糖質制限食を実践するときの基準は?
【18/02/03 くまもと
タイトルなし
こんにちは。先生の書かれた著書やネット記事などを拝見させていただいています。
私は来年度から一人暮らしを始めることなり、毎日の献立を自分で考える必要があり、
栄養バランスが気になっています。
そこで糖質制限を意識しながら、
一日に必要な栄養素を計算して献立を考えようと思っています。
しかし、2015年版の食事摂取基準http://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-10904750-Kenkoukyoku-Gantaisakukenkouzoushinka/0000041955.pdf
に記されている栄養素は大量にあり、
すべての基準を満足させるために計算を行うのは困難だと考えいます。
そこで、献立を考える上で重要な基準をご教示いただければ嬉しいです。

例えば、

カロリー > 2650 kcal
タンパク質 = 60 g ~ 程度

という2項目は重要な基準量かつ計算するのが楽なので、
献立を考える上で計算に取り入れようと考えています。
しかし、他の栄養素はどれが重要で特にどれの摂取を意識すればいいのか分かりません。
本来ならば栄養学などの専門家に聞くべきことかもしれません。
しかし、栄養学や献立に関する本を読んだのですが、
糖質制限の考えが入ってないものばかりで、
それに従うと糖質過多な献立になってしまい、
そこで先生に質問した次第です。
申し訳ありません。
部分的な回答でも構いません。

ちなみに糖質量は糖質制限を意識していても必要量は摂取できると考えているため、
糖質制限をするという大前提のもと、定量的にはあまり気にしないつもりです。

よろしくお願いいたします。】



こんにちは。
くまもとさんから、「糖質制限食を実践するときの基準」について
コメント・質問を頂きました。

くまもとさん、拙著のご購入、ありがとうございます。
基準ですが、とてもシンプルです。

<糖質制限食の基準>
①糖質制限をする。
②糖質を制限した分、脂質・蛋白質摂取を増やす。
③厚生労働省のいう推定エネルギー必要量を摂取する。


この①②③だけと言っても過言ではありません。
①②③を守れば、自然にお腹一杯になると思います。

ヒトには人体で作れない栄養素があります。
人体で作れないので、
「必須脂肪酸、必須アミノ酸、ビタミン、ミネラル、食物繊維」は、
食事から摂取する必要があります。

高雄病院のスーパー糖質制限食では、
魚介類、肉類、卵、卵製品、乳製品、野菜、海草、茸、大豆製品など・・・
まんべんなく摂取するので、これらが不足することはまずありません。

そして必須糖質は存在しません。
体内で必要なブドウ糖は、肝臓で糖新生してまかなうので、
食物から摂取する必要はないのです。
国際食事エネルギーコンサルテーショングループの報告では、
「炭水化物(この場合は糖質とほぼ同義)の理論的な最小必要量はゼロである」(☆)
と明記されています。
現実には、糖質制限食でも食物繊維を摂るために野菜を食べるので、
その分の少量の糖質は摂取することとなります。


次に、エビデンスという意味で、
信頼度の高いRCT(ランダム化比較試験)を検討してみます。
DIRECT.jpg

よく引用されるイスラエルのShai先生の有名な論文、DIRECT
「低炭水化物食で体重減少・ HDL-C増加・HbA1c改善  RCT」

イスラエルの322人(男性86%)
(1)低脂肪食(カロリー制限あり)女性1500kcal、男性1800kcal
(2)オリーブ油の地中海食(カロリー制限あり)女性1500kcal、男性1800kcal
(3)低炭水化物食(カロリー制限なし)
3グループの食事法を2年間
低炭水化物食が、最も体重減少。HDL-Cも増加。
36名の糖尿病患者においてHbA1cが有意差をもって改善

Iris Shai,et all:Weight Loss with a Low-Carbohydrate,Mediterranean,or Low-Fat Diet. NENGLJ MED
JULY17,2008、VOL359. NO.3 229-241


低炭水化物食群は、最初の2ヶ月は20g/日に糖質を制限、
その後3ヶ月目からは徐々に緩めて120g/日までOKと設定しています。
興味深いことは、「低炭水化物食群」は、カロリー制限なしの設定でしたが、
現実には「低脂肪食群」「地中海食群」と全く同様に摂取カロリーが減少しました。

