SGLT2阻害剤で死亡率減少、ケトン体の臓器保護作用、そして糖質制限食。
こんにちは。

2017年3月21日にアストラゼネカ社から、糖尿病治療薬SGLT2阻害剤の大規模リアルワールドエビデンス試験 「CVD-REAL試験」について、結果が発表されました。

2017年3月19日、第66回米国心臓病学会年次学術集会で発表された研究のプレスリリースです。

『SGLT2阻害剤での治療は総死亡を51%、入院のリスクを39%減少することを示す』

という衝撃的な内容でした。

30万例超の2型糖尿病患者さんを対象とした国際試験ですので、信頼度は高いです。

SGLT2阻害剤での治療は他の糖尿病治療薬(6種類あり)と比較して、心不全による入院率および死亡率を有意に減少させたのですから、素晴らしい効果と言えます。

EPMA-REG OUTCOM試験に続き、SGLT2阻害薬の大規模試験で2回目の衝撃的な成果です。

EPMA-REG OUTCOM試験は、ニューイングランドジャーナルに2015年に研究報告が掲載されました。1)

信頼度の高い研究で、2回とても良い結果がでたので、SGLT2阻害薬は本当に良い薬の可能性が高くなりました。

私も、スーパー糖質制限食でも、早朝空腹時血糖値が正常化しない、年期の入った糖尿人に、最近は積極的に投与して、顕著な効果を得ています。

罹病期間が短い糖尿人なら、薬なしで、スーパー糖質制限食のみでコントロール良好となる場合がほとんどなのですが、罹病期間が長い糖尿人は、一筋縄ではいきません。

現在、SU剤、ビグアナイド剤、αGI剤、グリニド系剤、インスリン抵抗正改善剤、DPP-4阻害剤と、6種類の薬がありますが、いずれも、SGLT2阻害剤のような入院率および死亡率の減少効果はありません。

血糖値を下げるという効果は、7種類の薬全てにあります。

従って、血糖値の改善以外の、SGLT2独自の作用がないとこのような劇的な差は出ません。

EPMA-REG OUTCOM試験の時に、「入院率および死亡率を有意に減少」の作用機序に関して、いろんな仮説が提唱されました。

その中で、イタリア・ピサ大学のFerranniniらと米・カリフォルニア大学サンディエゴ校のMudaliarらは、SGLT2阻害薬投与による臓器保護効果の機序はケトン体であるとしました。2)3)

SGLT2阻害剤内服により、血中ケトン体が一般的な基準値よりはるかに高値となりますが、このケトン体高値そのものが、臓器保護効果を発揮し、短期間で総死亡率や入院率を減少させたという大胆な仮説です。

ケトン体高値という現象に関しては、SGLT2阻害薬以外の他の6種類の薬剤にはありませんので、決定的な違いと言えます。
勿論、私は、この「ケトン体の臓器保護仮説」に大賛成です。

今回の「CVD-REAL試験」の大成功も、「ケトン体高値による臓器保護作用」が効果を発揮した可能性が高いと思われます。

以前も記事にしましたように、SGLT2阻害剤は、「薬物による糖質制限」とみなすことが可能です。

そして、ケトン体高値に、臓器保護作用があるなら、スーパー糖質制限食実践により薬物なしで食事療法だけで、それが可能なわけであり、とても大きなアドバンテージと言えます。

EPMA-REG OUTCOM試験1)

日本を含む世界42か国のハイリスク2型糖尿病患者7,020例が対象。

EMPA-REG OUTCOMEは、米FDAが新規糖尿病治療薬に課している長期投与時の心血管安全性を評価する目的で行われたもの。

対象は、心筋梗塞や脳卒中の既往があり、標準治療を受けている、日本を含む世界42か国のハイリスク2型糖尿病患者7,020例。

降圧薬、抗血小板薬、脂質異常症治療薬などといった標準治療を受けているこれらの症例に、無作為に

①エンパグリフロジン10mg/日投与(n=2345)、
②T同25mg/日投与(n=2,342)、
③プラセボ投与群(n=2,333)

