2018年05月18日 (金)
【18/05/18 初心者
m(__)m
糖尿病の薬で治療した群と、しなかった群で、死亡率や有害事象率に差がないというのは初心者には驚きでした。
これはHbA1cが激しく高い人が対象の試験ではまた違うのでしょうか?そんな試験があるのかも知らないのですが。
m(__)m 】
初心者さん。
医療従事者向けセミナーにご参加頂いたのでしょうか?
確かに、以下の論文で、驚きの結論が示されています。
『2型糖尿病の厳格な血糖管理の利益はわずか
RCTメタ解析報告 2011年
ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル誌(BMJ誌)2011年7月30日号
Medline、Embase、コクランレビューに1950年から2010年7月までに登録された
無作為化試験(RCT)
UGDP(phenoformin、tolbutamide、insulinの3件)、Kumamoto、Veteran Affairs Feasibility study、UKPDS(33と34の2件)、
PROactive、Dargieらの2007年の研究、ACCORD、ADVANCE、VADT、HOME。
厳しい条件を満たした13の研究を選択してメタ解析。
この論文の結論は
「2型糖尿病の薬物による厳格な血糖管理の利益はわずか、
低血糖リスクに相殺される程度」
Effect of intensive glucose lowering treatment on all cause mortality, cardiovascular death,
and microvascular events in type 2 diabetes: meta-analysis of randomised controlled trials
BMJ. 2011 Jul 26;343:d4169. doi: 10.1136/bmj.d4169.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21791495』
フランスLyon第一大学のRemy Boussageon氏らの報告です。
Medline、Embase、コクランレビューに1950年から2010年7月までに登録された無作為化試験の中から、
厳しい条件を満たした研究を選出しました。
その結果以下の13件の研究が残りました。
UGDP(phenoformin、tolbutamide、insulinの3件)、Kumamoto、Veteran Affairs Feasibility study、
UKPDS(33と34の2件)、PROactive、Dargieらの2007年の研究、ACCORD、ADVANCE、VADT、HOME。
これら13件の極めて信頼度の高い珠玉の研究を
メタ解析したのが上記論文です。(*)(**)
この論文の結論は
「2型糖尿病の厳格な血糖管理の利益はわずか、低血糖リスクに相殺される程度」
ということです。
2型糖尿病患者に対して厳格な血糖管理を行っても、全死因死亡、心血管死亡リスクの低減効果はあったとしてもわずかで、
重症低血糖リスクは2倍以上になることが、明らかとなっています。
13の厳選された信頼度の高い論文のメタ解析ですので、客観的・科学的・数量的・総括的な評価を目指した論文と言えます。
今回のメタ分析の結果、厳格な血糖管理の利益はあったとしてもわずかで、
重症低血糖がもたらす害により相殺される程度であることが示唆されました。
死亡に対する影響も、
「全死因死亡リスクは9%低下または19%上昇」「心血管死亡リスクは14%低下または43%上昇」
という可能性が残るということでした。
つまり、厳格血糖管理群で、かえって死亡リスクが高まることも充分あり得るという、恐るべき結論です。(=_=;)
2008年報告のACCORD試験では、厳格管理群の総死亡率が標準治療群より有意に上昇し、
物議をかもしたのは記憶に新しいところです。
また「2型糖尿病患者の死亡率はHbA1c7.5%前後が最も低い」という衝撃的な後ろ向きコホート研究報告が、
英国の医学雑誌Lancet誌2010年2月6日号に掲載されたのも、記憶に新しいところです。
上記、2つの論文で明らかなことは、
『糖質を摂取しながら、厳格に糖尿病薬物治療を行えば、
