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妊娠糖尿病から出産後、糖尿病型へ。糖質制限食は?
【17/06/28 タマゴ
妊娠糖尿病から出産後、糖尿病型へ
こんにちは。以前コメントさせていただいたタマゴです。
40歳、第3子の今回の妊娠後期に初めて妊娠糖尿病と診断され、
以後、ほぼほぼスーパー糖質制限を行い、39週で無事出産できました。
ありがとうございました。

さて、先日、産後1か月で75g OGTTを受けたのですが、
結果が、残念ながら糖尿病型でした。というか、妊娠中より悪くなっていました。
検査前3日間は、75g OGTTのプロトコール通り、厳密に糖質150g/日ではないけれど、ある程度の糖質を摂取したのでβ細胞のプライミングはできていたと思われます。

妊娠中の75g OGTTの結果では、
すでにかなりしっかりした食後高血糖がみられていたので、
耐糖能は悪いと思います。
このまま、私の糖尿病は治らなさそうでしょうか?
ちなみに、学生時代から、食後4-5時間すると、
今思えば機能性低血糖のような症状(強い空腹感、冷や汗がでそうな感じ、フラフラする)がありました。
その時からインスリンの出が遅かったのかもしれません。

データは
妊娠27週 75g OGTT
血糖 
前 87mg/dl,
60 min 250 mg/dl,
120 min 204 mg/dl

妊娠30週
随時血糖 98 mg/dl
HbA1c 5.7%
グリコアルブミン 14.4%
Cペプチド 2.7 ng/ml
抗GAD抗体 陰性

妊娠30週ごろから糖質制限を開始。

妊娠34週
空腹時血糖 98 mg/dl
HbA1c 5.6%
グリコアルブミン 12.7%

出産後も糖質制限を続けるが、時々守れないことがあった。

産後4週間 75g OGTT
血糖
前  77 mg/dl
30 min 190 mg/dl
60 min 217 mg/dl
120 min 262 mg/dl

インスリン CLIA
前  1.8 μU/ml
30 min 36.8 μU/ml
60 min 41.6 μU/ml
120 min 44.6 μU/ml
HbA1c 6.0%

現在の身長156㎝ 体重54㎏でほぼ妊娠前の状態に戻りました。
先生のご経験からアドバイスをどうぞよろしくお願いいたします。】



タマゴさん。
40歳、第3子無事出産、おめでとうございます。
第30週ごろから、糖質制限食実践されていますので、
体重コントロールも容易で安産で、
母子ともに健康度が高かったと思います。


産後4週間 75g OGTT
血糖
前  77 mg/dl
30 min 190 mg/dl
60 min 217 mg/dl
120 min 262 mg/dl

インスリン CLIA
前  1.8 μU/ml
30 min 36.8 μU/ml
60 min 41.6 μU/ml
120 min 44.6 μU/ml
HbA1c 6.0%


インスリン分泌指数 :0.31  0.4以下で、糖尿病型
HOMA-R :0.34 (1.6以下正常) インスリン抵抗性なし
HOMA-β :46.3  (40~60) 正常

産後4週間の75g経口ブドウ糖負荷試験では、糖尿病型です。
検査前の3日間は、糖質を150g摂取しておられたので、
検査の信頼度も高いと思います。

HOMA-β は正常なのですが、
120分後のインスリン分泌のほうが、60分後より多いので
やや遷延していると思われます。

『学生時代から、食後4-5時間すると、
今思えば機能性低血糖のような症状(強い空腹感、冷や汗がでそうな感じ、フラフラする)がありました。
その時からインスリンの出が遅かったのかもしれません。』


仰る通りと思います。
機能性低血糖は、家族歴で糖尿病がない人でも起こりますが、
家族歴で糖尿病がある人にも結構、生じやすいです。


このように、考察してみると、タマゴさんは現時点で、糖尿病の可能性が高いです。
インスリン抵抗性は、全くないので、
膵臓のβ細胞があるていど壊れていて、
インスリン分泌不足が主の糖尿病と思われます。
このタイプは、基本的には、将来的にも治らないと考えられます。
まあ、日本人の2型糖尿病では、一番多いタイプであり、
かくいう私もその一人です。
一方、ベースにインスリン分泌不足があるのですが、
糖質制限食があるので、まったく問題はありません。

