2017年02月19日 (日)
【17/02/19 SGM
http://www.eps1.comlink.ne.jp/~mayus/lifestyle2/Dangeroflowcarbohydrate.html
動物実験ですが、糖質制限は四塩化炭素の代謝速度を遅くし、肝毒性を高めると書いていました。
糖質制限+アルコールはNASHのリスクをあげることもあるのでしょうか?
ご教示いただければ幸いであります。】
こんばんは。SGM さんから、動物実験と糖質制限食にに関するコメントと質問をいただきました。
スーパー糖質制限食で、肥満・脂肪肝が改善した症例は多数あります。
糖質制限食実践中は、食べている最中にも体脂肪は燃えていて、肝臓は糖新生をしてエネルギーを消費するので肥満が改善しやすいのです。
そして、NASHなど脂肪肝の根治療法は、唯一「糖質制限食」と考えられます。
従って、脂肪肝やNASHに糖質制限食はまったく問題ありませんし極めて有効な食事療法です。
ただアルコールは、糖新生やβ酸化を抑制しますので、量が過ぎれば、低血糖や脂肪肝を引き起こしやすく、注意が必要です。
糖新生が抑制されるとエネルギー消費は減ります。
β酸化が抑制されると脂肪分解も抑制されます。
さて、糖質制限食は、高脂肪・高たんぱく食となります。
この研究は、ラットを使ったものです。
どんな研究でも手軽なので、マウスやラットが実験動物として使われやすいです。
しかし、マウスやラットで高脂肪食の実験をすること自体が、根本的な間違いです。
なぜなら、マウスやラットなどネズミ類は、本来の主食は草の種子(即ち今の穀物)です。
草原が地球上の有力な植生として現れる鮮新世(510万年前)以降、ネズミ科の動物が出現して爆発的に繁栄します。
510万年間、草原の草の種子(穀物)を食べ続けてきたネズミに高脂肪食を与えれば、代謝が破綻するのは当たり前です。
ネズミの主食はあくまでも「穀物=低脂質食」なのです。
ネズミは、「穀物=低脂質食」に特化して、消化・吸収・代謝システムが適合しているのです。
この実験は単純に、マウスの代謝に合わない(主食でない)高脂肪食を与えて病気を作るという実験です。
全ての代謝が狂って病気だらけになるのもいわずもがなです。
例えば、ゴリラの主食は「棘の多い大きな蔓や大きな草」です。
このように、超低脂質食が主食であるゴリラに高脂肪食を食べさせたら、代謝はガタガタになり、マウスやラットと同様、たちどころに様々な病気になるでしょう。
ゴリラだと、高脂肪食を食べさせることの間違いが、ラットよりイメージしやすいですね。
人類の主食が何であったかはともかくとして、農耕が始まる前の700万年間は、穀物ではなかったことは確実です。
そして歴史的事実として、農耕の前は人類皆、糖質制限食でした。
またヒトの進化の過程で脳が急速に大きくなり、シナプシスが張り巡らされるためには、EPAとDHAの摂取が不可欠でした。
EPAとDHAは地上の植物性食品には含まれておらず、動物性食品にしか含まれていません。
従って少なくとも、肉・骨髄・昆虫・地虫・魚貝・・・などの高脂肪・高タンパク食を、脳が急速に発達した20万年前頃、必要充分な量、食べてたことは間違いないでしょう。
このように人類は本来高脂肪食には慣れているので、高脂肪食の安全性は高いのです。
ラットやゴリラと、ヒトの食性は全く異なっているのです。
結論です。
薬物の作用や毒性をネズミ類で動物実験するのは、研究方法として特に問題はないと思います。(動物実験自体の是非はおいておきます)。
しかし、本来主食が全く異なるマウス・ラットなどネズミ類で、人類の食物代謝の研究をおこなうのは、出発点から根本的に間違っている可能性が高いので注意が必要です。
研究者の皆さん、「薬物の動物実験」と「食物の動物実験」は、全く意味が異なることを認識してほしいと思います。
江部康二
http://www.eps1.comlink.ne.jp/~mayus/lifestyle2/Dangeroflowcarbohydrate.html
動物実験ですが、糖質制限は四塩化炭素の代謝速度を遅くし、肝毒性を高めると書いていました。
糖質制限+アルコールはNASHのリスクをあげることもあるのでしょうか?
