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糖質制限食とAGEs 2019年3月。
こんにちは。

今日の記事は糖質制限食とAGEs についての考察です。

近年、 AGEs*の血管壁への蓄積が糖尿病合併症の元凶ではないかと言われています。
AGEsには体内で産生されるものと食事由来のものがあります。

糖質制限食では、肉や魚や卵など動物性たんぱく質を焼いて食べることがよくありますので
食事由来のAGEsが有害か無害か気になるところです。


A)体内産生される AGEsは有害


1. 体内で高血糖により産生されたAGEsが、細小血管合併症に関わることは、
以前から指摘されていました。
細小血管合併症とは、糖尿病網膜症や糖尿病腎症です。

2. さらに近年「高血糖の記憶**」という概念で、
米国の大規模臨床研究・DCCTのフォローアップ試験であるEDIC-DCCTの報告、
UKPDSの20年後の解析で、
大血管合併症にもAGEsが関わっているという説が有力となっています。
大血管合併症とは、心筋梗塞や脳梗塞などです。
高血糖の記憶・借金を残さないためには、
糖尿病発症の初期の段階から血糖コントロールを保つことが大切です。
当然、早ければ早いほどいいわけです。
糖尿人の皆さん、カロリー制限食(高糖質食)では必ず、
食後高血糖が生じ将来に借金を残します。
是非、糖質制限食で速やかな血糖コントロールを目指ししましょう。

3.糖尿病でない人でもAGEsは蓄積します。
血管壁以外にも全身のタンパク質にブドウ糖へばりついてAGEsとなります。
骨のコラーゲンにたまると骨粗鬆症、皮膚のコラーゲンにたまるとシワ、
目の水晶体にたまると白内障となります。
血中AGEsが多いと歯周病にもなりやすいのです。


B) 食品由来のAGEsについては、無害か。

食品に含有されるAGEsが人体に有害か否かは、現在論争中です。
歴史的にみると人類が火を使うようになり、
食事からの「AGEs」摂取は劇的に増加しましたが、
火を使い始めて人類の寿命が縮んだという話は聞いたことがありません。
人類が自ら火をおこして日常的に使い始めたのがいつからかは、
明確にはわかっていませんが、約100万年前とされているようです。
従って人類の歴史から考えると、食品由来のAGEsは人体に無害の可能性が
高いと考えられます。
そして生体内の AGEs が食品のAGEsに由来するかどうかですが、
それを示すエビデンスは実は少ないのです。
現実には毒性を示すAGEsの具体的な構造が不明なので、
食品に含まれる量や生体への吸収濃度も不明です。
さらに、AGEsの毒性を示す根拠となる疫学的研究もありません。
このように、食品由来のAGEsが有害という根拠はほとんどないに等しいのです。
また、日本の伝統的な食品である「味噌」「醤油」はAGEs含有量が極めて多い食品ですが
それらを毎日摂取している日本人の平均寿命は世界有数のランクであり、
2013年、ユネスコは「和食」を無形文化遺産に登録しました。
このように、食品由来のAGEsは、無害であり、
焼き肉や焼き魚や揚げ物などを含む糖質制限食を安心して食べて良いと思われます。

C) AGEs値の検査


様々な AGEsがあるので、一つの検査法でAGEsの総量を測定することは困難です。
一方、近年各種AGEsの化学構造が解明されたことや抗体作成技術の進歩によって、
CML、ピラリン、ペントシジン、クロスリンなど、個別AGEの血液検査での測定法が確立されました。
2006年にはELISA法による血中ペントシジン測定が腎機能検査項目において保険収載(実施料130点)され、
臨床検査として測定されるようになりました。
ペントシジンは、構造が同定されている数少ない AGEs(糖化最終産物)の一つです。
ペントシジンは、コントロール不良の糖尿病や腎不全で高値となります。
血漿中のクレアチニン値が上昇する以前の
「軽度腎機能障害期」から「高度腎機能障害期」、「腎不全期」、「尿毒症期」、「血液・腹膜透析期」
への腎機能の低下に伴い血漿中濃度が上昇するため、腎疾患の診断に有用です。
なお、糖尿病の場合はペントシジンは保険適応となりません。

AGE測定器(腕に光をあてて測定)も、ありますが、保険が効きません。



D)私の結論

1)体内の血糖により産生された「AGEs」は、動脈硬化や老化や糖尿病合併症などのリスクとなる。
  すなわち、糖質摂取による食後高血糖が大きなリスクとなる。
2)食事由来の「AGEs」は、動脈硬化や老化や糖尿病合併症などのリスクにはならない可能性が高い。

諸説ありますが、私は、現時点でこのように考えています。



*AGEs

ブドウ糖は体内でタンパク質にへばりつく性質があります。
タンパク質と糖が結びついた物質で、AGEと呼ばれる物質があります。
Advanced Glycation End-productの頭文字をとってAGEです。
日本語では終末糖化産物と訳されています。
過剰な血糖は、糖化反応により血管壁のコラーゲンなど様々なタンパク質に付着します。
付着した糖は一部変性してアマドリ化合物(変性ブドウ糖)となります。
このアマドリ化合物からさらに糖化反応が進行するとAGE(終末糖化産物)ができます。
AGEは、糖尿病合併症を引き起こす、重大な原因の1つです。
AGEには多種の物質があります。
それらを総称してAGEsといわれます。
日常よく検査されるグリコヘモグロビンやグリコアルブミンは、
糖化反応の前期生成物であるアマドリ転位生成物です。


