホート研究(Prospective Urban Rural Epidemiology:PURE)の結果。
2003年1月1日時点で35~70歳の13万5335例を登録し、
2013年3月31日まで中央値で7.4年間も追跡調査。
論文の内容を要約
1)炭水化物摂取量の多さは全死亡リスク上昇と関連。
2)総脂質および脂質の種類別の摂取は全死亡リスクの低下と関連。
3)総脂質および脂質の種類は、心血管疾患(CVD)、心筋梗塞、CVD死と関連しない。
4)飽和脂質は脳卒中と逆相関している。

炭水化物摂取比率    総死亡率
1群 46.4%          4.1%
2群 54.6%         4.2%
3群 60.8%         4.5%
4群 67.7%         4.9%
5群 77.2%         7.2%

脂肪の摂取比率     総死亡率
1群 10.6%         6.7%
2群 18.0%         5.1%
3群 24.2%         4.6%
4群 29.1%         4.3%
5群 35.3%         4.1%



<生理学的事実>
さらに、生理学的事実として、糖尿人が糖質を摂取した場合、
糖質制限食なら、食後高血糖は生じませんが、
従来の糖尿病食なら、食後高血糖が必ず生じるということは明白です。

そして、
国際糖尿病連合(International Diabetes Federation:IDF)2007年
「食後血糖値の管理に関するガイドライン」
国際糖尿病連合(International Diabetes Federation:IDF)2011年
「食後血糖値の管理に関するガイドライン」


によれば、
食後高血糖は、
大血管合併症の独立した危険因子であり、
酸化ストレスを生じ血管内皮を障害し、
糖尿病網膜症と関係し、
IMT肥厚と関係し、
認知障害にも関係し、
癌発症リスク上昇と関連するとのことです。

糖質制限食により、食後高血糖を防ぐことの意味は、大変大きいと思います。


江部康二
コメント
日本医療の程度??
都内河北 鈴木です。

本日記事内容は、
私自身の医療デ~タが2013年1月に「生還、」、
その後「覚醒、再覚醒」した事で、8年目の現在が有り、
江部先生「糖質制限理論」の、改善証明しています!!

日本医療界、特に「日本闘病病学会」は現在も、
1患者が1日で理解できる「血糖値減少」改善を、

何故、時代進化無い「糖質摂取」を必須だと考えて、
医学用語多様で、改善皆無の為の言葉遊びをしているのが理解不能です!!

私1患者は、2005年発表、江部先生「糖質制限理論」を、
2012,10,1、より実践で、インスリン投与者が、
3か月足らずで、インスリン自主離脱し、
ヘモグロビン正常化し、
糖尿病重症化21年間より「生還」した現実があるのに!!

*改善医療デ~タ全て存在しています!!
*担当K病院経営者K・Hの「知能程度・無知証明文言も存在!!」
*M日赤・担当部長S・Tの「知能程度・文言も存在!!」

現在にも本ブログ記事の「医療程度思考者」が存在していいることが、
私には不思議です!!

3文ドラマの様な現実には、怒りが収まりません!!

私は、更なる後遺症の改善をして、医療証言をコメントします!!

江部先生には、「生還、覚醒、再覚醒、」でき、感謝尽きません!!
ありがとうございます。
敬具






2019/04/17(Wed) 22:36 | URL | 都内河北 鈴木 | 【編集
糖質とカロリーについて
先生のブログや著書を読んだ上で糖質制限について質問があります。

いくら糖質を抑えても摂取カロリーが標準よりずっとオーバーしてると、代謝より摂取量が多いので痩せないどころか太りますよね?

糖質が少ないマヨネーズや肉の脂身を毎食大量に摂取するとカロリーオーバーで太るということになりますが、糖質は少ないので血糖値への影響は少ない。という認識で合ってますか?

太るということは血中の糖分を脂肪に蓄えてるからだと認識してますが、糖質が少ないのになぜ太るのでしょうか?