ご教示いただければ幸いであります。】
こんばんは。SGM さんから、動物実験と糖質制限食にに関するコメントと質問をいただきました。
スーパー糖質制限食で、肥満・脂肪肝が改善した症例は多数あります。
糖質制限食実践中は、食べている最中にも体脂肪は燃えていて、肝臓は糖新生をしてエネルギーを消費するので肥満が改善しやすいのです。
そして、NASHなど脂肪肝の根治療法は、唯一「糖質制限食」と考えられます。
従って、脂肪肝やNASHに糖質制限食はまったく問題ありませんし極めて有効な食事療法です。
ただアルコールは、糖新生やβ酸化を抑制しますので、量が過ぎれば、低血糖や脂肪肝を引き起こしやすく、注意が必要です。
糖新生が抑制されるとエネルギー消費は減ります。
β酸化が抑制されると脂肪分解も抑制されます。
さて、糖質制限食は、高脂肪・高たんぱく食となります。
この研究は、ラットを使ったものです。
どんな研究でも手軽なので、マウスやラットが実験動物として使われやすいです。
しかし、マウスやラットで高脂肪食の実験をすること自体が、根本的な間違いです。
なぜなら、マウスやラットなどネズミ類は、本来の主食は草の種子(即ち今の穀物)です。
草原が地球上の有力な植生として現れる鮮新世(510万年前)以降、ネズミ科の動物が出現して爆発的に繁栄します。
510万年間、草原の草の種子(穀物)を食べ続けてきたネズミに高脂肪食を与えれば、代謝が破綻するのは当たり前です。
ネズミの主食はあくまでも「穀物=低脂質食」なのです。
ネズミは、「穀物=低脂質食」に特化して、消化・吸収・代謝システムが適合しているのです。
この実験は単純に、マウスの代謝に合わない(主食でない)高脂肪食を与えて病気を作るという実験です。
全ての代謝が狂って病気だらけになるのもいわずもがなです。
例えば、ゴリラの主食は「棘の多い大きな蔓や大きな草」です。
このように、超低脂質食が主食であるゴリラに高脂肪食を食べさせたら、代謝はガタガタになり、マウスやラットと同様、たちどころに様々な病気になるでしょう。
ゴリラだと、高脂肪食を食べさせることの間違いが、ラットよりイメージしやすいですね。
人類の主食が何であったかはともかくとして、農耕が始まる前の700万年間は、穀物ではなかったことは確実です。
そして歴史的事実として、農耕の前は人類皆、糖質制限食でした。
またヒトの進化の過程で脳が急速に大きくなり、シナプシスが張り巡らされるためには、EPAとDHAの摂取が不可欠でした。
EPAとDHAは地上の植物性食品には含まれておらず、動物性食品にしか含まれていません。
従って少なくとも、肉・骨髄・昆虫・地虫・魚貝・・・などの高脂肪・高タンパク食を、脳が急速に発達した20万年前頃、必要充分な量、食べてたことは間違いないでしょう。
このように人類は本来高脂肪食には慣れているので、高脂肪食の安全性は高いのです。
ラットやゴリラと、ヒトの食性は全く異なっているのです。
結論です。
薬物の作用や毒性をネズミ類で動物実験するのは、研究方法として特に問題はないと思います。(動物実験自体の是非はおいておきます)。
しかし、本来主食が全く異なるマウス・ラットなどネズミ類で、人類の食物代謝の研究をおこなうのは、出発点から根本的に間違っている可能性が高いので注意が必要です。
研究者の皆さん、「薬物の動物実験」と「食物の動物実験」は、全く意味が異なることを認識してほしいと思います。
江部康二
こんばんは。1型の主人と共に超糖質制限に取り組んでおり、ブログや書籍、いつも有り難く拝読させて頂いております。
子供のワクチンなどのことを調べておりましたら、自然派医師と称される本間真二郎先生が、昨日一昨日、糖質制限食は今すぐやめるべき!糖質制限をすると身体が中身のない現代農法の野菜と同じ状態になる。見た目は元気でも中身はスカスカだ!腸内細菌目線ではない、間違っている!とブログや雑誌にて声高に申され、糖質制限者がコメント欄にて不服申立てをし、炎上している状態でした。
付け加えるように一部の人には仕方なし、くらいに書かれており、非常に不愉快極まり無かったです…。子供のワクチンは否定するのにインスリン注射は肯定なのか?と矛盾を感じずにはいられませんでした。
江部先生の記事にて腸内細菌も適応していくと述べられておりましたが、モヤモヤして悔しい気持ちでいっぱいです。。
江部先生のご意見がお伺い出来ましたら幸いでございます。どうぞ宜しくお願い申し上げます。
