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高タンパク食の安全性について 。肉を食べて不調になるときは要注意。
【17/08/17 みぃ
高タンパク食の安全性について
一つ気になる記事を見つけましたので、質問させていただきます。

高たんぱく食で筋トレの女性死亡、本人も気づかぬ難病に警鐘 - (1/2)
https://www.cnn.co.jp/m/world/35105843.html

この病気になると、血液検査で何か異常がわかるのでしょうか?
本人も気づかないうちに…とのことで、少し不安になりました。

激しい筋トレをしていなければ、
普通の生活のスーパー糖質制限食実践者では問題ないのでしょうか?

よろしくお願いいたします。】


こんばんは。

みぃさんから、高タンパク食の安全性について
コメント・質問を頂きました。

上記サイトから一部、抜粋してみました。
『(CNN) オーストラリアで筋トレに励んでいた25歳の女性が、高たんぱくの食事を摂取して死亡した。女性は尿素サイクル異常症と呼ばれる難病だったことが、死後になって判明。たとえ本人が気づいていなくても、こうした危険があることを知ってほしいと遺族は訴えている。』

この「尿素サイクル異常症」というのは、かなり特殊な遺伝性の難病です。

難病情報センター
http://www.nanbyou.or.jp/entry/4732
によれば、
『尿素サイクルは生体内で発生する有毒なアンモニア(NH3)を無毒な尿素に変えていく経路です。尿素サイクル異常症は尿素合成経路の代謝系に先天的な異常があり、
高アンモニア血症の症状などで発症する一群の疾患です。』

『尿素サイクル異常症の発症頻度は1:8,000~44,000人と考えられています。
・・・ 長期生存が難しい例も多く、現在日本にいる患者さんはOTC欠損症約500人、CPSI欠損症約100人、アルギニノコハク酸尿症約100人その他の尿素サイクル異常症はそれぞれ100人未満と考えられています。』


高アンモニア血症を検査することで、発見できる可能性がありますが、
この病気を意識しないと、通常は血中アンモニア値の検査は行われません。

しかしながら、「尿素サイクル異常症」はまれな、遺伝性の難病ですので、
日本であれば、家族歴なども含めて乳幼児期に診断される可能性が高いと思います。

日本で、成人まで普通に生活している人は、
「尿素サイクル異常症」の可能性はほとんどないと思います。

基本的には、「尿素サイクル異常症」のような特殊な疾患ではなくて
腎機能も正常なら、
高タンパク食を摂取して腎機能が悪化するというエビデンスはありません。


「日本人の食事摂取基準(2015年版)策定検討会」 報告書
II  各論
たんぱく質(PDF:1,149KB)
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10901000-Kenkoukyoku-Soumuka/0000042630.pdf
<97ページ>


厚生労働省によれば、
結局、現時点では、
正常人がタンパク質をたくさん食べて危険という根拠もないけれど、
たくさん食べても安全という根拠もないということです。

まさに、自分で考えて選択して自己責任で食事療法を実践することとなります。
ちなみに、江部康二は、糖尿病発覚の2002年(52才)からスーパー糖質制限食を開始して
2017年8月(67才)現在まで続けています。

タンパク質の摂取量は、一日あたり130~140gくらいと、
普通人よりかなり大量のタンパク質を摂取してます。
体重あたり2.4gのタンパク質ですね。
それでも尿酸は低めですし、腎機能に何の問題もありません。

江部康二の2017年6月の検査
クレアチニン:0.60mg/dl(0.6~1.1)
  eGFR:101.5ml/min./1.73m2
シスタチンC:0.60/L   (0.58~0.87)
  eGFR:125.8ml/min./1.73m2
尿酸:3.3mg/dl(3.4~7.0)

江部康二


☆☆☆
たがしゅう先生から、とても参考になるコメントを頂きました。
ありがとうございます。
肉を食べて調子が悪くなる人は、血中アンモニア値の検査を!

