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血中インスリン濃度が低いと太りやすい? → ヒトでは違います。
【P19/02/15 クワトロ
血中インスリン濃度が低いと太りやすい?
広島大学大学院の浮穴和義教授主導の研究で、血中のインスリンの濃度が低いと、
炭水化物などに対する食欲を増進させる機能と、
炭水化物などの糖質を脂肪に変換する機能を増幅させる脳内因子NPGLの産出量が
増えてしまうそうです。

これはずっと糖質制限を継続していくと、インスリン分泌量は低下しますが、
食欲(主に炭水化物への欲求)が高まり、糖質を摂ったときには、
それを脂肪に変換する能力が高まっていて、糖質制限をやめてしまえば、
以前よりも太りやすいカラダになってしまっているということではないでしょうか?
もしくは、一生糖質制限を続けていくことが、
リバウンドを防ぐために必要なことなのでしょうか?

参考研究
https://www.hiroshima-u.ac.jp/souka/news/41197



クワトロさん
興味深い研究をコメント頂き、ありがとうございます。
結論としては、
少なくともヒトにおいては、血中インスリン濃度が高いと肥満し、
血中インスリン濃度が低いと肥満しにくいです。

何故ならインスリンは肥満ホルモンだからです。

臨床的には、ヒトの研究<DIRECT>で、
322人の肥満の患者を3群にわけて調査しています。
2年間の研究です。
Iris Shai,et all:Weight Loss with a Low-Carbohydrate,Mediterranean,or Low-Fat Diet. NENGLJ MED JULY17,2008、VOL359. NO.3 229-241

2018年12月06日 (木)の本ブログ記事
肥満改善に対する糖質制限食の有効性・安全性は確立している。
http://koujiebe.blog95.fc2.com/blog-entry-4758.html

もご参照頂けば幸いです。

カロリー制限ありの『地中海食』『脂肪制限食』
カロリー制限なしの『糖質制限食』での比較検討です。

カロリー制限なしの糖質制限食でしたが、
満腹感と満足感が高いので、自然に摂取エネルギーが減少して
地中海食、脂肪制限食と同じだけ摂取カロリーが減少しました。

その結果、3群とも同一摂取カロリーとなりましたが、
糖質制限食で一番体重が減少してHbA1cは唯一、改善しました。

つまり、ヒトでは、糖質制限食で、食後インスリン分泌は、通常食に比し低下しますが、
自然に過剰な食欲がなくなり、満腹・満足して体重が減少したということになります。
糖質制限食で低下するのは食後の追加分泌インスリンです。
空腹時基礎分泌インスリンは糖質制限食でもなかなか減りにくいことがあります。

広島大学のラットの研究は、空腹時や糖尿病などのインスリン分泌が低い状態では、
NPGLの発現が上昇して、炭水化物の摂取量が増加して、脂肪蓄積を促進ということです。
従いまして、糖質制限食実践者の食後追加分泌インスリンが少ないこととは、
単純に比較はできないと思いますし、
現実にヒトの研究で、
糖質制限食は満腹度・満足度が高くて摂取エネルギーは適正に減少し、
体重減少効果も一番あった
ということで問題ないと思います。

また、ラットの主食は穀物で、炭水化物が主です。
従って、炭水化物摂取にあるていど特化した摂食システムを持っていると思います。
人類は、雑食ですが、狩猟・採集時代の700万年間は、穀物なしですので、
ヒトの摂食システムはラットとはかなり異なっていると思います。

なお、広島大学の研究、糖質制限に言及していて、
こちらも、とても興味深いです。


☆☆☆
広島大学 総合科学部・大学院総合科学研究科
https://www.hiroshima-u.ac.jp/souka/news/41197
【研究成果】
新規脳内因子が過食と脂肪合成を促し肥満を引き起こすことを発見
-エネルギー代謝調節に関わる脳内基盤の解明に貢献-

本研究成果のポイント
研究代表者らが発見した脳内因子(Neurosecretory protein GLと命名、略名NPGL)が
哺乳類のモデル動物であるラットにおいて、
過食や肥満に関わることを世界で初めて発見しました。
これまでの研究では、NPGLが食欲調節に関わることまでを明らかにしていましたが、
今回の研究では、食欲調節だけでなく、
糖質を脂肪に変換し脂肪蓄積を促進するメカニズムに関与していることを解明しました。
NPGLは炭水化物摂取を促すため、
今後、我々ヒトでの糖質制限の科学的理解や肥満対策の創薬への応用が期待できます。

概要
NPGLは、高カロリー食摂餌下において過食を引き起こし、最終的には肥満に至ること。また、通常食摂餌下の摂食量がそれほど増えない場合においても、白色脂肪組織での脂肪合成を高めること。
NPGLは、炭水化物の摂取量を増加させ、この炭水化物は脂肪合成の原料となること。
NPGLを産生する細胞は、インスリンに応答し、血中インスリン量が低い状態(空腹や糖尿病状態下)でNPGLの発現が上昇し、脂肪蓄積を促進すること。
※インスリンも脂肪蓄積に関わる因子として知られている。


江部康二
コメント
「人では違います。」を読み。
都内河北 鈴木です。

クワトロさんの疑心暗鬼のコメント読み、
「糖質制限理論」実践に、ウナズケル事かなと考えます。

私は「糖質制限理論」実践翌日より「血糖値減少した」から継続して
「生還、覚醒、」しましたが!!

江部先生の説明に
「満腹感と満足感が高いので、摂取エネルギ~は適正に減少し、、、」
とあるように、
自身の「糖質制限理論」8年目の「生還、覚醒、」している事から、
以前公表しました食事量が、
以前より食事量が気持ち減少している事は、適正量になっているからかなと、
内科健康数値は異常なし、糖尿病薬薬服用なしで、BMIは25ですからと考え、
本日記事読み納得し、冷静になりました!!

時代進化した医学の「五輪書」だと思い、更なる健康改善の為に読んでいます。

江部先生には、「生還、覚醒、」して、感謝尽きません!!
ありがとうございます。
敬具
2019/02/15(Fri) 21:16 | URL | 都内河北 鈴木 | 【編集
江部先生は文中でインスリンは肥満ホルモンであると言い切っていますが、肥満ホルモンというより同化ホルモンではないでしょうか?
肥満の為のホルモンなら要らないと思いますが、私は同化に重要なホルモンだと思います。

糖質制限系の医師ではインスリンは要らないという方もいるようですが、江部先生もそうお考えでしょうか?
2019/02/16(Sat) 03:57 | URL | アキ | 【編集
Re: タイトルなし
アキ さん

仰る通り、インスリンは同化ホルモンであり、極めて重要なホルモンです。
インスリンが分泌できないレベルの1型糖尿病は、インスリンが発見されるまでは
余命半年の不治の病でした。

そのインスリンが、炭水化物の過剰摂取により、肥満ホルモンと化してしまっているのが
現代の状況と言えます。

2019/02/16(Sat) 07:54 | URL | ドクター江部 | 【編集
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