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インスリンの功罪。2017年。
1)
基礎分泌インスリンは、ヒトの生命維持に必要不可欠です。

2)
スーパー糖質制限食実践中でも、主として野菜分の糖質は摂取します。
従って、食事のたびに基礎分泌の2~3倍レベルの追加分泌インスリンがでます。

3)
インスリンは血糖値を下げる唯一のホルモンです。


4)
インスリン注射で、1型糖尿病患者の命が助かるようになり、
近年、寿命が延びてきました。

5)
過剰なインスリンは、酸化ストレスとなり、
がん、老化、動脈硬化、糖尿病合併症、アルツハイマー病など
様々な生活習慣病のリスクとなります。



こんにちは。

今回はインスリンの功罪について復習を兼ねて考察してみます。

インスリンには、24時間継続して少量出続けている基礎分泌と、
糖質を摂取して血糖値が上昇したときに出る追加分泌の2種類があります。

タンパク質摂取でも少量のインスリンが追加分泌されますが、
脂質摂取では、インスリンは追加分泌されません。

これでまず解るのは、食物を摂取していないときでも、
人体の代謝には、少量のインスリンが必須ということですね。

このインスリンの基礎分泌がなくなったら、人体の代謝全体が崩壊していきます。

つまり、基礎分泌のインスリンがないと、
全身の高度な代謝失調が生じ、生命の危険があります。

例えば「運動をしたらインスリン非依存的に血糖値がさがる」といっても、
インスリン基礎分泌が確保されているのが前提のお話です。

もし、基礎インスリンが不足している状態で運動すれば、
運動で血糖値はかえって上昇します。

また、肝臓で行っている糖新生も、基礎インスリンが分泌されていなければ制御不能となり、
空腹時血糖値が300mg/dl~400mg/dl、或いはこれ以上にもなります。

また、糖質を食べて血糖値が上昇したとき、
追加分泌のインスリンがでなければ、高血糖が持続します。

高血糖の持続は糖毒といわれ、膵臓のβ細胞を傷害し、
インスリン抵抗性を悪化させます。

さてブドウ糖が、細胞膜を通過するためには、特別な膜輸送タンパク質が必要です。

それが糖輸送体(GLUT)であり、現在GLUT1~GLUT14まで確認されています。

GLUT1は赤血球・脳・網膜などの糖輸送体で常に細胞の表面にあり、
血流さえあれば即血糖を取り込めます。

これに対して筋肉細胞と脂肪細胞に特異的なのがGLUT4で、
基礎分泌のインスリンレベルだと、通常は細胞内部に沈んでいます。

GLUT1~GLUT14の中で、インスリンに依存しているのはGLUT4だけで特殊です。

筋肉細胞と脂肪細胞にあるGLUT-4は、
インスリン追加分泌がないと細胞内に沈んでいるのでブドウ糖を取り込めません。

インスリンが追加分泌されるとGLUT-4は細胞表面に移動して血糖を取り込むのです。

このようにインスリンは、生命の維持に必須の重要なホルモンであることが確認できました。

また近年、1型糖尿病患者の寿命は延びています。

以下、糖尿病ネットワークから一部抜粋。
http://www.dm-net.co.jp/calendar/2016/024725.php

1975年に米国で行われた調査では1型糖尿病患者の寿命は、健康人に比べて27年短いとされていました。

スコットランドのダンディー大学が2万4,691人の1型糖尿病患者を対象に行った調査では、
20代前半の糖尿病患者の予想される平均余命は、
健康な人に比べ男性で11.1年、女性で12.9年短いという結果になりました(2015年1月報告)。


このようにインスリンの使用法や種類が改善されたことで、
1型糖尿病患者の寿命はかなり改善されてきています。

インスリン注射が、おおいに役に立っているわけです。


一方で過剰なインスリンの害にはエビデンスがあります。

たとえ基準値内でも、インスリンの血中濃度が高いほど、
アルツハイマー病、がん、肥満、高血圧などのリスクとなります。

また、高インスリン血症は、活性酸素を増加させ、
酸化ストレスリスクを生じます。


酸化ストレスは、老化・癌・動脈硬化・糖尿病合併症、その他多くの疾患の元凶とされていて、
パーキンソン病、狭心症、心筋梗塞、アルツハイマー病などにおいても
酸化ストレス関与の可能性が高いをされています。

ロッテルダム研究によれば、
インスリン使用中の糖尿人ではアルツハイマー病の相対危険度は4.3倍です。

Rotterdam研究(Neurology1999:53:1937-1942)
「高齢者糖尿病における、脳血管性痴呆(VD)の相対危険度は2.0倍。
アルツハイマー型痴呆(AD)の相対危険度は1.9倍。
インスリン使用者の相対危険度は4.3倍」


インスリン注射をしている糖尿人は、メトグルコで治療している糖尿人に比べて
ガンのリスクが1.9倍というカナダの研究もあります。

2005年の第65回米国糖尿病学会、
カナダのSamantha博士等が、10309名の糖尿病患者の研究成果を報告、
その後論文化。コホート研究。
 「メトフォルミン(インスリン分泌を促進させない薬)を使用しているグループに比べて、
インスリンを注射しているグループは、癌死亡率が1.9倍高まる。
SU剤(インスリン分泌促進剤)を内服しているグループは癌死亡率が1.3倍高まる。」 
Diabetes Care February 2006 vol. 29 no. 2 254-258


