2018年05月01日 (火)
こんばんは。
今回は、アルコールと食道ガンのお話しです。
糖質セイゲニストには酒飲みが多いので、耳寄りな情報かもしれませんね。
日本人に多いのですが、遺伝的に、お酒を呑むとすぐに赤くなる体質があります。
そしてこの体質の場合はアルコールを呑むと食道ガンになりやすいというのが定説です。
アルコールの代謝産物であるアセトアルデヒドを分解する酵素が
2型アセトアルデヒド分解酵素(ALDH2)で、この酵素の働きが弱いと
少しのお酒で赤くなってしまうのです。
アセトアルデヒドのヒトへの発ガン性は2010年に、WHOが認定しています。
実はかくいう私も、お酒を呑むとすぐに赤くなるタイプです。( ̄_ ̄|||)
まあ鍛えられたのか、かなりの量は呑めるようにはなっています。(^^)
この鍛えて呑めるようになったというのが曲者で、
本来、アセトアルデヒド分解酵素が弱くて、
お酒など呑まない方が良いに決まっている体質なのについつい呑んでしまうわけです。
結局、アセトアルデヒド分解酵素が弱いにもかかわらず、お酒をたくさん呑む人達が
日本人の食道がんの患者さんの約70%を占めているのです、ご用心、ご用心。(=_=;)
ところが、『捨てる神あれば拾う神あり』です。
「酒飲みでも、タバコ(-)なら食道がんのリスクなし」
という結論の信頼度の高い論文を発見したのです。(☆)
しかも、欧米人でなくて、日本人のデータですから、『鬼に金棒』です。
(☆)
国立がん研究センター
http://epi.ncc.go.jp/jphc/outcome/338.html
飲酒と食道がんの発生率との関係について
-「多目的コホート研究(JPHC研究)」からの成果-
この研究によれば、
「お酒で顔が赤くなる体質でもならない体質でも、
飲酒による食道がんリスクへの影響は見られませんでした。
ただし、喫煙指数20以上のヘビースモーカーでは影響が現れ、
1日当たり2合以上の大量飲酒グループで顔が赤くなる体質の食道がんのリスクが、
2合未満で顔が赤くならない体質に比べ3.4倍高くなっていました。」
げにタバコの害、恐るべしです。
喫煙の量を示す国際的な指標として、喫煙指数 Pack-yearsがあります。
Pack years=(1日の喫煙本数/20本)×喫煙年数という計算法です。
すなわち「1日のタバコの箱数×年数」という意味です。
1日1箱のタバコを20年間吸ったら、喫煙指数が20になります。
私は、タバコを吸ったことがないので、喫煙指数は20未満というかゼロです。
ということは、結構お酒を呑んでいるけれど(1日当たり2合以上、(-_-;) )、
食道がんリスクはないという誠に有り難いご宣託ではありませんか。
なお、今日のお話はあくまでも『食道がん』にしぼったお話しですので
誤解のないように御願いします。
アルコールは食道がん以外にも
他のがんなどのリスクとなることも努々お忘れ無く。
それから、適量のアルコールという基本もあることをお忘れなく。
あとは自己管理、自己責任でよろしくお願い申し上げます。 m(_ _)m
<アルコールの適量>
世界がん研究基金2007年の勧告では、アルコールの推奨量は、男性は1日2杯、女性は1日1杯までとしています。
1杯はアルコール10~15グラムに相当します。
米国糖尿病学会は、
アルコール24g(30ml)/日を食事と共に摂る程度なら適量としていますが、
ビール(5%)なら600ml
ワイン(15%)なら200ml
ウイスキー(43%)なら70ml
焼酎(25%)なら120ml
糖質ゼロ発泡酒(4%)なら750ml
に相当します。
<アルコールのリスク>
世界がん研究基金の2007年の勧告で、アルコール摂取は、「口腔・咽頭・喉頭がん、食道がん、大腸がん(男性)、乳がん」の確実なリスクであり、「肝臓がん、大腸がん(女性)」 のリスクとなるので要注意です。
それから、過度のアルコール摂取は、肝細胞内での脂肪酸からの中性脂肪の過剰合成を引き起こします。
その一部は肝臓外へ分泌されて高中性脂肪血症の原因となり、一部は肝細胞内に蓄積されて脂肪肝の原因となります。
江部康二
今回は、アルコールと食道ガンのお話しです。
糖質セイゲニストには酒飲みが多いので、耳寄りな情報かもしれませんね。
日本人に多いのですが、遺伝的に、お酒を呑むとすぐに赤くなる体質があります。
そしてこの体質の場合はアルコールを呑むと食道ガンになりやすいというのが定説です。
アルコールの代謝産物であるアセトアルデヒドを分解する酵素が
