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1型糖尿病と食事療法
こんにちは。

本ブログは、主として2型糖尿病の人を対象に文章を書いていますが、1型糖尿病の皆さんも覗いていただいているようで時々質問もあります。それで今回は、1型糖尿病の人の食事療法について考えてみます。

1型糖尿人の食事療法は、糖質制限食あるいは糖質管理食がお奨めです。従来の「糖質60%、脂質20%、たんぱく質20%」のカロリー制限食(高糖質食)では、血糖値を急峻に上昇させる糖質摂取が主となるので、血糖コントロールは極めて困難です。

ただし、糖質制限食ではリアルタイムに血糖値が改善し、インスリン注射中の場合、減量しないと低血糖の恐れが強くあるので、必ず主治医とよくご相談くださいね。m(_ _)m

欧米では、特に1型糖尿病に関しては、糖質管理食はすっかり定着している食事療法です。日本では、残念ながら糖質管理食でさえも実施している医療機関は、ごく少ない段階ですが、大阪市大小児科のグループなど、糖質管理食を導入している医療機関も少数ながらあります。

1型糖尿人の食事療法の推奨図書として、まずは「バーンスタイン医師の糖尿病の解決」太田喜義訳(メディカルトリビューン)を是非お読み下さい。とても参考になります。

バーンスタイン医師は、自らが1型糖尿病の医師です。小児期12才に1型糖尿病を発症し、以後インスリンを打ち続けておられます。

35才頃すでに糖尿病腎症の初期となった頃、SMBGで血糖測定をしながら食事療法を研究し、徹底した糖質制限食を開始。蛋白尿が出現する段階の顕性腎症前期から、糖質制限食で回復しタンパク尿消失。

45才で医学部に入学、49才で医師になり、糖尿病を徹底的に研究。以後、多数の糖尿病患者を診察。73才現在、糖尿病合併症もなく、現役医師としてお元気にお過ごしです。

バーンスタイン医師の糖質制限食は、1型なのでかなり厳しく朝6g、昼12g、夕12gで合計30g/日の糖質摂取です。

ちなみに、2型糖尿病の江部康二は、一日二食(朝食抜き)で、糖質は合計40~60g/日です。
糖質制限食実践中の糖質は大部分が野菜由来です。

糖尿病患者さんの血糖コントロールの目標としては

①空腹時血糖値110mg/dl未満
②食後2時間血糖値180mg/dl未満
③HbA1c6.5%未満

を達成していれば、糖尿病合併症の進行はないとされています。

インスリン注射と糖質制限食、あるいは糖質管理食で、血糖コントロールをめざしましょう。成人で糖質制限食がつらくなければ、バーンスタイン医師と同様にこちらがお奨めです。

人類400万年の歴史で、農耕以前の399万年は、人類みんな糖質制限食ですので、本来の食生活に戻るということです。 (^_^)

糖質制限食だと、「約24時間持続型インスリン(基礎分泌インスリンの代わり)」 「毎食前の超速効型インスリン(追加分泌インスリンの代わり)」のいずれも、量的に1/3以下に減らせることが多いです。

ただ1型糖尿病は小児期の発症が多く、学校での給食とかもあり、糖質制限食が困難なら糖質管理食で良いと思います。

小児の1型糖尿病で家にいる時は、糖質制限食でインスリンの量を減らす、給食はインスリンの量を増やして糖質管理食的に摂取する、というようなパターンもあると思います。

インスリンの量は、少なくてすむほど血糖コントロールも良くなりますし、身体への影響は少ないので、工夫してみる価値はあると思います。

カロリー計算だけに頼って、インスリンの量を決めるのは、食後血糖値の予測不能ですので危険です。1型糖尿病は、血糖値が乱高下するというように言われていますが、これは血糖値を最も上昇させる糖質摂取量の計算をしないからそうなるのです。(=_=;) 

糖尿病専門医の先生方も1型糖尿病患者さんに対して、血糖値乱高下を避けるために糖質制限食は無理でも、せめて糖質管理食は導入して欲しいものです。

糖質は100%血糖に変わります。速度は平均30~40分です。
タンパク質は約50%が血糖に変わります。速度は平均3時間です。
脂質は10%未満が血糖に変わります。速度は平均十数時間です。

