スポーツと血糖値。<ブドウ糖-グリコ-ゲン>システムと<脂肪酸-ケトン体>システム。

8 -
【18/12/16 はな
スポーツと糖質制限について
いつもブログ拝読して勉強させていただきありがとうございます。
さて、低血糖の話題がでましたが、私は、50代男性で糖尿病ではありませんが、
研究のため血糖値測定器を購入し自身の糖質制限の状態を研究しております。
質問ですが、2年間糖質制限を実施した状態で、
先日半日と少し自転車トレーニングを実施し帰宅、かなり疲れましたが、
ふらふらというわけではありません。
その時の血糖値が58でした。
体調も普通でした。

さて後日、自転車レースで30分間かなりの高強度負荷をかけました。
レース後付き合いで、生クリームたっぷりのクレープを食べました。
その1時間半後の血糖値は77。
またまたそのまま寿司を普通程度食べました。
そのまた1時間半後の血糖値が80。
さぞかし上がってると思いきや…。

これは予想以上にレースでの消耗が激しかったということでしょうか?
自分としてはケトン体エンジンを利用すれば、
血糖値に影響を与えずに運動が出来るものと考えていたのですが。】


こんにちは。
はなさん(50歳、男性)から、
スポーツと血糖値について、コメント・質問を頂きました。

『先日半日と少し自転車トレーニングを実施し帰宅、かなり疲れましたが、
ふらふらというわけではありません。
その時の血糖値が58でした。
体調も普通でした。』


2年間糖質制限食を実践しておられるので、
少々心拍数が上昇するレベルの運動負荷でも、
筋肉は<脂肪酸-ケトン体>システムを
主たるエネルギー源として利用していると思われます。
脳もおそらくかなりのエネルギーを
<脂肪酸-ケトン体>システムで賄っていたと思います。
それで、血糖値が58mg/dlでも、体調が普通だったものと考えられます。


『自転車レースで30分間かなりの高強度負荷をかけました。』

自転車レースで高強度負荷で30分間なら、
<ブドウ糖-グリコーゲン>が主たるエネルギー源として利用されたと思います。

こちらの場合は<脂肪酸-ケトン体>はエネルギー源としてほとんど使われないので、
筋肉中のグリコーゲンは、ほぼ使い切って枯渇状態であり、
筋肉細胞は、どんどん血糖を取り込み、グリコーゲンを蓄積しますので、
少々糖質を摂取しても、血糖値が上昇しないのだと思います。


筋収縮によりGlut4が筋肉細胞表面に出ているのは、
新潟医療福祉大学の川中健太郎先生によれば、
運動終了後2~3時間持続とのことです。(☆)

先生の論文に引用してある文献によれば
「ラットに2時間の水泳運動を負荷したあと、運動終了3時間後でも、
一定量のインスリン刺激に対してよりたくさんのGlut4が細胞膜表面にトランスロケーションできる」
そうです。

つまり一旦、2~3時間で細胞内に戻ったGlut4ですが、
その後もしばらくはトランスロケーションしやすくなっているのですね。


『レース後付き合いで、生クリームたっぷりのクレープを食べました。
その1時間半後の血糖値は77mg。
またまたそのまま寿司を普通程度食べました。
そのまた1時間半後の血糖値が80mg。』


上述のように
普段は細胞内に沈んでいるGlut4が、運動による筋収縮により
インスリンの分泌なしで、細胞表面に上がってきます。
運動終了後3時間くらいまでは、少量のインスリンでも
多くのGlut4が細胞表面にトランスロケーションできるので
クレープや寿司を食べても、血糖値上昇がほとんどなかったものと思われます。


『これは予想以上にレースでの消耗が激しかったということでしょうか?
自分としてはケトン体エンジンを利用すれば、
血糖値に影響を与えずに運動が出来るものと考えていたのですが。』


消耗が激しかったというよりも
運動の効果が普通に出現したと考えられます。

なお、ほとんどのスポーツ(テニス、サッカー、中距離・長距離走など)においては
主たるエネルギー源は<脂肪酸-ケトン体です。
しかし、最高強度の運動(100m競争など)だけは
<ブドウ糖-グリコーゲン>システムが主たるエネルギー源として利用されます。


(☆)
運動と骨格筋GLUT4
川中健太郎
特集◆ス ポ ー ツの 科 学
学術 の動向 2006.10 42-46


江部康二
ページトップ