2017年11月26日 (日)
こんにちは。
先日、ある製薬メーカーさんの社内勉強会で
糖尿病と糖質制限食のお話しをしてきました。
製薬メーカーの社員で、医師や薬剤師に製品の
「効能、副作用、トピック、研究論文・・・」など
様々な情報を紹介してくれるのが、MRさんです。(*)
皆さん、よく勉強しておられるので
私もいろいろ教えて貰うことも多いです。
そんな、MRさんの社内勉強会ですから、
インスリン注射のこともよくご存知です。
ところがインスリンの、「功罪」のうち、「功」のほうは
よくご存知でしたが、「罪」のほうは、ほとんどご存知ないのです。
それで、本日のブログはインスリンの功罪というお題とすることとしました。
まずは、インンスリンがないと、人は死亡します。
基礎分泌のインスリンは生命維持に絶対に必要なのです。
実際、1921年にインスリンが合成されるまでは、
1型糖尿病で内因性インスリンゼロの場合は平均余命は半年程度でした。
インスリンが開発されて以降、1型糖尿病の寿命は劇的に改善しています。
一方で過剰なインスリンの害にはエビデンスがあります。
たとえ基準値内でも、インスリンの血中濃度が高いほど、
アルツハイマー病、がん、肥満、高血圧などのリスクとなります。
また、高インスリン血症は活性酸素を発生させ、酸化ストレスを増加させます。
酸化ストレスは、老化・癌・動脈硬化・その他多くの疾患の元凶とされています。
パーキンソン病、狭心症、心筋梗塞、アルツハイマー病などにも
酸化ストレスの関与の可能性があります。
1)ロッテルダム研究によれば、
インスリン使用中の糖尿人ではアルツハイマー病の相対危険度は4.3倍です。
Rotterdam研究(Neurology1999:53:1937-1942)
「高齢者糖尿病における、脳血管性痴呆(VD)の相対危険度は2.0倍。
アルツハイマー型痴呆(AD)の相対危険度は1.9倍。
インスリン使用者の相対危険度は4.3倍」
2)インスリン注射をしている糖尿人は、
メトグルコで治療している糖尿人に比べて
ガンのリスクが1.9倍というカナダの研究もあります。
2005年の第65回米国糖尿病学会、
カナダのSamantha博士等が、10309名の糖尿病患者の研究成果を報告、
その後論文化。コホート研究。
「メトフォルミン(インスリン分泌を促進させない薬)を使用しているグループに比べて、インスリンを注射しているグループは、癌死亡率が1.9倍高まる。SU剤(インスリン分泌促進剤)を内服しているグループは癌死亡率が1.3倍高まる。」
Diabetes Care February 2006 vol. 29 no. 2 254-258
3)Cペプタイド値が高い男性は、低い男性に比べ最大で3倍程度、大腸癌になりやすい。
国立がん研究センター、「多目的コホート研究(JPHC研究)」からの成果。
57%が空腹時、他は非空腹時で共に大腸癌群は高値。厚生労働省研究班が2007年、疫学調査結果を発表し英文論文化。研究班は、全国9地域で40-69歳の男女約4万人を、1990年から2003年まで追跡。
Int J Cancer. 2007 May 1;120(9):2007-12.