かえって死亡リスクが高まる可能性が高い』ということです。
そして、今回のBMJ誌の論文でも、糖質を摂取しながらの厳格薬物治療の利益はほとんどないに等しいし、
場合により死亡リスクを高める可能性さえあるということです。
糖尿人のご同輩、くれぐれも、美味しく楽しく末長く、糖質制限食ですね。
江部康二
(*)参考
日経メディカル オンライン 2011. 8. 9 から 一部転載
【BMJ誌から
2型糖尿病の厳格な血糖管理の利益はわずか、低血糖リスクに相殺される程度
ACCORDなど13件の無作為化試験を対象とした最新のメタ分析の結果
大西 淳子=医学ジャーナリスト
2型糖尿病患者に対して厳格な血糖管理を行っても、全死因死亡、心血管死亡リスクの低減効果はあったとしてもわずかで、重症低血糖リスクは2倍以上になることが、フランスLyon第一大学のRemy Boussageon氏らが行った最新のメタ分析で明らかになった。論文は、BMJ誌2011年7月30日号に掲載された。
ACCORD試験が、2型糖尿病患者に対する血糖厳格管理で死亡リスクが有意に上昇することを報告して以来、厳格管理の利益とリスクに関する議論が続いている。心血管イベントに対する影響や微小血管イベントに対する影響についても、複数の臨床試験で報告されたデータは一貫した利益を示していない。
2型糖尿病患者に対する血糖厳格管理の影響を調べた無作為化試験を対象とするメタ分析はこれまでにも何件か行われているが、それらは主に、厳格管理の大血管イベントに対する影響について分析していた。著者らは今回、最新のデータを組み入れて、患者死亡と、心血管イベント、微小血管イベント、重症低血糖イベントへの影響を評価するメタ分析を行うことにした。
Medline、Embase、コクランレビューに1950年から2010年7月までに登録された無作為化試験の中から、18歳以上の2型糖尿病患者を登録し、「血糖厳格管理療法か標準治療」、または「厳格管理よりは強度の低い血糖管理療法か偽薬」に割り付けて、心血管イベントと微小血管合併症に対する影響を調べていた研究を選んだ。なお、厳格管理であるかどうかは、目標として設定されたHbA1cまたは治療強度に基づいて判定した。
主要エンドポイントは全死因死亡と心血管死亡に、2次エンドポイントは、心筋梗塞、非致死的心筋梗塞、脳卒中、うっ血性心不全、網膜光凝固術施行、網膜症、微量アルブミン尿、腎不全、末梢血管イベント、四肢切断、重症低血糖などに設定し、リスク比と99%信頼区間を求めた。
以下の13件の研究が条件を満たした:UGDP(phenoformin、tolbutamide、insulinの3件)、Kumamoto、Veteran Affairs Feasibility study、UKPDS(33と34の2件)、PROactive、Dargieらの2007年の研究、ACCORD、ADVANCE、VADT、HOME。
それらの試験に登録された3万4533人(60%が男性、平均年齢62歳、HbA1cの平均は7.9%、糖尿病歴の平均は7.8年)のうち、1万8315人が厳格管理群に割り付けられており、対照群は計1万6218人だった。追跡期間の平均は5.0年になった。
厳格管理群の全死因死亡のリスク比は1.04(99%信頼区間0.91-1.19)で、研究間の不均質性は高かった(I2=42%)。質の高い(Jadadスコアが3超)研究のみを分析対象にしても、1.06(0.84-1.34)と、同様の結果になった。
心血管死亡のリスク比は1.11(0.86-1.43)で、やはり研究間の不均質性は高かった(I2=61%)。質の高い研究のみを分析すると1.58(0.60-4.17)になったが、研究間の不均質性は高かった(I2=70%)。
非致死的心筋梗塞は厳格管理群に有意に少なかった(0.85、0.74-0.96)。だが、致死的心筋梗塞も含めたあらゆる心筋梗塞のリスク比は0.90(0.81-1.01)となり、有意ではなかった。これらの分析には、不均質性は認められなかった(I2=0%)。質の高い研究のみを対象にすると、それぞれ0.83(0.63-1.10)、1.34(0.77-2.35)となり、いずれも有意な値にならなかった。
厳格管理群の微量アルブミン尿(0.90、0.85-0.96、P<0.001)のリスク低減は有意だったが、質の高い研究のみを対象にすると、有意な結果ではなかった(0.99、0.87-1.13)。