つまり低炭水化物食群は、お腹一杯食べているのに摂取エネルギーが減少したのです。
これは、満足感・満腹感が大きかったので我慢することなく自然に減少したと考えられますので、
糖質制限食の大きな利点と言えます。


まとめるとDIRECTは、同一摂取エネルギーの3群を2年間フォローしたRCTであり、
結果として、「低炭水化物食群」が一番、体重減少効果があったということです。

このDIRECTの結果も考慮すれば
上記の<糖質制限食の基準>①②③を実践していれば
何の問題もないと考えられます。

糖尿人の私も2002年以来、16年間、お腹一杯食べて①②③を実践して
糖尿病合併症も皆無で、検査データは全て基準値です。


(☆)
Eur J Clin Nutr. 1999 Apr;53 Suppl 1:S177-8.
Report of the IDECG Working Group on lower and upper limits of carbohydrate and fat intake. International Dietary Energy Consultative Group.
Bier DM, Brosnan JT, Flatt JP, Hanson RW, Heird W, Hellerstein MK, Jéquier E, Kalhan S, Koletzko B, Macdonald I, Owen O, Uauy R.


江部康二
コメント
肥満遺伝子検査は本当に正確なんでしょうか??これで太りやすい食材を食べなければ痩せると言われたのですが
2018/02/04(Sun) 19:08 | URL | 愛 | 【編集
Re: タイトルなし
愛 さん


肥満遺伝子検査は、仮説段階です。
エビデンスレベルではないので、あくまでも参考ていどと思っておいた方がよいです。
2018/02/04(Sun) 20:01 | URL | ドクター江部 | 【編集
こんにちは。
丁寧に記事にしてお答えいただき、ありがとうございます。
今後の献立作りに役立てます。
2018/02/04(Sun) 21:28 | URL | くまもと | 【編集
糖質を摂った後必ず眠くなる件
自分は2012年秋から糖質制限をやっています。江部先生のHPは一番頼りにしています。途中2年ほどサボってひどいことになりましたが、昨年から復帰して現在A1c = 5.9、 肥満度も0です。途中2年サボった時に気づいたのですが、朝昼晩に限らずパンや丼ご飯を食べた後、必ず無性に眠くなります。昼食で取ってしまうと1時半くらいから大変です。ところが脂身の量に関係なくステーキ450gを食べてもなんともないので、糖が脳に悪さをしているような気がするのですが、そのような効果があるのでしょうか?糖質の多い食事を摂った週の週末は一日中泥のように体がだるいことがありましたが糖質制限しているとそんなことはありません。
2018/02/05(Mon) 09:31 | URL | 文右衛門 | 【編集
江部先生の反論よろしくお願いします
2018年 最新報告!
短期的に水分が抜けて体重が減るだけで「非健康的」糖質制限にメリットはない
欧米各国の悪評価は2017年→2018年もさらに高まっている!

2017年に引き続き2018年 米国8年連続ナンバーワン・ダイエットはDASH食
https://health.usnew.../best-diet/dash-diet

糖質制限(アトキンスダイエット)は昨年35位から順位をさらに落とし36位
https://health.usnew...est-diet/atkins-diet

糖質制限は初期減量量が多いダイエットでは唯一評価が良かったものの昨年5位から7位
また減量としての最終的評価では12位から14位とこちらも順位を落とした

また健康面での問題があるのでその手の順位は例年に漏れず軒並み低順位が続く
糖尿病治療用ダイエットとして31位→32位 心臓に良いダイエットとして36位→37位 健康に良いダイエットとして36位→38位と全滅
誰が考えても健康に悪そうなダイエットが糖質制限よりも上位になっているってことや年々その評価が落ちている点に注目だ!
 