子供のワクチンなどのことを調べておりましたら、自然派医師と称される本間真二郎先生が、昨日一昨日、糖質制限食は今すぐやめるべき!糖質制限をすると身体が中身のない現代農法の野菜と同じ状態になる。見た目は元気でも中身はスカスカだ!腸内細菌目線ではない、間違っている!とブログや雑誌にて声高に申され、糖質制限者がコメント欄にて不服申立てをし、炎上している状態でした。
付け加えるように一部の人には仕方なし、くらいに書かれており、非常に不愉快極まり無かったです…。子供のワクチンは否定するのにインスリン注射は肯定なのか?と矛盾を感じずにはいられませんでした。
江部先生の記事にて腸内細菌も適応していくと述べられておりましたが、モヤモヤして悔しい気持ちでいっぱいです。。
江部先生のご意見がお伺い出来ましたら幸いでございます。どうぞ宜しくお願い申し上げます。
糖質制限ママ さん
2013年10月、米国糖尿病学会は、「栄養療法に関する声明」において
糖質制限食を、地中海食、ベジタリアン食、脂質制限食、高血圧食ともに
正式に容認しました。
つまり、糖質制限食の是非に関しては、世界的には、これにて一見落着ということです。
明日もう少し詳しく解説して記事にしようと思います。
2013年10月、米国糖尿病学会は、「栄養療法に関する声明」において
糖質制限食を、地中海食、ベジタリアン食、脂質制限食、高血圧食ともに
正式に容認しました。
つまり、糖質制限食の是非に関しては、世界的には、これにて一見落着ということです。
明日もう少し詳しく解説して記事にしようと思います。
2017/02/19(Sun) 22:00 | URL | ドクター江部 | 【編集】
こんばんは。
いつもブログ拝見させていただいております。
2年前の記事ですが、気になったので投稿させていただきます。
江部先生は、糖質制限(高たんぱく・高脂質食)とメガリン(腎機能)の関係をどのようにお考えですか?
お手隙の際、ご教授いただけたら幸いです。
http://www.qlifepro.com/news/20151110/identification-of-megalin-as-cause-chronic-kidney-disease-entrance.html
いつもブログ拝見させていただいております。
2年前の記事ですが、気になったので投稿させていただきます。
江部先生は、糖質制限(高たんぱく・高脂質食)とメガリン(腎機能)の関係をどのようにお考えですか?
お手隙の際、ご教授いただけたら幸いです。
http://www.qlifepro.com/news/20151110/identification-of-megalin-as-cause-chronic-kidney-disease-entrance.html
2017/02/19(Sun) 23:20 | URL | 糖質制限アスリート | 【編集】
いつもたくさんの情報、コメントへの返信ありがとうございます。
私は約一年前に妊娠糖尿病となり、産後は境界型と診断された者です。
75gOGTTをして妊娠糖尿病と言われた時は、血糖値のピークが1時間だったのに、そこから糖質制限で産後3ヶ月の75gOGTTでは、ピークが90分、最近自宅の血糖測定器では120分がピークとなっています。糖質制限中の突然の糖質摂取では、耐糖能が機能するまでに時間がかかるのは承知の上ですが、普段の糖質制限食でもピークが120分となってしまったということは、悪化しているということでしょうか。不安です。
私は約一年前に妊娠糖尿病となり、産後は境界型と診断された者です。
75gOGTTをして妊娠糖尿病と言われた時は、血糖値のピークが1時間だったのに、そこから糖質制限で産後3ヶ月の75gOGTTでは、ピークが90分、最近自宅の血糖測定器では120分がピークとなっています。糖質制限中の突然の糖質摂取では、耐糖能が機能するまでに時間がかかるのは承知の上ですが、普段の糖質制限食でもピークが120分となってしまったということは、悪化しているということでしょうか。不安です。
2017/02/20(Mon) 09:31 | URL | | 【編集】
丁寧にご回答いただきありがとうございました。論理的におかしな動物実験ということで、腑に落ちました。論文も批判的に見るように気をつけていきたいと思います。感謝いたします(^^)
2017/02/20(Mon) 11:08 | URL | SGM | 【編集】
糖質制限アスリートさん
メガリンに関しては、全く知らなかったので、今から勉強してみます。
メガリンに関しては、全く知らなかったので、今から勉強してみます。
2017/02/20(Mon) 21:08 | URL | ドクター江部 | 【編集】
耐糖能悪化 さん
具体的なデータは、どうなのでしょう?