2017年5月10日(水)たがしゅうブログ記事
「肉を食べて調子が悪い時の落とし穴」
http://tagashuu.blog.fc2.com/blog-entry-961.html

肉を食べて調子悪い時の落とし穴

医師向けの情報誌「ドクターズマガジン」を何気なく読んでいたら、

「Dr.井村のクリニカルパール」というコーナーが目に入りました。

それは飯塚病院総合診療科部長の井村洋先生監修で、

日常診療で知っておくと役に立つ知識を漫画でわかりやすく紹介するというコーナーでした。

2017年2月号のコーナーで紹介されていたのは、

「肉を食べると頭痛がひどくなる25歳女性」の症例でした。
(以下、引用)

年齢:25歳 女性

【主訴】頭痛、嘔吐

【既往歴】職業OL、飲酒なし、喫煙なし

【現病歴】中学の頃から、頭痛が続いていた。

特に肉を食べると頭痛や吐き気があったので、極力避けるようにしていた。

頭痛と嘔気は同じタイミングで起こっていたので偏頭痛だと思っていたが、特に薬を飲んだことはなかった。

就職して食事のパーティーに招かれて、久しぶりに肉を多めに食べたら、頭痛が強くなり嘔吐を繰り返したために受診。


【バイタルサイン】意識 やや混濁があり。
血圧120/70mmHg、脈拍120/分、体温36.0℃、呼吸22/min
【身体所見】特に異常はなく、神経の麻痺の所見はなし。


(引用、ここまで)


この症例、年齢、性別、症状で考えれば典型的な片頭痛であり、

片頭痛と糖質摂取が関係することは文献的にも、経験的にもよくわかっています。

ところがこの患者さんは糖質量がほぼゼロに近い肉によって片頭痛様発作が誘発されているというのです。

もし私が実際にこの患者さんを診たら、実は肉と一緒に食べている糖質主体の食品が原因だと考えて、

肉と一緒に食べたであろう食品を根ほり葉ほり聞いてしまっていたであろうと思います。

しかしこの患者さんは本当に肉しか食べていなくて、片頭痛様発作が誘発されているという状況なのです。

それに肉だけで痛みが出るという話が疑わしかったとしても、肉を食べた後に意識が少し低下するという現象は流石に普通ではありません。

いったいどういう事なのか気になってページをめくり物語を読み進めていくと、意外な結果が書かれていました。


担当医の先生は、肉という高タンパク食品で症状が誘発されることから、尿素サイクルに異常がある可能性を考え、血液検査でアンモニアの測定を行いました。

その結果、アンモニアは異常高値であり、最終的に診断はOTC欠損症(オルニチントランスカルバミラーゼ欠損症)という先天性尿素代謝異常症でした。

先天性尿素代謝異常症は日本で約5万人出生あたり1人の頻度とされ、OTC欠損症はその中でも最も頻度が高く、約4万~8万出生に1人の有病率とされている厚生労働省の指定難病です。

先天性というのなら小児の時点で発見されそうなものですが、遺伝的な影響がモザイクに表出しOTC活性低下の個人差が大きいために成人になって初めて発見されるパターンもあるのだそうです。

尿素サイクルというのはタンパク質を処理し、最終的に尿素に変えて尿へと排出させる時に働く代謝経路です。

ここに異常がある場合、タンパク質がうまく代謝されず、代謝の途中過程で産生されるアンモニアが解毒できないため、アンモニアが高値となります。

アンモニアが高くなると意識障害だけでなく、痙攣、脳症、脳浮腫などにも発展し、命に関わることもあるため、迅速な治療が求められます。

この急性期治療にはグルコースの大量点滴が行われます。なぜならばタンパク質が産生される異化亢進状態を阻止するためです。

グルコースが投与されればインスリンが分泌されるので、これにより代謝を同化に向かわせるということだと思います。

それ以外に食事指導としてタンパク質制限、十分なカロリーの補充、アルギニン、安息香酸ナ トリウム・フェニル酪酸、L-カルニチン、ラクツロースの内服、その他血液浄化療法に、一部では肝移植がなされることもあるそうです。

このOTC欠損症、蛋白を制限し十分なカロリーを確保する目的であれば脂質を利用すればいいので、糖質制限の直接的な禁忌には当たらないのではないかと思いますが、

しかし糖質制限指導後、多くは高タンパク質・高脂質を指導する事が多いので、その指導が病態を悪化させうるため相対的禁忌には該当しそうです。

もしも肉を食べて体調が悪いと患者さんが訴えればその言葉をきちんと受け止めて、

必要に応じてアンモニア測定をしなければならない
という事で、

非常に勉強になりました。


たがしゅう
コメント
成人の尿素サイクル異常症例
江部先生

いつもお世話になっております。

尿素サイクル異常症についてですが、
確かに多くは乳幼児期に診断されると思うのですが、
遺伝的な影響がモザイクに表出しOTC活性低下の個人差が大きいために、成人になって初めて発見されるパターンもあるのだそうです。