非致死的脳卒中、あらゆる脳卒中、うっ血性心不全、末梢血管疾患、網膜症、光凝固療法施行、腎機能の低下、四肢切断などには、有意なリスク低減は見られなかった。質の高い研究のみを分析すると、厳格管理群でうっ血性心不全のリスク上昇が有意になった(1.47、1.19-1.83)。
一方、重症低血糖(2.33、1.62-3.36)は厳格管理群に有意に多く見られた。研究間の不均質性は高かった(I2=63%)。
治療期間を5年として、絶対リスク減少に基づいて厳格管理の治療必要数(NNT)を算出したところ、心筋梗塞が117から150、微量アルブミン尿が32から142となった。一方で、重症低血糖の害必要数(NNH)は15から52になった。
今回のメタ分析の結果、厳格な血糖管理の利益はあったとしてもわずかで、重症低血糖がもたらす害により相殺される程度であることが示唆された。死亡に対する影響は、99%信頼区間から推定すると、全死因死亡リスクは9%低下または19%上昇、心血管死亡リスクは14%低下または43%上昇する可能性が残る。いまだ質の高い大規模研究がないことから、著者らは、「質の高い二重盲検の無作為化試験を行って、2型糖尿病患者に対する最善の治療レジメンを見い出す必要がある」と述べている。
原題は「Effect of intensive glucose lowering treatment on all cause mortality, cardiovascular death, and microvascular events in type 2 diabetes: meta-analysis of randomised controlled trials」、全文は、BMJ誌のWebサイトで閲覧できる。】
(**)メタ解析 薬学用語解説より
http://www.pharm.or.jp/dictionary/wiki.cgi?%E3%83%A1%E3%82%BF%E8%A7%A3%E6%9E%90%E3%80%80
Meta-Analysis、メタアナリシス
過去に独立して行われた複数の臨床研究のデータを収集・統合し、統計的方法を用いて解析した系統的総説。採用するデータは、信頼できるものにしぼり、それぞれに重み付けを行う。一般的には、様々な試験の要約統計量を用いるが、生データを結合して解析する場合もある。叙述的な総説とは異なり、体系的、組織的、統計学的、定量的に研究結果をレビューするという特徴がある。メタアナリシスは、複数の研究で得られた効果が一致しない場合、個々の研究の標本サイズが小さく有意な効果を見いだせない場合、大きな標本サイズの研究が経済的・時間的に困難な場合、に有用であるとされている。
医学分野では対象や研究方法が多様で、各種のバイアスが入りやすく、また研究の質のばらつきが大きい。例えば、公表論文は有意な結果のみが発表されることが多い。これは研究者がポジティブな結果が得られたときにのみ発表する「報告バイアス」や、学会誌等の編集者が,統計学的に有意な結果の得られていないものはリジェクトする「出版バイアス」のためである。このため、単に報告を集めるだけでは、ポジティブ方向へバイアスがかかるという懸念が指摘されている。また、質の低い論文を他の優れた研究成果と同等に評価対象としてしまうと過大評価することになる。メタアナリシスでは、バイアスの影響を極力排除し、評価基準を統一して客観的・科学的に多数の研究結果を数量的、総括的に評価しようとしている。
こうしたメタアナリシス研究を押し進めることを目的として、1992年には、英国政府の支援のもとにオックスフォードにコクラン・センター(Cochrane Centre)が作られた。The Cochrane Libraryとは、コクラン共同計画が行っているメタアナリシスである。ランダム化比較試験の行われたデータをすべて集め、その中から信頼できるものを選び、総合評価を行っている。(2007.8.31 掲載)
m(__)m
糖尿病の薬で治療した群と、しなかった群で、死亡率や有害事象率に差がないというのは初心者には驚きでした。
これはHbA1cが激しく高い人が対象の試験ではまた違うのでしょうか?そんな試験があるのかも知らないのですが。
m(__)m 】
初心者さん。
医療従事者向けセミナーにご参加頂いたのでしょうか?