2型アセトアルデヒド分解酵素(ALDH2)で、この酵素の働きが弱いと
少しのお酒で赤くなってしまうのです。
アセトアルデヒドのヒトへの発ガン性は2010年に、WHOが認定しています。
実はかくいう私も、お酒を呑むとすぐに赤くなるタイプです。( ̄_ ̄|||)
まあ鍛えられたのか、かなりの量は呑めるようにはなっています。(^^)
この鍛えて呑めるようになったというのが曲者で、
本来、アセトアルデヒド分解酵素が弱くて、
お酒など呑まない方が良いに決まっている体質なのについつい呑んでしまうわけです。
結局、アセトアルデヒド分解酵素が弱いにもかかわらず、お酒をたくさん呑む人達が
日本人の食道がんの患者さんの約70%を占めているのです、ご用心、ご用心。(=_=;)
ところが、『捨てる神あれば拾う神あり』です。
「酒飲みでも、タバコ(-)なら食道がんのリスクなし」
という結論の信頼度の高い論文を発見したのです。(☆)
しかも、欧米人でなくて、日本人のデータですから、『鬼に金棒』です。
(☆)
国立がん研究センター
http://epi.ncc.go.jp/jphc/outcome/338.html
飲酒と食道がんの発生率との関係について
-「多目的コホート研究(JPHC研究)」からの成果-
この研究によれば、
「お酒で顔が赤くなる体質でもならない体質でも、
飲酒による食道がんリスクへの影響は見られませんでした。
ただし、喫煙指数20以上のヘビースモーカーでは影響が現れ、
1日当たり2合以上の大量飲酒グループで顔が赤くなる体質の食道がんのリスクが、
2合未満で顔が赤くならない体質に比べ3.4倍高くなっていました。」
げにタバコの害、恐るべしです。
喫煙の量を示す国際的な指標として、喫煙指数 Pack-yearsがあります。
Pack years=(1日の喫煙本数/20本)×喫煙年数という計算法です。
すなわち「1日のタバコの箱数×年数」という意味です。
1日1箱のタバコを20年間吸ったら、喫煙指数が20になります。
私は、タバコを吸ったことがないので、喫煙指数は20未満というかゼロです。
ということは、結構お酒を呑んでいるけれど(1日当たり2合以上、(-_-;) )、
食道がんリスクはないという誠に有り難いご宣託ではありませんか。
なお、今日のお話はあくまでも『食道がん』にしぼったお話しですので
誤解のないように御願いします。
アルコールは食道がん以外にも
他のがんなどのリスクとなることも努々お忘れ無く。
それから、適量のアルコールという基本もあることをお忘れなく。
あとは自己管理、自己責任でよろしくお願い申し上げます。 m(_ _)m
<アルコールの適量>
世界がん研究基金2007年の勧告では、アルコールの推奨量は、男性は1日2杯、女性は1日1杯までとしています。
1杯はアルコール10~15グラムに相当します。
米国糖尿病学会は、
アルコール24g(30ml)/日を食事と共に摂る程度なら適量としていますが、
ビール(5%)なら600ml
ワイン(15%)なら200ml
ウイスキー(43%)なら70ml
焼酎(25%)なら120ml
糖質ゼロ発泡酒(4%)なら750ml
に相当します。
<アルコールのリスク>
世界がん研究基金の2007年の勧告で、アルコール摂取は、「口腔・咽頭・喉頭がん、食道がん、大腸がん(男性)、乳がん」の確実なリスクであり、「肝臓がん、大腸がん(女性)」 のリスクとなるので要注意です。
それから、過度のアルコール摂取は、肝細胞内での脂肪酸からの中性脂肪の過剰合成を引き起こします。
その一部は肝臓外へ分泌されて高中性脂肪血症の原因となり、一部は肝細胞内に蓄積されて脂肪肝の原因となります。
江部康二
江部先生、福助さん、お返事ありがとうございます。そういえば元世界王者の清水智信さんも王者時代に糖質制限食を取り入れていたおかげか、減量の達成感がないとまでおっしゃっていたのを思い出しましたし、やはり回復食も糖質制限食の方が安全のような気がしますね。話は変わりますが、今日セブンイレブンで「糖質制限ケトン体生活のススメ」という本が置いてあったので、つい買ってしまいました。他にも糖質制限関連の雑誌が3冊も置いてあり、僕が思っていた以上に糖質制限への注目度が上がってきているようで驚きました。
2018/05/01(Tue) 22:10 | URL | 拳児 | 【編集】
私は糖尿人ではないのですが、食後数時間後に冷や汗や異常な空腹感などの症状が出るようになり、
これは何だろうかと検索等していて、機能性低血糖症状ではないかと考えるに至ると同時に、