また、糖尿病対策としては糖質を抑えることで血糖値スパイクなどを起こさないことを目的としてるかと思いますが、糖質だけ気を付ければ血糖値に影響はないので、カロリーは気にしなくてもいいのでは?と疑問に思いました。
2019/04/18(Thu) 10:41 | URL | TT | 【編集
Re: 糖質とカロリーについて
TT さん

仰る通りと思います。
スーパー糖質制限食でも
摂取カロリーが消費カロリーより多ければ、体重は増えると思います。

スーパー糖質制限食では、糖尿病学会のいう『カロリー制限食』ほど
厳しいカロリー制限はしません。
スーパー糖質制限食での摂取カロリーの目安は厚生労働省のいう『推定エネルギー必要量』です。

摂取した、糖質、脂質、タンパク質は余剰のものは、中性脂肪として蓄えられます。

また、糖質制限食の場合はカロリー無制限で摂取OKとしても、
自然に適正摂取エネルギーになることがRCTで証明されています。
322名の肥満患者を、カロリー制限ありの『脂肪制限食』群と『地中会食』群、カロリー無制限の『糖質制限食』群に
分けて2年間経過観察した研究です。
興味深いことに、カロリー無制限の糖質制限食群も、自然に他の2群と同様の摂取エネルギーとなりました。

カロリー無制限でスーパー糖質制限食、例えばステーキ1キログラム食べても、
糖尿人でも、血糖値の上昇は20mg/dl以下です。
しかし、体重は増えるでしょうね。
2019/04/18(Thu) 16:30 | URL | ドクター江部 | 【編集
TTさん、こんにちは
私の経験(糖質40g/日)を言いますと、糖質制限食の場合、カロリーオーバーでも意外と太りにくいですし、太ってもすぐに元に戻ります。たまに1ポンドステーキなどを食べてもそんなに簡単には太りません。
毎日、普通にお腹いっぱい食べても適正体重付近で落ち着いています。どちらかと言うと少し頑張って食べないと痩せるくらいです。食事のエネルギー比率はタンパク質20%、脂質70%、糖質10%くらいですが、体脂肪率も最も長寿とされる18%付近で安定しています。万人に当てはまるかはわかりませんが、糖質さえ食べなければいろんなものを我慢しなくて良いのはストレスが溜まらなくて非常に楽です。
2019/04/18(Thu) 20:54 | URL | 西村典彦 | 【編集
西村さん、こんにちは。
1ポンドステーキ食べても太らないとのことで、嬉しいお話が聞けました。食べないと痩せるなんて羨ましいです。
僕は糖質制限(60g/日)を初めて3ヶ月目に突入しましたが、体重が100を超えてるのに1ヶ月に2キロしか減らないので、まだ普通の一人前よりは多いのかもしれません。
もっと糖質制限を続けた生活を送ると西村さんのような体質になるのかもしれませんね。
2019/04/19(Fri) 10:10 | URL | TT | 【編集
江部先生

お返事ありがとうございます。
カロリー無制限で摂取したら適正摂取エネルギー以上は肥満の元になるということですね。

これで太った場合は糖尿病という心配はなくなり、健康的な肥満になるのでしょうか?それとも血糖は問題ないけど、肥満による血圧、中性脂肪などの悪化で、別の病気が発症しやすくなるのでしょうか?逆にカロリーも制限したり、夕飯を完全に抜くなどすると一日1000-1500カロリーになりますが、これは問題がありますか?
2019/04/19(Fri) 10:25 | URL | TT | 【編集
Re: タイトルなし
TT さん

カロリー制限食は、筋肉が落ちたり、骨粗鬆症のリスクとなります。

肥満は肥満で、糖尿病とはまた別に、様々な病気のリスクとなります。
例えば、肥満していると食道・膵臓・大腸・乳房・子宮体部・腎臓の6つの各癌で「リスクを確実に上げる」こととなります。
2019/04/19(Fri) 20:02 | URL | ドクター江部 | 【編集
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