2018年01月12日 (金)
こんばんは。
秋から冬は感染性胃腸炎が流行ります。
感染性胃腸炎とは、細菌やウイルスなどの病原体による感染症です。
ウイルス感染による胃腸炎が多いのですが、
特にノロウィルス感染症は、大変うつりやすいので注意が必要です。
ノロウィルスはインフルエンザウィルスより、
はるかに感染しやすいのです。
ノロウィルスで直接死亡することは、まずありません。
しかし、高齢者などでは、
下痢・嘔吐による脱水や、吐瀉物による気道閉塞で死亡する場合もあります。
脱水には点滴での水分補給が有効です。
ノロウイルスは手指や食品などを介して、主として経口で感染します。
患者のふん便や吐瀉物には、大量のノロウィルスがいます。
とくに、感染源となりやすいのは吐瀉物です。
吐瀉物がじゅうたんにあって、乾燥しても12日間くらいは感染力があります。
また、乾燥した吐瀉物が微細な浮遊物となって感染源となります。
床等に飛び散った患者の吐ぶつやふん便を処理するときには、
使い捨てのガウン(エプロン)、マスクと手袋を着用し汚物中のウイルスが飛び散らないように、
ふん便、吐ぶつをペーパータオル等で静かに拭き取ります。
拭き取った後は、次亜塩素酸ナトリウム(*)で浸すように床を拭き取り、
その後水拭きをします。
おむつ等は、速やかに閉じてふん便等を包み込みます。
おむつや拭き取りに使用したペーパータオル等は、ビニール袋に密閉して廃棄します。
食品からの感染予防には加熱が有効です。
二枚貝の加熱調理でウイルスを失活させるには、
中心部が85~90℃で少なくとも90秒間の加熱が必要とされています。
手洗いは、感染予防に極めて有効です。
手指、手掌、手背、爪、指間、全てを万遍なく洗うことが必要です。
15秒ぐらいかけて洗います。
消毒タイプで液体の石鹸があれば、使用します。
石鹸がなければお湯洗い・水洗いだけでも充分有効です。
手に残った水分は素早く拭き取ります。使い捨てのペーパータオルがいいです。
(*)
■次亜塩素酸ナトリウムの消毒液の作り方(広島市、福山市のサイトから引用)
ノロウイルスに対しては塩素系消毒剤である 次亜塩素酸ナトリウム による消毒が有効です。
次亜塩素酸ナトリウムは、薄めて使用します。
市販されている家庭用塩素系漂白剤(ハイター、ブリーチなど)の濃度は、約5%です。
■便やおう吐物が付着した床,衣類,トイレなどの消毒をする場合…
濃度が 0.1%(1,000ppm) の消毒液を作ります。(1リットルの水にハイター20ml))
■おもちゃ,調理器具,直接手で触れる部分などの消毒をする場合…
濃度が 0.02%(200ppm) の消毒液を作ります。(1リットルの水にハイター5ml))
●家庭用塩素系漂白剤のキャップの容量は通常20ml~25mlです。容器に書いてありますので、確認して使用してください。
【消毒液(次亜塩素酸ナトリウム溶液)を扱うときの注意】
・使用する時は換気を十分に行ってください。
・有毒な塩素ガスが発生しますので,酸性のものと絶対に混ぜないでください!
・皮膚への刺激が強いので,直接触れないよう,ビニール手袋などを使用してください。
・皮膚に付着した場合は,直ちに大量の水で十分洗い流してください。
・目に入った場合は,直ちに大量の水で十分洗い流し,医師の診察を受けてください。
・消毒液は,濃度が高いほどノロウイルスに対して有効ですが,反面,金属が錆びたり,
漂白(変色)作用が強くなったりしますので,注意してください。
・金属に使用した場合は,消毒後,水で洗い流すか,ふき取るなどしてください。
★ 感染経路(広島市のサイトから引用)
感染経路は、基本的にはノロウイルスが口から入り、消化器に達して主に腸管で増殖して感染します。
ノロウイルスが口に達する経路は様々で、具体的な経路を下に示しました。
感染性胃腸炎の原因となる病原体の中でも、ノロウイルスは他の病原体と異なり、経口感染や接触感染のみならず、
飛沫感染や空気感染を起こすことが最近になってわかってきました。
これらの感染経路を理解することが、予防する上で大切です。
1. 経口感染(食中毒)
・ウイルスに汚染された食品(二枚貝に含まれていることがあります。)を、
生または十分に加熱しないで食べた場合。
・感染した人が調理して食品や水が汚染され、それを食べたり飲んだりした場合。
2. 接触感染
・感染した人の便や吐物にふれ、手指をとおして口から入った場合。
・感染した人の手指や感染した人が触れた衣服、器具等に接触し、手指をとおして口から入った場合。
3. 飛沫感染
・患者の便や吐物が飛び散り、その飛沫(ノロウイルスを含んだ小さな水滴。1~2m飛散します。)を吸い込んだ場合。
・便や吐物を不用意に始末したときに発生した飛沫を吸い込んだ場合。
4. 空気感染
・患者の便や吐物の処理が不十分なため、それらが乾燥して飛沫よりもさらに細かい粒子となって空気中を 漂い、それを吸い込んだ場合。この場合感染源からかなり離れた場所でも、感染する可能性があります。
江部康二
☆☆☆
以下厚生労働省のサイトから引用・抜粋
厚生労働省・ノロウイルスに関するQ&A
(作成:平成16年2月4日 最終改定:平成27年6月30日)
ノロウイルスによる食中毒及び感染症の発生を防止するため、ノロウイルスに関する正しい知識と予防対策等について理解を深めていただきたく、厚生 労働省において、次のとおりノロウイルスに関するQ&Aを作成しました。今後、ノロウイルスに関する知見の進展等に対応して、逐次、本Q&Aを更新してい くこととしています。
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/syokuchu/kanren/yobou/040204-1.html
Q1 ノロウイルスによる胃腸炎はどのようなものですか?
A1 ノロウイルスによる感染性胃腸炎や食中毒は、一年を通して発生していますが、
特に冬季に流行します。
ノロウイルスは手指や食品などを介して、経口で感染し、ヒトの腸管で増殖し、おう吐、下痢、腹痛などを起こします。健康な方は軽症で回復しますが、子どもやお年寄りなどでは重症化したり、吐ぶつを誤って気道に詰まらせて死亡することがあります。
ノロウイルスについてはワクチンがなく、
また、治療は輸液などの対症療法に限られます。
従って、皆様の周りの方々と一緒に、次の予防対策を徹底しましょう。
患者のふん便や吐ぶつには大量のウイルスが排出されるので、
(1)食事の前やトイレの後などには、必ず手を洗いましょう。
(2)下痢やおう吐等の症状がある方は、
食品を直接取り扱う作業をしないようにしましょう。
(3)胃腸炎患者に接する方は、患者のふん便や吐ぶつを適切に処理し、
感染を広げないようにしましょう。
特に、子どもやお年寄りなど抵抗力の弱い方は、
加熱が必要な食品は中心部までしっかり加熱して食べましょう。
また、調理器具等は使用後に洗浄、殺菌しましょう。
Q3 ノロウイルスはどうやって感染するのですか?