ちなみにケトジェニック(スーパー糖質制限)がワーストダイエットになったのは言うまでもない。
 
 
同様に英国2018年避けるべき最悪なセレブダイエット、トップ5に糖質制限
http://www.nutritio....p;-lay=lay&-Find

BDAは、ケトジェニック・ダイエットはきちんと管理されれば効果的なてんかんの治療食であるとしている。
減量という意味では、魔法はなく、その効果はカロリー制限によるものだとしている。

主な副作用として、頭に霧がかかったように思考回路がぼやけることと、無気力になること、空腹感の上昇、睡眠問題、
吐き気、消化不良、口臭、運動成績の低下を挙げている。短期間に減量できるという意味では確かに効果はあるが、
長期にわたって維持するのが困難であるようにみえる。また初期の減量の多くは体液の減少によるもののようであるとも。
ある栄養素を極端に制限しすぎるのは良いアイデアとはとても言い難く、ビタミン、ミネラル、食物繊維の欠けた食生活に
なり易いとしている。
2018/02/06(Tue) 06:28 | URL | westman | 【編集
Re: 糖質を摂った後必ず眠くなる件
文右衛門 さん

確かに糖質摂取で食後の眠気を生じます。
糖質制限食だと食後の眠気は生じず、夜間良質の睡眠が得られることが多いです。

2017年07月14日 (金)の本ブログ記事
糖質摂取と食後の眠気。デブリンの生化学。
http://koujiebe.blog95.fc2.com/blog-entry-4259.html


をご参照頂けば幸いです。
2018/02/06(Tue) 08:29 | URL | ドクター江部 | 【編集
Re: 江部先生の反論よろしくお願いします
westman さん

米国のほうは
『a panel of health experts』

健康専門家家の会議の話ですから、
そもそもエビデンスレベルではありませんね。
専門家と称す人達の単なる印象と単なるコンセンサスであり、エビデンスはありません。

英国栄養士会(BDA)は2017年にも同様の見解を発表した保守的思考の団体です。
「BDAは、減量という意味では、魔法はなく、その効果はカロリー制限によるものだとしている。」
この見解は、DIRECTなど信頼できるRCTの結果を無視していますね。
こちらも、単なる印象と単なるコンセンサスであり、エビデンスはありません。

糖質制限食に関しては、
米国糖尿病学会により、糖質制限食の有効性と安全性は
信頼できるエビデンスを元にすでに保証されています。

米国糖尿病学会の糖質制限食に対する見解の経年的変化を見れば、
わかりやすいです。

1)2007年までは、糖質制限食を否定です。
2)2008年に、肥満を伴う糖尿病患者に1年間の期限つきで有効性を認めました。
3)2011年に、肥満を伴う糖尿病患者に2年間の期限つきで有効性を認めました。
4)2013年10月、成人糖尿病患者の食事療法に関する声明を2008年以来5年ぶりに改訂し、
  適切な三大栄養素比率は確立されていないことを明言しました。
  そして「糖質130g/日が平均的な最小必要量」という文言を削除し、
  肥満の有無は関係なく、期限なしで、正式に糖質制限食を容認しました。
患者ごとに個別に様々な食事パターン〔地中海食,ベジタリアン食,糖質制限食,低脂質食, DASH(Dietary Approaches to Stop Hypertension)食〕が受容可能。

つまり、米国糖尿病学会は2008年以降、
数々のエビデンスに基づいて糖質制限を容認の方向に踏み出しました。

その後、5年間のエビデンスの蓄積(糖質制限食肯定も否定も含めて)を経て
糖質制限食を正式容認です。

米国糖尿病学会の見解は、一個人の医師の見解とは異なり
多くのエビデンスに基づくものですから、意義は大変大きいです。

2型糖尿病に対する食事療法として、
米国では今や糖質制限食は重要な位置を占めるようなってきています。

例えば、米国のデューク大学(米ノースカロライナ州ダーラム)は、
糖質制限食に関する臨床研究を積極的に行っています。

デューク大学のWilliam S. Yancy Jr.准教授は
2013年10月のADA声明改訂委員の1人でもあります。

一般内科のEric C. Westman准教授は同大学生活習慣医学クリニック所長です。

Westman准教授は、炭水化物20g/日未満をクリニックで実践しています。

このようにデューク大学では、
高雄病院のスーパー糖質制限食よりさらに厳格なケトジェニックダイエットを
糖尿病治療食の標準として実践しています。
2018/02/06(Tue) 09:16 | URL | ドクター江部 | 【編集
ADAの脂質摂取に対する見解より引用
Unhealthy Fats

Saturated Fat

Why should you eat less saturated fat? Because saturated fat raises blood cholesterol levels. High blood cholesterol is a risk factor for heart disease. People with diabetes are at high risk for heart disease and limiting your saturated fat can help lower your risk of having a heart attack or stroke.

