2017年11月28日 (火)
こんにちは。
今回はインスリンシリーズの3回目です。
農耕前、狩猟・採集時代のインスリンの役割について考察してみます。
細胞がブドウ糖を取り込むためには「糖輸送体」という特別なタンパク質が必要です。
英語の頭文字からGLUT(グルット)と呼ばれ、現時点でグルット1〜グルット14までが確認されています。
正式にはグルコーストランスポーター(glucose transporter)です。
このうちグルット1は赤血球・脳・網膜などの糖輸送体で、脳細胞や赤血球の表面にあるため、
血流さえあればいつでも血液中からブドウ糖を取り込めます。
これに対して筋肉細胞と脂肪細胞に特化した糖輸送体がグルット4で、
ふだんは細胞の内部に沈んでいるのでブドウ糖をほとんど取り込めません。
しかし血糖値が上昇してインスリンが追加分泌されると、
細胞内に沈んでいたグルット4が細胞表面に移動してきて、ブドウ糖を取り込めるようになるのです。
グルット14種の中でインスリンに依存しているのはグルット4だけです。
インスリンとグルット4の役割を、農耕が始まる前の時代までさかのぼって考えてみました。
グルット4は、今でこそ獅子奮迅の大活躍なのですが、農耕前はほとんど活動することはなかったと考えられます。
すなわち農耕後、日常的に穀物を食べるようになってからは
「食後血糖値の上昇→インスリン追加分泌→グルット4が筋肉細胞・脂肪細胞の表面に移動→ブドウ糖を細胞内
へ取り込む」というシステムが、
毎日食事のたびに稼働するようになったのです。
しかし、狩猟・採集時代には穀物はなかったので、たまの糖質摂取でごく軽い血糖値上昇があり、
インスリン少量追加分泌のときだけグルット4の出番があったにすぎません。
運よく果物やナッツ類が採集できた場合のみです。
この頃は、血糖値は慌てて下げなくてはいけないほど上昇しないので、グルット4の役割は、
筋肉細胞で血糖値を下げるというよりは、
脂肪細胞で中性脂肪をつくらせて冬に備えるほうが、はるかに大きな意味を持っていたと思います。
すなわち、農耕前は「インスリン+グルット4」のコンビは、たまに糖質(野生の果物やナッツ類)を摂ったときだけ、
もっぱら中性脂肪の生産システムとして活躍していたものと考えられます。
すなわち、狩猟・採集時代の「インスリン+グルット4」は、
もっぱら飢餓に対するセーフティーネットとして貢献していたと思われます。
また、摂取した糖質は肝臓にも取り込まれてグリコーゲンを蓄えますが、
あまった血糖が中性脂肪に変えられて脂肪細胞に蓄えられます。
このようにインスリンの中性脂肪蓄積システムは、長い間、
人類の生存におおいに貢献してきたのですが、
いまは日常的に1日に3~5回糖質を摂取する時代です。
このため「インスリン+グルット4」のコンビは今や「肥満システム」と化してしまい、
インスリンは肥満ホルモンと呼ばれるようになってしまいました。
江部康二
今回はインスリンシリーズの3回目です。
農耕前、狩猟・採集時代のインスリンの役割について考察してみます。
細胞がブドウ糖を取り込むためには「糖輸送体」という特別なタンパク質が必要です。
英語の頭文字からGLUT(グルット)と呼ばれ、現時点でグルット1〜グルット14までが確認されています。
正式にはグルコーストランスポーター(glucose transporter)です。
このうちグルット1は赤血球・脳・網膜などの糖輸送体で、脳細胞や赤血球の表面にあるため、
血流さえあればいつでも血液中からブドウ糖を取り込めます。
これに対して筋肉細胞と脂肪細胞に特化した糖輸送体がグルット4で、
ふだんは細胞の内部に沈んでいるのでブドウ糖をほとんど取り込めません。
しかし血糖値が上昇してインスリンが追加分泌されると、
細胞内に沈んでいたグルット4が細胞表面に移動してきて、ブドウ糖を取り込めるようになるのです。
グルット14種の中でインスリンに依存しているのはグルット4だけです。
インスリンとグルット4の役割を、農耕が始まる前の時代までさかのぼって考えてみました。
グルット4は、今でこそ獅子奮迅の大活躍なのですが、農耕前はほとんど活動することはなかったと考えられます。
すなわち農耕後、日常的に穀物を食べるようになってからは
「食後血糖値の上昇→インスリン追加分泌→グルット4が筋肉細胞・脂肪細胞の表面に移動→ブドウ糖を細胞内
へ取り込む」というシステムが、
毎日食事のたびに稼働するようになったのです。
しかし、狩猟・採集時代には穀物はなかったので、たまの糖質摂取でごく軽い血糖値上昇があり、
インスリン少量追加分泌のときだけグルット4の出番があったにすぎません。
運よく果物やナッツ類が採集できた場合のみです。
この頃は、血糖値は慌てて下げなくてはいけないほど上昇しないので、グルット4の役割は、
筋肉細胞で血糖値を下げるというよりは、
脂肪細胞で中性脂肪をつくらせて冬に備えるほうが、はるかに大きな意味を持っていたと思います。
すなわち、農耕前は「インスリン+グルット4」のコンビは、たまに糖質(野生の果物やナッツ類)を摂ったときだけ、
もっぱら中性脂肪の生産システムとして活躍していたものと考えられます。
すなわち、狩猟・採集時代の「インスリン+グルット4」は、
もっぱら飢餓に対するセーフティーネットとして貢献していたと思われます。
また、摂取した糖質は肝臓にも取り込まれてグリコーゲンを蓄えますが、
あまった血糖が中性脂肪に変えられて脂肪細胞に蓄えられます。
このようにインスリンの中性脂肪蓄積システムは、長い間、
人類の生存におおいに貢献してきたのですが、
いまは日常的に1日に3~5回糖質を摂取する時代です。
このため「インスリン+グルット4」のコンビは今や「肥満システム」と化してしまい、
インスリンは肥満ホルモンと呼ばれるようになってしまいました。
江部康二
こんばんわ。
お忙しいとは思いますが、自分のHbA1cは気にした方がいいのかわかりませんでしたので質問致しました。
痩せようといつもカロリーばかり気にしていたので、お米を控え、朝はあまり食べず、お昼もお菓子を少々かヨーグルト、低カロリーの飴を2粒くらい舐め、夜も少食て過ごしていたのですが、今年の健康診断でHbA1cが5.8、空腹時血糖値が99でした。
食べないわりに高めなのかな?と思ったのですが、先生のブログを読んで貧血があり本来の数値はもう少し低いとみていいのでしょうか?
