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色素性痒疹は、極端な低カロリー食が原因。
【18/08/06 望
色素性痒疹とタンパク質量の関係
こんにちは

僕は発症した場合タンパク質を多めに摂取するとよくなります。
発症した日にいつもより100g多めに
皮なしモモ肉を食べただけで直った事もあります。
いろいろ試して、ミノマイシンに頼らない方法を模索した結果こうなりました。
ですが僕にはなぜなのか全くわかりません。

色素性痒疹は摂取しているタンパク質量に関係しますか? 】


こんにちは。
望 さんから『色素性痒疹』 について
コメント・質問を頂きました。

今までも、色素性痒疹については、何度か質問を頂き、検討してきました。
結論を言いますと
「ほぼ全ての色素性痒疹は、低カロリー食が原因である。」
ということになります。

望さんの場合も、
「発症した日にいつもより100g多めに
皮なしモモ肉を食べただけで直った事もあります。」

とのコメントで、100gで200kcalありますので
それにより改善した可能性があります。
つまりタンパク質摂取量とは関係ないと思います。

一方、低カロリー食を実践しても、色素性痒疹が出ない人も多いので
「低カロリー食に対する人体の反応パターン」に個人差があるのだと考えられます。


糖質制限食中に出現することがある好ましくない症状の一つとして
『色素性痒疹』があります。
実際、本ブログでもよくコメントを貰いますので、
本当に糖質制限のせいなのか、
それともカロリー制限のせいなのか検討してみました。

徳島赤十字病院医学雑誌Vol.22(2017年発行)の論文
http://www.tokushima-med.jrc.or.jp/hospital/14/2017pdf/012.pdf

において、色素性痒疹の症例が18例集計されています。
この論文は、中嶋一雄先生にご教示頂きました。
ありがとうございます。

本論文の著者は
「糖質制限ダイエット中に発症した色素性痒疹の1例」
ということで、発表しておられます。

しかし、結論からいうと
この論文の18症例の検討により、
「極端な低カロリー食 → 色素性痒疹発症」
という構造がかなり明確となっています。
つまり糖質制限とは無関係ということです。
18例での検討で、まだまだ症例は少ないですので、
「極端な低カロリー食 → 色素性痒疹発症」
以外のパターンがある可能性はあると思います。

自験例の1例でも尿中ケトン体が4+と高値で、
糖質制限中とはいえ、極端な低カロリ-であった可能性が高いです。

本論文に掲載されている色素性痒疹患者の表において
18症例のうち、14例は2004年より以前の症例です。

2005年に私が「主食を抜けば糖尿病は良くなる!」を刊行したのが
一般向けの本としては、本邦初なので、
それ以前には糖質制限食は広まっていません。

従って、
ほぼ全員がダイエット中に色素性痒疹を発症していますが、
糖質制限ではないカロリー制限食であったと考えられます。

2004年以前の14例のうち、
血中ケトン体を測定しているのは8名ですが、全員高値です。
865、665、490、1148、1498、1725、μmol/l、高値、高値・・・

2004年以前の症例ですから、糖質制限なしの単純低カロリー食であり、
ケトン体高値ですので極端な低カロリー食の可能性が高いです。
血中総ケトンの基準値は、この論文では<0‐130μmol/l > です。
残り6名中の4名は、尿中ケトン体が検査してあり陽性ですので、
血中ケトン体も高値だったと考えられます。

糖質制限してないのに、血中ケトン体が高値であったのは、
かなり極端な低カロリー食であった可能性が高いです。
つまり、14名中12名は極端な低カロリー食であった可能性が高いのです。
他の2名は、血中ケトン体も尿中ケトン体も共に検査なしで不明です。


また、2008年以降の4例のうち、2例がケトン体の測定がしてあり、
2650と1969とかなりの高値です。
2008年以降の残り2症例の尿中ケトン体も陽性であり、
やはり血中ケトン体高値と考えられます。

2008年以降の4症例が糖質制限食を実践していたか否かは不明ですが、
スーパー糖質制限食実践中の筆者のケトン体は、
「400~800~1200」ていどであることを思えば、
この「2650と1969」の2例は、
やはり極端な低カロリー食の可能性が高いです。

結論です。
繰り返しとなりますが、色素性痒疹のほとんどが『糖質制限食』とは無関係に

「極端な低カロリー食 → 色素性痒疹発症」

という発症機序と考えられます。
今までの常識とは異なり、
色素性痒疹の本質は極端な低カロリー過ぎる状態に対する人体の反応と考えられます。


なお
「血中ケトン体高値で摂取エネルギー充分 → 色素性痒疹発症」
というパターンは、ほぼ皆無です。

「ケトン食の基礎から実践まで」診断と治療社・藤井達哉監修・2011

の、14~16ページ及びに33~42ページに
ケトン食の副作用・合併症について詳細に記載されていますが、
色素性痒疹はありません。

ケトン食実践者で小児てんかん患者なら、β-ヒドロキシ酪酸(BOH)濃度が
4000μmol/L以上が発作予防に望ましい(43ページ)ので、
血中総ケトン体はさらに高値で4600μmol/L以上なります。
それでも色素性痒疹は副作用として記載がありません。


