低血糖について。
【18/12/15 チーズ大好き
低血糖が危険?(先日のガッテンより)
先日のガッテンでは、最新研究で低血糖(血糖値70以下)により血管がダメージを受けて狭心症などの心臓病につながるかもしれないことが明らかになったという内容を放送していました。
また、前にDaiGoさんも取り上げていたように睡眠の質が低血糖状態になると低下したり、夜中に糖新生が起こって、交感神経が活発になるので目が醒めるとのことでした。
ケトジェニック状態なら血糖値は70以下で安定している人もいると思います。
しかし、それではケトジェニックは低血糖状態になり、
心臓病を招く危険があるということになりますよね。
最終的にはガッテンのまとめは寝る前のドカ食いによるインスリンの過分泌によって、寝てる間に低血糖になる。
そのため間食をして、ドカ食いは避けようという結論でした。
ここで疑問があります。低血糖が直接血管にダメージを与えてる?
そうではなくて、寝る前の血糖値スパイクが血管内皮にダメージを与えてるだけでは?
と思いました。
江部先生は低血糖状態が血管にダメージを与えるなどの研究についての話を見聞きしたことはありますか?
確かにインスリン注射などで低血糖状態になってるのはかなり危険だと思いますが、
健常者の糖質制限によって低血糖状態を維持しながら安定させることで健康を害するとは思えませんでした。
低血糖状態で血管が傷つくという理論が全く思い当たらないのです。
一回でもそのような話を聞いたら覚えているはずですが。
江部先生のご意見をお聞きしたいです。】
こんばんは。
チーズ大好きさんから
低血糖について、コメント・質問を頂きました。
低血糖発作のほとんどは、インスリン注射をしているか、
SU剤内服の場合です。
薬なしで、低血糖になることは、
「機能性低血糖」という病気を除けば、極めてまれです。
糖尿病専門医研修ガイドブック(改訂第4版、2009年)293ページには、
低血糖症の定義として、
「低血糖症状があり血糖値60mg/dl以下」
と記載されています。
薬なしで、スーパー糖質制限食やケトジェニックダイエットをしても、
低血糖になることはまれです。
肝臓で糖新生しますので、糖質摂取ゼロでも、
血糖値は一定レベルに保たれるのです。
ご先祖が狩猟・採集時代などには、
「食事あり」と「飢餓」や「絶食状態」の繰り返しだったことを
考慮すればわかりやすいですね。
血糖値が60mg~70mg/dlあって、
症状もなければ、それは「低血糖」ではありませんし、ごく正常です。
スーパー糖質制限食やケトジェニックダイエット実践で、
薬なしで血糖値が60mg~70mg/dlのことは時にあると思います。
これは、低血糖とは言いませんので、
チーズ大好きさん、ご心配要りません。
また、糖尿病は全くない、20代のアトピー性皮膚炎や気管支喘息の患者さんで
勿論内服薬なしで、空腹時血糖医値が、50mg~60mg/dlの場合が時々ありました。
最初はビックリして、待合室に飛んでいって「大丈夫ですか?」と、
事件扱いしたこともありましたが、皆さん、ケロっとしてました。
「ガッテンのまとめは寝る前のドカ食いによるインスリンの過分泌によって、
寝てる間に低血糖になる」
これは機能性低血糖のことです。
機能性低血糖症に関しては以下の、太字のブログ記事をご参照頂けば幸いです。
2018年01月15日 (月)
機能性低血糖症が糖質制限食で改善。低体重と推定エネルギー必要量。
http://koujiebe.blog95.fc2.com/blog-entry-4448.html
『血糖コントロール良好を目指してHbA1cを下げるべく厳格に薬物療法を行うとかえって総死亡率が上昇する』
という信頼度の高いACCORD試験のエビデンスがあります。(☆)
これはチーズ大好きさんのご指摘のように、
インスリン注射やSU剤を使用した厳格治療です。
すなわち<糖質摂取+薬物療法>による血糖値の乱高下と頻回の低血糖が
活性酸素を発生させ、酸化ストレスリスクとなり血管内皮を傷害し動脈硬化を生じ、
死亡率上昇の大きな要因となったと考えられます。
(☆)ACCORD
Action to Control Cardiovascular Risk in Diabetes Study Group, , Miller ME, Byington RP, Goff DC, Bigger JT, Buse JB, Cushman WC, Genuth S, Ismail-Beigi F, et al.: Effects of intensive glucose lowering in type 2 diabetes. N Engl J Med 2008; 358: 2545-2559.