このように過剰インスリンの弊害を見てみると、
インスリンは血糖コントロールができている限り少なければ少ないほど、
身体には好ましいことがわかります。
別の言い方をすれば、農耕開始後、精製炭水化物開始後、
特に第二次大戦後に世界の食糧事情が良くなってからの糖質の頻回・過剰摂取が、
インスリンの頻回・過剰分泌を招き、
様々な生活習慣病の元凶となった構造が見えてきます。
スーパー糖質制限食を実践すれば、インスリンの分泌は必要最小限で済むようになり、
様々な生活習慣病の予防が期待できます。
ブログ読者の皆さんも、スーパー糖質制限食実践で、
必要最低限のインスリンで血糖こントロールを維持して、
健康ライフを送ってくださいね。
次回は、『インスリンの功罪② 特に「功」について』です。
(*)
【MR】[medical representative]医薬情報担当者。
薬についての知識や情報を医師や薬剤師に提供する製薬メーカーの営業担当者。
江部康二
先日、ある製薬メーカーさんの社内勉強会で
糖尿病と糖質制限食のお話しをしてきました。
製薬メーカーの社員で、医師や薬剤師に製品の
「効能、副作用、トピック、研究論文・・・」など
様々な情報を紹介してくれるのが、MRさんです。(*)
皆さん、よく勉強しておられるので
私もいろいろ教えて貰うことも多いです。
そんな、MRさんの社内勉強会ですから、
インスリン注射のこともよくご存知です。
ところがインスリンの、「功罪」のうち、「功」のほうは
よくご存知でしたが、「罪」のほうは、ほとんどご存知ないのです。
それで、本日のブログはインスリンの功罪というお題とすることとしました。
まずは、インンスリンがないと、人は死亡します。
基礎分泌のインスリンは生命維持に絶対に必要なのです。
実際、1921年にインスリンが合成されるまでは、
1型糖尿病で内因性インスリンゼロの場合は平均余命は半年程度でした。
インスリンが開発されて以降、1型糖尿病の寿命は劇的に改善しています。
一方で過剰なインスリンの害にはエビデンスがあります。
たとえ基準値内でも、インスリンの血中濃度が高いほど、
アルツハイマー病、がん、肥満、高血圧などのリスクとなります。
また、高インスリン血症は活性酸素を発生させ、酸化ストレスを増加させます。
酸化ストレスは、老化・癌・動脈硬化・その他多くの疾患の元凶とされています。
パーキンソン病、狭心症、心筋梗塞、アルツハイマー病などにも
酸化ストレスの関与の可能性があります。
1)ロッテルダム研究によれば、
インスリン使用中の糖尿人ではアルツハイマー病の相対危険度は4.3倍です。
Rotterdam研究(Neurology1999:53:1937-1942)
「高齢者糖尿病における、脳血管性痴呆(VD)の相対危険度は2.0倍。
アルツハイマー型痴呆(AD)の相対危険度は1.9倍。
インスリン使用者の相対危険度は4.3倍」
2)インスリン注射をしている糖尿人は、
メトグルコで治療している糖尿人に比べて
ガンのリスクが1.9倍というカナダの研究もあります。
2005年の第65回米国糖尿病学会、
カナダのSamantha博士等が、10309名の糖尿病患者の研究成果を報告、
その後論文化。コホート研究。
「メトフォルミン(インスリン分泌を促進させない薬)を使用しているグループに比べて、インスリンを注射しているグループは、癌死亡率が1.9倍高まる。SU剤(インスリン分泌促進剤)を内服しているグループは癌死亡率が1.3倍高まる。」
Diabetes Care February 2006 vol. 29 no. 2 254-258
3)Cペプタイド値が高い男性は、低い男性に比べ最大で3倍程度、大腸癌になりやすい。
国立がん研究センター、「多目的コホート研究(JPHC研究)」からの成果。
57%が空腹時、他は非空腹時で共に大腸癌群は高値。厚生労働省研究班が2007年、疫学調査結果を発表し英文論文化。研究班は、全国9地域で40-69歳の男女約4万人を、1990年から2003年まで追跡。
Int J Cancer. 2007 May 1;120(9):2007-12.
