2017年08月25日 (金)
こんにちは。
2017/8/22
NIKKEI STYLE
日経電子版
ヘルスUP
に、
大人気の「糖質制限」 他の方法より効果的?
データで見る栄養学(2)
https://style.nikkei.com/article/DGXMZO19597800T00C17A8000000?channel=DF140920160927
という記事が掲載されました。
東京大学大学院医学系研究科社会予防疫学分野教授の佐々木敏氏のインタビュー記事です。
佐々木氏の見解は
総じて
「糖質制限食は脂質制限食に比べてそれほど目立った効果はない」
ということのようです。
これに対して、糖質制限食推進派として、
私の見解や反論を述べたいと思います。
ともあれ、大人気の「糖質制限」という
日経電子版 ヘルスUP の文言は嬉しいですね。
以下、佐々木氏のインタビュー記事を抜粋して要約して、私なりに、検討してみました。
糖質制限ダイエットが根強い人気だ。
「やせた」という人がいる一方で、
「やせたけれど、リバウンドした」という声もよく聞く。
果たして、糖質制限ダイエットは本当に有効なダイエット法なのだろうか。
東京大学大学院医学系研究科社会予防疫学分野教授の佐々木敏さんに、
栄養疫学の視点からひもといてもらった。
■何と比べてやせるのか?
佐々木
・・・厳密な意味で糖質制限が有効かどうかを調べるには、
糖質を減らした分のエネルギーを脂質やたんぱく質で補い、
同じ摂取エネルギー量にしたグループと比較しないといけません。
これはその通りですね。
■海外の19の研究をまとめてみたら……
佐々木 対照群は・・・総エネルギー摂取量に占める糖質、脂質、たんぱく質の割合が、
それぞれ、45~65%、25~35%、10~20%の食事です。
低糖質食は糖質が45%未満の食事としました。
佐々木 このデータから読み解けることは、
「摂取エネルギーが同じ場合、糖質制限は体重の変化には大きな影響がなかった」
ということです。
これが佐々木氏の見解ですが、
低糖質食が、糖質45%未満の食事ということで、非常に緩やかな糖質制限です。
私の見解は、糖質12%のスーパー糖質制限食の研究はないので、
我々糖質セイゲニストには参考にならないということです。
■全ての研究で体重が減っていることに注目
佐々木 図1で紹介した19の研究のうちの一つ、アメリカの研究では、
たんぱく質、脂質、糖質の構成比が異なる4種類の食事を食べた場合の体重変化を調べているのですが、
結果は、「総エネルギー摂取量が同じならば、どの栄養素からエネルギーをとっても、
体重変化にはほとんど違いがなかった」というものでした。
Sacks FM,et al.Comparison of weight-loss diets with different compositions of fat, protein, and carbohydrates. N Engl J Med. 2009; 360:859-73.
この論文は、私も読みましたが、
2009年04月09日 (木)の本ブログ記事
「NEJM誌・カロリー神話肯定論文のカラクリ」
http://koujiebe.blog95.fc2.com/blog-entry-759.html
で検討した、不自然な論文です。
まず、この研究のデザインした
高糖質食(低脂肪/標準たんぱく食)は、糖質65%、
低糖質食(高脂肪/高たんぱく食)は、糖質35%、
であり高雄病院の糖質制限食の糖質12%に比べると、
到底、低糖質食とは言えません。
しかも2年間経過した時点で、
高糖質食グループの糖質割合は53.2%と減っており、
低糖質食グループの糖質割合は42.9%と増加していました。
高糖質食グループと低糖質グループの糖質摂取量の差は、
当初のデザインよりさらに小さくなっており、これでは差がでなくても当然です。
佐々木敏教授ともあろう方が、何故このような怪しい論文を
簡単に信じてしまわれたのか、私には不思議です。
ちなみに、この後行われた11の研究をまとめた別の研究では、
脂肪制限食よりも糖質制限食のほうで有意に、
具体的には2.17kg多く、体重が減少する結果になりました。
・・・しかし、過体重者や肥満者の減量効果が2kg程度にとどまっていることを考えると、
「糖質制限食は脂質制限食に比べてそれほど目立った効果はない」
というのが私の見解です。
実際には研究によっては、「脂肪制限食よりも糖質制限食のほうで有意に、体重が減少する」
という結果がでたということです。
この件に関する佐々木氏の見解は、不可解ですね。
統計的に有意差があったということは、
科学的(EBM的)には厳然と効果があったということです。