私は50歳で生理が月に2・3回もあり、そこそこ出血も多いです。
そうした場合のHbA1cの数値はどう見たらよろしいですか?
よろしければご回答よろしくお願い致します。
お忙しいとは思いますが、自分のHbA1cは気にした方がいいのかわかりませんでしたので質問致しました。
痩せようといつもカロリーばかり気にしていたので、お米を控え、朝はあまり食べず、お昼もお菓子を少々かヨーグルト、低カロリーの飴を2粒くらい舐め、夜も少食て過ごしていたのですが、今年の健康診断でHbA1cが5.8、空腹時血糖値が99でした。
食べないわりに高めなのかな?と思ったのですが、先生のブログを読んで貧血があり本来の数値はもう少し低いとみていいのでしょうか?
私は50歳で生理が月に2・3回もあり、そこそこ出血も多いです。
そうした場合のHbA1cの数値はどう見たらよろしいですか?
よろしければご回答よろしくお願い致します。
2017/11/28(Tue) 20:31 | URL | | 【編集】
鉄欠乏性貧血の場合、鉄不足で貧血のときは、代償性に赤血球の寿命が延びるので、
HbA1cは寿命が延びた分蓄積して、高値にシフトします。
鉄剤投与を開始して、鉄欠乏性貧血が回復している時期は、幼弱赤血球が増えて、
赤血球の寿命が短くなり、HbA1cは低値となります。
カロリー制限でやせても、普通の食事に戻したら、必ずリバウンドしますので無意味です。
動物性脂肪、動物性蛋白も含めて充分量摂取して、適正体重を保ちましょう。
摂取エネルギーの目安は、厚生労働省のいう「推定エネルギー必要量」です。
2017/11/28(Tue) 21:52 | URL | ドクター江部 | 【編集】
お忙しい中ありがとうございます。
出血の多い貧血は鉄欠乏ということでよろしいのでしょうか?
鉄欠乏の場合、数値は2・3%減ると考えると安心できるのですが・・・。
HbA1cは6を超えない方がいいと聞きまして、食べないのに5.8は高いと言われましたので不安になりました。。
出血の多い貧血は鉄欠乏ということでよろしいのでしょうか?
鉄欠乏の場合、数値は2・3%減ると考えると安心できるのですが・・・。
HbA1cは6を超えない方がいいと聞きまして、食べないのに5.8は高いと言われましたので不安になりました。。
2017/11/29(Wed) 05:36 | URL | | 【編集】
出血の多い貧血は鉄欠乏ということでよろしいです。
鉄欠乏性貧血の治療として鉄剤を内服して改善すれが、個人差はありますが、0.5~1%近くHbA1cが改善すると思います。
鉄欠乏性貧血の治療として鉄剤を内服して改善すれが、個人差はありますが、0.5~1%近くHbA1cが改善すると思います。
2017/11/29(Wed) 07:22 | URL | ドクター江部 | 【編集】
たびたびありがとうございました。
まずは貧血を改善しようと思いますが、改善してもHbA1cは0.5か1くらいなんですね^^;
やはりこれから進行しないためにも先生の本でお料理の勉強をしたいと思います。
誠にありがとうございました。
まずは貧血を改善しようと思いますが、改善してもHbA1cは0.5か1くらいなんですね^^;
やはりこれから進行しないためにも先生の本でお料理の勉強をしたいと思います。
誠にありがとうございました。
2017/11/29(Wed) 19:22 | URL | | 【編集】
◇認知症と栄養・食事 糖質制限、野菜・鉄分を
国立病院機構 菊池病院 木村武実院長
https://this.kiji.is/308495974568395873?c=92619697908483575
…コウノメソッドの有力メンバーとなっている医師です
国立病院機構 菊池病院 木村武実院長
https://this.kiji.is/308495974568395873?c=92619697908483575
…コウノメソッドの有力メンバーとなっている医師です
2017/11/29(Wed) 22:14 | URL | 中嶋一雄 | 【編集】
2017/11/29(Wed) 22:24 | URL | 中嶋一雄 | 【編集】
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