A3
このウイルスの感染経路はほとんどが経口感染で、
次のような感染様式があると考えられています。
(1)患者のノロウイルスが大量に含まれるふん便や吐ぶつから人の手などを介して二次感 染した場合
(2)家庭や共同生活施設などヒト同士の接触する機会が多いところでヒトからヒトへ飛沫 感染等直接感染する場合
(3)食品取扱者(食品の製造等に従事する者、飲食店における調理従事者、家庭で調理を 行う者などが含まれます。)が感染しておりその者を介して汚染した食品を食べた場合
(4)汚染されていた二枚貝を、生あるいは十分に加熱調理しないで食べた場合
(5)ノロウイルスに汚染された井戸水や簡易水道を消毒不十分で摂取した場合
などがあります。
特に、食中毒では(3)のように食品取扱者を介してウイルスに汚染された食品を原因とする事例が、近年増加傾向にあります。
また、ノロウイルスは(3)、(4)、(5)のように食品や水を介したウイルス性食中毒の原因になるばかりでなく、(1)、(2)のようにウイルス性急性胃腸炎(感染症)の原因にもなります。この多彩な感染経路がノロウイルスの制御を困難なものにしています。
Q8 ノロウイルスに感染するとどんな症状になるのですか?
A8
潜伏期間(感染から発症までの時間)は24~48時間で、主症状は吐き気、嘔吐、下痢、腹痛であり、発熱は軽度です。通常、これら症状が1~2日続いた後、治癒し、後遺症もありません。また、感染しても発症しない場合や軽い風邪のような症状の場合もあります。
Q9 国内でノロウイルスの感染による死者はいますか?
A9
病院や社会福祉施設でノロウイルスの集団感染が発生している時期に、当該施設で死者が出たことがあります。
しかし、もともとの疾患や体力の低下などにより介護を必要としていた方などが亡くなった場合、ノロウイルスの感染がどの程度影響したのか見極めることは困難です。
なお、吐いた物を誤嚥することによる誤嚥性肺炎や吐いた物を喉に詰まらせて窒息する場合など、ノロウイルスが関係したと思われる場合であっても直接の原因とはならない場合もあります。
Q10 発症した場合の治療法はありますか?
A10
現在、このウイルスに効果のある抗ウイルス剤はありません。このため、通常、対症療法が行われます。特に、体力の弱い乳幼児、高齢者は、脱水症状を起こしたり、体力を消耗したりしないように、水分と栄養の補給を充分に行いましょう。脱水症状がひどい場合には病院で輸液を行うなどの治療が必要になります。
止しゃ薬(いわゆる下痢止め薬)は、病気の回復を遅らせることがあるので使用しないことが望ましいでしょう。
Q13 ノロウイルス食中毒の予防方法は?
A13
ノロウイルス食中毒を防ぐためには、(1)食品取扱者や調理器具などからの二次汚染を防止する (2)特に子どもやお年寄りなどの抵抗力の弱い方は、加熱が必要な食品は中心部までしっかり加熱することが重要です。特に、ノロウイルスに感染した人のふん便や吐ぶつには大量のウイルスが排出されるため、大量調理施設の食品取扱者がノロウイルスに感染していると、大規模な食中毒となる可能性があります。
Q15 手洗いはどのようにすればいいのですか?
A15
手洗いは、 手指に付着しているノロウイルスを減らす最も有効な方法です。 調理を行う前(特に飲食業を行っている場合は食事を提供する前も)、食事の前、トイレに行った後、下痢等の患者の汚物処理やオムツ交換等を行った後(手袋をして直接触れないようにしていても)には必ず行いましょう。常に爪を短く切って、指輪等をはずし、石けんを十分泡立て、ブラシなどを使用して手指を洗浄します。すすぎは温水による流水で十分に行い、清潔なタオル又はペーパータオルで拭きます。石けん自体にはノロウイルスを直接失活化する効果はありませんが、手の脂肪等の汚れを落とすことにより、ウイルスを手指から剥がれやすくする効果があります。
なお、消毒用エタノールによる手指消毒は、石けんと流水を用いた手洗いの代用にはなりませんが、すぐに石けんによる手洗いが出来ないような場合、あくまで一般的な感染症対策の観点から手洗いの補助として用いてください。
Q16 ノロウイルスに汚染された可能性のある調理台や調理器具はどのように殺菌したらいいのですか?
A16
一般的な感染症対策として、消毒用エタノールや逆性石鹸(塩化ベンザルコニウム)が用いられることがありますが、ノロウイルスを完全に失活化する方法としては、次亜塩素酸ナトリウム※や加熱による処理があります。
調理器具等は洗剤などを使用し十分に洗浄した後、次亜塩素酸ナトリウム※(塩素濃度200ppm)で浸すように拭くことでウイルスを失活化できます。
また、まな板、包丁、へら、食器、ふきん、タオル等は熱湯(85℃以上)で1分以上の加熱が有効です。
なお、二枚貝などを取り扱うときは、専用の調理器具(まな板、包丁等)を使用するか、調理器具を使用の都度洗浄、熱湯消毒する等の対策により、他の食材への二次汚染を防止するよう、特に注意するよう気をつけましょう。
※家庭用の次亜塩素酸ナトリウムを含む塩素系漂白剤でも代用できます。(使用に当たっては「使用上の注意」を確認しましょう。)
Q18 ノロウイルスによる感染性胃腸炎のまん延を防止する方法は?
A18
家庭内や集団で生活している施設においてノロウイルスが発生した場合、そのまん延を防ぐためには、ノロウイルスに感染した人のふん便や吐ぶつからの二次感染、ヒトからヒトへの直接感染、飛沫感染を予防する必要があります。
毎年、11月頃から2月の間に、乳幼児や高齢者の間でノロウイルスによる急性胃腸炎が流行しますが、この時期の乳幼児や高齢者の下痢便および吐ぶつには、ノロウイルスが大量に含まれていることがありますので、おむつ等の取扱いには十分注意しましょう。
Q19 患者のふん便や吐ぶつを処理する際に注意することはありますか?
