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イヌイットの伝統的食生活とスーパー糖質制限食。生活習慣の変化。
<イヌイットの伝統的食生活とスーパー糖質制限食>
 高雄病院が1999年から推奨している「糖質制限食」は、現代では一風変わった食事と思われています。
しかし人類の進化の歴史から考察すると、実は糖質制限食こそが、人類本来の食事であり、人類の健康食なのです。
 諸説はありますが、共通祖先から、人類とチンパンジーが分かれて誕生したのが約700万年前です。
そして、農耕開始が約1万年前です。
 すなわち人類誕生から農耕開始までの700万年間は、狩猟・採集で栄養成分を得ていて、
穀物はありませんので、人類は皆、糖質制限食を食べていました。
それほどの長期間、人類は突然変異を繰り返しながら進化し、消化・生理・代謝などのシステムを完成させたのですから、
人体は糖質制限食に特化して、適合しています。

 さて近代までスーパー糖質制限食に近い伝統的食生活を長期間続けてきた民族といえば、イヌイットが思い浮かびます。
4000年前、すでにカナダ極北やアラスカに、人類(モンゴロイド)が進出し居住していました。
現在のイヌイット文化と同様の生活様式をしていたとは、必ずしも言えませんが、
セイウチ猟など狩猟や漁労を主な生業としていたようです。
現在のイヌイットの生活様式の原形ですが、まず10世紀ごろ、
アラスカのイヌイットでホッキョククジラが主食の時代が始まりました。
その後200〜300年間で、他の極北周囲地域、西はシベリア北東端のチュコト半島、
東はグリーンランドまで、ホッキョククジラ漁が広まりました。
この文化は、「チューレ文化」と呼ばれています。
その後、12世紀から17世紀にかけて極北地域に寒冷化が起こり、
それまで豊富だったクジラが少なくなりました。
そのためクジラ以外のものを主食とせざるを得なくなり、
各地域でチューレ文化は多様化して、独自の文化が形成されていきました。
イヌイットといえば誰でもイメージするような、アザラシ猟をして雪の家に住むという文化は、
15世紀ごろに形成された生活様式です。
ホッキョクイワナ、アザラシ、シロイルカ、カリブーといった魚や動物がイヌイットの主食となっていきました。
このころは、穀物など一切なしの究極の「スーパー糖質制限食」です。
そして1900年代初頭までは、この伝統的食生活、つまりスーパー糖質制限食が保たれていました

グリーンランドで伝統的食生活を保っていたころのイヌイットの3大栄養素摂取比率は、
約377gのタンパク質(1508kcal、47.1%)、
約59gの炭水化物(236kcal、7.4%)、
約162gの脂質(1458kcal、45.5%)
で合計3202kcalであり、まさにスーパー糖質制限食でした。
これは1855年の成人イヌイットの食事をバングらが試算したデータです。


この頃のイヌイットが摂取していた炭水化物は、海藻類、植物の根、短い夏にとれるベリー類、葉などです。
それが1976年の調査では、「たんぱく質:23%、炭水化物:38%、脂質:39%」に変化しました(*)
約120年の間に、炭水化物の摂取比率が5倍に急上昇したことが分かります。

<交易による伝統的食生活の崩壊>

 1910年代ごろになると、ハドソン湾会社(17世紀から19世紀後半、カナダの毛皮通商を独占したイギリスの特許会社。現在はカナダ最大の小売企業グループ)などの交易会社や個人営業の交易商が、
毛皮交易のために北ケベックに進出し、各地に交易所が設置されていきました。
1940年代までは、ホッキョクギツネの毛皮が主たる交易品でした。
イヌイットは、ホッキョクギツネの毛皮交易で、小麦粉、砂糖、ビスケット、紅茶、ラードなどを購入しました。
小麦粉とふくらし粉とラードで、無発酵パンの「バノク」を作り、
今では食生活になくてはならないものとして定着しました。
これが、この地域のイヌイットの穀物摂取の始まりと考えられます。
バノクや紅茶は、スコットランド系の捕鯨者や、ハドソン湾会社の交易商がイヌイットの間に持ち込んだ習慣であり、
1920年代ごろから急速に広まったと推測されます。