Foods containing saturated fat include:

Lard
Fatback and salt pork
High-fat meats like regular ground beef, bologna, hot dogs, sausage, bacon and spareribs
High-fat dairy products such as full-fat cheese, cream, ice cream, whole milk, 2% milk and sour cream.
Butter
Cream sauces
Gravy made with meat drippings
Chocolate
Palm oil and palm kernel oil
Coconut and coconut oil
Poultry (chicken and turkey) skin
The goal for people with and without diabetes is to eat less than 10% of calories from saturated fat. For most people, eating this is about 20 grams of saturated fat per day. That is not much when you consider just one ounce of cheese can have 8 grams of saturated fat.

Many adults, especially women or sedentary men, may need less. To find out a specific goal for you, talk with your dietitian or health care provider.

Saturated fat grams are listed on the Nutrition Facts food label under total fat. As a general rule, compare foods with less saturated fat. Foods with 1 gram or less saturated fat per serving are considered low in saturated fat.

http://www.diabetes.org/food-and-fitness/food/what-can-i-eat/making-healthy-food-choices/fats-and-diabetes.html
2018/02/06(Tue) 14:44 | URL | westman | 【編集
Re: ADAの脂質摂取に対する見解より引用
westman さん

コメントありがとうございます。

Unhealthy Fats・・・不健康脂肪
Saturated Fat・・・飽和脂肪

米国糖尿病学会も、『コレステロール神話』に関しては、
「制薬メーカーとの利益相反」バリバリと思われ、私は信用していません。

スーパー糖質制限食でしっかり飽和脂肪などの脂質を摂取していると
中性脂肪が減少して、HDLコレステロールが増加します。
LDLコレステロールは、不変・減少・増加と3パターンです。

たとえLDLコレステロールが増加しても、
中性脂肪が正常低値で、HDLコレステロールが多いときは、標準の大きさのしっかり働いている善玉LDLなので、
私は問題ないと考えています。


2018/02/06(Tue) 15:21 | URL | ドクター江部 | 【編集
本日コメント欄は、充実してます!!
都内河北 鈴木です。

本日コメント欄の
Westmanさんへの質疑応答の江部先生説明内容には、
21年が3か月足らずで「生還」し、以降「覚醒」して行く私1患者にも納得し
安堵!安堵!致します。

私1患者の「生還、覚醒」して行く事への「予後対策知識」として、
読み応えの有る価値ある説明内容でした。

「糖質制限理論」への疑問が出る方は、「高木兼寛医師」から学習が必要かなと考えてしまいます。

江部先生の御苦労には、感謝尽きません!!
ありがとうございます。
敬具
2018/02/06(Tue) 16:41 | URL | 都内河北 鈴木 | 【編集
血糖値の推移について
江部先生のブログをいつも拝見しています。
以前も食後高血糖について質問させていただき、おかげさまで徐々にコントロールができてきています。

今回は私の血糖の推移について教えて下さい。

食前116mg 食後45分158mg 60分後146mg 90分後114mg 120分後99mg 180分後113mgという結果でした。
普段から3時間から4時間後に一度下がった血糖が再度上昇しています。順調に下がった血糖値が3、4時間後に上昇しているのは何故なのでしょうか。低血糖の様な症状はなく糖新生とも考えにくいと思っています。
この日は夕食で、メニューは鶏むね肉175g、玉ねぎの酢のもの20g、アボカド70g、キャベツの千切り130g、玄米150g、納豆1パック、生卵1個でした。
測定条件は、食後安静の状態、使用した機器はグルテストNeoアルファになります。
年齢は30歳で、普段からウェイトトレーニングを行なっていて筋肉質です。
普段の食事は高タンパクで、不飽和度脂肪酸を多く、炭水化物は200g程度(PFCバランス 25.50.25)となっています。
2018/02/06(Tue) 22:31 | URL | けん | 【編集
コメントを投稿
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可