を上乗せで割り付けした3群で評価を行った。

追跡期間中央値は3.1年。

SGLT2投与の2群ではプラセボに比べて、全死亡率が32%減少し、入院率は35%減少した。


1)Zinman B, et al.N Eng J Med 2015;373:2117-2128
2)Diabetes Care 2016;39:1108-1114
3)Diabetes Care 2016;39:1115-1122


江部康二


☆☆☆
以下は、アストラゼネカ社が発表したプレスリリースの日本語訳です。

https://www.astrazeneca.co.jp/media/press-releases1/2017/20170321.html

アストラゼネカ 糖尿病治療薬SGLT2阻害剤の大規模リアルワールドエビデンス試験 「CVD-REAL試験」の結果を発表
公開日
2017年 3月 21日
本資料はアストラゼネカ英国本社が2017年3月19日に発信したプレスリリースを日本語に翻訳し、みなさまのご参考に提供するものです。本資料の正式言語は英語であり、その内容・解釈については英語が優先します。


SGLT2阻害剤での治療は他の糖尿病治療薬と比較し
心不全による入院率および死亡率を有意に減少

30万例超の2型糖尿病患者さんを対象とした国際試験で
SGLT2阻害剤での治療は総死亡を51%、入院のリスクを39%減少することを示す

アストラゼネカ(本社:英国ロンドン、最高経営責任者(CEO):パスカル・ソリオ[Pascal Soriot]、以下、アストラゼネカ)は、糖尿病治療薬SGLT2阻害剤 の治療を受けた2型糖尿病患者さんの、心不全による入院ならびに総死亡のリスクを評価した、最初の大規模リアルワールドエビデンス(RWE)試験「CVD-REAL試験」の結果を、2017年3月19日、第66回米国心臓病学会年次学術集会で発表しました。1

CVD-REAL試験は、世界6カ国30万例超の2型糖尿病患者さんを対象としており、うち87%の患者さんは心血管系疾患の既往歴がありませんでした。同試験では、広範な2型糖尿病患者集団全体において、SGLT-2阻害剤 であるフォシーガ(一般名:ダパグリフロジン、米国での製品名:Farxiga)、カナグリフロジン、エンパグリフロジンによる治療は、他の糖尿病治療薬による治療と比較して、心不全による入院率を39%(p<0.001)、総死亡率を51%(p<0.001)減少したことが示されました。また、心不全による入院と総死亡の複合評価項目の減少率は46%(p<0.001)でした。1

糖尿病に罹患している成人患者さんは、世界中で4億1,500万人にのぼり、2040年までには6億4,200万人(成人の10人に1人)2 に増加すると推定されています。2型糖尿病患者さんの心不全のリスクは通常の人より2~3倍高く、また、心臓発作および脳卒中の高いリスクに晒されています。2型糖尿病患者さんの死因の約50%が心血管疾患です。3,4,5

アストラゼネカのバイスプレジデント兼グローバルメディカルアフェアーズ本部長であるBruce Cooper医学博士は、「糖尿病患者さんが世界的に増えていますが、糖尿病は、高い入院費用を負担するリスクや死亡の危険性を伴う合併症を起こします。6,7今回この試験によって得られたリアルワールドデータが、比較的新しいSGLT2阻害剤クラスの薬による治療で、心不全による入院率や死亡率を約半分に減少するという、興味深いエビデンスを示しました。CVD-REALは、これまで臨床試験で対象とした2型糖尿病の患者さん群よりも、より広範でリスクが低い患者さん群における、SGLT2阻害剤治療の影響を評価した、最初の試験です」と述べました。

