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インスリンの功罪②。インスリンの役割を中心に。

1)
基礎分泌インスリンは、ヒトの生命維持に必要不可欠です。

2)
スーパー糖質制限食でも、基礎分泌の2~3倍レベルのインスリンは分泌されますし、 追加分泌インスリンも必要不可欠です。

3)
インスリン注射で、1型糖尿病患者の命が助かるようになり、
近年、寿命が延びてきました。

4)
過剰なインスリンは、酸化ストレスとなり、がん、老化、動脈硬化、
糖尿病合併症、アルツハイマー病などのリスクとなります。



こんばんは。

今回はインスリンの功罪のうち、主としてその役割について考察してみます。

インスリンには、24時間継続して少量出続けている基礎分泌と、糖質を摂取して血糖値が上昇したときに出る追加分泌の2種類があります。

タンパク質摂取でも少量のインスリンが追加分泌されますが、脂質摂取では、インスリンは追加分泌されません。

これでまず解るのは、食物を摂取していないときでも、人体の代謝には、少量のインスリンが必須ということですね。

このインスリンの基礎分泌がなくなったら、人体の代謝全体が崩壊していきます。

つまり、基礎分泌のインスリンがないと、全身の高度な代謝失調が生じ、生命の危険があります。

例えば「運動をしたらインスリン非依存的に血糖値がさがる」といっても、インスリン基礎分泌が確保されているのが前提のお話です。

もし、基礎インスリンが不足している状態で運動すれば、運動で血糖値はかえって上昇します。

また、肝臓で行っている糖新生も、基礎インスリンが分泌されていなければ制御不能となり、空腹時血糖値が300mg/dl~400mg/dl、或いはこれ以上にもなります。

また、糖質を食べて血糖値が上昇したとき、追加分泌のインスリンがでなければ、高血糖が持続します。

高血糖の持続は糖毒といわれ、膵臓のβ細胞を傷害し、インスリン抵抗性を悪化させます。


急激に発症するタイプの1型糖尿病であれば、短期間でインスリン分泌がゼロになるので、
基礎分泌も追加分泌もなくなり血糖値が急上昇して、
随時で250~500mgとか600mg/dl以上1000mgにもなります。

細胞はブドウ糖を利用できないので、脂肪の分解産物のケトン体が急上昇し、
エネルギー源にしますが、酸性血症となり意識障害を生じ、放置すれば死に至ります。

インスリン作用が欠落しているときの血中ケトン体上昇は病態であり、極めて危険です。

上述のインスリン作用欠落による糖尿病ケトアシドーシスは、
インスリン作用が確保されていて糖質制限食や断食で
生理的にケトン体が上昇する場合とは、まったく異なる病態です。


さてブドウ糖が、細胞膜を通過するためには、特別な膜輸送タンパク質が必要です。

それが糖輸送体(GLUT)であり、現在GLUT1~GLUT14まで確認されています。

GLUT1は赤血球・脳・網膜などの糖輸送体で常に細胞の表面にあり、血流さえあれば即血糖を取り込めます。

これに対して筋肉細胞と脂肪細胞に特異的なのがGLUT4で、基礎分泌のインスリンレベルだと、通常は細胞内部に沈んでいます。

GLUT1~GLUT14の中で、インスリンに依存しているのはGLUT4だけで特殊です。

筋肉細胞と脂肪細胞にあるGLUT-4は、インスリン追加分泌がないと細胞内に沈んでいるのでブドウ糖を取り込めません。

インスリンが追加分泌されるとGLUT-4は細胞表面に移動して血糖を取り込むのです。

このようにインスリンは、生命の維持に必須の重要なホルモンであることが確認できました。

また近年、1型糖尿病患者の寿命は延びています。

以下、糖尿病ネットワークから一部抜粋。
http://www.dm-net.co.jp/calendar/2016/024725.php

1975年に米国で行われた調査では1型糖尿病患者の寿命は、健康人に比べて27年短いとされていました。

スコットランドのダンディー大学が2万4,691人の1型糖尿病患者を対象に行った調査では、20代前半の糖尿病患者の予想される平均余命は、健康な人に比べ男性で11.1年、女性で12.9年短いという結果になりました(2015年1月報告)。

