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非ステロイド系抗炎症薬と腎障害、胃潰瘍。アセトアミノフェンはOK。
こんにちは。

冬場は感冒やインフルエンザなどに罹る機会が多く、
医療機関に受診すると、結構安易に、解熱剤が処方されるので注意が必要です。
処方される解熱剤のほとんどが、非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)です。

2018年01月05日 (金)の記事で
非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)に関して、脳症になるリスクがあるので、
インフルエンザに使用してはいけない
ということを、記事にしました。
より正確には、ウィルス、細菌、原虫などの感染症が存在しての発熱には、
NSAIDsは使用してはいけないということです。

また、この薬は、プロスタグランジンという物質の産生を抑えるために
腎臓への血液の流れが悪くなり、急性腎不全を起こすことがあります。
結構頻度が高く、薬を飲んだ後に尿量が減るようでしたら、要注意です。

実際に、私の糖尿病のご高齢の患者さんで、帯状疱疹になり、
受診した医療機関で、抗ウィルス薬と共に、ロキソニン3錠/日、
一日3回食後に内服となった方がおられました。
7日分の薬を処方されて、
すでに5日間内服した時点で、高雄病院を受診されました。
血液検査したところ、すでにクレアチニン値が悪化していて、
腎不全の状態でした。
軽症でしたので、すぐにロキソニンを中止して、幸いクレアチニン値は改善しました。

プロスタグランジンは全身の様々な組織や器官の細胞に存在します。
結局、NSAIDsは単純に熱を下げるだけではなく、全身の細胞において、
プロスタグランジンという物質の生合成を抑制するのです。

プロスタグランジンは、血圧低下作用や筋肉の収縮作用、黄体退行作用、
血管拡張作用など色々な役割をもつホルモンです。
NSAIDsは、プロスタグランジンの生合成を抑制するのですから、
様々な副作用が出て当たり前なのです。

さらに、痛みや炎症や、解熱の目的で長期に飲み続けると、
胃炎や胃潰瘍の副作用が起こることがあります。
NSAIDsは痛みの元となる物質を作り出す酵素(シクロオキシゲナーゼ:COX:コックス)の働きを妨げて、
解熱や鎮痛、抗炎症作用を発揮する薬です。

COXには2つの種類があり、COX-1は胃粘膜や血管にあって生体の恒常性の維持に、
COX-2は主に刺激があった時に作られ、痛みや炎症に関係しています。

NSAIDsは、COX-2の働きを抑えて、解熱、鎮痛、抗炎症作用を示しますが、
ほとんどのNSAIDsは、COX-2だけでなく、COX-1の働きも抑えるため、
胃酸の分泌が増えたり、胃粘膜の血流が悪くなったりして、
胃炎や胃潰瘍を起こす原因になるのです。

胃炎や胃潰瘍が起こると胃の痛み、吐き気などの症状が起こりますが、
ピロリ菌が元凶の一般的な胃潰瘍に比べ、
NSAIDsによる潰瘍は症状が出にくいのです。
そのため何も症状を感じないうちに、
突然、胃から出血して吐血や下血することがあります。
調査によれば、リウマチなどでNSAIDsを4週間以上内服している場合、
胃粘膜保護剤を内服していても、6割以上の人で、
胃粘膜障害が認められたということです。

このように考察してくると、
ロキソニン、ボルタレン、ポンタール、インダシン、アスピリン・・・
これらのごく一般的なNSAIDsは、有害事象が非常に多いので、
使用は極めて慎重にということです。

長期投与は勿論、基本的には不可です。
例えば、ロキソニン3錠/日とかは、長期投与だと
非常に副作用リスクが高いです。

ロキソニン1~2錠/日は、リウマチなど、症例により、
やむをえず投与することもあると思います。
私は、生理痛とか、頭痛に頓用でなら、許容範囲と思って、
処方することもあります。

結局、
安全に使用できる、解熱剤、鎮痛剤は、アセトアミノフェンだけということです。
アセトアミノフェンは鎮痛・解熱作用を有しており、
NSAIDsと同様にCOXを阻害しますが、
その作用は弱く抗炎症作用はほとんどありません。
そのためアセトアミノフェンはNSAIDsには分類されていません。
アセトアミノフェンの作用機序は、中枢神経におけるCOX阻害と考えられていますが、
詳細な機序は未だに解明されていません。
商品名はカロナール、コカール、アンヒバなどです。