A19
ノロウイルスが感染・増殖する部位は小腸と考えられています。したがって、嘔吐症状が強いときには、小腸の内容物とともにウイルスが逆流して、吐ぶつとともに排泄されます。このため、ふん便と同様に吐ぶつ中にも大量のウイルスが存在し感染源となりうるので、その処理には十分注意する必要があります。
12日以上前にノロウイルスに汚染されたカーペットを通じて、感染が起きた事例も知られており、時間が経っても、患者の吐ぶつ、ふん便やそれらにより汚染された床や手袋などには、感染力のあるウイルスが残っている可能性があります。このため、これら感染源となるものは必ず処理をしましょう。
床等に飛び散った患者の吐ぶつやふん便を処理するときには、使い捨てのガウン(エプロン)、マスクと手袋を着用し汚物中のウイルスが飛び散らないように、ふん便、吐ぶつをペーパータオル等で静かに拭き取ります。拭き取った後は、次亜塩素酸ナトリウム※(塩素濃度約200ppm)で浸すように床を拭き取り、その後水拭きをします。おむつ等は、速やかに閉じてふん便等を包み込みます。
おむつや拭き取りに使用したペーパータオル等は、ビニール袋に密閉して廃棄します。(この際、ビニール袋に廃棄物が充分に浸る量の次亜塩素酸ナトリウム※(塩素濃度約1,000ppm)を入れることが望ましい。)
また、ノロウイルスは乾燥すると容易に空中に漂い、これが口に入って感染することがあるので、吐ぶつやふん便は乾燥しないうちに床等に残らないよう速やかに処理し、処理した後はウイルスが屋外に出て行くよう空気の流れに注意しながら十分に喚気を行うことが感染防止に重要です。
11月頃から2月の間に、乳幼児や高齢者の間でノロウイルスによる急性胃腸炎が流行します。この時期の乳幼児や高齢者の下痢便および吐ぶつには、ノロウイルスが大量に含まれていることがありますので、おむつ等の取扱いには十分注意しましょう。
※家庭用の次亜塩素酸ナトリウムを含む塩素系漂白剤でも代用できます。(使用に当たっては「使用上の注意」を確認しましょう。)
Q20 吐ぶつやふん便が布団などのリネン類に付着した場合はどのように処理をすればよいですか。
A20
リネン等は、付着した汚物中のウイルスが飛び散らないように処理した後、洗剤を入れた水の中で静かにもみ洗いします。その際にしぶきを吸い込まないよう注意してください。下洗いしたリネン類の消毒は85℃・1分間以上の熱水洗濯が適しています。ただし、熱水洗濯が行える洗濯機がない場合には、次亜塩素酸ナトリウム※の消毒が有効です。その際も十分すすぎ、高温の乾燥機などを使用すると殺菌効果は高まります。布団などすぐに洗濯できない場合は、よく乾燥させ、スチームアイロンや布団乾燥機を使うと効果的です。また、下洗い場所を次亜塩素酸ナトリウム※(塩素濃度約200ppm)で消毒後、洗剤を使って掃除をする必要があります。次亜塩素酸ナトリウム※には漂白作用があります。薬剤の「使用上の注意」を確認してください。
※家庭用の次亜塩素酸ナトリウムを含む塩素系漂白剤でも代用できます。(使用に当たっては「使用上の注意」を確認しましょう。)
Q21 感染者が使用した食器類の消毒はどのようにしたらよいですか?
A21
施設の厨房等多人数の食事の調理、配食等をする部署へ感染者の使用した食器類や吐ぶつが付着した食器類を下膳する場合、注意が必要です。可能であれば食器等は、厨房に戻す前、食後すぐに次亜塩素酸ナトリウム液に十分浸し、消毒します。
また、食器等の下洗いや嘔吐後にうがいをした場所等も次亜塩素酸ナトリウム※(塩素濃度約200ppm)で消毒後、洗剤を使って掃除をするようにしてください。
※家庭用の次亜塩素酸ナトリウムを含む塩素系漂白剤でも代用できます。(使用に当たっては「使用上の注意」を確認しましょう。)
Q22 感染者が発生した場合、環境の消毒はどのようにしたらよいですか?
A22
ノロウイルスは感染力が強く、環境(ドアノブ、カーテン、リネン類、日用品など)からもウイルスが検出されます。感染者が発生した場合、消毒が必要な場合次亜塩素酸ナトリウム※などを使用してください。ただし、次亜塩素酸ナトリウム※は金属腐食性がありますので、消毒後の薬剤の拭き取りを十分にするよう注意してください。
※家庭用の次亜塩素酸ナトリウムを含む塩素系漂白剤でも代用できます。(使用に当たっては「使用上の注意」を確認しましょう。)
秋から冬は感染性胃腸炎が流行ります。
感染性胃腸炎とは、細菌やウイルスなどの病原体による感染症です。
ウイルス感染による胃腸炎が多いのですが、
特にノロウィルス感染症は、大変うつりやすいので注意が必要です。
ノロウィルスはインフルエンザウィルスより、
はるかに感染しやすいのです。
ノロウィルスで直接死亡することは、まずありません。
しかし、高齢者などでは、
下痢・嘔吐による脱水や、吐瀉物による気道閉塞で死亡する場合もあります。
脱水には点滴での水分補給が有効です。
ノロウイルスは手指や食品などを介して、主として経口で感染します。
患者のふん便や吐瀉物には、大量のノロウィルスがいます。
とくに、感染源となりやすいのは吐瀉物です。
吐瀉物がじゅうたんにあって、乾燥しても12日間くらいは感染力があります。
また、乾燥した吐瀉物が微細な浮遊物となって感染源となります。
床等に飛び散った患者の吐ぶつやふん便を処理するときには、
使い捨てのガウン(エプロン)、マスクと手袋を着用し汚物中のウイルスが飛び散らないように、
ふん便、吐ぶつをペーパータオル等で静かに拭き取ります。
拭き取った後は、次亜塩素酸ナトリウム(*)で浸すように床を拭き取り、
その後水拭きをします。
おむつ等は、速やかに閉じてふん便等を包み込みます。
おむつや拭き取りに使用したペーパータオル等は、ビニール袋に密閉して廃棄します。
食品からの感染予防には加熱が有効です。
二枚貝の加熱調理でウイルスを失活させるには、
中心部が85~90℃で少なくとも90秒間の加熱が必要とされています。
手洗いは、感染予防に極めて有効です。
手指、手掌、手背、爪、指間、全てを万遍なく洗うことが必要です。
15秒ぐらいかけて洗います。
消毒タイプで液体の石鹸があれば、使用します。
石鹸がなければお湯洗い・水洗いだけでも充分有効です。
手に残った水分は素早く拭き取ります。使い捨てのペーパータオルがいいです。
(*)
■次亜塩素酸ナトリウムの消毒液の作り方(広島市、福山市のサイトから引用)
ノロウイルスに対しては塩素系消毒剤である 次亜塩素酸ナトリウム による消毒が有効です。
次亜塩素酸ナトリウムは、薄めて使用します。
市販されている家庭用塩素系漂白剤(ハイター、ブリーチなど)の濃度は、約5%です。
■便やおう吐物が付着した床,衣類,トイレなどの消毒をする場合…
濃度が 0.1%(1,000ppm) の消毒液を作ります。(1リットルの水にハイター20ml))
■おもちゃ,調理器具,直接手で触れる部分などの消毒をする場合…
濃度が 0.02%(200ppm) の消毒液を作ります。(1リットルの水にハイター5ml))
●家庭用塩素系漂白剤のキャップの容量は通常20ml~25mlです。容器に書いてありますので、確認して使用してください。
【消毒液(次亜塩素酸ナトリウム溶液)を扱うときの注意】
・使用する時は換気を十分に行ってください。
・有毒な塩素ガスが発生しますので,酸性のものと絶対に混ぜないでください!