**高血糖の記憶

糖尿病血管合併症のメカニズムを特徴的に説明する、高血糖の記憶(hyperglycemic memory)と呼ばれる概念があります。
「高血糖の記憶」とは、過去の高血糖レベルとその曝露期間が生体に記憶され、
その後の血管合併症の進展を左右するという考え方です。
ヒトの糖尿病において、この「高血糖の記憶」の存在を示すエビデンス(証拠)として、
米国の1型糖尿病患者の大規模臨床研究・DCCTのフォローアップ試験であるEDIC-DCCTの報告があります。
DCCTでは、1型糖尿病患者を従来の通常療法群と、
より厳格に血糖管理を行う強化療法群に分け、平均6.5年間追跡しました。
その結果、通常療法群に比べ強化療法群で平均HbA1c値が1.9%低下し、
強化療法群で血管合併症の進展リスクが大幅に減少しました。(☆)
同研究終了後に行われたEDIC-DCCTでは、通常療法群にも強化療法を実施し、
両群をさらに平均11年間追跡しました。
つまり「継続的な強化療法群」と「通常療法→強化療法群」の2つのグループの比較が、
DCCT終了後11年間行われたことになります。
その結果、開始から3~4年で両群の平均HbA1c値がほぼ同等となったにも関わらず、
11年間の心筋梗塞、脳卒中、心血管死のリスクは
「継続的な強化療法群」の方がやはり低かった(相対リスク57%低下)ことが報告されたのです。(☆☆)
すなわち、糖尿人において一定期間血糖コントロールが不良であれば、
高血糖の記憶が「借金」のように生体内に残り、その後良好なコントロールが得られても、
血管合併症リスクの差は縮まらないことが示されたわけです。
この借金の正体が、組織沈着AGEsではないかと言われています。
まだ仮説ではありますが、組織に沈着したAGEsが血管を傷害し続け、
動脈硬化の元凶となり「高血糖の記憶」を最もよく説明するとされています。

(☆)N Engl J Med 1993; 329: 977-986
(☆☆)N Engl J Med 2005; 353: 2643-2653
コメント
お世話になっております。
私はやせ型の56歳女性です。
何を食べても太らない体質でしたので、若い頃から暴飲暴食、甘いものも見境なく食べてきたのですが、数ヶ月前にかかりつけの医師から、私のhbA1c(5.7)数値は隠れ糖尿だとご指摘頂きました。まさか私が糖尿病予備軍⁉︎…と、ショックを受け、早速先生に教えて頂いたリブレで何がいけないのかをチェックしたところ、とんでもない食後高血糖だと判明しました。
若い頃から、どうにもならない程の食後の睡魔に悩まされておりましたが、今やっとその理由がわかりました。
パン類をお腹いっぱい食べた時は、急上昇して、250を超えてしまうこともあり…今まで数十年もこの食生活を続けてきたのかと思うと恐ろしくなり、数週間前からほぼスーパー糖質制限をしております。
先日、江部先生の『 男・50代からの糖質制限 』を読ませていただき、50代からならまだ遅くない…と書いてありましたが、若い頃からこんな食生活を続けていたらAGEsの蓄積は普通の50代の方と比べたらとんでもないことになっているのではないでしょうか。こんな私でも、今からしっかり糖質制限すれば間に合うのでしょうか。
どうぞよろしくお願いいたします。
2019/03/11(Mon) 21:24 | URL | 食後高血糖人 | 【編集
AGEs
先生、今まで通り安心して焼いた肉を食べようと思います!ありがとうございます
2019/03/12(Tue) 00:49 | URL | ゆうすけ | 【編集
風邪薬
いつも先生のブログで、大変お世話になっています。
タイトルとは関係ない質問ですみません。
少し風邪気味かなぁと思った時には葛根湯が良いとよく聞きますが、以前、先生がこのブログで、私は〇〇を飲みます
と書かれていたように思います。どうにも探せなかったのですが、教えていただけますでしょうか。

市販薬で飲めるものがあれば、急場な時、休診の時、ちょっと変かなぁと思った時に大変助かります。
又、花粉症の市販薬で、気をつける点があれば教えていただけますか?
2019/03/12(Tue) 07:42 | URL | ユウ | 【編集
Re: 風邪薬
ユウ さん

漢方薬は、一人一人の症状に応じて、処方も変わります。

落語の「葛根湯医者」は、風邪でも肩こりでも腹痛でも何でも葛根湯を処方する藪医者のお話ですかね。

風邪の漢方でも、いろいろあります。
葛根湯、小青竜湯、麻黄湯、麻黄附子細辛湯・・・これらは麻黄が入っているのでドーピングチェックでひっかかります。
麻黄は胃に応える人もいますし、眠れなくなる人もいます。
香蘇散は胃が弱い人の初期の風邪薬です。
桂枝湯、柴胡桂枝湯などもあります。

花粉症なら、小青竜湯、麻黄附子細辛湯、苓甘姜味辛夏仁湯などでしょうか?
医療機関に行くのが面倒なら、薬局で薬剤師さんと相談されれば良いと思いますよ。
2019/03/12(Tue) 16:48 | URL | ドクター江部 | 【編集
風邪薬
早速のご返答ありがとうございます。
私は糖尿病ですが、先生のブログに出会い糖質制限でここ四年ほど安定した数値と、以前よりも健康に過ごしています。
血糖値にあまり影響の無い市販薬があれば急場が助かると思っての質問でした。
ありがとうございました。
2019/03/12(Tue) 17:47 | URL | ユウ | 【編集
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