発熱には、アセトアミノフェンを、
成人なら、1回に300~500~600mg、1日2回なら安全です。
年齢、症状により適宜増減で、原則として1日最大1,500mgです。

腰痛や生理痛なら、 成人はアセトアミノフェンとして、
1回300~1000mgを経口服用し、服用間隔は4~6時間以上とし、
年齢、症状により適宜増減しますが、1日総量として4000mgが限度です。

あと、痛みが強いときは、
トラムセット(トラマドール+アセトアミノフェン)が有効です。
トラマドールは非麻薬性オピオイド受容体刺激薬です。
トラムセットには、NSAIDsのような副作用はありませんが、
吐き気がすることがあります。
それで、初期の1~2週間は、吐き気止めと一緒に内服します。


江部康二
コメント
私の母が・・・
江部先生、はじめまして。
私の母(81歳)が先日の先生の記事を読んでパニック状態になってしまいました。他病院で処方された薬を飲んで脳症になったと言うのです。
私は薬との関連性は低いと思うのですが本人は薬のせいだと言って聞きません。
症状としては記憶力の低下、難聴、めまい、白内障などです。
そこで質問なのですが、非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)による脳症でこのような症状が出る事はあるのでしょうか。また、そのような症状が出た場合、どのような治療をすれば良いのでしょうか。

母は去年の春頃から空腹時血糖値が少し高く、7月から糖質制限(主食抜き)しております。現在の空腹時血糖値はAbbott社のFreeStyle Optium Neoで測ってだいたい120~145mg/dLくらいです。
母は、1日も早く江部先生の診察を受けたいと申しております。
家は京都市ですので近いです。
とにかく不安で不安で仕方ないようです。
2018/01/08(Mon) 18:17 | URL | K.K | 【編集
江部先生 おはようございます。
いつも為になる記事をありがとうございます。

先生の著書やブログを参考にしながら、糖質制限を昨年1月21日から始めて約1年になります。
始めたきっかけは、ダイエットでした。

糖質制限開始前の2016年12月末で体重70キロ(身長173センチ)、BMIは23.2でしたが、1年後(2017年12月末)には、体重63キロ BMI21.15となりました。糖質制限を始めた当初の2カ月間で約5キロの減量に成功し、その後はほぼ横ばいないしは微減で推移しています。

実は、私は2015年8月に椎骨動脈解離とくも膜下出血で倒れ、手術(コイル塞栓術)後約半年間リハビリ入院をしていました。
耳慣れない病名でしたので退院後もしばらく、自分の置かれた状況がよく理解できず、ネットや書籍で椎骨動脈解離やくも膜下出血について調べていました。(手術の執刀医に聞いても、原因は分からないということでしたので、状況がよく理解できないのも止むを得ないと思っています)

発病前の健康診断(2015年3月)時には64キロだった体重が退院後の健診(2016年3月)では62キロ、しかしその後みるみる増加して2016年12月に70キロとなりました。
そこで、色々調べた結果糖質制限を知り、先生の著書もいくつか買い求め、本ブログに出会った次第です。

先生に是非お聞きしたいことがあります。

退院後に椎骨動脈解離やくも膜下出血を色々調べた中で、『脳梗塞・心筋梗塞は予知できる』(真島康雄著)に出会いました。https://www.amazon.co.jp/%E8%84%B3%E6%A2%97%E5%A1%9E%E3%83%BB%E5%BF%83%E7%AD%8B%E6%A2%97%E5%A1%9E%E3%81%AF%E4%BA%88%E7%9F%A5%E3%81%A7%E3%81%8D%E3%82%8B-%E7%9C%9F%E5%B3%B6-%E5%BA%B7%E9%9B%84/dp/4344016394

最近気になって、本著の作者真島康雄医師のHPを検索したところ、糖質制限には大きな危険が潜んでいる との記述を見つけました。
http://majimaclinic22.webmedipr.jp/kanzenyobou/column2/29.html

内容にはよく理解できない部分もあるのですが、糖質制限を続けてよいのか迷っています。
世間的には、かなり認知されてきた糖質制限ですが、留意すべき点をご教授頂けたら幸いです。

真島先生の診察を受けようかとも思いましたが、さすがに福岡は私の住んでいる千葉からは遠いので、まずは江部先生にお聞きした次第です。
なお、通院している病院で腹部エコーはとってみましたが、主治医からは特に注意はありませんでした。