・皮膚への刺激が強いので,直接触れないよう,ビニール手袋などを使用してください。
・皮膚に付着した場合は,直ちに大量の水で十分洗い流してください。
・目に入った場合は,直ちに大量の水で十分洗い流し,医師の診察を受けてください。
・消毒液は,濃度が高いほどノロウイルスに対して有効ですが,反面,金属が錆びたり,
漂白(変色)作用が強くなったりしますので,注意してください。
・金属に使用した場合は,消毒後,水で洗い流すか,ふき取るなどしてください。
★ 感染経路(広島市のサイトから引用)
感染経路は、基本的にはノロウイルスが口から入り、消化器に達して主に腸管で増殖して感染します。
ノロウイルスが口に達する経路は様々で、具体的な経路を下に示しました。
感染性胃腸炎の原因となる病原体の中でも、ノロウイルスは他の病原体と異なり、経口感染や接触感染のみならず、
飛沫感染や空気感染を起こすことが最近になってわかってきました。
これらの感染経路を理解することが、予防する上で大切です。
1. 経口感染(食中毒)
・ウイルスに汚染された食品(二枚貝に含まれていることがあります。)を、
生または十分に加熱しないで食べた場合。
・感染した人が調理して食品や水が汚染され、それを食べたり飲んだりした場合。
2. 接触感染
・感染した人の便や吐物にふれ、手指をとおして口から入った場合。
・感染した人の手指や感染した人が触れた衣服、器具等に接触し、手指をとおして口から入った場合。
3. 飛沫感染
・患者の便や吐物が飛び散り、その飛沫(ノロウイルスを含んだ小さな水滴。1~2m飛散します。)を吸い込んだ場合。
・便や吐物を不用意に始末したときに発生した飛沫を吸い込んだ場合。
4. 空気感染
・患者の便や吐物の処理が不十分なため、それらが乾燥して飛沫よりもさらに細かい粒子となって空気中を 漂い、それを吸い込んだ場合。この場合感染源からかなり離れた場所でも、感染する可能性があります。
江部康二
☆☆☆
以下厚生労働省のサイトから引用・抜粋
厚生労働省・ノロウイルスに関するQ&A
(作成:平成16年2月4日 最終改定:平成27年6月30日)
ノロウイルスによる食中毒及び感染症の発生を防止するため、ノロウイルスに関する正しい知識と予防対策等について理解を深めていただきたく、厚生 労働省において、次のとおりノロウイルスに関するQ&Aを作成しました。今後、ノロウイルスに関する知見の進展等に対応して、逐次、本Q&Aを更新してい くこととしています。
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/syokuchu/kanren/yobou/040204-1.html
Q1 ノロウイルスによる胃腸炎はどのようなものですか?
A1 ノロウイルスによる感染性胃腸炎や食中毒は、一年を通して発生していますが、
特に冬季に流行します。
ノロウイルスは手指や食品などを介して、経口で感染し、ヒトの腸管で増殖し、おう吐、下痢、腹痛などを起こします。健康な方は軽症で回復しますが、子どもやお年寄りなどでは重症化したり、吐ぶつを誤って気道に詰まらせて死亡することがあります。
ノロウイルスについてはワクチンがなく、
また、治療は輸液などの対症療法に限られます。
従って、皆様の周りの方々と一緒に、次の予防対策を徹底しましょう。
患者のふん便や吐ぶつには大量のウイルスが排出されるので、
(1)食事の前やトイレの後などには、必ず手を洗いましょう。
(2)下痢やおう吐等の症状がある方は、
食品を直接取り扱う作業をしないようにしましょう。
(3)胃腸炎患者に接する方は、患者のふん便や吐ぶつを適切に処理し、
感染を広げないようにしましょう。
特に、子どもやお年寄りなど抵抗力の弱い方は、
加熱が必要な食品は中心部までしっかり加熱して食べましょう。
また、調理器具等は使用後に洗浄、殺菌しましょう。
Q3 ノロウイルスはどうやって感染するのですか?
A3
このウイルスの感染経路はほとんどが経口感染で、
次のような感染様式があると考えられています。
(1)患者のノロウイルスが大量に含まれるふん便や吐ぶつから人の手などを介して二次感 染した場合
(2)家庭や共同生活施設などヒト同士の接触する機会が多いところでヒトからヒトへ飛沫 感染等直接感染する場合
(3)食品取扱者(食品の製造等に従事する者、飲食店における調理従事者、家庭で調理を 行う者などが含まれます。)が感染しておりその者を介して汚染した食品を食べた場合
(4)汚染されていた二枚貝を、生あるいは十分に加熱調理しないで食べた場合
(5)ノロウイルスに汚染された井戸水や簡易水道を消毒不十分で摂取した場合
などがあります。
特に、食中毒では(3)のように食品取扱者を介してウイルスに汚染された食品を原因とする事例が、近年増加傾向にあります。
また、ノロウイルスは(3)、(4)、(5)のように食品や水を介したウイルス性食中毒の原因になるばかりでなく、(1)、(2)のようにウイルス性急性胃腸炎(感染症)の原因にもなります。この多彩な感染経路がノロウイルスの制御を困難なものにしています。
Q8 ノロウイルスに感染するとどんな症状になるのですか?
A8
潜伏期間(感染から発症までの時間)は24~48時間で、主症状は吐き気、嘔吐、下痢、腹痛であり、発熱は軽度です。通常、これら症状が1~2日続いた後、治癒し、後遺症もありません。また、感染しても発症しない場合や軽い風邪のような症状の場合もあります。
Q9 国内でノロウイルスの感染による死者はいますか?
A9
病院や社会福祉施設でノロウイルスの集団感染が発生している時期に、当該施設で死者が出たことがあります。
しかし、もともとの疾患や体力の低下などにより介護を必要としていた方などが亡くなった場合、ノロウイルスの感染がどの程度影響したのか見極めることは困難です。
なお、吐いた物を誤嚥することによる誤嚥性肺炎や吐いた物を喉に詰まらせて窒息する場合など、ノロウイルスが関係したと思われる場合であっても直接の原因とはならない場合もあります。
Q10 発症した場合の治療法はありますか?
A10
現在、このウイルスに効果のある抗ウイルス剤はありません。このため、通常、対症療法が行われます。特に、体力の弱い乳幼児、高齢者は、脱水症状を起こしたり、体力を消耗したりしないように、水分と栄養の補給を充分に行いましょう。脱水症状がひどい場合には病院で輸液を行うなどの治療が必要になります。
止しゃ薬(いわゆる下痢止め薬)は、病気の回復を遅らせることがあるので使用しないことが望ましいでしょう。
Q13 ノロウイルス食中毒の予防方法は?