<生活習慣の変化がもたらしたもの> 

 このように欧米人との交流が徐々に盛んになるにつれ、平均余命が延び、
がんについては異なるパターンを示すようになりました。
 まず、一つ目の大きな変化は、1920年代、
ヘルペスウイルスの仲間である「EBウイルス」が外部からイヌイット社会に持ち込まれたことによって起きました。
免疫がなかったことと民族的特性により、EBウイルスによる鼻とのど、そして唾液腺のがんが急速に増えたのです。
1930年代には欧米人との接触によって結核が極北の各地で蔓延し、
多数のイヌイットの命を奪い、人口が激減しました。

 二つ目の大きな変化は、交流が活発になり40〜50年が経過した50年代から顕著になりました。
たばこや飲酒、食事など生活習慣と関係のあるがん(肺がん、大腸がん、乳がんなど)が増加してきたのです。
アルコール、たばこ、麻薬はかつてイヌイット社会になかったものですが、
外部から持ち込まれて急速に浸透していき、人々を苦しめ大きな影を落とすこととなりました。

<イヌイット定住化政策による都市化、欧米化>
 1950年代に入ると、カナダ政府の定住化政策もあり、北ケベックのイヌイットは、
急速な社会変動と食生活の変化を経験しました。
都市化、欧米化の進行です。
1993年、カナダ・マギル大学の先住民栄養環境研究センターの調査によれば、
イヌイットの若者は、ハンバーガー、ピザ、ポテトチップス、コーラ、ガム、チョコレートを好み、
摂取カロリーの大半が、これら糖質を大量に含むジャンクフ−ドでした。
このような食生活の変化により、疾病構造も急速に変化していきました。
かつて、極めて少なかった心筋梗塞(こうそく)や糖尿病が、
米国やカナダの他民族を上回るほど増えてしまったのです。


参考:
(*)Am.J.Clin.Nutr.33:2657-2661.1980.
The composition of the Eskimo food in northwestern Greenland1’2
H. 0. Bang, M.D., Ph.D., J. Dyerberg, M.D., Ph.D., and
H. M. Sinclair, Prof, D.M., D. Sc., FR. C.P.


参考
(**)
岸上伸啓「イヌイット−『極北の狩猟民』のいま」(中央公論新社、2005年)、
岸上伸啓「極北の民カナダ・イヌイット」(弘文堂、1998年)
コメント
動脈プラーク
江部康二先生

こんばんは。
ご意見を伺いたく初めて
コメントさせていただきます。

当方、40代男性170㎝52㎏です。
3年前に食後高血糖が発覚して以来、
毎日こちらで勉強させていただいております。
ありがとうございます。

HbA1cは発覚前より今日まで5.2%~5.4%、
空腹時もずっと80~90で健康診断でも
常にA評価でしたが、ふとしたことから
食後高血糖に気が付きました。
白米を一人前食せば軽く200を超えます。
発覚より3年前に負荷試験を受けた際には
血糖値は最高でも150でしたので
完全に油断しておりました。
確かに両親とも糖尿家系、諦めて
糖質制限を始めたわけです。

食後高血糖に関しては何度かかかりつけの
お医者様に相談しましたが、HbA1cと
空腹時血糖値に問題がないので治療の
必要ないの事で薬なども使っていません。
そのため自身で測定器を購入し、当初は
毎日毎食測って最大でも150程度で
抑えられる糖質量を把握して一日の量を
朝:25g 昼:20g夜:18g程度に制限する
生活を始めました。これに収まる範囲で
あれば白米も麺類もお菓子も
ちょい食べします。
色々自分なりに勉強して栄養バランスにも
気をつけています。
もともと虚弱体質なので運動はあまり
できませんが一日一時間程度歩くなどは
心掛けています。

お蔭さまで開始一年で
HDLが60台から80台に
TGは80台から60台に
空腹時インスリン1.53→3.04
骨密度はわずかに改善、血管の柔軟さも
わずかに改善し40代初程度。
GAは13~14と軒並み数値は改善しました。
何より高血糖のストレスから解放された
ことが何より嬉しかったです。
これもこのブログに出会えたおかげ、
先生のお蔭です。

かなり長くなりましたが、ここからが
ご相談です。

二年前までなかった動脈のプラークが
昨年は0.5ミリ、今年は1.5ミリ認められました。
場所は頸動脈と右鎖骨下動脈の2か所です。

ほぼ全ての数値が改善している中で
LDLだけが三年を経ても変わりません。
むしろ糖質制限開始以降少し増えています。
TCが高く糖質制限開始以前から健診で
脂質代謝不全の疑いありとは言われて
いましたが常に100~130程度、HDL比では
2を越えておらず、TGも低いので気にして
いませんでした。
実際プラークの原因はLDLに、しいては
糖質制限にもあるのでしょうか?
全身の血管の状態はむしろ改善してるのに
この診断は正直ショックでした。

