糖質制限食の『長期的有効性・安全性』とエビデンス
こんにちは。

たにぐち さんから
糖質制限食とエビデンスについて
コメントいただきました。

今回は、糖質制限食の『長期的有効性・安全性』
根拠となる信頼度の高い論文を紹介したいと思います。

EBMが現在、医学界を席巻しています。

医学界において、evidence(エビデンス、証拠、根拠)となるのは、
基本的に医学雑誌に掲載された論文です。

ニューイングランド・ジャーナル、ランセット、米国医師会雑誌など、
定評ある医学専門誌に掲載された論文であることも、
evidence(エビデンス、証拠)の大きな要素となります。

その論文も
①無作為割り付け臨床試験(RCT)
②前向きコホート研究
の二つが信頼度の高いものとなります。

以下に、EBMとして信頼度の高い長期の研究を列挙します。

いずれも、糖質制限食の『長期的有効性・安全性』を保証する論文です。

1)はRCT論文で8年間であり、信頼度はトップランクの研究です。

2)3)4)5)は前向きコホート研究であり、信頼度は上から二番目です。

糖質制限食の長期的安全性の肯定に関しては、
EBMに基づき少なくとも五つの信頼度の高い研究論文が存在するわけです。

なおこれらの論文は、スーパー糖質制限食に関するものではありません。

普通に食事をしている集団(糖質も食べている)において、
糖質を多く食べている群と比較的少ない群を比較したものです。

例えば
2)は
炭水化物摂取比率36.8±6.1%グループと58.8±7.0%のグループの比較です。
炭水化物摂取の多いグループは冠動脈疾患リスクが増加です。

4)は
糖質摂取比率51.5%のグループと糖質摂取比率72.7%のグループの比較です。
糖質摂取比率が一番少ない51.5%のグループは一番多い72.7%のグループに比較すると
心血管死のリスクが59%しかありません。

いずれも糖質大量摂取の弊害(心血管リスク)を如実に示しています。
結果として糖質摂取が少ないほど心血管リスク軽減において有利になることも示しています。


長期の研究
1)RCT論文
低糖質地中海食(LCMD)。8年間RCT論文。
糖質50%未満のLCMD群と低脂肪群の比較。
女性は1800kcal/日。男性は1800kcal/日。
新たに診断された2型糖尿病患者では、LCMDは低脂肪食と比較して、
HbA1cレベルの大きな減少、糖尿病の寛解率が高く、糖尿病治療薬の導入を遅らせた。
Diabetes Care. 2014 Jul;37(7):1824-30.
The effects of a Mediterranean diet on the need for diabetes drugs and remission of newly diagnosed type 2 diabetes: follow-up of a randomized trial.

2)前向きコホート研究
低炭水化物・高脂肪・高タンパク食に冠動脈疾患のリスクなし
一方総炭水化物摂取量は冠動脈疾患リスクの中等度増加に関連していた。
高GLは冠動脈疾患リスク増加と強く関連していた。
ニューイングランドジャーナルのコホート研究  
82802人 20年間 2006年掲載 ハーバード大学
炭水化物摂取比率36.8±6.1%グループと58.8±7.0%のグループの比較。
Halton TL, et al. Low-carbohydrate-diet score and the risk of coronary heart disease in women. New England Journal of Medicine 2006;355:1991-2002.

3)前向きコホート研究
21論文、約35万人をメタアナリシスして、
5~23年追跡して1.1万人の脳心血管イベントが発生。
飽和脂肪摂取量と脳心血管イベントハザード比を検証してみると、
飽和脂肪酸摂取量と脳心血管イベント発生は、関係がないことが判明。
Siri-Tarino, P.W., et al., Meta-analysis of prospective cohort studies evaluating the association of saturated fat with cardiovascular disease.  Am J Clin Nutr, 2010. 91(3): p. 535-46.

4)前向きコホート研究
「糖質制限食の安全性にエビデンス」
前向きコホート試験NIPPON DATA80 29年間 中村保幸
第10分位(糖質摂取比率51.5%)のグループは、第1分位(糖質摂取比率72.7%)のグループに比べて女性においては心血管死のリスクが、
59%しかないという素晴らしい結論で、糖質制限食の圧勝。
Br J Nutr 2014; 112: 916-924


5)前向きコホート研究
上海コホート研究
「糖質摂取量により4群に分けて、糖質摂取量が多いほど心血管疾患の発症リスクが高い」
11万7366人を対象に、調べた研究。
女性が6万4,854人で、平均追跡期間が9.8年。
男性が5万2,512人で、平均追跡期間が5.4年。

女性 心血管発症リスク
1、糖質摂取量264g/日未満 ---------- 1.00
2、糖質摂取量264g~282g/日未満-------- 1.19
3、糖質摂取量282g~299g/日未満-------- 1.76
4、糖質摂取量299g/日以上 ----------- 2.41

男性 心血管発症リスク
1、糖質摂取量296g/日未満 ------------ 1.00

2、糖質摂取量296g~319g/日未満 ---------- 1.50

3、糖質摂取量319g~339g/日未満 ---------- 2.22

4、糖質摂取量339g/日以上
Am J Epidemiol. 2013 Nov 15;178(10):1542-9.
Dietary carbohydrates, refined grains, glycemic load, and risk of coronary heart disease in Chinese adults.