江部康二
低血糖が危険?(先日のガッテンより)
先日のガッテンでは、最新研究で低血糖(血糖値70以下)により血管がダメージを受けて狭心症などの心臓病につながるかもしれないことが明らかになったという内容を放送していました。
また、前にDaiGoさんも取り上げていたように睡眠の質が低血糖状態になると低下したり、夜中に糖新生が起こって、交感神経が活発になるので目が醒めるとのことでした。
ケトジェニック状態なら血糖値は70以下で安定している人もいると思います。
しかし、それではケトジェニックは低血糖状態になり、
心臓病を招く危険があるということになりますよね。
最終的にはガッテンのまとめは寝る前のドカ食いによるインスリンの過分泌によって、寝てる間に低血糖になる。
そのため間食をして、ドカ食いは避けようという結論でした。
ここで疑問があります。低血糖が直接血管にダメージを与えてる?
そうではなくて、寝る前の血糖値スパイクが血管内皮にダメージを与えてるだけでは?
と思いました。
江部先生は低血糖状態が血管にダメージを与えるなどの研究についての話を見聞きしたことはありますか?
確かにインスリン注射などで低血糖状態になってるのはかなり危険だと思いますが、
健常者の糖質制限によって低血糖状態を維持しながら安定させることで健康を害するとは思えませんでした。
低血糖状態で血管が傷つくという理論が全く思い当たらないのです。
一回でもそのような話を聞いたら覚えているはずですが。
江部先生のご意見をお聞きしたいです。】
こんばんは。
チーズ大好きさんから
低血糖について、コメント・質問を頂きました。
低血糖発作のほとんどは、インスリン注射をしているか、
SU剤内服の場合です。
薬なしで、低血糖になることは、
「機能性低血糖」という病気を除けば、極めてまれです。
糖尿病専門医研修ガイドブック(改訂第4版、2009年)293ページには、
低血糖症の定義として、
「低血糖症状があり血糖値60mg/dl以下」
と記載されています。
薬なしで、スーパー糖質制限食やケトジェニックダイエットをしても、
低血糖になることはまれです。
肝臓で糖新生しますので、糖質摂取ゼロでも、
血糖値は一定レベルに保たれるのです。
ご先祖が狩猟・採集時代などには、
「食事あり」と「飢餓」や「絶食状態」の繰り返しだったことを
考慮すればわかりやすいですね。
血糖値が60mg~70mg/dlあって、
症状もなければ、それは「低血糖」ではありませんし、ごく正常です。
スーパー糖質制限食やケトジェニックダイエット実践で、
薬なしで血糖値が60mg~70mg/dlのことは時にあると思います。
これは、低血糖とは言いませんので、
チーズ大好きさん、ご心配要りません。
また、糖尿病は全くない、20代のアトピー性皮膚炎や気管支喘息の患者さんで
勿論内服薬なしで、空腹時血糖医値が、50mg~60mg/dlの場合が時々ありました。
最初はビックリして、待合室に飛んでいって「大丈夫ですか?」と、
事件扱いしたこともありましたが、皆さん、ケロっとしてました。
「ガッテンのまとめは寝る前のドカ食いによるインスリンの過分泌によって、
寝てる間に低血糖になる」
これは機能性低血糖のことです。
機能性低血糖症に関しては以下の、太字のブログ記事をご参照頂けば幸いです。
2018年01月15日 (月)
機能性低血糖症が糖質制限食で改善。低体重と推定エネルギー必要量。
http://koujiebe.blog95.fc2.com/blog-entry-4448.html
『血糖コントロール良好を目指してHbA1cを下げるべく厳格に薬物療法を行うとかえって総死亡率が上昇する』
という信頼度の高いACCORD試験のエビデンスがあります。(☆)
これはチーズ大好きさんのご指摘のように、
インスリン注射やSU剤を使用した厳格治療です。
すなわち<糖質摂取+薬物療法>による血糖値の乱高下と頻回の低血糖が
活性酸素を発生させ、酸化ストレスリスクとなり血管内皮を傷害し動脈硬化を生じ、
死亡率上昇の大きな要因となったと考えられます。
(☆)ACCORD
Action to Control Cardiovascular Risk in Diabetes Study Group, , Miller ME, Byington RP, Goff DC, Bigger JT, Buse JB, Cushman WC, Genuth S, Ismail-Beigi F, et al.: Effects of intensive glucose lowering in type 2 diabetes. N Engl J Med 2008; 358: 2545-2559.
江部康二