確かに、以下の論文で、驚きの結論が示されています。
『2型糖尿病の厳格な血糖管理の利益はわずか
RCTメタ解析報告 2011年
ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル誌(BMJ誌)2011年7月30日号
Medline、Embase、コクランレビューに1950年から2010年7月までに登録された
無作為化試験(RCT)
UGDP(phenoformin、tolbutamide、insulinの3件)、Kumamoto、Veteran Affairs Feasibility study、UKPDS(33と34の2件)、
PROactive、Dargieらの2007年の研究、ACCORD、ADVANCE、VADT、HOME。
厳しい条件を満たした13の研究を選択してメタ解析。
この論文の結論は
「2型糖尿病の薬物による厳格な血糖管理の利益はわずか、
低血糖リスクに相殺される程度」
Effect of intensive glucose lowering treatment on all cause mortality, cardiovascular death,
and microvascular events in type 2 diabetes: meta-analysis of randomised controlled trials
BMJ. 2011 Jul 26;343:d4169. doi: 10.1136/bmj.d4169.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21791495』
フランスLyon第一大学のRemy Boussageon氏らの報告です。
Medline、Embase、コクランレビューに1950年から2010年7月までに登録された無作為化試験の中から、
厳しい条件を満たした研究を選出しました。
その結果以下の13件の研究が残りました。
UGDP(phenoformin、tolbutamide、insulinの3件)、Kumamoto、Veteran Affairs Feasibility study、
UKPDS(33と34の2件)、PROactive、Dargieらの2007年の研究、ACCORD、ADVANCE、VADT、HOME。
これら13件の極めて信頼度の高い珠玉の研究を
メタ解析したのが上記論文です。(*)(**)
この論文の結論は
「2型糖尿病の厳格な血糖管理の利益はわずか、低血糖リスクに相殺される程度」
ということです。
2型糖尿病患者に対して厳格な血糖管理を行っても、全死因死亡、心血管死亡リスクの低減効果はあったとしてもわずかで、
重症低血糖リスクは2倍以上になることが、明らかとなっています。
13の厳選された信頼度の高い論文のメタ解析ですので、客観的・科学的・数量的・総括的な評価を目指した論文と言えます。
今回のメタ分析の結果、厳格な血糖管理の利益はあったとしてもわずかで、
重症低血糖がもたらす害により相殺される程度であることが示唆されました。
死亡に対する影響も、
「全死因死亡リスクは9%低下または19%上昇」「心血管死亡リスクは14%低下または43%上昇」
という可能性が残るということでした。
つまり、厳格血糖管理群で、かえって死亡リスクが高まることも充分あり得るという、恐るべき結論です。(=_=;)
2008年報告のACCORD試験では、厳格管理群の総死亡率が標準治療群より有意に上昇し、
物議をかもしたのは記憶に新しいところです。
また「2型糖尿病患者の死亡率はHbA1c7.5%前後が最も低い」という衝撃的な後ろ向きコホート研究報告が、
英国の医学雑誌Lancet誌2010年2月6日号に掲載されたのも、記憶に新しいところです。
上記、2つの論文で明らかなことは、
『糖質を摂取しながら、厳格に糖尿病薬物治療を行えば、
かえって死亡リスクが高まる可能性が高い』ということです。
そして、今回のBMJ誌の論文でも、糖質を摂取しながらの厳格薬物治療の利益はほとんどないに等しいし、
場合により死亡リスクを高める可能性さえあるということです。
糖尿人のご同輩、くれぐれも、美味しく楽しく末長く、糖質制限食ですね。
江部康二
(*)参考
日経メディカル オンライン 2011. 8. 9 から 一部転載
【BMJ誌から
2型糖尿病の厳格な血糖管理の利益はわずか、低血糖リスクに相殺される程度
ACCORDなど13件の無作為化試験を対象とした最新のメタ分析の結果
大西 淳子=医学ジャーナリスト
2型糖尿病患者に対して厳格な血糖管理を行っても、全死因死亡、心血管死亡リスクの低減効果はあったとしてもわずかで、重症低血糖リスクは2倍以上になることが、フランスLyon第一大学のRemy Boussageon氏らが行った最新のメタ分析で明らかになった。論文は、BMJ誌2011年7月30日号に掲載された。
ACCORD試験が、2型糖尿病患者に対する血糖厳格管理で死亡リスクが有意に上昇することを報告して以来、厳格管理の利益とリスクに関する議論が続いている。心血管イベントに対する影響や微小血管イベントに対する影響についても、複数の臨床試験で報告されたデータは一貫した利益を示していない。