具体的なデータは、どうなのでしょう?
2017/02/20(Mon) 21:11 | URL | ドクター江部 | 【編集】
それぞれ食前、30分、60分、90分、120分の数値です。
妊娠糖尿病と診断された時(OGTT)
75
160
198
176
138
産後3ヶ月(OGTT)
HbA1c5.6
84
164
204
205
146
産後6ヶ月
空腹時75 HbA1c5.3 Cペプチド0.8
今朝の数値です。(糖質6g程度の食事)
159cm47.5kg
食前 72
1時間 77
1:30 82
2時間 89
明日も計測してみようと思います。
妊娠糖尿病と診断された時(OGTT)
75
160
198
176
138
産後3ヶ月(OGTT)
HbA1c5.6
84
164
204
205
146
産後6ヶ月
空腹時75 HbA1c5.3 Cペプチド0.8
今朝の数値です。(糖質6g程度の食事)
159cm47.5kg
食前 72
1時間 77
1:30 82
2時間 89
明日も計測してみようと思います。
2017/02/20(Mon) 22:39 | URL | | 【編集】
妊娠糖尿病と診断された時(OGTT)のデータと
産後3ヶ月(OGTT) のデータは、あまり差はないと思います。
食前 72
1時間 77
1:30 82
2時間 89
このデータも、正常低めなので、問題ないと思います。
2017/02/21(Tue) 16:55 | URL | ドクター江部 | 【編集】
そうなのですね。わかりました。ありがとうございます。
2017/02/21(Tue) 17:17 | URL | | 【編集】
2018/09/10(Mon) 11:21 | URL | TAKASHI MIYAMOTO | 【編集】
TAKASHI MIYAMOTO さん
2018年05月06日 (日)の本ブログ記事
マウス、ケトン食で「死亡率減少、記憶力向上、健康寿命延長」
http://koujiebe.blog95.fc2.com/blog-entry-4552.html
をご参照頂けば幸いです。
2018年05月06日 (日)の本ブログ記事
マウス、ケトン食で「死亡率減少、記憶力向上、健康寿命延長」
http://koujiebe.blog95.fc2.com/blog-entry-4552.html
をご参照頂けば幸いです。
2018/09/10(Mon) 15:58 | URL | ドクター江部 | 【編集】
東北大学大学院農学研究科の都築毅准教授らの実験はどこが間違っていたとお考えでしょうか?他人の実験に関して詳細ご存じないことはよくわかっていますが、あまりにも正反対でどこかお心当たりがないかと思いまして。お忙しいところ済みませんがもし、お時間ありましたらお願い申し上げます。
1日の総糖質料≦40g 1年間で
Hb1c 6.2 → 5.4
うれしいです。
1日の総糖質料≦40g 1年間で
Hb1c 6.2 → 5.4
うれしいです。
2018/09/11(Tue) 14:19 | URL | TAKASHI MIYAMOTO | 【編集】
TAKASHI MIYAMOTO さん
HbA1cの改善、良かったですね。
都築毅准教授らの実験は学会発表だけで、論文化もされていないので
信頼度云々以前の段階です。
以下のブログ記事をご参照頂けば幸いです。
2018年05月06日 (日)の本ブログ記事
マウス、ケトン食で「死亡率減少、記憶力向上、健康寿命延長」
http://koujiebe.blog95.fc2.com/blog-entry-4552.html
HbA1cの改善、良かったですね。
都築毅准教授らの実験は学会発表だけで、論文化もされていないので
信頼度云々以前の段階です。
以下のブログ記事をご参照頂けば幸いです。
2018年05月06日 (日)の本ブログ記事
マウス、ケトン食で「死亡率減少、記憶力向上、健康寿命延長」
http://koujiebe.blog95.fc2.com/blog-entry-4552.html
2018/09/11(Tue) 16:16 | URL | ドクター江部 | 【編集】
江部先生
お礼が遅くなり申し訳ございません。
よくわかりました。安心して今後も糖質制限を続けていこうと思います。
お礼が遅くなり申し訳ございません。
よくわかりました。安心して今後も糖質制限を続けていこうと思います。
2018/09/13(Thu) 06:57 | URL | Takashi Miyamoto | 【編集】
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