A13
ノロウイルス食中毒を防ぐためには、(1)食品取扱者や調理器具などからの二次汚染を防止する (2)特に子どもやお年寄りなどの抵抗力の弱い方は、加熱が必要な食品は中心部までしっかり加熱することが重要です。特に、ノロウイルスに感染した人のふん便や吐ぶつには大量のウイルスが排出されるため、大量調理施設の食品取扱者がノロウイルスに感染していると、大規模な食中毒となる可能性があります。
Q15 手洗いはどのようにすればいいのですか?
A15
手洗いは、 手指に付着しているノロウイルスを減らす最も有効な方法です。 調理を行う前(特に飲食業を行っている場合は食事を提供する前も)、食事の前、トイレに行った後、下痢等の患者の汚物処理やオムツ交換等を行った後(手袋をして直接触れないようにしていても)には必ず行いましょう。常に爪を短く切って、指輪等をはずし、石けんを十分泡立て、ブラシなどを使用して手指を洗浄します。すすぎは温水による流水で十分に行い、清潔なタオル又はペーパータオルで拭きます。石けん自体にはノロウイルスを直接失活化する効果はありませんが、手の脂肪等の汚れを落とすことにより、ウイルスを手指から剥がれやすくする効果があります。
なお、消毒用エタノールによる手指消毒は、石けんと流水を用いた手洗いの代用にはなりませんが、すぐに石けんによる手洗いが出来ないような場合、あくまで一般的な感染症対策の観点から手洗いの補助として用いてください。
Q16 ノロウイルスに汚染された可能性のある調理台や調理器具はどのように殺菌したらいいのですか?
A16
一般的な感染症対策として、消毒用エタノールや逆性石鹸(塩化ベンザルコニウム)が用いられることがありますが、ノロウイルスを完全に失活化する方法としては、次亜塩素酸ナトリウム※や加熱による処理があります。
調理器具等は洗剤などを使用し十分に洗浄した後、次亜塩素酸ナトリウム※(塩素濃度200ppm)で浸すように拭くことでウイルスを失活化できます。
また、まな板、包丁、へら、食器、ふきん、タオル等は熱湯(85℃以上)で1分以上の加熱が有効です。
なお、二枚貝などを取り扱うときは、専用の調理器具(まな板、包丁等)を使用するか、調理器具を使用の都度洗浄、熱湯消毒する等の対策により、他の食材への二次汚染を防止するよう、特に注意するよう気をつけましょう。
※家庭用の次亜塩素酸ナトリウムを含む塩素系漂白剤でも代用できます。(使用に当たっては「使用上の注意」を確認しましょう。)
Q18 ノロウイルスによる感染性胃腸炎のまん延を防止する方法は?
A18
家庭内や集団で生活している施設においてノロウイルスが発生した場合、そのまん延を防ぐためには、ノロウイルスに感染した人のふん便や吐ぶつからの二次感染、ヒトからヒトへの直接感染、飛沫感染を予防する必要があります。
毎年、11月頃から2月の間に、乳幼児や高齢者の間でノロウイルスによる急性胃腸炎が流行しますが、この時期の乳幼児や高齢者の下痢便および吐ぶつには、ノロウイルスが大量に含まれていることがありますので、おむつ等の取扱いには十分注意しましょう。
Q19 患者のふん便や吐ぶつを処理する際に注意することはありますか?
A19
ノロウイルスが感染・増殖する部位は小腸と考えられています。したがって、嘔吐症状が強いときには、小腸の内容物とともにウイルスが逆流して、吐ぶつとともに排泄されます。このため、ふん便と同様に吐ぶつ中にも大量のウイルスが存在し感染源となりうるので、その処理には十分注意する必要があります。
12日以上前にノロウイルスに汚染されたカーペットを通じて、感染が起きた事例も知られており、時間が経っても、患者の吐ぶつ、ふん便やそれらにより汚染された床や手袋などには、感染力のあるウイルスが残っている可能性があります。このため、これら感染源となるものは必ず処理をしましょう。
床等に飛び散った患者の吐ぶつやふん便を処理するときには、使い捨てのガウン(エプロン)、マスクと手袋を着用し汚物中のウイルスが飛び散らないように、ふん便、吐ぶつをペーパータオル等で静かに拭き取ります。拭き取った後は、次亜塩素酸ナトリウム※(塩素濃度約200ppm)で浸すように床を拭き取り、その後水拭きをします。おむつ等は、速やかに閉じてふん便等を包み込みます。
おむつや拭き取りに使用したペーパータオル等は、ビニール袋に密閉して廃棄します。(この際、ビニール袋に廃棄物が充分に浸る量の次亜塩素酸ナトリウム※(塩素濃度約1,000ppm)を入れることが望ましい。)
また、ノロウイルスは乾燥すると容易に空中に漂い、これが口に入って感染することがあるので、吐ぶつやふん便は乾燥しないうちに床等に残らないよう速やかに処理し、処理した後はウイルスが屋外に出て行くよう空気の流れに注意しながら十分に喚気を行うことが感染防止に重要です。
11月頃から2月の間に、乳幼児や高齢者の間でノロウイルスによる急性胃腸炎が流行します。この時期の乳幼児や高齢者の下痢便および吐ぶつには、ノロウイルスが大量に含まれていることがありますので、おむつ等の取扱いには十分注意しましょう。
※家庭用の次亜塩素酸ナトリウムを含む塩素系漂白剤でも代用できます。(使用に当たっては「使用上の注意」を確認しましょう。)
Q20 吐ぶつやふん便が布団などのリネン類に付着した場合はどのように処理をすればよいですか。
A20
リネン等は、付着した汚物中のウイルスが飛び散らないように処理した後、洗剤を入れた水の中で静かにもみ洗いします。その際にしぶきを吸い込まないよう注意してください。下洗いしたリネン類の消毒は85℃・1分間以上の熱水洗濯が適しています。ただし、熱水洗濯が行える洗濯機がない場合には、次亜塩素酸ナトリウム※の消毒が有効です。その際も十分すすぎ、高温の乾燥機などを使用すると殺菌効果は高まります。布団などすぐに洗濯できない場合は、よく乾燥させ、スチームアイロンや布団乾燥機を使うと効果的です。また、下洗い場所を次亜塩素酸ナトリウム※(塩素濃度約200ppm)で消毒後、洗剤を使って掃除をする必要があります。次亜塩素酸ナトリウム※には漂白作用があります。薬剤の「使用上の注意」を確認してください。
※家庭用の次亜塩素酸ナトリウムを含む塩素系漂白剤でも代用できます。(使用に当たっては「使用上の注意」を確認しましょう。)
Q21 感染者が使用した食器類の消毒はどのようにしたらよいですか?