現在、52歳 男性で米飯摂取は週1回程度です。
日々の食事は、朝食と昼食はローソンのブランパンと海苔 牛乳 無糖ヨーグルトをとります。
また、夕食は米、イモ類はとらず、野菜 肉 がんもどき 海藻などをとっています。
飲み物は、牛乳 ブラックコーヒー 水以外は基本的に飲んでいません)
スーパー糖質制限まではいきませんが、その手前位の糖質摂取ではないかと自己評価しています。
なお、血糖値をはかったことはありません。

よろしくお願いいたします。

2018/01/09(Tue) 09:14 | URL | yanosono | 【編集
(追記)真島医師の解説記事一覧
解説記事一覧です。糖質で検索すると4つの記事がヒットしました。
これから読んでみます。
http://majimaclinic22.webmedipr.jp/kanzenyobou/index.html
2018/01/09(Tue) 09:52 | URL | yanosono | 【編集
真島医師の記事を追加します。
2018/01/09(Tue) 09:59 | URL | yanosono | 【編集
Re: 私の母が・・・
K.K さん

インフルエンザ脳症は、意識障害・高熱。痙攣などで緊急入院になる病態です。

母上の今の症状とインフルエンザ脳症は、全く無関係です。

記憶力の低下、難聴、めまい、白内障があるなら、
神経内科、耳鼻科、眼科をまずは受診するのが良いです。
2018/01/09(Tue) 10:55 | URL | ドクター江部 | 【編集
Re: タイトルなし
yanosono さん

真島消化器内科クリニックのサイトを見ましたが、
糖質制限でプラークが悪化という症例は
2年間、豚カツを頻回に摂取したとか、「糖質+脂質」摂取パターンのように思います。
中性脂肪が高値で、HDLコレステロールが低値であり、検査データも糖質制限とは思えないデータです。
つまり糖質制限食実践例ではないと思います。

プラークができる原因として
糖尿病・耐糖能異常、脂質異常症(高LDLコレステロール血症、低HDLコレステロール血症、高トリグリセライド血症)、
高血圧、肥満、喫煙などがあります。

喫煙は別格として、それ以外のものは全て糖質制限食で改善するので
理論的には糖質セイゲニストには、プラークはできにくいと思います。
2018/01/09(Tue) 11:02 | URL | ドクター江部 | 【編集
Re: 真島医師の記事を追加します。
yanosono さん

真島医師が一個人の資格で、ご自身の仮説を述べるのは、自由です。
真島医師の発する情報をどう判断するかは、yanosonoご自身がご自分の頭で考えて決断すること思います。

私は、
2013年10月、米国糖尿病学会が「栄養療法に関する声明」において
地中海食、ベジタリアン食、脂肪制限食、高血圧食と共に、
『糖質制限食』を正式に容認したという事実で、
この種の安全性問題には、既にエビデンスレベルで決着がついたと考えています。

「多数の研究論文のエビデンス基づく米国糖尿病学会の見解」と「真島医師一個人の仮説」
どちらが信頼度が高いかは、明白です。





2018/01/09(Tue) 11:13 | URL | ドクター江部 | 【編集
御礼
ありがとうございました。

真島医師の見解はかなり糖質制限全般に対して批判的ですが、極端な事例だとも感じてもいたので、江部先生のお答えを読んで、かなりスッキリしました。
自分の頭でよく考えて判断しようと思います。
2018/01/09(Tue) 11:39 | URL | yanosono | 【編集
ありがとうございます。
母に説明しました。
少し、落ち着いたようです。
治療と言っても糖質制限で進行を遅らせるくらいしか出来る事がありませんので今後も糖質制限を続けたいと思います。
2018/01/11(Thu) 16:02 | URL | K.K | 【編集
ノーシンピュア
我が家の常備薬はノーシンピュアなのですが、インフルエンザの際は避けた方が良いのでしょうか?

【ノーシンピュアの成分(2錠中)】
イブプロフェン 150mg
アリルイソプロピルアセチル尿素 60mg
無水カフェイン80mg
2018/01/18(Thu) 17:58 | URL | れぶる | 【編集
Re: ノーシンピュア
れぶる さん

イブプロフェンは、NSAIDsのなかでは、比較的安全とされています。

しかし所前はNSAIDsなので、安全性はアセトアミノフェンには劣ります。

アセトアミノフェンが一番、安全と考えられます。
2018/01/18(Thu) 18:18 | URL | ドクター江部 | 【編集
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