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『低炭水化物の食事は寿命を縮める可能性あり』という論文への反論。
こんにちは。

たかみさん、じょんさん、から

ランセットに掲載された
『低炭水化物の食事は寿命を縮める可能性あり』という論文(☆)
についてコメント・質問を頂きました。

2018年8月20日(月の)ヤフーニュースにも上記論文の記事が
掲載されました。

以下ヤフーニュースからの抜粋

『・・・米国に住む1万5400人に、消費した食べ物と飲み物を、
サイズも合わせて尋ねた質問票の回答を分析した。
質問票から、研究者は被験者の摂取カロリーにおける
炭水化物、脂肪、タンパク質の割合を推計した。
被験者が提供したデータ25年分の平均から、
摂取エネルギーのうち50%から55%を炭水化物から得ている人は、
低炭水化物や高炭水化物の食事をとったグループよりも、
死亡リスクがわずかながら低いことを発見した。・・・』


このコホート研究論文を読むと、要するに、
著者は、炭水化物摂取比率50~55%のグループが総死亡率が一番低くて
それより、低炭水化物でも高炭水化物でも、総死亡率が上昇していて、
いわゆる『U字型カーブ』を描くという結論です。

私も反論するため、未熟な英語力で昨日から四苦八苦していたのですが、
清水泰行先生のブログ「ドクターしみずのひとりごと」
の2018/8/21の記事 http://promea2014.com/blog/?p=5383

で、きっちり論破してありました。
清水先生、ありがとうございます。
とても助かります。

読者の皆さんも
詳しくは、「ドクターしみずのひとりごと」を見て頂きたいと思います。

表1 アテローム動脈硬化症リスクにおける集団特性
   炭水化物からのエネルギーの中央値%
Q1  炭水化物摂取比率37% 3086名
Q2 炭水化物摂取比率44% 3086名
Q3 炭水化物摂取比率49% 3085名
Q4 炭水化物摂取比率53% 3086名
Q5 炭水化物摂取比率61% 3085名


Q1~Q5の5グループにわけての研究ですが
以下問題点を列挙してみます。


一番低炭水化物群のQ1をみてみると
男性が非常に多く、肥満が一番多く、糖尿病も一番多く、
さらに喫煙率も一番多い。
そして身体活動は一番少ない。
これでは、Q1グループは最初から五重のハンディがあるようなもので、
総死亡率が高いのは当たり前と言える。

②Q1~Q5の集団、人数は均一(3085-3086人)であるが、
男女比がばらばらであり、とても均一な集団の比較とは言えない。
このような不均一な集団を比較して、「炭水化物摂取比率と総死亡率」を検討しても
無意味。



調査結果は因果関係というより観察による関係性を示しており、
被験者が食べたものは自己申告のデータに基づいており、正確でない可能性もある。


被験者の食事は調査開始時とそれから6年後に計測されただけで、
食習慣はその後の19年間で変わった可能性があると、著者も認めている。


被験者の摂取カロリーは、Q1~Q5まで、皆、約1600kcal/日であり、
一般的な米国人の摂取カロリーと比し、いかにも少なすぎる。
摂取したカロリーを過小申告している可能性が極めて高い。
日本人でさえも、1600kcal/日は少なめであり、米国人男性なら約3000kcal/日はありそうである。
ちなみに2000年で米国男性は2618kcal、女性は1877kcal/日である。
つまり、調査そのもがいいかげんで、信用できない。




結論です。
A) 上記①②③④⑤より、この論文は信頼度が低いと言えます。

B) 糖質セイゲニストは糖質摂取比率12%と、37%のQ1グループとは乖離して低いので、本研究とは無関係であり、かつ
 「肥満はなく、糖尿病が仮にあってもコントロール良好で、喫煙率も少ない」ので
  この点でもQ1グループとは異なります。 

 


(☆)Dietary carbohydrate intake and mortality: a prospective cohort study and meta-analysis
Open AccessPublished:August 16, 2018DOI:https://doi.org/10.1016/S2468-2667(18)30135-X
https://www.thelancet.com/journals/lanpub/article/PIIS2468-2667(18)30135-X/fulltext