A21
施設の厨房等多人数の食事の調理、配食等をする部署へ感染者の使用した食器類や吐ぶつが付着した食器類を下膳する場合、注意が必要です。可能であれば食器等は、厨房に戻す前、食後すぐに次亜塩素酸ナトリウム液に十分浸し、消毒します。
また、食器等の下洗いや嘔吐後にうがいをした場所等も次亜塩素酸ナトリウム※(塩素濃度約200ppm)で消毒後、洗剤を使って掃除をするようにしてください。
※家庭用の次亜塩素酸ナトリウムを含む塩素系漂白剤でも代用できます。(使用に当たっては「使用上の注意」を確認しましょう。)
Q22 感染者が発生した場合、環境の消毒はどのようにしたらよいですか?
A22
ノロウイルスは感染力が強く、環境(ドアノブ、カーテン、リネン類、日用品など)からもウイルスが検出されます。感染者が発生した場合、消毒が必要な場合次亜塩素酸ナトリウム※などを使用してください。ただし、次亜塩素酸ナトリウム※は金属腐食性がありますので、消毒後の薬剤の拭き取りを十分にするよう注意してください。
※家庭用の次亜塩素酸ナトリウムを含む塩素系漂白剤でも代用できます。(使用に当たっては「使用上の注意」を確認しましょう。)
最新医学2018年1月号
http://www.saishin-igaku.co.jp/backnum/2018/y7301.html#8
糖尿病食事療法 ―「食品交換表」に準拠したカーボカウントと適切な糖質調整食への展開―
石田 均
要旨 栄養指導のカーボカウントは,食事の中の糖質量を正しく把握し,その適正化を図る「基礎カーボカウント」と,さらにインスリン療法の場合に,糖質摂取量に合わせてインスリンの単位数を調整する「応用カーボカウント」からなる.しかしながら,この方法は糖質量を的確に計算して食後血糖を適正に制御するためのものであり,決して糖質制限を目的とするものではないことに留意すべきである
http://www.saishin-igaku.co.jp/backnum/2018/y7301.html#8
糖尿病食事療法 ―「食品交換表」に準拠したカーボカウントと適切な糖質調整食への展開―
石田 均
要旨 栄養指導のカーボカウントは,食事の中の糖質量を正しく把握し,その適正化を図る「基礎カーボカウント」と,さらにインスリン療法の場合に,糖質摂取量に合わせてインスリンの単位数を調整する「応用カーボカウント」からなる.しかしながら,この方法は糖質量を的確に計算して食後血糖を適正に制御するためのものであり,決して糖質制限を目的とするものではないことに留意すべきである
2018/01/13(Sat) 11:55 | URL | 中嶋一雄 | 【編集】
中嶋一雄 先生
情報をありがとうございます。
石田 均氏、相変わらずの無根拠な糖質制限食反対ですね。
米国糖尿病学会が2013年10月「栄養療法に関する声明」において
地中海食、ベジタリアン食、高血圧食、脂肪制限食と共に
『糖質制限食』を正式に容認したことを、どう判断しているのか聞きたいものです。
情報をありがとうございます。
石田 均氏、相変わらずの無根拠な糖質制限食反対ですね。
米国糖尿病学会が2013年10月「栄養療法に関する声明」において
地中海食、ベジタリアン食、高血圧食、脂肪制限食と共に
『糖質制限食』を正式に容認したことを、どう判断しているのか聞きたいものです。
2018/01/13(Sat) 18:50 | URL | ドクター江部 | 【編集】
今回は直前までプログラム詳細が発表されず,参加をためらっていたのですが,結局 初日/2日目のみ参加しました.
【1】一般口演 感想
一般口演は,糖尿病(1)~(6)をすべて聴講しました. 下記はその感想ですが,口演の件名は 私が勝手に付け直していますので,正しい件名は抄録集でご確認ください.
[O-94] サツマイモを皮ごと食べれば血糖値は上がらないか.
結果からみれば,ほとんど関係なし. 発表者も述べていたように,皮ありの場合の食物繊維量は 2.8g,無しの場合は2.2g(いずれも100gあたり)ですから,この程度の差では結果が同じでも当たりまえでしょう. 座長がコメントしていたように,『どうせやるなら,皮ありの場合は 中身をくり抜いて,皮だらけにすればよかったのに』と,まことにその通り.
[O-99] 2型糖尿病患者の食物摂取頻度調査(FFQ)による栄養状況把握
この口演に限らないのですが,代表例として挙げました. 患者が普段どのような食事をしているのか,これを正確に把握するのに,管理栄養士さんがいかに苦労しているかが よくわかる発表でした.患者に前数日の食事を思い出してもらって,それを書き出す,あるいは 食事のたびに内容を記録してもらうという方法は,自分でやってみればわかりますが,ほとんどあてになりません. 私など昨晩の食事すら記憶にありません. また 他の口演でも触れられていましたが,『BMIの高い人,つまり太っている人ほど,自分の食事を過少申告する』という現象も世界共通です.それにくらべれば,このFFQは,『普段,どういうものをどれくらいの頻度と量で食べていますか?』と尋ねるので,まだしもBiasはかかりにくいですが,『多い』『普通』『少ない』というのも主観的判断ですから,患者同士でまるで異なっていて当たり前.統計的処理には耐えないのでしょうね.
[O-105] 食べ順と食後血糖値
Vegetable 1st というのが最初に提案された食べ順療法ですが,野菜を食べて,その15分後に主食を食べる,というのはあまりにも非現実的. そこで,この発表では,おかずファースト,つまり主食を食べ始める時刻を時間=0として,その15分前,10分前からおかずを食べ始めて(おかずは,野菜,肉など区別せず)0分までに食べきる,という方法で,食後血糖値の推移を健常者で調べたものです. 結果は予想通り,10又は15分前から,おかずを食べ,最後に主食をとれば食後血糖値変動は緩やかだったというもの. 血糖値曲線のAUCはどれであれ同じだったので,α-グルコシダーゼ阻害剤(α-GI)を食前服用したのとほぼ同等になるということです.α-GIは,かなり高価なので,これでもいいかもしれませんね.
[O-172] グルカゴン分泌と摂取栄養素の関係
グルカゴンの精密定量法(=サンドイッチELISA法)を開発された群馬大学 北村忠弘先生の研究室からの発表です.予め薬物で膵臓β細胞を破壊しておいたマウス(=したがって,血糖上昇に対してインスリン応答できない)に,脂質又は蛋白質負荷試験したところ,蛋白質の場合には,グルカゴン分泌亢進が見られた,という結果です.血糖値が上昇も下降もしていないのに,グルカゴンが応答する,というこの結果は,インスリンとグルカゴンが互いに拮抗するホルモンであるという従来の定説では説明できません.前回の糖尿病学会でも,これに関する議論がありましたが,ひょっとしたら,数百万年前の発生当初の人類は,糖質ではなくアミノ酸代謝で筋肉活動エネルギーを得ていた,という仮説の正しさを証明するものかもしれません.