さらに、宗田哲男先生のご研究(☆)により
1)胎盤のβ-ヒドロキシ酪酸(BOH)値は基準値の20~30倍、
平均2235.0μmol/L(60検体)
2)臍帯のβ-ヒドロキシ酪酸(BOH)値は基準値の数倍~10倍、
 平均779.2μmol/L(60検体)
3)新生児のβ-ヒドロキシ酪酸(BOH)値は、基準値の3倍~数倍、
  平均240.4μmol/L(312例、生後4日)  

ということがわかりました。
β-ヒドロキシ酪酸(BOH)の基準値は85 μmol/L以下です。
胎盤と臍帯と新生児では、ケトン体は高値が当たり前で安全であるということです。
そして、これだけβ-ヒドロキシ酪酸(BOH)が高値でも、
新生児に色素性痒疹は出現しません。

そうすると、
A)極端な低カロリー食 → 色素性痒疹出現
B)血中ケトン体高値で摂取エネルギー充分 → 色素性痒疹出現なし


A)パターンで、色素性痒疹が出現しますが、
 ケトン体高値は原因ではなく低カロリーのための結果である可能性が高いです。
 すなわち、ケトン体は色素性痒疹に関しても無実であり、本来安全性は極めて高い物質と考えられます。
色素性痒疹の本質は低カロリー過ぎる状態に対する人体の反応と考えられます。

B)パターンで、血中ケトン体が、ケトン食レベルで4000μmol/Lを超える高値でも、 充分量のエネルギーを摂取していれば、色素性痒疹は出現しません。
 つまり、ケトン体高値単独で色素性痒疹は出現しないということです。


(☆)
Ketone body elevation in placenta, umbilical cord,newborn and mother in normal delivery  Glycative Stress Research 2016; 3 (3): 133-140
Tetsuo Muneta 1), Eri Kawaguchi 1), Yasushi Nagai 2), Momoyo Matsumoto 2), Koji Ebe 3),Hiroko Watanabe 4), Hiroshi Bando 5)


江部康二
コメント
低カロリー+αの要因
江部先生

いつもお世話になっております。
色素性痒疹に関しては私自身は直接診療に携わったことはないのですが、個人的にはいろいろ考察したことがあります。
ケトーシスが色素性痒疹の原因ではないとの御見解に関しては同意見ですが、低カロリーだけが原因かと言われたら必ずしも納得しきれないところがございます。

というのも私は、ダイエットではありませんが、誤嚥性肺炎などで治療の必要上患者さんに絶食補液抗生剤状態に強いることがあります。この時補液の糖質量も極力絞る方針でやっておりますので、言わば極端な低カロリー状態に置かれているわけですが、その処置を行って色素性痒疹をきたした患者さんを診たことは一度もありません。私が見過ごした可能性を考慮しても、少なくとも色素性痒疹を起こす人は多数派ではありません。もし低カロリーが色素性痒疹の原因だとすればこの事実と矛盾いたします。

また低カロリーが原因ならば、ミノマイシンが治療薬として効果をもたらす理由も理解できません。

低カロリーは確かにきっかけのひとつにはなっているように思いますが、それだけでは色素性痒疹を発症するに必要十分ではないと私は思います。

やはりミノマイシンが効くことから考えても腸内細菌との関わりがあるように私は考えています。腸内細菌の過活動と消化管の吸収障害が背景にあり、一過性の脂質代謝利用障害を起こし排泄器官としての皮膚の役割が十分に果たせなくなったことが原因ではないかというのはあくまでも私の仮説です(http://tagashuu.blog.fc2.com/blog-entry-508.html)。
2018/08/07(Tue) 22:25 | URL | たがしゅう | 【編集
Re: 低カロリー+αの要因
たがしゅう 先生

コメント、ありがとうございます。

「低カロリー+αの要因」

私もそのように思います。

「ミノマイシンが効くことから考えても腸内細菌との関わりがあるように私は考えています。腸内細菌の過活動と消化管の吸収障害が背景にあり、一過性の脂質代謝利用障害を起こし排泄器官としての皮膚の役割が十分に果たせなくなったことが原因ではないか」
ミノマイシンが効く人にはその可能性があると思います。
一方、ミノマイシンが効かない人もあると思います。

高雄病院では、かつて、絶食療法(断食)を積極的に実施していたことがあります。
それで、とくに本断食(カロリーゼロ、塩ゼロ、水のみあり)の人には、時々皮疹が出ていました。
昔から「断食疹」と呼ばれていたようです。
しかし、断食疹が出ない方が多数派でしたので、やはり個人的な要因が大きいのだと思います。

また、「神経性食欲不振症」の患者さんでも、時にに「色素性痒疹」がでるようですが、
皮疹がでないほうが多数派と思います。
2018/08/08(Wed) 07:41 | URL | ドクター江部 | 【編集
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