江部先生のブログに辿り着き、糖質制限を開始しました。
糖尿人ではないので、緩やかなものなのですが、それでも、糖質を摂取した場合と
糖質のない肉主体の食事をした場合とで、
食後の空腹感や冷や汗などの症状の出方が
目に見えて違うので効果は出ているのだと思います。
江部先生には感謝申し上げます。
糖質制限を続けていく上で、一点だけ気になることがあり、ご質問致したく、コメントさせていただきました。
今回の記事のテーマでもありますが、飲酒をした際なのですが、アルコールを摂取すると、
肝臓の糖新生が抑制されるため、ある程度の糖質は摂取した方がよいのではないかと
思うのですが、果たしてどの程度の糖質を摂取すればよいのでしょうか。
焼酎やウイスキーのような糖質を含まないお酒を飲んでいる場合、おつまみでどの程度の糖質量を摂取すれば、
糖新生が抑制されることによる糖質の不足を補えるのか、なにかしらの目安でもあれば教えて頂ければ幸いです。
よろしくお願いいたします。
これは何だろうかと検索等していて、機能性低血糖症状ではないかと考えるに至ると同時に、
江部先生のブログに辿り着き、糖質制限を開始しました。
糖尿人ではないので、緩やかなものなのですが、それでも、糖質を摂取した場合と
糖質のない肉主体の食事をした場合とで、
食後の空腹感や冷や汗などの症状の出方が
目に見えて違うので効果は出ているのだと思います。
江部先生には感謝申し上げます。
糖質制限を続けていく上で、一点だけ気になることがあり、ご質問致したく、コメントさせていただきました。
今回の記事のテーマでもありますが、飲酒をした際なのですが、アルコールを摂取すると、
肝臓の糖新生が抑制されるため、ある程度の糖質は摂取した方がよいのではないかと
思うのですが、果たしてどの程度の糖質を摂取すればよいのでしょうか。
焼酎やウイスキーのような糖質を含まないお酒を飲んでいる場合、おつまみでどの程度の糖質量を摂取すれば、
糖新生が抑制されることによる糖質の不足を補えるのか、なにかしらの目安でもあれば教えて頂ければ幸いです。
よろしくお願いいたします。
2018/05/03(Thu) 21:51 | URL | 山田 | 【編集】
山田 さん
余程大量の飲酒を、空腹時に飲めば、肝臓の糖新生が不足して低血糖になる危険性がありえます。
しかし、スーパー糖質制限食でも、野菜やナッツなどで、12%くらいの糖質は摂取しますので、
適量のお酒ならそれで充分です。
余程大量の飲酒を、空腹時に飲めば、肝臓の糖新生が不足して低血糖になる危険性がありえます。
しかし、スーパー糖質制限食でも、野菜やナッツなどで、12%くらいの糖質は摂取しますので、
適量のお酒ならそれで充分です。
2018/05/04(Fri) 09:38 | URL | ドクター江部 | 【編集】
早速のご回答、ありがとうございました。
通常の糖質制限食のおつまみで十分であるということかと思いました。
最近は糖質制限食がマスコミ等でも取り上げられるようになり、友人、知人でも理解のある人が増えてきたように感じています。
私の場合は理由のわからない低血糖症状に悩まされていたところ、その症状が改善したことでとても満足しています。
個人差はあることかと思いますが、今後も糖質制限食がより普及すればと思っており、
私も微力ながら友人・知人に紹介するなどしてお力添えできればと思っております。
このたびはどうもありがとうございました。
通常の糖質制限食のおつまみで十分であるということかと思いました。
最近は糖質制限食がマスコミ等でも取り上げられるようになり、友人、知人でも理解のある人が増えてきたように感じています。
私の場合は理由のわからない低血糖症状に悩まされていたところ、その症状が改善したことでとても満足しています。
個人差はあることかと思いますが、今後も糖質制限食がより普及すればと思っており、
私も微力ながら友人・知人に紹介するなどしてお力添えできればと思っております。
このたびはどうもありがとうございました。
2018/05/04(Fri) 20:00 | URL | 山田 | 【編集】
はじめまして。
投稿内容と少し話がそれますが、お酒の話が出たので、少し疑問に思ったことを質問させていただきます。
現在、私はパートナーともに糖質制限生活を送っており、3ヶ月ほど経ちます。
二人ともお酒は嗜む程度で、私はもともとお酒にも強く種類問わずなんでも飲むことができるのですが、パートナーの方はお酒の種類(ワイン類)によっては悪酔いする体質です。