2型糖尿病患者に対する血糖厳格管理の影響を調べた無作為化試験を対象とするメタ分析はこれまでにも何件か行われているが、それらは主に、厳格管理の大血管イベントに対する影響について分析していた。著者らは今回、最新のデータを組み入れて、患者死亡と、心血管イベント、微小血管イベント、重症低血糖イベントへの影響を評価するメタ分析を行うことにした。
Medline、Embase、コクランレビューに1950年から2010年7月までに登録された無作為化試験の中から、18歳以上の2型糖尿病患者を登録し、「血糖厳格管理療法か標準治療」、または「厳格管理よりは強度の低い血糖管理療法か偽薬」に割り付けて、心血管イベントと微小血管合併症に対する影響を調べていた研究を選んだ。なお、厳格管理であるかどうかは、目標として設定されたHbA1cまたは治療強度に基づいて判定した。
主要エンドポイントは全死因死亡と心血管死亡に、2次エンドポイントは、心筋梗塞、非致死的心筋梗塞、脳卒中、うっ血性心不全、網膜光凝固術施行、網膜症、微量アルブミン尿、腎不全、末梢血管イベント、四肢切断、重症低血糖などに設定し、リスク比と99%信頼区間を求めた。
以下の13件の研究が条件を満たした:UGDP(phenoformin、tolbutamide、insulinの3件)、Kumamoto、Veteran Affairs Feasibility study、UKPDS(33と34の2件)、PROactive、Dargieらの2007年の研究、ACCORD、ADVANCE、VADT、HOME。
それらの試験に登録された3万4533人(60%が男性、平均年齢62歳、HbA1cの平均は7.9%、糖尿病歴の平均は7.8年)のうち、1万8315人が厳格管理群に割り付けられており、対照群は計1万6218人だった。追跡期間の平均は5.0年になった。
厳格管理群の全死因死亡のリスク比は1.04(99%信頼区間0.91-1.19)で、研究間の不均質性は高かった(I2=42%)。質の高い(Jadadスコアが3超)研究のみを分析対象にしても、1.06(0.84-1.34)と、同様の結果になった。
心血管死亡のリスク比は1.11(0.86-1.43)で、やはり研究間の不均質性は高かった(I2=61%)。質の高い研究のみを分析すると1.58(0.60-4.17)になったが、研究間の不均質性は高かった(I2=70%)。
非致死的心筋梗塞は厳格管理群に有意に少なかった(0.85、0.74-0.96)。だが、致死的心筋梗塞も含めたあらゆる心筋梗塞のリスク比は0.90(0.81-1.01)となり、有意ではなかった。これらの分析には、不均質性は認められなかった(I2=0%)。質の高い研究のみを対象にすると、それぞれ0.83(0.63-1.10)、1.34(0.77-2.35)となり、いずれも有意な値にならなかった。
厳格管理群の微量アルブミン尿(0.90、0.85-0.96、P<0.001)のリスク低減は有意だったが、質の高い研究のみを対象にすると、有意な結果ではなかった(0.99、0.87-1.13)。
非致死的脳卒中、あらゆる脳卒中、うっ血性心不全、末梢血管疾患、網膜症、光凝固療法施行、腎機能の低下、四肢切断などには、有意なリスク低減は見られなかった。質の高い研究のみを分析すると、厳格管理群でうっ血性心不全のリスク上昇が有意になった(1.47、1.19-1.83)。
一方、重症低血糖(2.33、1.62-3.36)は厳格管理群に有意に多く見られた。研究間の不均質性は高かった(I2=63%)。
治療期間を5年として、絶対リスク減少に基づいて厳格管理の治療必要数(NNT)を算出したところ、心筋梗塞が117から150、微量アルブミン尿が32から142となった。一方で、重症低血糖の害必要数(NNH)は15から52になった。
今回のメタ分析の結果、厳格な血糖管理の利益はあったとしてもわずかで、重症低血糖がもたらす害により相殺される程度であることが示唆された。死亡に対する影響は、99%信頼区間から推定すると、全死因死亡リスクは9%低下または19%上昇、心血管死亡リスクは14%低下または43%上昇する可能性が残る。いまだ質の高い大規模研究がないことから、著者らは、「質の高い二重盲検の無作為化試験を行って、2型糖尿病患者に対する最善の治療レジメンを見い出す必要がある」と述べている。
原題は「Effect of intensive glucose lowering treatment on all cause mortality, cardiovascular death, and microvascular events in type 2 diabetes: meta-analysis of randomised controlled trials」、全文は、BMJ誌のWebサイトで閲覧できる。】
(**)メタ解析 薬学用語解説より
http://www.pharm.or.jp/dictionary/wiki.cgi?%E3%83%A1%E3%82%BF%E8%A7%A3%E6%9E%90%E3%80%80