このようにインスリンの使用法や種類が改善されたことで、1型糖尿病患者の寿命はかなり改善されてきています。

インスリン注射が、おおいに役に立っているわけです。



☆☆☆インスリンの作用

インスリンは、グリコーゲン合成・タンパク質合成・脂肪合成など、栄養素の同化を促進し、筋肉、脂肪組織、肝臓に取り込む。

インスリンが作用するのは、主として、筋肉(骨格筋、心筋)、脂肪組織、肝臓である。

1)糖質代謝
*ブドウ糖の筋肉細胞・脂肪細胞内への取り込みを促進させる。
*グリコーゲン合成を促進させる。
*グリコーゲン分解を抑制する。
*肝臓の糖新生を抑制し、ブドウ糖の血中放出を抑制する。

2)タンパク質代謝
*骨格筋に作用してタンパク質合成を促進させる。
*骨格筋に作用してタンパク質の異化を抑制する。

3)脂質代謝
*脂肪の合成を促進する。
*脂肪の分解を抑制する。



江部康二
コメント
本日診療日でした!!
都内河北 鈴木です。

昨日、本日のインスリン功罪は、後遺症(眼、脳梗塞)残した私にしても再認識の意味ある説明です!!
ありがとうございます!!

本日は都内KO大学病院内科通院日でした。
担当医I・Jは当大学I・H教授と共に「糖質制限理論」肯定を発表していますが、
この病院では「糖質制限理論」を指導していないことは以前コメントしています。
しかし私との診療関係は医療理念ある診療です。

本日の診療は2ヶ月ぶり、
「糖質制限理論」6年目入りましたが
私の「診療結果は良好でした!!」

本ブログなどで学習した事等を発言しても、
結果提示している強みと言いますか、何等自身の「糖質制限理論」肯定論文発表しているわけですから良好です。

以上の事からも「日本医療はオカシイ!!」と
言わざるを得ません!!

何故なら「日本医療界は「糖質制限理論」を受容していないからです!!」

ある担当医に尋ねたことがありますが、
「日本は先進国ですか?」の疑問に、
担当医は「先進国だ。」とは言いましたがそれ以上は言いませんでした。

私自身もそうでしたが、
「患者もネット活用して学習は必要不可欠!!」だなと!!

そして「質疑応答に返答不可な医療者は、その先の改善は明らかだからです!」

私は江部先生に命救われましたが、
「医療者として患者が生還をする事を望まない患者より知識不足な医療者は生存淘汰されるべきだと考えます。」

江部先生には、感謝尽きません!!
ありがとうございます。
敬具
2017/11/27(Mon) 16:30 | URL | 都内河北 鈴木 | 【編集
今回の記事と違う質問で申し訳ありませんが、
コレステロールが高いので薬を飲むよう主治医から言われましたのでお教えくださいませ。
60歳女性 総コレステロール244 中性脂肪70 HDL81でした。
糖質制限は緩めです。
薬を飲むべきか糖質制限をもっと厳しくするべきでしょうか?
2017/11/28(Tue) 16:11 | URL | ココア | 【編集
Re: タイトルなし
ココア さん


60歳女性 総コレステロール244 中性脂肪70 HDL81


これは好ましいデータです。
これならLDLコレステロールも標準の大きさの善玉がほとんどです。
悪玉の小粒子LDLコレステロールは少ないので問題なく、薬はいりません。

詳しくは、カテゴリーの「コレステロール」の項をご参照頂けば幸いです。
2017/11/28(Tue) 16:25 | URL | ドクター江部 | 【編集
ありがとうございました!!安心しました。
記事を読んでも自分のこととなるとハテ?となってしまいます。
2017/11/28(Tue) 16:42 | URL | ココア | 【編集
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