[O-173] 19日間にわたる食べ順療法の効果
食べる順を変えて食後血糖値を調べる,というのは,ほとんどが単回の試験なのに対して,これは19日間にわたり,[主食の10分前おかず完食]と[主食をまず完食して10分後におかず]という2つのパターンを,それぞれ9日間,10日間実行してもらった例で,いわば食べ順の再現性を検証したもの.結果は単回試験とほぼ同じで,おかずファーストの方が血糖値上昇は緩やか,但しAUCはどちらでも同じ.
[O-177] 高齢でも元気な糖尿人の秘訣
ビルの2階にあるが,エレベーターはないので階段を使わないと通院できないというクリニックに,外来で長年通っている80歳以上の患者の特徴を調べたもの.平均HbA1cは 7.3ですから,年齢を考えれば極めて優秀な人達ばかりです.この方たちの食事をみると,蛋白質摂取量は1.36g/kgと若者以上に蛋白質を積極的に摂っています.Ca摂取量も多い.唯一食塩摂取量が多い(~10g)ですが,かけ醤油はほとんどしない,とのことなので,モリモリとおかずを沢山食べるので,それにつられて食塩が増えた模様.また 運動量は80歳未満の人と変わりません. つまりは,高蛋白のおかずを沢山食べてよく動いていれば,それだけで 80歳を越えても血糖コントロールは可能だということを示してくれています.
[O-179] 低周波ベルトは 運動の代わりになるか
リハビリに使われる,低周波電気刺激で両脚の筋肉を強制的に動かすベルトは,食後の運動の代わりになるかという,無精者の私には思わず身を乗り出す発表でした.対象は糖尿病患者ではなく、元気一杯の女子大生9名だったのですが,このベルトで刺激しながらOGTTを行ったところ,かなり強度の刺激であれば,トレッドミルで運動したのに近い結果が得られていました.今後は 糖尿病予備軍も対象にして調べてみるとの事なので期待されます.
【2】シンポジウム#4 「糖尿病薬物治療と栄養管理」感想
今回 参加の決め手になったのは,このシンポジウムがあったからです.
興味をひいた部分のみご報告します.
演題 S4-2
『薬物治療中の高齢糖尿病患者の栄養管理を考える』東大医学部附属病院 澤田実佳 先生
東大病院でも,入院患者の半数以上が65歳以上となり,高齢者への治療がメインになってきたようです. 中年より若い肥満の糖尿病患者にSGLT2iを投与すると,体脂肪率が低下して,体重も減少,かつ骨格筋はほとんど変わらないか微減なのですが,これが肥満・高齢の糖尿病患では,体重の低下と共に,骨格筋まで減少してサルコペニアの恐れがあるとのこと.(サルコペニア判定の基準は 握力<26kg,SMI<7.0) そこで高齢者に対しては,投薬と同時に筋低下を引き起こさない食事療法も必須,とりわけ高蛋白食の提供が重要との内容でした.そのために,通常の炭水化物カロリー比60%の,いわゆる糖尿病食だけではなく,50%,40%の病院食も行っているとのこと. 私の知る限りでは,公の場で,【炭水化物比率 40%(つまり糖質は40%未満)の糖尿病病院食】の存在を明確に紹介されたのは,これが初めてではないかと思います.さすがに門脇先生のおられる東大病院だからでしょう.
演題 S4-3
『低炭水化物食はSGLT2阻害薬と同じ?』京都府立医大 福井道明先生
学会のDebateなどで最初に登場した頃は,糖質制限食を全面否定しておられた福井先生ですが,その後徐々に軌道修正(全否定→短期間なら許容...)して,現在では糖質制限食を行うのであれば一定の注意が必要,という立場での発表でした.
概要は;
- 糖尿病患者の多くに見られるのは,糖質過多の食事.これを『適正』に戻すのは糖質制限でも何でもない,ごく当然の栄養指導.
- 糖質制限は,高蛋白・高脂質食となるが,蛋白では,魚や植物性のものを取り入れる,また 脂質では飽和脂肪酸を控えれば,むしろ総死亡リスクは低くなる.
- ただし,腎症3期以上には勧められない.
- 一方 SGLT2iは食事内容が極端にならないので適応が広い.
- ただし 糖質制限食を実行している患者にSGLT2i投与はリスクが高い.
というものでしたが,現時点で学会が最大限許容できるのは,この線までだという意思表明なのでしょう.ただ それならそれで構わないので,糖尿病ガイドラインに これを早く明記していただきたいものです.日本中の内科一般の先生方は,ガイドラインに糖質制限食という言葉がない以上,効果はあるだろうと思ってはいても,実際に患者に指示するのは躊躇わざるをえないでしょうから.
【1】一般口演 感想
一般口演は,糖尿病(1)~(6)をすべて聴講しました. 下記はその感想ですが,口演の件名は 私が勝手に付け直していますので,正しい件名は抄録集でご確認ください.
[O-94] サツマイモを皮ごと食べれば血糖値は上がらないか.
結果からみれば,ほとんど関係なし. 発表者も述べていたように,皮ありの場合の食物繊維量は 2.8g,無しの場合は2.2g(いずれも100gあたり)ですから,この程度の差では結果が同じでも当たりまえでしょう. 座長がコメントしていたように,『どうせやるなら,皮ありの場合は 中身をくり抜いて,皮だらけにすればよかったのに』と,まことにその通り.
[O-99] 2型糖尿病患者の食物摂取頻度調査(FFQ)による栄養状況把握
この口演に限らないのですが,代表例として挙げました. 患者が普段どのような食事をしているのか,これを正確に把握するのに,管理栄養士さんがいかに苦労しているかが よくわかる発表でした.患者に前数日の食事を思い出してもらって,それを書き出す,あるいは 食事のたびに内容を記録してもらうという方法は,自分でやってみればわかりますが,ほとんどあてになりません. 私など昨晩の食事すら記憶にありません. また 他の口演でも触れられていましたが,『BMIの高い人,つまり太っている人ほど,自分の食事を過少申告する』という現象も世界共通です.それにくらべれば,このFFQは,『普段,どういうものをどれくらいの頻度と量で食べていますか?』と尋ねるので,まだしもBiasはかかりにくいですが,『多い』『普通』『少ない』というのも主観的判断ですから,患者同士でまるで異なっていて当たり前.統計的処理には耐えないのでしょうね.