自分としてはこのままの食生活を続けたい
とは思っていますが1.5ミリのプラークは
それなりに危機感を持っており、体質的に
糖質制限が合わないのではと迷ってもいます。

先生のご意見をお聞かせいただけると
幸いです。
お忙しい中、申し訳ございませんが
よろしくお願い申し上げます。
2017/09/03(Sun) 19:50 | URL | ピエロ | 【編集
Inuit
英語版Wikipediaで " Vilhjalmur Stefansson "の 「Low-carbohydrate diet of meat and fish」も参考になります

https://en.wikipedia.org/wiki/Vilhjalmur_Stefansson#cite_note-19
2017/09/04(Mon) 08:48 | URL | 中嶋一雄 | 【編集
9月4日付、日経MJ(15面)に、三菱食品(食品卸)が低糖質の健康食販売を始める記事が出ました。
レトルトごはんやカレーなど14品目を11日から全国発売します。
ブランド名は『食べるをかえる からだシフト』
18年3月にはホットケーキ粉や親子丼のもとなど約15品目を追加。
レトルトごはんは、大麦を加えて糖質は35%減の35グラム、全国のコンビニ・スーパー・ドラッグストアなど約15000店などで取り扱う。
2017/09/04(Mon) 09:10 | URL | yanosono | 【編集
日本医療はオカシイ?
都内河北 鈴木です。

本日(4日)内科通院日でした。

縁あり転院して2年強ですが、「糖質制限理論」肯定発表している
都内K大学病院教授I・Hと担当医I・Jですが、
担当医も以前にもコメントしましたが、院長ではないから致し方ないですが、
本日は「日本糖尿病学会」組織の1員だと痛感しました!!

江部先生の再三の発言にあるように
「自身が理解把握して、改善を目指さなければ」ですね!!

詳細は兎も角、私は内科数値を眼科・脳外科の改善への変化基準に成りますので現状で良しとしようと思いました。

担当医には今後、コメントアップ・内科外の改善デ~タ提供は無しにします。
とは言っても担当医と私とは一応良好です。

今後とも江部先生ブログ・著書などで更なる改善を目指します!!

私が江部先生「糖質制限理論」で「改善以上、生還、覚醒した事」
は重ね重ねお伝えしときます!!
ありがとうございます!!
敬具
2017/09/04(Mon) 16:37 | URL | 都内河北 鈴木 | 【編集
Re: 動脈プラーク
ピエロ さん

HDLが60台から80台に
TGは80台から60台に
LDL-Cが常に100~130程度


なら、小粒子LDL-Cや酸化LDL-Cは、少ないので、問題はないと思います。

二年前までなかった動脈のプラークが
昨年は0.5ミリ、今年は1.5ミリ認められました。


糖質制限食開始前に、すでに数年間以上の食後高血糖が存在していたと思われます。
その高血糖の記憶でプラークができた可能性があります。
今後は、血糖コントロール良好なので、プラークが進行することはないと思われます。
2017/09/04(Mon) 18:41 | URL | ドクター江部 | 【編集
Re: Inuit
中嶋一雄 先生

情報をありがとうございます。
2017/09/04(Mon) 18:45 | URL | ドクター江部 | 【編集
Re: タイトルなし
yanosono さん

情報をありがとうございます。

『レトルトごはんは、大麦を加えて糖質は35%減の35グラム』

これは残念ながらスーパー糖質制限食の基準では、糖質が多いですね。
2017/09/04(Mon) 18:47 | URL | ドクター江部 | 【編集
Re: 動脈プラーク
江部先生

お忙しい中、返信ありがとうございます。

高血糖の記憶、こちらで勉強させて頂いて
知ってはいるつもりでおりましたが・・・
食後高血糖発覚の三年前の負荷検査の
結果が最高でも150でしたのであまり
疑っていませんでした。なかなか怖いもの
なのですね。

胃が小さく量を食べられないため、
糖質を抑えてた上に脂質も抑えると途端に
体重が落ちてしまうため、どうすべきか
悩んでおりましたがこれからも現状維持で
頑張ってみようと思います。
2017/09/04(Mon) 19:41 | URL | ピエロ | 【編集
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