民間医局発行の雑誌、ドクターズマガジンの2017年2月号の「Dr.井村のクリニカルパール」というコーナーの中で紹介されていた
「肉を食べると頭痛がひどくなる25歳女性」の症例が、尿素サイクル異常症の中で最も多いOTC欠損症でした。
拙ブログでも取り上げましたので、機会がございましたら御参照頂ければ幸いです。

2017年5月10日(水)たがしゅうブログ記事
「肉を食べて調子が悪い時の落とし穴」
http://tagashuu.blog.fc2.com/blog-entry-961.html

ドクターズマガジン2017年2月号
http://www.doctor-agent.com/Knowledge-Support/DOCTORS-MAGAZINE/Back-Number/2017/No02
2017/08/17(Thu) 18:36 | URL | たがしゅう | 【編集
Re: 成人の尿素サイクル異常症例
たがしゅう 先生

コメントありがとうございます。
勉強になります。

2017年5月10日(水)たがしゅうブログ記事
「肉を食べて調子が悪い時の落とし穴」
http://tagashuu.blog.fc2.com/blog-entry-961.html


を、この記事の参考として、コピペさせて貰います。
2017/08/17(Thu) 18:53 | URL | ドクター江部 | 【編集
1例の報告
平素よりお世話になります。

成人~老人を中心にみている開業医では遭遇する機会はまずないのですが、
私が健診でいっている保育園で、6歳の女児でOTC欠損症の方がいました。その方は、国立成育医療センターで肝移植を受け、現在は地元の医療センターで免疫抑制剤を服用している方がいました。

たがしゅう先生の、成人での発症例は非常に勉強になりました。糖質制限をしていて、肉だけを食べての偏頭痛がひどくなる方がいればアンモニアの測定をしてみます。

有難うございました。

2017/08/17(Thu) 20:40 | URL | ハリココ | 【編集
尿素窒素も関係ありますか?
記事を読んで心配になったので、質問させて下さい。筋トレ、糖質制限していて、去年、尿素窒素32.5 CK283 クレアチン0.67 病院では糖質も摂取するように言われ、以前よりは糖質摂取して、尿素窒素は下がり18.3、CK318 クレアチン0.76 糖質制限しても良いでしょうか?
2017/08/17(Thu) 21:57 | URL | さる | 【編集
厚揚げは要注意
いつも楽しく拝見しております。

先月からスーパー糖質制限を再開しております。
厚揚げが好きで頻繁に購入しているのですが、先日ショックなことがありました。

厚揚げと言えば低糖質食品の代名詞ということで、今まで栄養成分表示をマジメに見ていませんでした。
先日何気なく見てみると、内容量100gあたり炭水化物が5.6gも含まれていることに気づき、固まってしまいました。
原材料の見ると納得。でんぷんが入っていました。
モチモチした食感を出すためにでんぷんを加えているようです。

現在はでんぷんの含まれていない厚揚げを選んで購入するようにしています。
厚揚げは低糖質という先入観は捨て、原材料をしっかりとチェックする必要がありそうです。
2017/08/17(Thu) 22:43 | URL | おヒゲ | 【編集
ありがとうございます
記事にしていただいてありがとうございました。勉強になりました。
おそらく確率はすごく低いので心配ないとは思いますが、糖質制限食開始後に不調が見られたら注意ですね。どちらにせよ、自己責任で、ということが重要ですね。
私は耐糖能異常があるので、迷わずスーパー糖質制限食を実践していますし、それで調子も良いので、このまま信じて継続していこうと思っています。
これからも、先生のブログを楽しみにしています。

2017/08/18(Fri) 06:59 | URL | みぃ | 【編集
Re: 1例の報告
ハリココ さん

私も大変勉強になりました。
たがしゅう先生、ありがとうございます。
2017/08/18(Fri) 08:21 | URL | ドクター江部 | 【編集
Re: 尿素窒素も関係ありますか?
さる さん

尿素窒素がやや高値でも、クレアチニンが正常なら、腎機能は大丈夫です。
糖質制限もOKです。
2017/08/18(Fri) 08:24 | URL | ドクター江部 | 【編集
Re: 厚揚げは要注意
おヒゲ さん