タマゴさんも私も、
スーパー糖質制限食を実践する限りは正常人であり、
糖質を食べたら糖尿人ということです。

『現在の身長156㎝ 体重54㎏』
BMIも22.2でほどよいです。
このまま、美味しく楽しく糖質制限食を続けられて、
健康ライフを維持して頂けば幸いです。

タマゴさんは、現在40歳ですから、
スーパー糖質制限食で、糖化を防ぎ、AGEsの経年的蓄積を減らしましょう。
そうすれば、将来の糖化(AGEs)に関連する老化が予防できるので、
現在糖尿病ではない40歳の方々より若さが保てる可能性が高いです。
背が縮みにくい、聴力が低下しにくい、歯が丈夫、視力も低下しにくいなどです。


江部康二





☆☆☆
インスリン分泌指標

【インスリン分泌指数】
インスリン追加分泌第1相をみるのが、インスリン分泌指数です。
インスリン分泌指数: insulinogenic index→略してII

75gブドウ糖負荷試験で調べます。

II=<30分インスリン値-空腹時インスリン値>÷<30分血糖値-空腹時血糖値>

という式で計算します。

0.4以上あれば正常です。0.4未満は糖尿病型です。
0.4未満の場合、現在負荷試験が正常型や境界型でも
将来糖尿病になりやすいとされています。

【HOMA-β】
HOMA-βは内因性インスリン分泌機能を推定する指数です。

HOMA-βは、空腹時血糖値と空腹時インスリン値で計算するのですが、
経口血糖負荷試験(OGTT)時の2時間値のインスリン分泌量と、
よく相関することがわかっています。

homeostatic model assessment beta cell function
→略してHOMA-β



という式で計算します。
空腹時血糖値130mg/dl以下なら信頼度が高いです。

正常値:40-60



インスリン抵抗性指標
【HOMA-R】
HOMA-Rとはインスリン抵抗指数のことです。



という式で計算します。

homeostasis model assessment insulin resistance
→略して HOMA-R

HOMA-Rが大きいほど、インスリン抵抗性が強いと考えられます。

1.6以下が正常で、2.5以上は抵抗性があると考えられます。
空腹時血糖値140mg/dl以下なら信頼度が高いです。



<インスリン、基礎分泌、追加分泌第1相、第2相>
インスリンは、人体で唯一血糖値を下げるホルモンで、
膵臓のランゲルハンス島のβ細胞でつくられ分泌されます。

24時間少量持続的に出ている基礎分泌のインスリンと、
糖質を摂取して食後血糖値が上昇したときに、
その10~30倍の量が出る追加分泌のインスリンがあります。

追加分泌のインスリンには、
即分泌される第1相と少し遅れて出る第2相があります。

正常人は、血糖値が上昇し始めたら即インスリンが追加分泌されます。

この第1相反応は、もともとプールされていたインスリンが5~10分間分泌されて、
糖質摂取時の急激な食後高血糖を防いでいます。

その後、膵臓のベータ細胞は、第2相反応と呼ばれる持続するインスリン分泌を行います。

これは、食事における糖質の残りをカバーしています。
即ち、糖質を摂取している間は、第2相のインスリン分泌が持続します。

2型糖尿人は、通常、第1相反応が低下或いはなくなっていることが多いようです。
従って、糖質摂取時に血糖値の急激な上昇(グルコーススパイク)が起きてしまいます。

また、第二相も低下していることが多いので、糖質を摂取する限り、
一旦上昇した血糖値はなかなか下がってきません。

糖質制限食ならば、野菜分のごく少量の糖質だけなので、
2型糖尿人においても、食後高血糖はほとんど生じません。
追加分泌インスリンも、ごく少量ですみます。



コメント
スーパー糖質制限2年
初めまして、61歳の♂です。
2年前人間ドックでHbA1cが、5.6になったことから、以前から江部先生の著作を読んでいたので、スーパー糖質制限をかなりストイックに実施して、本日再検査したところ、
HbA1c     5.6→5.1
空腹血糖値 95→85
中性脂肪   57→33
HDL 105→96
LDL       154→130