心不全による入院率の解析は、デンマーク、ドイツ、ノルウェー、スウェーデン、英国および米国の患者さんの匿名データを用いたもので、使用されたデータの内訳は、フォシーガ(ダパグリフロジン)投与が全患者さんのうちの41.8%、カナグリフロジン投与は52.7%、エンパグリフロジン投与は5.5%でした。一方、総死亡率の解析は、デンマーク、ノルウェー、スウェーデン、英国および米国の患者さんの匿名データを用い、使用されたデータの内訳は、フォシーガ(ダパグリフロジン)投与が全患者さんのうち51.0%、カナグリフロジン投与が42.3%、エンパグリフロジン投与が6.7%でした。

今回の解析結果は、CVD-REAL試験の最初の比較解析結果です。RWEデータの収集は継続しており、今後今回と同じ対象国の解析データセットを採用するだけでなく、他の国々のデータを加えるなどして、複数の解析が実施される予定です。本試験に用いられる解析データは、診療記録、苦情データベースおよび国内登録など、実臨床の情報源から入手された非特定化データです。本解析は、St. Luke’s Mid America Heart Institute(米国、カンザスシティ)の独立研究機関の統計グループにより検証されました。

以上

*****

References

1. The CVD-REAL Study: Lower Rates of Hospitalization for Heart Failure in New Users of SGLT-2 Inhibitors Versus Other Glucose Lowering Drugs — Real-World Data From Four Countries and More Than 360,000 Patients; presented 19 March at ACC 2017

2. International Diabetes Federation. Facts and Figures. Accessed 15 March 2017 http://www.idf.org/WDD15-guide/facts-and-figures.html

3. C, Cooper H, Bowen-Jones D. Mortality in type 2 diabetes mellitus: magnitude of the evidence from a systematic review and meta-analysis. The British Journal of Diabetes & Vascular Disease. 2013;13(4):192-207

4. Morrish NJ, et al. Mortality and causes of death in the WHO Multinational Study of Vascular Disease in Diabetes. Diabetologia. 2001;44 Suppl 2:S14-21.

5. World Heart Federation. Diabetes as a risk factor for cardiovascular disease. Available from: http://www.world-heart-federation.org/cardiovascular-health/cardiovascular-disease-risk-factors/diabetes/

6. World Health Organization. Media Centre: Diabetes Fact Sheet. Reviewed November 2016. Accessed 9 March 2017. http://www.who.int/mediacentre/factsheets/fs312/en/

7. American Diabetes Association. The Cost of Diabetes. Accessed 9 March 2017 http://www.diabetes.org/advocacy/news-events/cost-of-diabetes.html?referrer=https://www.google.com/
テーマ:糖質制限食
ジャンル:ヘルス・ダイエット
コメント
食後の違和感
江部先生

いつも貴重な情報をありがとうございます。
質問させてください。

極一般的な糖質のある食事をすると食後30分~2時間くらいの間
喉や首の後ろ、肩、顔、目などにものすごい熱を感じます。
熱いのですが汗が出るわけでもなく決まって上半身に熱や違和感を覚えます。

これらは糖化現象やアレルギー反応、或いは他の何か良くない病気である可能性はありますでしょうか?
スーパー糖質制限の間食上限である糖質5gくらいから軽い症状がでてきます。
2017/03/26(Sun) 19:40 | URL | あろん | 【編集
Re: 食後の違和感
あろん さん

私にもよくわかりません。

ただ糖化とかアレルギーには関係ないと思います。

単純に血糖値の上昇に敏感である可能性があると思います。
2017/03/26(Sun) 20:30 | URL | ドクター江部 | 【編集
江部先生お返事ありがとうございます。

スーパー糖質制限でも症状が出ないわけではないのですが、不快な症状が軽くなるので非常にありがたいです。
太りにくい体質で、褐色脂肪細胞が通常より活発なのかなどと色々と考えてしいますが難しいですね。
2017/03/26(Sun) 21:46 | URL | あろん | 【編集
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