厚揚げ、200gあたり、300kcal、
炭水化物は1.8g(7.2kcal)
食物繊維が1.4g
糖質は0.4g


でんぷんを加えていない一般的な厚揚げは、糖質制限OK食材ですね。
2017/08/18(Fri) 08:30 | URL | ドクター江部 | 【編集
日焼けについて
江部先生 はじめまして。
2月からスーパー糖質制限を始め、5月の連休明けからスタンダードに切り替え、今はたまに解禁日を作って食生活に気をつけています。

今年の人間ドッグで中性脂肪が劇的に改善、腹部CTの結果も昨年から大幅に改善され、体重の変化は-2キロほどですが、体脂肪や数値に表れてきているので、体にいいことをしているなぁと満足しています。

今年、息子の所属する野球部が甲子園に出場し、2度炎天下の中、応援をしてきました。そこでふと気がついたのですが、日焼けの様子が昨年と違う感じがするのです。お化粧品など特に変えたりはしていないのですが、日焼け後の肌のダメージが昨年よりはるかに落ち着いていて、回復も早い気がするのです。昨年まで、赤黒くなって回復も遅く、お化粧のノリの悪さがしばらく続いていたので今年も覚悟はしていたのですが・・・。
これは糖質制限をしたことと何か関係があるのでしょうか。
関係があるとしたら、子育て中の女性には朗報かもしれません。お時間のあるときに教えていただければと思います。
2017/08/18(Fri) 10:41 | URL | なみ | 【編集
血糖値と食事間隔
昨日テレビを見ていましたら、食事間隔が空けば血糖値が上昇しやすいので同じ量なら食事回数は多いほうが良いとのことでした。
私は胃腸を休ませたほうが良いと考え1日2食を実践していましたが、良くわからなくなりました。
糖質制限食の場合と通常の食事の場合ではまた結論が分かれると思いますが、先生の見解を聞かせてもらえればうれしいです。
2017/08/18(Fri) 14:23 | URL | 夜明け | 【編集
妊娠糖尿病
いつも参考にさせて頂いてます。
妊娠8カ月で75g糖負荷検査で空腹時70 1時間202. 2時間169の高い数値を出し自分で血糖値測定器を購入し血糖値をはかりはじめました。江部先生がいうように緩やかな糖質制限で一食30〜40の糖質量で食事をしてますが測り始めてから自分の血糖値にビックリしています…
朝食で2日続けて食前血糖値92 、93 .2時間血糖値163 、140と2時間血糖値がすごい高く出てしまいました。食べたのは8枚切りパンに卵、チーズ、キャベツミニトマトサラダのみです。お昼は玄米50g、枝豆、おかず、酢の物でギリギリ117.夜は炭水化物なしの夕食で2時間血糖値99でした。
食べる順番を考えて糖質量も範囲内でもこんなに血糖値は上がってしまうのでしょうか。お昼も量はそんな多くないのに120ギリギリでした…。これからの食事が不安で仕方ありません。75g糖負荷検査で同じ位の数値の方はこんなに食事で上がってないのですが、私はやっぱり重い妊娠糖尿病なんでしょうか…
2017/08/18(Fri) 14:51 | URL | はな | 【編集
Re: 血糖値と食事間隔
夜明け さん

人類の進化の歴史を考慮すれば、1日に数回も食事をしていた可能性はないと思います。
おそらくは、1日に1食か2食が普通だったと思います。
あるいは、水だけのこともあったでしょう。

1日2食がいいと思います。
私も1日に2食です。
2017/08/18(Fri) 18:52 | URL | ドクター江部 | 【編集
Re: 妊娠糖尿病
はな さん

妊娠糖尿病での血糖値の上昇ですが、やはり個人差が大きいと思います。

妊娠中のコントロール目標は、「糖尿病妊娠」も「妊娠糖尿病」も

朝食前血糖値70~100mg/dl
食後2時間血糖値120mg/dl未満
HbA1c6.2%未満、NGSP値


です。
実務的には
一人一人が、この目標が達成できるていどの糖質量にすれば良いと思います。
それで母子共に健康で、安産となります。
2017/08/18(Fri) 18:59 | URL | ドクター江部 | 【編集
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