クレアチニン  1.16→0.80
と改善していました、血糖に関してはこの結果を予測していましたが、実を言うとクレアチニン値がこの10年間ずっと約1.1付近で、{eGFR値 51.2
} でじりじりと毎年数値が上がっていたので、高タンパク食の糖質制限は不安があったのですが、母が糖尿病で亡くなっているので、糖尿病を優先するため、糖質制限をしました。
ですから、クレアチニン値が低くなったのはすごくうれしく、驚きでした。
先生これからも頑張ってください。
ありがとうございました。
いつも江部粉でパンを焼いています。
2017/06/29(Thu) 19:24 | URL | merdeka | 【編集
突然の書き込み失礼します。
現在第2子妊娠中なんですが、1人目のとき妊娠糖尿病でした。今度また検査することになり、分からないことがあって調べていたらここにたどり着きました。よければ教えて頂けないでしょうか。

75g負荷試験の3日前より糖質150g/日摂取することが必要とのことですが、それは妊娠中でも当てはまることでしょうか?
3日間も糖質を多量に摂取することが、赤ちゃんにも悪影響になりそうで不安です。
2017/06/29(Thu) 20:11 | URL | ひかり | 【編集
ありがとうございました。
アドバイス有難うございました。残念ですが、一生、糖質制限を続けるつもりで覚悟を決めました。
2017/06/29(Thu) 22:30 | URL | タマゴ | 【編集
Re: スーパー糖質制限2年
merdeka  さん

拙著のご購入、ありがとうございます。
検査データの改善、素晴らしいです。

クレアチニンも見事です。
念のため、一度、血清シスタチンCを検査しましょう。
血清シスタチンCのほうが、クレアチニンより信頼度の高い、腎機能検査です。
2017/06/30(Fri) 10:11 | URL | ドクター江部 | 【編集
Re: タイトルなし
ひかり さん

普通の妊婦は、250~300g/日の糖質を食べています。

150g/日というのは、その半分ですね。

妊娠中も、
75g負荷試験の3日前より糖質150g/日摂取することが必要と思います。
2017/06/30(Fri) 10:15 | URL | ドクター江部 | 【編集
75負荷試験
上の方と同じような質問で申し訳ないのですが、負荷試験の3日前から糖質を150グラム取ってないと正確な結果がでないのでしょうか?
血糖値だけでなくインスリン分泌量なども正確に出ませんか?どれくらい影響が出るのでしょうか。
病院から何も言われなかったので糖質制限したまま負荷試験をしてしまいました。。
また3日前から糖質を取ることにより、グリコアルブミンは悪くなりますか?
2017/06/30(Fri) 13:43 | URL | あつ | 【編集
毎日拝見しています
糖尿病と言われスーパー糖質制限を始めています。
インスリン分泌量を先生のブログを元に計算すると0.17でした。
ヘモグロビンa1cは5.4です。
食事はだいたい
豆もやし、舞茸、マヨネーズ、
スライスチーズ、サラダチキン(糖質1.5グラム)
低糖質パン2個(1個あたり糖質3.2グラム)
などを食べています。
こんな感じで問題ないでしょうか?
2017/06/30(Fri) 13:53 | URL | いっち | 【編集
Re: 75負荷試験
あつ さん

糖質に対する準備不足で、見かけ上の耐糖能低下になることがあります。
どうもない場合もあります。
影響には個人差があります。

グリコアルブミンは少し高くなると思いますが、14日間の平均値ですので、大きな影響はないと思います。
2017/06/30(Fri) 15:30 | URL | ドクター江部 | 【編集
Re: 毎日拝見しています
いっち さん

インスリン分泌指数が0.17なら、糖尿病型ですね。

『豆もやし、舞茸、マヨネーズ、
スライスチーズ、サラダチキン(糖質1.5グラム)
低糖質パン2個(1個あたり糖質3.2グラム)』


糖質制限はOKですが、エネルギー不足のように思いますので
脂質、タンパク質はしっかり摂取しましょう。
2017/06/30(Fri) 15:33 | URL | ドクター江部 | 【編集
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