Meta-Analysis、メタアナリシス
過去に独立して行われた複数の臨床研究のデータを収集・統合し、統計的方法を用いて解析した系統的総説。採用するデータは、信頼できるものにしぼり、それぞれに重み付けを行う。一般的には、様々な試験の要約統計量を用いるが、生データを結合して解析する場合もある。叙述的な総説とは異なり、体系的、組織的、統計学的、定量的に研究結果をレビューするという特徴がある。メタアナリシスは、複数の研究で得られた効果が一致しない場合、個々の研究の標本サイズが小さく有意な効果を見いだせない場合、大きな標本サイズの研究が経済的・時間的に困難な場合、に有用であるとされている。
医学分野では対象や研究方法が多様で、各種のバイアスが入りやすく、また研究の質のばらつきが大きい。例えば、公表論文は有意な結果のみが発表されることが多い。これは研究者がポジティブな結果が得られたときにのみ発表する「報告バイアス」や、学会誌等の編集者が,統計学的に有意な結果の得られていないものはリジェクトする「出版バイアス」のためである。このため、単に報告を集めるだけでは、ポジティブ方向へバイアスがかかるという懸念が指摘されている。また、質の低い論文を他の優れた研究成果と同等に評価対象としてしまうと過大評価することになる。メタアナリシスでは、バイアスの影響を極力排除し、評価基準を統一して客観的・科学的に多数の研究結果を数量的、総括的に評価しようとしている。
こうしたメタアナリシス研究を押し進めることを目的として、1992年には、英国政府の支援のもとにオックスフォードにコクラン・センター(Cochrane Centre)が作られた。The Cochrane Libraryとは、コクラン共同計画が行っているメタアナリシスである。ランダム化比較試験の行われたデータをすべて集め、その中から信頼できるものを選び、総合評価を行っている。(2007.8.31 掲載)
糖尿人?初心者で厳格管理とはどの程度の精度で管理されたものを指すのか理解できていません。
メタ分析には1950年からの論文が含まれているようですが、その当時の厳格管理と最新の厳格管理では精度はどの程度違うのでしょうか。自分の血糖値の管理にも役立てたく、ご解説頂ければ幸いです。
メタ分析には1950年からの論文が含まれているようですが、その当時の厳格管理と最新の厳格管理では精度はどの程度違うのでしょうか。自分の血糖値の管理にも役立てたく、ご解説頂ければ幸いです。
西村典彦さん
例えば2008年の米国糖尿病学会学術集会で、ACCORDという大規模臨床試験の結果が報告されました。
厳格血糖管理群の目標HbA1cは6.0%未満でしたが、
厳格管理群の総死亡率が有意に上昇したため、5年の予定が3.4年で緊急中止となりました。
中止時の平均HbA1cは厳格血糖管理群6.4%、通常血糖管理群7.5%でした。
厳格管理という目標は、「HbA1cは6.0%未満」で、今も昔も、おそらくあまり変わらないと思いますが、
全部の試験を調べたわけではありませんので、間違っていたらすいません。
例えば2008年の米国糖尿病学会学術集会で、ACCORDという大規模臨床試験の結果が報告されました。
厳格血糖管理群の目標HbA1cは6.0%未満でしたが、
厳格管理群の総死亡率が有意に上昇したため、5年の予定が3.4年で緊急中止となりました。
中止時の平均HbA1cは厳格血糖管理群6.4%、通常血糖管理群7.5%でした。
厳格管理という目標は、「HbA1cは6.0%未満」で、今も昔も、おそらくあまり変わらないと思いますが、
全部の試験を調べたわけではありませんので、間違っていたらすいません。
2018/05/21(Mon) 19:16 | URL | ドクター江部 | 【編集】
早速のご回答、ありがとうございます。
厳格管理がHbA1c6.0%未満、それだと死亡リスクが上がるとのことで、血糖値管理の難しさを再認識しました。
私はFreestyleリブレで24時間計測し、スーパー糖質制限では低血糖にならない事を確認済みなので安心して実践できています。
毎日24時間計測、カーボカウントも合わせて記録するとインスリン抵抗性も日々バラバラなのにも気づき、改めて薬物による管理の難しさを認識し、今現在、糖質制限による管理が最も理にかなった方法だと実感しております。
一昨年、薬物治療しました不安障害、早朝覚醒なども血糖値スパイクが原因だったと24時間計測してみて改めて認識しております。
厳格管理がHbA1c6.0%未満、それだと死亡リスクが上がるとのことで、血糖値管理の難しさを再認識しました。
私はFreestyleリブレで24時間計測し、スーパー糖質制限では低血糖にならない事を確認済みなので安心して実践できています。
毎日24時間計測、カーボカウントも合わせて記録するとインスリン抵抗性も日々バラバラなのにも気づき、改めて薬物による管理の難しさを認識し、今現在、糖質制限による管理が最も理にかなった方法だと実感しております。
一昨年、薬物治療しました不安障害、早朝覚醒なども血糖値スパイクが原因だったと24時間計測してみて改めて認識しております。
| ホーム |