江部康二
コメント
夜間頻尿に関して
江部先生、助けて下さい。

島根県在住40才男性です。
2型糖尿病で、インスリンは正常に出ています。
HBA1cは8.1です。
合併症は出ておりません。
糖尿病歴15年です。
最近、先生の事を知りました。
夜間頻尿(2時間おき)で、睡眠がうまくとれず、
困っています。
糖質制限を3月から開始し、スーパー糖質制限でしています。
薬は飲んでいませんが、睡眠がとれていない為、
しんどいです。
夜間頻尿を早く治したいです。
血糖値を下げるのは、勿論ですが、
夜間頻尿を早く良くする為に、薬を処方して頂くとしたら、先生でしたら、何という薬をどれぐらいの量処方されますでしょうか?
当方、島根県の田舎で糖質制限に理解のある医師がおりません。
先生のご意見お聞かせ下さい。
よろしくお願い致します。
2018/03/29(Thu) 13:10 | URL | 江部先生助けて下さい | 【編集
Re: 夜間頻尿に関して
木島先生か
福田先生に
相談して頂けば幸いです。



☆☆☆

木島医院

診療科目:小児科・内科・循環器科・消化器科

島根県大田市久手町刺鹿2732

TEL:0854-82-8527



☆☆☆

福田内科クリニック

診療科目: 内科・神経内科・呼吸器科・アレルギー科

島根県松江市上乃木9-4-25

電話番号:0852-27-1200
2018/03/29(Thu) 15:34 | URL | ドクター江部 | 【編集
夜間頻尿に関して
江部先生のご意見をお伺いしたいです。
よろしくお願い致します。
2018/03/29(Thu) 16:41 | URL | 江部先生助けて下さい | 【編集
Re: 夜間頻尿に関して
診察もしておりませんので、処方とかはよくわかりません。

糖質制限食で徐々に頻尿が改善する可能性はあると思います。
2018/03/29(Thu) 19:14 | URL | ドクター江部 | 【編集
エビデンス
江部先生、こんばんは

医療において「エビデンス」はとても重要な事なのでしょう。

しかし、エビデンスは最初から存在したものではなく、誰かが考えてスタートしたものです。
エビデンスは作り上げていくものでしょう。
よく、役人が「前例がないから出来ない」というのと同じで、なければ自分が作ればいいだけの事です。

先陣をきった方は、大変な努力、不安等を持たれた事でしょう。
又、色々な批判を受けるでしょう。
出来上がったものを利用するだけなら、簡単で楽な事です。

ガリレオがそれまでの天動説を否定し、地動説を唱えて裁判にかけられた時
「それでも地球は動いている」と言った事は有名な話です。

これまでの常識を変えていこうとする時、その仕事に対する情熱と気概があるかどうかだと思います。

Y氏の提唱する「緩やか糖質制限食」とありますが、「緩やか」というと何か体に優しそうと思いますが、
実際40gの糖質をとれば、糖尿人は血糖値が120上がる訳ですから、決して優しくも緩やかでもありません。

スーパー糖質制限食に長期の「エビデンス」は無いかもしれませんが、
江部先生をはじめ我々実践者は結果を出していますので、「エベデンス」はあるでしょう。
それはやがて「エビデンス」になるでしょう。

2018/03/29(Thu) 19:22 | URL | モン吉 | 【編集
Re.エビデンス
江部先生、こんにちは

書き忘れた事もありますので
書込み致します。

糖尿人は合併症という問題がありますので
何十年もかかるエビデンスを待っている訳にはいきません。時間がないのです。
半年、1年で結果を出す必要があります。

江部先生は毎日困っている患者さんを前にして
何とかしなければという強いお気持ちだと思います。
エビデンスを待っていたら、合併症の患者さんはどんどん増えます。
対談の中で「エビデンスは任せた」と仰られるのは当然だと思います。

「エビデンスが無いから危険だ」と言われれば
患者さんは「危険なのか」と思い込むでしょう
否定派が否定する為の常套句です。

従来のカロリー制限食もロカボもスーパー糖質制限食もエビデンスが無いのは同じです。
いえ、むしろ従来のカロリー制限食は、高血糖になり合併症になるというエビデンスがあります。


2018/03/31(Sat) 09:13 | URL | モン吉 | 【編集
Re: Re.エビデンス
モン吉 さん

同感です。
カロリー制限食で多くの糖尿人が合併症で苦しんでおられるのが現実です。
2018/03/31(Sat) 15:54 | URL | ドクター江部 | 【編集
長期糖質制限について
はじまして、色々な著書を拝見させていただき 糖質制限を信じ実行しているものです。
現在糖質制限を開始し8ヶ月が経過して102kg→ここ1ヶ月64kgとなり標準体重になることができました。体脂肪も14%前後でここ1ヶ月位で安定しております。
ただ今年に入り抜け毛が多くなり、排便に便秘と下痢を繰り返しており来月念のため精密検査を予定しております。
現在の診察ではストレスによる抜けと腸の動きが悪のでは?と言われており、ストレスを溜め込まないような生活習慣を心がけております。
長期的に糖質制限を行った場合は抜け毛等関係性等はいかがなものなのでしょうか?
現在の糖質制限内容はかなりストイックに行っており、スーパー糖質制限に加え野菜、調味料等も気にかけているので、一日20〜30gぐらいに抑えております。

目標としては60kgで維持したいので夏までには達成できるとは思っておりますが、フェードアウトどのようにするか悩んでいるところです。そろそろ体力維持の為に運動も考えております。
正直ここまで体重が減ると他の病気も気になり出しました。
2018/03/31(Sat) 20:15 | URL | たく | 【編集
Re: 長期糖質制限について
たく さん

長期的糖質制限で、抜け毛が増えることはありません。

糖質制限ですので、脂肪と蛋白質はしっかり摂取して
厚生労働省の言う「推定エネルギー必要量」を確保しましょう。
食物繊維も必要です。

<必須脂肪酸、必須アミノ酸、ビタミン、ミネラル、食物繊維>を確保しましょう。

通常抜け毛が増える場合、エネルギー不足があることが多いです。
2018/04/01(Sun) 10:01 | URL | ドクター江部 | 【編集
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