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80歳以上の降圧。140/90未満で死亡リスク上昇。
こんにちは。
今朝、高雄病院通勤途中にある佐野藤右衛門さんの庭園の桜が
三分~五部咲きになっていました。
もう少ししたらライトアップが始まります。
しばらくは往復花見の贅沢な通勤ですね。

さて、
メディカルトリビューン 医療ニュース
80歳以上の降圧、140/90未満で死亡リスク上昇
ドイツ・高齢高血圧患者コホート研究

https://medical-tribune.co.jp/news/2019/0322519583/?_login=1#_login
2019年03月22日

メディカルトリビューンに
興味深い記事が掲載されました。
ヨーロッパハートジャーナルの2019年2月25日オンライン版に掲載された
ドイツの研究報告です。
Eur Heart J. 2019 Feb 25. pii: ehz071. doi: 10.1093/eurheartj/ehz071.

 登録時(2009年11月~11年6月)に70歳以上で降圧薬を服用していた患者1,628例(平均年齢81歳)を対象に、
血圧正常化は収縮期血圧140mmHg未満および拡張期血圧90mmHg未満とし、
非正常化は収縮期血圧140mmHg以上または 拡張期血圧90mmHg以上と定義し、2016年12月まで前向きに追跡しました。

結果は、
正常化血圧群は非正常化血圧群に比べて、
特に80歳以上では死亡リスクが40%上昇
同様に心血管イベント既往例では、死亡リスクが61%上昇しました。
一方、70~79歳または心血管イベント非既往例では、
この傾向は観察されませんでした。

それを受けて結論としては、
「80歳以上または心血管イベント既往歴を有する高齢者を降圧療法で140/90mmHg未満に管理することは
死亡リスクを高める可能性がある」

というものでした。

日本の「高齢者高血圧ガイドライン2017」
9ページに、
●高度に機能が障害されていない高齢者に対する降圧
治療は,年齢に関わらず心血管病の発症を抑制し生
命予後を改善するので行う.(推奨グレード A)


との記載がありますが、
少なくとも80歳以上や心血管イベント既往歴がある高血圧患者さんには
血圧を下げるか否か、一考の余地がありますね。


江部康二


☆☆☆
以下、メディカルトリビューンの記事から一部抜粋です。
https://medical-tribune.co.jp/news/2019/0322519583/?_login=1#_login

 【最近まで、高齢者では血圧を140/90mmHg未満に管理することが有益と考えられてきたが、この目標値は一般化できないとの研究結果が示された。ドイツ・Charité's Institute of Clinical Pharmacology and ToxicologyのAntonios Douros氏らは、70歳以上の降圧薬服用患者を前向きに検討した結果、80歳以上または心血管イベント既往例では、血圧140/90mmHg未満への降圧が死亡リスク上昇に関連していたとEur Heart J(2019年2月25日オンライン版)で発表した。

Eur Heart J. 2019 Feb 25. pii: ehz071. doi: 10.1093/eurheartj/ehz071.
Control of blood pressure and risk of mortality in a cohort of older adults: the Berlin Initiative Study.

高齢患者の降圧目標値は議論中
 高血圧有病率は70歳の70~80%に上る。欧州のガイドラインでは、心筋梗塞や脳卒中を予防するための降圧目標値として65歳以上で140/90mmHg以下を推奨。80歳以上にも同じ目標値が適用されるが、個々の患者で併存症などの付加的要素を考慮する必要がある。高齢高血圧患者の予後を改善する至適降圧目標値については、いまだ結論が出ていない。
 今回の研究では、降圧療法により地域在住高齢者の血圧を140/90mmHg未満に管理することと全死亡リスク低下との関連を検討した。対象は、慢性腎臓病対策のための高齢者コホートBerlin Initiative Study(BIS)登録時(2009年11月~11年6月)に70歳以上で降圧薬を服用していた患者1,628例(平均年齢81歳)を対象に、血圧正常化は収縮期血圧(SBP)140mmHg未満および拡張期血圧(DBP)90mmHg未満とし、非正常化はSBP 140mmHg以上またはDBP 90mmHg以上と定義し、2016年12月まで前向きに追跡した。

イベント既往で死亡リスク61%上昇
 8,853人・年の追跡期間中に1,628例のうち636例で血圧の正常化が認められ、469例が死亡した。
 Cox比例ハザードモデルによる解析の結果、正常化血圧は非正常化血圧に比べて、性、BMI、喫煙状態、飲酒量、糖尿病、降圧薬数を調整後の全死亡リスク上昇と関連していた。正常化血圧群は非正常化血圧群に比べて、特に80歳以上では死亡リスクが40%上昇、同様に心血管イベント既往例では、死亡リスクが61%上昇した。一方、70~79歳または心血管イベント非既往例では、この傾向は観察されなかった。

降圧療法で個別調整が必要
 以上の結果から、Douros氏らは「80歳以上または心血管イベント既往歴を有する高齢者を降圧療法で140/90mmHg未満に管理することは死亡リスクを高める可能性がある」と結論。また、これらの患者群の降圧療法について、「個人のニーズに応じて調整する必要性が示された。欧州の高血圧診療ガイドラインを全ての患者に適用する、現行のアプローチを変更するべきである」と付言している。

 今回使用されたデータは、同施設のElke Schäffner氏が主導するBISの一部として集積されたもので、2009年以降、2年ごとに問診、血圧・腎機能測定、血液・尿検査が実施された。同氏は「今回、降圧が6年後の死亡に及ぼす影響とその程度を検討した。次のステップとして、どのような高齢高血圧患者で降圧療法が有益なのか検討したい」と述べている。(坂田真子)】
コメント
緑内障は4型糖尿病
ドクターシミズの2018/11/5の記事は非常に面白く、江部先生の御見解をお伺いできましたら幸いです。

http://promea2014.com/blog/?p=6020

脳のインスリン値は、血中の10〜100倍・・・血中のインスリン状態は正常範囲であっても、脳だけがインスリン抵抗性を示す場合・・・インスリンはグルタミン酸の毒性から神経を保護する・・・インスリンは炎症を抑える・・・微小循環血流を増加させ、組織の虚血を防ぐ・・・
2019/03/27(Wed) 09:58 | URL | 通りすがり | 【編集
Re: 緑内障は4型糖尿病
通りすがり さん

ありがとうございます。
早速、覗いてみます。
2019/03/27(Wed) 14:21 | URL | ドクター江部 | 【編集
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