[O-105] 食べ順と食後血糖値
Vegetable 1st というのが最初に提案された食べ順療法ですが,野菜を食べて,その15分後に主食を食べる,というのはあまりにも非現実的. そこで,この発表では,おかずファースト,つまり主食を食べ始める時刻を時間=0として,その15分前,10分前からおかずを食べ始めて(おかずは,野菜,肉など区別せず)0分までに食べきる,という方法で,食後血糖値の推移を健常者で調べたものです. 結果は予想通り,10又は15分前から,おかずを食べ,最後に主食をとれば食後血糖値変動は緩やかだったというもの. 血糖値曲線のAUCはどれであれ同じだったので,α-グルコシダーゼ阻害剤(α-GI)を食前服用したのとほぼ同等になるということです.α-GIは,かなり高価なので,これでもいいかもしれませんね.
[O-172] グルカゴン分泌と摂取栄養素の関係
グルカゴンの精密定量法(=サンドイッチELISA法)を開発された群馬大学 北村忠弘先生の研究室からの発表です.予め薬物で膵臓β細胞を破壊しておいたマウス(=したがって,血糖上昇に対してインスリン応答できない)に,脂質又は蛋白質負荷試験したところ,蛋白質の場合には,グルカゴン分泌亢進が見られた,という結果です.血糖値が上昇も下降もしていないのに,グルカゴンが応答する,というこの結果は,インスリンとグルカゴンが互いに拮抗するホルモンであるという従来の定説では説明できません.前回の糖尿病学会でも,これに関する議論がありましたが,ひょっとしたら,数百万年前の発生当初の人類は,糖質ではなくアミノ酸代謝で筋肉活動エネルギーを得ていた,という仮説の正しさを証明するものかもしれません.
[O-173] 19日間にわたる食べ順療法の効果
食べる順を変えて食後血糖値を調べる,というのは,ほとんどが単回の試験なのに対して,これは19日間にわたり,[主食の10分前おかず完食]と[主食をまず完食して10分後におかず]という2つのパターンを,それぞれ9日間,10日間実行してもらった例で,いわば食べ順の再現性を検証したもの.結果は単回試験とほぼ同じで,おかずファーストの方が血糖値上昇は緩やか,但しAUCはどちらでも同じ.
[O-177] 高齢でも元気な糖尿人の秘訣
ビルの2階にあるが,エレベーターはないので階段を使わないと通院できないというクリニックに,外来で長年通っている80歳以上の患者の特徴を調べたもの.平均HbA1cは 7.3ですから,年齢を考えれば極めて優秀な人達ばかりです.この方たちの食事をみると,蛋白質摂取量は1.36g/kgと若者以上に蛋白質を積極的に摂っています.Ca摂取量も多い.唯一食塩摂取量が多い(~10g)ですが,かけ醤油はほとんどしない,とのことなので,モリモリとおかずを沢山食べるので,それにつられて食塩が増えた模様.また 運動量は80歳未満の人と変わりません. つまりは,高蛋白のおかずを沢山食べてよく動いていれば,それだけで 80歳を越えても血糖コントロールは可能だということを示してくれています.
[O-179] 低周波ベルトは 運動の代わりになるか
リハビリに使われる,低周波電気刺激で両脚の筋肉を強制的に動かすベルトは,食後の運動の代わりになるかという,無精者の私には思わず身を乗り出す発表でした.対象は糖尿病患者ではなく、元気一杯の女子大生9名だったのですが,このベルトで刺激しながらOGTTを行ったところ,かなり強度の刺激であれば,トレッドミルで運動したのに近い結果が得られていました.今後は 糖尿病予備軍も対象にして調べてみるとの事なので期待されます.
【2】シンポジウム#4 「糖尿病薬物治療と栄養管理」感想
今回 参加の決め手になったのは,このシンポジウムがあったからです.
興味をひいた部分のみご報告します.
演題 S4-2
『薬物治療中の高齢糖尿病患者の栄養管理を考える』東大医学部附属病院 澤田実佳 先生
東大病院でも,入院患者の半数以上が65歳以上となり,高齢者への治療がメインになってきたようです. 中年より若い肥満の糖尿病患者にSGLT2iを投与すると,体脂肪率が低下して,体重も減少,かつ骨格筋はほとんど変わらないか微減なのですが,これが肥満・高齢の糖尿病患では,体重の低下と共に,骨格筋まで減少してサルコペニアの恐れがあるとのこと.(サルコペニア判定の基準は 握力<26kg,SMI<7.0) そこで高齢者に対しては,投薬と同時に筋低下を引き起こさない食事療法も必須,とりわけ高蛋白食の提供が重要との内容でした.そのために,通常の炭水化物カロリー比60%の,いわゆる糖尿病食だけではなく,50%,40%の病院食も行っているとのこと. 私の知る限りでは,公の場で,【炭水化物比率 40%(つまり糖質は40%未満)の糖尿病病院食】の存在を明確に紹介されたのは,これが初めてではないかと思います.さすがに門脇先生のおられる東大病院だからでしょう.
演題 S4-3
『低炭水化物食はSGLT2阻害薬と同じ?』京都府立医大 福井道明先生
学会のDebateなどで最初に登場した頃は,糖質制限食を全面否定しておられた福井先生ですが,その後徐々に軌道修正(全否定→短期間なら許容...)して,現在では糖質制限食を行うのであれば一定の注意が必要,という立場での発表でした.
概要は;
- 糖尿病患者の多くに見られるのは,糖質過多の食事.これを『適正』に戻すのは糖質制限でも何でもない,ごく当然の栄養指導.
- 糖質制限は,高蛋白・高脂質食となるが,蛋白では,魚や植物性のものを取り入れる,また 脂質では飽和脂肪酸を控えれば,むしろ総死亡リスクは低くなる.
- ただし,腎症3期以上には勧められない.
- 一方 SGLT2iは食事内容が極端にならないので適応が広い.
- ただし 糖質制限食を実行している患者にSGLT2i投与はリスクが高い.
というものでしたが,現時点で学会が最大限許容できるのは,この線までだという意思表明なのでしょう.ただ それならそれで構わないので,糖尿病ガイドラインに これを早く明記していただきたいものです.日本中の内科一般の先生方は,ガイドラインに糖質制限食という言葉がない以上,効果はあるだろうと思ってはいても,実際に患者に指示するのは躊躇わざるをえないでしょうから.
2018/01/13(Sat) 22:47 | URL | しらねのぞるば | 【編集】
訂正です。
>【炭水化物比率 40%(つまり糖質は40%未満)の糖尿病病院食】
カロリー比で40%ですから、これは間違いですね。
正しくは
>【炭水化物カロリー比率 40%の糖尿病病院食】
でした。
>【炭水化物比率 40%(つまり糖質は40%未満)の糖尿病病院食】
カロリー比で40%ですから、これは間違いですね。
正しくは
>【炭水化物カロリー比率 40%の糖尿病病院食】
でした。
2018/01/14(Sun) 06:17 | URL | しらねのぞるば | 【編集】
しらねのぞるば さん
いつも、貴重な情報をありがとうございます。
とても参考になります。
いつも、貴重な情報をありがとうございます。
とても参考になります。
2018/01/14(Sun) 16:07 | URL | ドクター江部 | 【編集】
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