バーンスタイン医師によれば

通常の64kg程度の成人で、1gの糖質が1型糖尿病の人の血糖値を5mg上昇させます。しかし32kg程度の小児なら、1gの糖質が10mg血糖値を上昇させます。

通常の64kg程度の成人で1gのタンパク質が1型糖尿人の血糖値を0.93mg上昇させます。32kg程度の小児なら、1gのタンパク質が1.86mg血糖値を上昇させます。

摂取する糖質のg数を計算して、血糖値がどのくらい上昇するかを予測してそれに見合う超速効型インスリンを食前に打つのが、糖質管理食です。

2型の場合は糖質の計算だけで充分なのですが、1型の場合は、タンパク質の摂取量の計算も必要なことがあります。糖質の計算だけで血糖コントロールが上手くいかないときは、タンパク質の計算も試してみましょう。

1型糖尿人は主治医とよく相談されて、せめて糖質管理食くらいは実践したいですね。

**
<糖質管理食の本>
糖尿病のあなたへ かんたんカーボカウント―豊かな食生活のために
大阪市立大学大学院医学研究科発達小児医学教室 (編集), 大阪市立大学医学部附属病院栄養部 (編集)

糖尿病患者のためのカーボカウント完全ガイド (訳本)
医師薬出版株式会社


高雄病院 江部康二
テーマ:糖尿病
ジャンル:ヘルス・ダイエット
コメント
2型だけじゃなく、1型の人にも 糖質制限食(糖質管理食)が大変有効なのだと、改めて勉強になりました。

私のブログにも 1型の方が遊びに来られます。

今日の先生の記事を、是非 読んでいただきたく(また そこから遡って 読んでいただきたく)、改めて 先生のブログURLを 載せてもよろしいでしょうか?

リンクもさせていただいておりますが、URLからダイレクトに こちらに来られると思ったので☆
2008/07/01(Tue) 21:12 | URL | みやび | 【編集
みやびさん。

了解です。
ブログURLを 載せてもらっていいですよ。
2008/07/01(Tue) 21:37 | URL | 江部康二 | 【編集
ありがとぅございます!!!

<(_ _)>
2008/07/01(Tue) 21:43 | URL | みやび | 【編集
なるほど・・・
先生、こんばんは。

1型の私は、糖質1gで平均以上のBG7mgあげます。

>通常の64kg程度の成人で1gのタンパク質が1型糖尿人の血糖値を0.93mg上昇させます。32kg程度の小児なら、1gのタンパク質が1.86mg血糖値を上昇させます。

なるほど、体重が48kgの私はその中間ってことですね。
なるほど・・・。

ありがとうございました。
勉強になりました。
バーンスタイン博士は、先生にご教示いただいてから、ご尊敬申し上げるM.D.のおひとりデス。
2008/07/01(Tue) 23:16 | URL | my | 【編集
一型の情報とても嬉しかったです。今日の先生のブログを大切な人に渡すつもりでコピーさせていただきました。その人にぜひ一度先生病院の受診をしてほしいと思ってます。その願いがどうにか叶ってほしいです。今いろいろと準備してます。またご相談させていただきたいです。
2008/07/02(Wed) 00:05 | URL | 初歩的な質問 | 【編集
ざれ言日和…
ふと、思います。 私の思春期に両親はこう言いました。 「勉強したら痩せる!」 内科のおじさん先生も 「僕みたいに勉強したら痩せるよ、わはは。」 教師も 「夏休み死ぬ程勉強したら痩せるぞ!」 脳を使う〓糖消費
近所のお姉さん私が見る限り痩せてた頃はないけど旧帝大出て医師になりましたーむちゃくちゃできたらしい!こないだも総合病院の女医さんふくよかな体型でしたー!
はい!勉強しただけでは痩せません!!
2008/07/02(Wed) 10:17 | URL | 東山 | 【編集
勉強、勉強。
Ⅰ型サンへの勉強になるお話、ありがとうございました。早速バーンスタイン先生の本とカーボカウントの本を探してみました。読んで見たいと思います。
またわからないことがありましたら、質問等させてください。ありがとうございます!!!
2008/07/07(Mon) 00:54 | URL | Tomoko  | 【編集
はじめまして
1型糖尿病患者も
かなり厳しく食事制限をしなければ
いけないのですね。