今まで日本酒をちょびちょび飲む分には問題はなかったのですが、先日、美味しい芋焼酎が手に入ったこともあり、糖質セイゲニストとして焼酎デビューしようか、と水割りで晩酌しました。
パートナーの方は、焼酎は飲んだ経験がほとんどなく(ウイスキーなどはあり)、その夜はとくに変わったところもなかったのですが、次の朝、ひどく体調を崩してしまいました。二日酔いも疑いましたが、理論的には、醸造酒に比べ、焼酎のような蒸留酒の方がアルデヒドのみの分解で済むため、肝臓への負担が少なく二日酔いもしにくいという認識だったので、不思議に思っていました。
では、肝臓においてアルデヒドを含むアルコール分解酵素を産出するエネルギー源として、ケトン体では不足もしくは使用されないのか?とも考えました。しかし、脳のようなより高度(と思われる)な器官でもケトン体が使われることを考えると理屈に合わないように感じます。
体内でのアルコール分解のことですので、生理学的な個人差もあるでしょうし、単純に糖質制限やそのエネルギー代謝と結びつけるのはいささか無理があるのかもしれませんが、糖質制限生活において、お酒も楽しく楽しむための指針として、江部先生のアドバイスをいただければ大変幸いです。
ご多忙と存じますが、よろしくお願いいたします。
投稿内容と少し話がそれますが、お酒の話が出たので、少し疑問に思ったことを質問させていただきます。
現在、私はパートナーともに糖質制限生活を送っており、3ヶ月ほど経ちます。
二人ともお酒は嗜む程度で、私はもともとお酒にも強く種類問わずなんでも飲むことができるのですが、パートナーの方はお酒の種類(ワイン類)によっては悪酔いする体質です。
今まで日本酒をちょびちょび飲む分には問題はなかったのですが、先日、美味しい芋焼酎が手に入ったこともあり、糖質セイゲニストとして焼酎デビューしようか、と水割りで晩酌しました。
パートナーの方は、焼酎は飲んだ経験がほとんどなく(ウイスキーなどはあり)、その夜はとくに変わったところもなかったのですが、次の朝、ひどく体調を崩してしまいました。二日酔いも疑いましたが、理論的には、醸造酒に比べ、焼酎のような蒸留酒の方がアルデヒドのみの分解で済むため、肝臓への負担が少なく二日酔いもしにくいという認識だったので、不思議に思っていました。
では、肝臓においてアルデヒドを含むアルコール分解酵素を産出するエネルギー源として、ケトン体では不足もしくは使用されないのか?とも考えました。しかし、脳のようなより高度(と思われる)な器官でもケトン体が使われることを考えると理屈に合わないように感じます。
体内でのアルコール分解のことですので、生理学的な個人差もあるでしょうし、単純に糖質制限やそのエネルギー代謝と結びつけるのはいささか無理があるのかもしれませんが、糖質制限生活において、お酒も楽しく楽しむための指針として、江部先生のアドバイスをいただければ大変幸いです。
ご多忙と存じますが、よろしくお願いいたします。
tmt さん
肝臓がケトン体を産生しますが、自分は利用せずに他の組織に回します。
肝臓自身は、ブドウ糖と脂肪酸をエネルギー源とします。
たまたま体調が悪かったのか、あるいは芋焼酎の濃度が高かったのか、
よくわかりません。
肝臓がケトン体を産生しますが、自分は利用せずに他の組織に回します。
肝臓自身は、ブドウ糖と脂肪酸をエネルギー源とします。
たまたま体調が悪かったのか、あるいは芋焼酎の濃度が高かったのか、
よくわかりません。
2018/05/08(Tue) 16:40 | URL | ドクター江部 | 【編集】
早速のお返事ありがとうございます。
体内の細胞や器官が一様なエネルギー代謝をしているわけではないのですね。目からうろこと言いますか、冷静に考えれば当然のことですよね。
しかし、自分の利用しないケトン体をせっせと産生して他の組織に回すとは、肝臓の利他活動に頭が下がる思いです。
江部先生のおっしゃるとおり、いろいろと可能性もあると思いますので、糖質制限生活の中でのアルコールとの付き合い方も少しずつ見つけていきたいと思います。
ありがとうございました!
体内の細胞や器官が一様なエネルギー代謝をしているわけではないのですね。目からうろこと言いますか、冷静に考えれば当然のことですよね。
しかし、自分の利用しないケトン体をせっせと産生して他の組織に回すとは、肝臓の利他活動に頭が下がる思いです。
江部先生のおっしゃるとおり、いろいろと可能性もあると思いますので、糖質制限生活の中でのアルコールとの付き合い方も少しずつ見つけていきたいと思います。
ありがとうございました!
| ホーム |