佐々木 一つ注目してほしい点があります。図1をよく見てください。
全ての研究において対照群でも体重が減っていますね。
これは、興味深い事実です。
対照群においても、体重を意識するだけで、それなりの
体重減少効果があるということですね。
■食事療法の効果を科学的に調べることは難しい
これはその通りと思います。
疫学的研究では食事療法の効果を検証することは困難です。
従いまして、疫学的研究はさておいて、
科学的・生理学的事実に基づいた論理的考察で、
糖質制限食と高糖質食の優劣を検討するのが
最もリーズナブルと思われます。
『糖質制限食VS高糖質食、科学的・生理学的事実に基づいた論理的考察』はそのうち記事にしたいと思います。
■糖質制限の問題点
佐々木 糖質制限ダイエットは食料生産効率が悪いのです。
糖質制限ダイエットでは、食事に占める肉や野菜の比率が高まりますが、
動物を生産するには、植物(穀類)を生産する場合よりもエネルギーを使います。・・・
これは、糖質制限食の効果云々というのではなく経済的な視点からの意見です。
確かに動物の生産のほうが穀物生産より高くつきます。
食料経済的には、将来はFAOも推奨している「昆虫食」も考慮にいれれば、
かなり安価となる可能性もあります。
2013年08月05日 (月)の本ブログ記事
「人類の将来の食糧危機を解決するのは昆虫食だ」 国連食糧農業機関
http://koujiebe.blog95.fc2.com/blog-entry-2626.html
をご参照ください。
一方で、医療の視点からみると、糖質制限食により、
生活習慣病が、ほとんど予防できるか良くなるので、
医療経済効果は計り知れないほど大きいと言えます。
江部康二
2017/8/22
NIKKEI STYLE
日経電子版
ヘルスUP
に、
大人気の「糖質制限」 他の方法より効果的?
データで見る栄養学(2)
https://style.nikkei.com/article/DGXMZO19597800T00C17A8000000?channel=DF140920160927
という記事が掲載されました。
東京大学大学院医学系研究科社会予防疫学分野教授の佐々木敏氏のインタビュー記事です。
佐々木氏の見解は
総じて
「糖質制限食は脂質制限食に比べてそれほど目立った効果はない」
ということのようです。
これに対して、糖質制限食推進派として、
私の見解や反論を述べたいと思います。
ともあれ、大人気の「糖質制限」という
日経電子版 ヘルスUP の文言は嬉しいですね。
以下、佐々木氏のインタビュー記事を抜粋して要約して、私なりに、検討してみました。
糖質制限ダイエットが根強い人気だ。
「やせた」という人がいる一方で、
「やせたけれど、リバウンドした」という声もよく聞く。
果たして、糖質制限ダイエットは本当に有効なダイエット法なのだろうか。
東京大学大学院医学系研究科社会予防疫学分野教授の佐々木敏さんに、
栄養疫学の視点からひもといてもらった。
■何と比べてやせるのか?
佐々木
・・・厳密な意味で糖質制限が有効かどうかを調べるには、
糖質を減らした分のエネルギーを脂質やたんぱく質で補い、
同じ摂取エネルギー量にしたグループと比較しないといけません。
これはその通りですね。
■海外の19の研究をまとめてみたら……
佐々木 対照群は・・・総エネルギー摂取量に占める糖質、脂質、たんぱく質の割合が、
それぞれ、45~65%、25~35%、10~20%の食事です。
低糖質食は糖質が45%未満の食事としました。
佐々木 このデータから読み解けることは、
「摂取エネルギーが同じ場合、糖質制限は体重の変化には大きな影響がなかった」
ということです。
これが佐々木氏の見解ですが、
低糖質食が、糖質45%未満の食事ということで、非常に緩やかな糖質制限です。
私の見解は、糖質12%のスーパー糖質制限食の研究はないので、
我々糖質セイゲニストには参考にならないということです。
■全ての研究で体重が減っていることに注目
佐々木 図1で紹介した19の研究のうちの一つ、アメリカの研究では、
たんぱく質、脂質、糖質の構成比が異なる4種類の食事を食べた場合の体重変化を調べているのですが、
結果は、「総エネルギー摂取量が同じならば、どの栄養素からエネルギーをとっても、
体重変化にはほとんど違いがなかった」というものでした。
Sacks FM,et al.Comparison of weight-loss diets with different compositions of fat, protein, and carbohydrates. N Engl J Med. 2009; 360:859-73.