このようにインスリンの弊害を見てみると、
インスリンは血糖コントロールができている限り少なければ少ないほど、
身体には好ましいことがわかります。

別の言い方をすれば、農耕開始後、精製炭水化物開始後、
特に第二次大戦後に世界の食糧事情が良くなってからの糖質の頻回・過剰摂取が、
インスリンの頻回・過剰分泌を招き、
様々な生活習慣病の元凶となった構造が見えてきます。


スーパー糖質制限食を実践すれば、インスリンの分泌は必要最小限で済むようになり、
糖尿病は勿論のこと、様々な生活習慣病の予防が期待できます。

ブログ読者の皆さんも、スーパー糖質制限食実践で、
必要最低限のインスリンで血糖こントロールを維持して、健康ライフを送ってくださいね。

インスリンは糖質代謝の調整が主作用ですが、
それ以外にも下記のごとくいろいろな働きがあります。


☆☆☆インスリンの作用

インスリンは、グリコーゲン合成・タンパク質合成・脂肪合成など、
栄養素の同化を促進し、筋肉、脂肪組織、肝臓に取り込む。

インスリンが作用するのは、主として、筋肉(骨格筋、心筋)、脂肪組織、肝臓である。

A)糖質代謝
*ブドウ糖の筋肉細胞・脂肪細胞内への取り込みを促進させる。
*グリコーゲン合成を促進させる。
*グリコーゲン分解を抑制する。
*肝臓の糖新生を抑制し、ブドウ糖の血中放出を抑制する。

B)タンパク質代謝
*骨格筋に作用してタンパク質合成を促進させる。
*骨格筋に作用してタンパク質の異化を抑制する。

C)脂質代謝
*脂肪の合成を促進する。
*脂肪の分解を抑制する。




江部康二
コメント
米国の糖尿病事情
江部先生、こんばんわ。
3人に一人ですから、正に国家的対策が必要ですね。
以前、ニュースで合併症の患者は減少していると
ありましたが、糖尿病患者が増加しているのは、
何故なのでしょうか?
糖質摂取量が増加しているのでしょうか?

米1億人超が糖尿病か予備軍、人口の3分の1 CDC報告書

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170719-00000022-jij_afp-int


2017/07/19(Wed) 22:08 | URL | 久掘 | 【編集
Re: 米国の糖尿病事情
久掘 さん

米国では、糖質50%摂取して、糖尿病は増加し続けています。
糖尿病と診断されたら、糖質40%以下となります。
それで合併症は半減しています。

日本では、糖質50~60%摂取して、糖尿病は増加しています。
糖尿病診断後も、糖質摂取は50~60%です。
それで、合併症が減りません。


2017/07/19(Wed) 22:40 | URL | ドクター江部 | 【編集
タンパク質のインスリン分泌について
タンパク質もインスリンが分泌されるということで、
先生は少量とおっしゃっていますが、
意外と多量にでているという報告もあり、困惑しています。

糖質制限で血糖値を上昇させていなくても、
高タンパク食でインスリンは沢山出て、インスリン感受性が下がっているため低血糖にもならないという人や、
インスリン分泌が弱っているから、タンパク質でもインスリンがそもそもそんなに出ていないから血糖値的には問題ないという場合もあるかと思います。

こちらのサイトはフィットネス向けのダイエットなどの観点だとは思いますが、タンパク質でインスリンは結構出ているという根拠を提示した考察が載っています。
https://athletebody.jp/2016/04/05/insulin-myth-1/

先生は高タンパクでインスリン分泌が多くても、血糖値上昇さえしなければ大丈夫とお考えですか?
2017/07/20(Thu) 13:38 | URL | 月見 | 【編集
Re: タンパク質のインスリン分泌について
月見 さん

そのサイトで引用している
原著論文を見てみました。

http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0195666310000188?via%3Dihub


高蛋白・低糖質食(HP/LC):蛋白が75g、糖質が74.7g、脂質が20g

低蛋白・高糖質(LP/HC):蛋白が21g、糖質が124.5g、脂質が23g


低糖質食とされている食事の、一回の食事の糖質量が74.7gです。
高糖質食とされている食事の、一回の食事の糖質量が124.5gです。

この二つの食事の比較ですね。
糖質を50g、75g、100g、125gとか摂取したら、インスリンは基本、目一杯でるので
差がでないのは当たり前です。
そもそも、一回の食事の糖質量が、74.7gもあったら、糖質制限食ではないです。

高雄病院のスーパー糖質制限食の一回の食事の糖質量は約8~15gくらいです。


* 通常食     
350 Kcal    糖質60% (約 52.5g) 、脂質20% 、タンパク質20%

* 糖質制限食 
350 Kcal    糖質10% (約 8.75g) 、脂質60% 、タンパク質30% 


これなら、糖質制限食のときは、基礎分泌の1.5~2.5倍のインスリン追加分泌、
通常食なら基礎分泌の5倍~7倍の追加分泌インスリンがありました。
かなりの差がありますね。
2017/07/20(Thu) 18:36 | URL | ドクター江部 | 【編集
Re: タンパク質のインスリン分泌について
こんばんは。

タンパク質摂取のインスリンや血糖値への影響については、たがしゅう先生がササミでご自身が体験結果をブログにあげられていました。結果ではタンパク主体でもインスリンや血糖が上昇する結果だったと思います。

とはいうものの、そのレベルは糖質とは大きな差があると思いますし、やはりインスリンは酸化ストレスや腫瘍増殖に関していると思いますが、いかがでしょうか?
そう考えると、糖質制限は大変意義があると思います。
2017/07/20(Thu) 19:53 | URL | じょん | 【編集
Re: Re: タンパク質のインスリン分泌について
じょん さん

仰る通りと思います。
2017/07/20(Thu) 21:05 | URL | ドクター江部 | 【編集
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