このように過剰インスリンの弊害を見てみると、
インスリンは血糖コントロールができている限り少なければ少ないほど、
身体には好ましいことがわかります。
別の言い方をすれば、農耕開始後、精製炭水化物開始後、
特に第二次大戦後に世界の食糧事情が良くなってからの糖質の頻回・過剰摂取が、
インスリンの頻回・過剰分泌を招き、
様々な生活習慣病の元凶となった構造が見えてきます。
スーパー糖質制限食を実践すれば、インスリンの分泌は必要最小限で済むようになり、
様々な生活習慣病の予防が期待できます。
ブログ読者の皆さんも、スーパー糖質制限食実践で、
必要最低限のインスリンで血糖こントロールを維持して、
健康ライフを送ってくださいね。
次回は、『インスリンの功罪② 特に「功」について』です。
(*)
【MR】[medical representative]医薬情報担当者。
薬についての知識や情報を医師や薬剤師に提供する製薬メーカーの営業担当者。
江部康二
妊娠時に妊娠糖尿病になってから、将来の不安を感じ糖質を控えた生活をしており、いつもこちらでたくさんの事を学ばさせていただいております。
出産後から毎年負荷検査を年1回行っており、経過観察のみしております。
服薬などはしておりません。
今回の結果は以下になります。
2018.11月 HbA1c(NGSP)5.4
前 血糖値 90 IRI 3.4
30分後 血糖値196 IRI 22.6
60分後 血糖値 249 IRI 90.7
90分後 血糖値 129 IRI 24.5
120分後 血糖値 118 IRI 21.4
2016.11月 HbA1c 5.8
前 血糖値 98 IRI 4.1
30分後 血糖値 195 IRI 23.2
60分後 血糖値 229 IRI 62.8
90分後 血糖値 185 IRI 80.9
120分後 血糖値 138 IRI 69.5
と前回より改善されていました。
ただ、前回と変わらずインスリン分泌指数は0.18と低く、産後から0.2程度と変わりません。
また、負荷1時間値も変わらず高いです。
しかし、60分後のIRIの出が多かったからか、今までの検査で初めて90分後 血糖値200を大幅に切りました。(過去4回のうち200を切ったことはありませんでした)
また、60分後、90分後のIRIは過去4回とも、60〜80台くらいだったのに、今回は血糖値が下がっているからか、90分後で24.5まで下がっていました。
今回の結果から素人判断で考えると、かなり改善されたように思っています。
今まで変わらなかったヘモグロビンも初めて下がりました。
①これも糖質制限を実施しつづけていたから、インスリンの機能回復をしたと考えて良いのでしょうか?
②また、先生のご判断だと今回と前回の結果からどのような結果をお考えになられますでしょうか?
インスリン分泌指数は変わらず低いので、糖尿病になりやすいことは変わりないかとは思いますが、ご教授いただければ幸いです。
また、8月に胃のポリープ切除を行なったのですが、それの影響があったりするのでしょうか?
どうぞよろしくお願いします。
出産後から毎年負荷検査を年1回行っており、経過観察のみしております。
服薬などはしておりません。
今回の結果は以下になります。
2018.11月 HbA1c(NGSP)5.4
前 血糖値 90 IRI 3.4
30分後 血糖値196 IRI 22.6
60分後 血糖値 249 IRI 90.7
90分後 血糖値 129 IRI 24.5
120分後 血糖値 118 IRI 21.4
2016.11月 HbA1c 5.8
前 血糖値 98 IRI 4.1
30分後 血糖値 195 IRI 23.2
60分後 血糖値 229 IRI 62.8
90分後 血糖値 185 IRI 80.9
120分後 血糖値 138 IRI 69.5
と前回より改善されていました。
ただ、前回と変わらずインスリン分泌指数は0.18と低く、産後から0.2程度と変わりません。
また、負荷1時間値も変わらず高いです。
しかし、60分後のIRIの出が多かったからか、今までの検査で初めて90分後 血糖値200を大幅に切りました。(過去4回のうち200を切ったことはありませんでした)
また、60分後、90分後のIRIは過去4回とも、60〜80台くらいだったのに、今回は血糖値が下がっているからか、90分後で24.5まで下がっていました。
今回の結果から素人判断で考えると、かなり改善されたように思っています。
今まで変わらなかったヘモグロビンも初めて下がりました。
①これも糖質制限を実施しつづけていたから、インスリンの機能回復をしたと考えて良いのでしょうか?
②また、先生のご判断だと今回と前回の結果からどのような結果をお考えになられますでしょうか?
インスリン分泌指数は変わらず低いので、糖尿病になりやすいことは変わりないかとは思いますが、ご教授いただければ幸いです。
また、8月に胃のポリープ切除を行なったのですが、それの影響があったりするのでしょうか?
どうぞよろしくお願いします。
2017/11/26(Sun) 22:27 | URL | 糖質制限継続中 | 【編集】
糖質制限継続中 さん
75g経口ブドウ糖負荷試験前3日間は
糖質150g/日以上の摂取が推奨されています。
糖質制限食実践中に、急に75g経口ブドウ糖負荷試験を実施すると
個人差がありますが、場合により「見かけ上の耐糖能低下」のようなデータになることがあるからです。
検査前の糖質摂取量はどうだったでしょう?