この論文は、私も読みましたが、
2009年04月09日 (木)の本ブログ記事
「NEJM誌・カロリー神話肯定論文のカラクリ」
http://koujiebe.blog95.fc2.com/blog-entry-759.html
で検討した、不自然な論文です。
まず、この研究のデザインした
高糖質食(低脂肪/標準たんぱく食)は、糖質65%、
低糖質食(高脂肪/高たんぱく食)は、糖質35%、
であり高雄病院の糖質制限食の糖質12%に比べると、
到底、低糖質食とは言えません。
しかも2年間経過した時点で、
高糖質食グループの糖質割合は53.2%と減っており、
低糖質食グループの糖質割合は42.9%と増加していました。
高糖質食グループと低糖質グループの糖質摂取量の差は、
当初のデザインよりさらに小さくなっており、これでは差がでなくても当然です。
佐々木敏教授ともあろう方が、何故このような怪しい論文を
簡単に信じてしまわれたのか、私には不思議です。
ちなみに、この後行われた11の研究をまとめた別の研究では、
脂肪制限食よりも糖質制限食のほうで有意に、
具体的には2.17kg多く、体重が減少する結果になりました。
・・・しかし、過体重者や肥満者の減量効果が2kg程度にとどまっていることを考えると、
「糖質制限食は脂質制限食に比べてそれほど目立った効果はない」
というのが私の見解です。
実際には研究によっては、「脂肪制限食よりも糖質制限食のほうで有意に、体重が減少する」
という結果がでたということです。
この件に関する佐々木氏の見解は、不可解ですね。
統計的に有意差があったということは、
科学的(EBM的)には厳然と効果があったということです。
佐々木 一つ注目してほしい点があります。図1をよく見てください。
全ての研究において対照群でも体重が減っていますね。
これは、興味深い事実です。
対照群においても、体重を意識するだけで、それなりの
体重減少効果があるということですね。
■食事療法の効果を科学的に調べることは難しい
これはその通りと思います。
疫学的研究では食事療法の効果を検証することは困難です。
従いまして、疫学的研究はさておいて、
科学的・生理学的事実に基づいた論理的考察で、
糖質制限食と高糖質食の優劣を検討するのが
最もリーズナブルと思われます。
『糖質制限食VS高糖質食、科学的・生理学的事実に基づいた論理的考察』はそのうち記事にしたいと思います。
■糖質制限の問題点
佐々木 糖質制限ダイエットは食料生産効率が悪いのです。
糖質制限ダイエットでは、食事に占める肉や野菜の比率が高まりますが、
動物を生産するには、植物(穀類)を生産する場合よりもエネルギーを使います。・・・
これは、糖質制限食の効果云々というのではなく経済的な視点からの意見です。
確かに動物の生産のほうが穀物生産より高くつきます。
食料経済的には、将来はFAOも推奨している「昆虫食」も考慮にいれれば、
かなり安価となる可能性もあります。
2013年08月05日 (月)の本ブログ記事
「人類の将来の食糧危機を解決するのは昆虫食だ」 国連食糧農業機関
http://koujiebe.blog95.fc2.com/blog-entry-2626.html
をご参照ください。
一方で、医療の視点からみると、糖質制限食により、
生活習慣病が、ほとんど予防できるか良くなるので、
医療経済効果は計り知れないほど大きいと言えます。
江部康二
2型糖尿病が原因で難聴になることはありますか?
2017/08/25(Fri) 20:15 | URL | 俊太 | 【編集】
俊太 さん
あるようです。
糖尿病ネットワーク
http://www.dm-net.co.jp/calendar/2013/019558.php
糖尿病の人は、そうでない人にくらべ、聴力障害の発症リスクが最大で約3倍に増加するという新しい知見が発表された。「糖尿病の人は早い時期から聴覚障害の検診を受けたほうがよい」と研究者は述べている。
あるようです。
糖尿病ネットワーク
http://www.dm-net.co.jp/calendar/2013/019558.php
糖尿病の人は、そうでない人にくらべ、聴力障害の発症リスクが最大で約3倍に増加するという新しい知見が発表された。「糖尿病の人は早い時期から聴覚障害の検診を受けたほうがよい」と研究者は述べている。
2017/08/25(Fri) 21:40 | URL | ドクター江部 | 【編集】
江部先生
記事に取り上げていただきありがとうございました。
江部先生を信じていた自分の考えが正しかったことが分かりほっとしました。
佐々木敏氏や(最近は変わってきたようですが)山田悟氏の見解を見ると、JAや製粉会社はよく黙っているなあ と思っていました。
山田悟氏は、そのような勢力に配慮して、糖質制限に慎重な見解を述べていたのかとも思っていました。
今後もよろしくお願いします。
記事に取り上げていただきありがとうございました。
江部先生を信じていた自分の考えが正しかったことが分かりほっとしました。
佐々木敏氏や(最近は変わってきたようですが)山田悟氏の見解を見ると、JAや製粉会社はよく黙っているなあ と思っていました。
山田悟氏は、そのような勢力に配慮して、糖質制限に慎重な見解を述べていたのかとも思っていました。
今後もよろしくお願いします。
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