私の主治医は
ヘモグロビンA1Cが8.0を越えなければ
いいという考え方です。

私は躁鬱病というやっかいな病をかかえているので
そちらの治療に専念しています。

躁状態と鬱状態ではインスリン投与量も違ってきます。
躁状態の場合に、脳でグルコースをどれぐらい消費するのか知りたいです。

これからも宜しくお願いします。
2008/08/22(Fri) 20:32 | URL | 晴彦日記 | 【編集
晴彦日記さん。

「躁状態の時、脳がグルコースをどれくらい消費するのか」
すいません。見当もつきません。
申し訳ありませんが、よくわかりません。
2008/08/23(Sat) 17:10 | URL | 江部康二 | 【編集
参考になりました。ありがとうございます。
2010/04/30(Fri) 21:44 | URL | 野木 | 【編集
No title
大変参考になりました。
2011/03/03(Thu) 11:15 | URL | 糖尿病 食事 | 【編集
江部先生、早速1型糖尿病の食事管理について解説頂き有難うございました。大変参考になりました。これからもも頑張って1型に向き合って行きます。
2012/03/08(Thu) 10:14 | URL | 入江 | 【編集
参考にさせていただきます
大変興味深く拝見させていただきました。日頃患者さんにどう解説すればご理解いただけるか頭を悩ませております。
一つ質問です。先生のブログにおいて「糖質は100%血糖に変わります。速度は平均30~40分です。
タンパク質は約50%が血糖に変わります。速度は平均3時間です。脂質は10%未満が血糖に変わります。速度は平均十数時間です。」と記載されておりますが、引用された文献をご教授いただけますでしょうか。お忙しい処お手数をおかけいたしますが、ご返答頂けると幸いです。
2012/12/04(Tue) 00:24 | URL | 小児科医 | 【編集
Re: 参考にさせていただきます
小児科医 さん。

「糖質は100%血糖に変わります。速度は平均30~40分です。
タンパク質は約50%が血糖に変わります。速度は平均3時間です。脂質は10%未満が血糖に変わります。速度は平均十数時間です。」
は1997年版の古い記載です。


2004年版のLife With Diabetes(米国糖尿病協会・ADA)によれば、
「食べ物が消化・吸収されたあと、糖質は100%血糖に変わり、タンパク質・脂質は血糖に変わりません。」

詳しい話は記事にいたします。
2012/12/04(Tue) 09:32 | URL | ドクター江部 | 【編集
落ち着きました
江部先生初めまして。
何年も前の記事にコメントを失礼致します。

私の長男が一型糖尿病の診断で現在教育入院中です。

息子より遥かに私がパニック状態で、一型糖尿病により小学校2年生ですがまだまだ幼い子の楽しみを奪ってしまうような気持ちに陥っていました。

息子は自閉症があり、また当時の生活環境の問題から施設入所児でありまして、定期的に自宅に帰省させておりました。
その時の楽しみが、一般的にはごく当然の「私が作る食事」を息子と一緒に食べる事で、おやつも手作りでした。

普段離れている分、食べる事くらいは目一杯楽しみたい。とやってきていて、そこへ一型糖尿病。

どうしてうちの子ばっかり?辛い目にあうん?
そんなふうに思いました。

ですが、いろいろ自分で調べている中で先生のブログ(こちらの記事)に辿り着き、気持ちが落ち着きました。

息子の主治医もとても素晴らしい方で、また病院のスタッフも皆さん全力で対応して下さっております。
しかし私自身、息子を施設入所させていると言う事は引け目に感じている分、親としての不安等を打ち明けられずにおりまして「頑張ります」といつも言ってしまうのです。

もちろん頑張らなくてはいけないんですが…

これからも主治医からの指導をもとに、そして江部先生の記事や、同じ一型キッズの親御さんのブログ等を参考にさせて頂きながら、息子と共に一型とうまくお付き合いしていけるよう頑張ろうと思います。

長々と失礼いたしました。



2013/05/28(Tue) 08:59 | URL | こうママ | 【編集
はじめまして、小学生4年子供が1型糖尿病になりました❗
薬な頼らずの治療があるなら東洋医学とかとかもあると耳にしたので色々情報がほしくて❗
2015/11/19(Thu) 10:29 | URL | 梶原愛 | 【編集
Re: タイトルなし
梶原愛 さん

1型糖尿病の場合、通常はインスリン注射が必要です。

ただ発見が早い場合、1型糖尿病でも、内因性インスリンがまだ分泌されていることがあります。
この場合は、スーパー糖質制限食なら、インスリンなしで、血糖コントロールができることがあります。
実際にそのような例を複数経験しています。

インスリンなしで、何年あるいはそれ以上くらい血糖コントロールできるのかは、不明ですが・・・。
2015/11/19(Thu) 19:05 | URL | ドクター江部 | 【編集
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