江部康二
コメント
論文についての感想です
いつも楽しく拝見させていただいております。

上記の論文を自分でも確認してみたのですが、一応生存率の曲線に関しては年齢や性別、タバコ、糖尿病の有無など生存率に関係する因子に関しては粗死亡率と調整死亡率を出してグラフに関しては調整後の死亡率をグラフにしているようです。なので、最初のグループがそれぞれ不均一であったとしてもそれなりにリスクは反映しているものと考えられますがどう思いますか。
原文のappendixのなかでは、糖質の割合が少ない群に関しては動物性たんぱく質、脂質の割合が高くなっており、逆に植物性たんぱく質、脂質は割合が低くなっています。収入は糖質が低い群で高収入の割合が多いです。
交絡因子は多々ありますが、この論文から読み取れることとしては中途半端な糖質制限では動物性脂質、たんぱく質の割合が増加するだけで心血管リスクが高くなり結果として死亡率が高くなると考えられるのですがどうでしょう。
糖質制限もやるならたんぱく質、脂質の質を考えて徹底的にやらないと効果が出ないということを表しているような気がします。
あと、調査方法に関しては確かにカロリー数もいい加減で数年に1回しか調査しておらず、そのままの食事内容がずっと続いていたとは考え難いため、いい加減とは思います。
長文になってしまいましたが、これらについて江部先生の意見を伺いたいです。宜しくお願いします。
2018/08/21(Tue) 21:53 | URL |  | 【編集
Re: 論文についての感想です
論文についての感想です さん

信頼度の高い研究は、全て最初の段階で、均一な集団を対象とすることを目指すと思います。

例えばハーバード大学の
アメリカ人女性を対象とした大規模予測コホート試験である看護師保健調査(NHS)
The Health Professionals Follow-Up Study (HPFS) 男性

です。

それに対してこの論文は、Q1~Q5の集団、人数は均一(3085-3086人)ですが、
男女比がばらばらであり、とても均一な集団の比較とは言えません。
このような不均一な集団を比較して、「炭水化物摂取比率と総死亡率」を検討しても
無意味と思います。

2018/08/22(Wed) 07:22 | URL | ドクター江部 | 【編集
津川氏の記事(東洋経済)
津川氏の記事です。
https://toyokeizai.net/articles/-/232545

内容は大いに疑問ですが、何度も何度もマスコミで扱うと、多くの人が疑問を持たずに受け入れてしまう気がしますね。
2018/08/22(Wed) 14:04 | URL | yanosono | 【編集
Re: 津川氏の記事(東洋経済)
yanosono さん

津川友介氏、懲りずに同じような誤解を生む内容で、マスコミに登場ですね。

まあこちらも懲りずに、反論(正論)を繰り返しますか。
2018/08/22(Wed) 14:54 | URL | ドクター江部 | 【編集
コンダラ病
記事を読ませていただきました。

単純に、「白い炭水化物」と「茶色い炭水化物」について、自分の考え(自説)を正当化しようとしているように思えます。

基本的な誤りも結構ありますが、

○炭水化物の熱量(カロリー)
日本(七訂食品成分表)では、炭水化物1g当たりの熱量は4kcolではありません。
http://www.jfrl.or.jp/jfrlnews/files/news_no34.pdf
炭水化物=糖質(4kcal)+食物繊維(水溶性2kcal以下・不溶性0kcal以上)です。
野菜の根菜類や海藻類では特に問題です。

この方、相当に「重いコンダラ病」のようです。
医学界に限らず、どの「業界」にも地位や経歴とは関係なく、この様な方はいらっしゃいます。
しかし、頭が不事由な場合は、なかなか治らないようです。
ちなみに、私は「軽いコンダラ病」です。

反論(正論)は、頭の自由な江部先生に任せて、我々は遠くから見守るしかないのでしょうね。

追記
コンダラ(整地ローラー)
2018/08/22(Wed) 19:35 | URL | オスティナート | 【編集
こちらにも津川氏の記事がありました
バター、ココナツオイル、オリーブオイル 最も健康に悪いのは…(津川友介 AERA)
https://dot.asahi.com/aera/2018082100039.html?page=1
2018/08/23(Thu) 07:58 | URL | yanosono | 【編集
質問させていただいたものです
返答ありがとうございます。確かに研究計画は研究の信頼性を考えるにあたっては重要なことですね。だとすると、普通の人たちが考える糖質制限はそれほど極端な糖質制限を行うことを想定していないので癲癇などでの治療目的に行うようなケトン食を除いて糖質20−30%というような糖質制限を行う研究は存在しないんですね。今後糖質制限の長期的なエビデンスが臨床研究として出てくるまでには20−30年の長い時間がかかりそうですね。しかも、食事内容は自己申告だと簡単に嘘がつけるから質問形式でやっても信頼できなさそうです。
生理学的には糖質が体にはそれほど必要なさそうなのはわかりますが、サプリメントや薬と違って食事療法のエビデンスを確立するのって大変そうです。
2018/08/23(Thu) 17:36 | URL |  | 【編集
Re: 質問させていただいたものです

ご指摘通りと思います。
食事療法の長期的な研究は極めて困難です。
2018/08/23(Thu) 19:09 | URL | ドクター江部 | 【編集
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