75g経口ブドウ糖負荷試験前3日間は
糖質150g/日以上の摂取が推奨されています。
糖質制限食実践中に、急に75g経口ブドウ糖負荷試験を実施すると
個人差がありますが、場合により「見かけ上の耐糖能低下」のようなデータになることがあるからです。
検査前の糖質摂取量はどうだったでしょう?
2017/11/27(Mon) 07:43 | URL | ドクター江部 | 【編集】
ご回答いただき、ありがとうございます。
3日間糖質150g/日以上とのことですが、先生のブログを読み、承知してはおりましたが、前日のみ普段よりは糖質をとってはいましたが、150gは摂取していないと思います。
産後すぐは糖質摂取をしてましたが、あまり良くない結果(2時間値200超え)だったため、「見かけ上の耐糖能低下」には当ては回らないように思え、検査前の糖質摂取量はあまり考えておりませんでした。
やはり糖質摂取をしっかりして、検査をしなければ正しい結果は出ないのでしょうか?
また、毎回、あまり糖質摂取150gを意識せずに検査を受けておりますが、それでも結果が毎回違うのはなぜでしょうか?
大変お忙しい中、恐縮ですが、よろしくお願い申し上げます。
3日間糖質150g/日以上とのことですが、先生のブログを読み、承知してはおりましたが、前日のみ普段よりは糖質をとってはいましたが、150gは摂取していないと思います。
産後すぐは糖質摂取をしてましたが、あまり良くない結果(2時間値200超え)だったため、「見かけ上の耐糖能低下」には当ては回らないように思え、検査前の糖質摂取量はあまり考えておりませんでした。
やはり糖質摂取をしっかりして、検査をしなければ正しい結果は出ないのでしょうか?
また、毎回、あまり糖質摂取150gを意識せずに検査を受けておりますが、それでも結果が毎回違うのはなぜでしょうか?
大変お忙しい中、恐縮ですが、よろしくお願い申し上げます。
2017/11/28(Tue) 08:40 | URL | 糖質制限継続中 | 【編集】
糖質制限中さん
糖質制限食中の75g経口負荷試験で、
「見かけ上の耐糖能低下」にみえるデータの人もいますが
「耐糖能改善」のデータを示す人もいます。
個人差があります。
糖質制限中さんの場合、今の食生活で耐糖能が改善していますので
糖質制限でβ細胞が休養できて回復したものと思います。
このまま続ければいいと思います。
2018.11月 HbA1c(NGSP)5.4
前 血糖値 90 IRI 3.4
30分後 血糖値196 IRI 22.6
60分後 血糖値 249 IRI 90.7
90分後 血糖値 129 IRI 24.5
120分後 血糖値 118 IRI 21.4
2016.11月 HbA1c 5.8
前 血糖値 98 IRI 4.1
30分後 血糖値 195 IRI 23.2
60分後 血糖値 229 IRI 62.8
90分後 血糖値 185 IRI 80.9
120分後 血糖値 138 IRI 69.5
糖質制限食中の75g経口負荷試験で、
「見かけ上の耐糖能低下」にみえるデータの人もいますが
「耐糖能改善」のデータを示す人もいます。
個人差があります。
糖質制限中さんの場合、今の食生活で耐糖能が改善していますので
糖質制限でβ細胞が休養できて回復したものと思います。
このまま続ければいいと思います。
2018.11月 HbA1c(NGSP)5.4
前 血糖値 90 IRI 3.4
30分後 血糖値196 IRI 22.6
60分後 血糖値 249 IRI 90.7
90分後 血糖値 129 IRI 24.5
120分後 血糖値 118 IRI 21.4
2016.11月 HbA1c 5.8
前 血糖値 98 IRI 4.1
30分後 血糖値 195 IRI 23.2
60分後 血糖値 229 IRI 62.8
90分後 血糖値 185 IRI 80.9
120分後 血糖値 138 IRI 69.5
2017/11/28(Tue) 16:19 | URL | ドクター江部 | 【編集】
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