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SGLT2阻害薬とケトン体。SGLT2阻害薬は薬物による糖質制限か?
こんばんは。

精神科医師Aさんから、SGLT2阻害薬とケトン体に関する論文の情報を頂きました。

ありがとうございます。

SGLT2阻害薬は、尿中に血中のブドウ糖を排泄させる薬です。

SGLT2阻害薬投与で健常人のデータでは、毎日50~60gのブドウ糖が尿から排泄されます。

2型糖尿人のデータでは、毎日71~93gのブドウ糖が尿から排泄されます。

当初、私は「糖毒解除など短期的使用には切れ味がよく有用な薬であるが、体重減少効果が半年でなくなるので、基礎代謝が低下していく可能性があり、長期投与は好ましくないのではないか」という懸念を表明してきましたが、この1年、評価が良い方に大きく変化しました。。

2015年11月に、ニューイングランド・ジャーナルにSGLT2阻害薬の研究結果が掲載されました。

【EMPA-REG outcome trial 

対象患者 心血管疾患のある2型糖尿病患者7,028例

結論 心血管イベントのリスクが高い2型糖尿病患者において,
標準治療へのempagliflozinの追加は心血管疾患による死亡,心血管イベント,および全死亡の発症率を低下させた。
糖尿病治療薬ではじめての効果。
Empagliflozin, Cardiovascular Outcomes, and Mortality in Type 2 Diabetes.
N Engl J Med. 2015 Nov 26;373(22):2117-28.】


現在まで7種類の経口糖尿病薬が開発されてきましたが、その中で、唯一SGLT2阻害薬だけが、

『心血管疾患による死亡,心血管イベント,および全死亡の発症率を低下させた。』

ということで、これは画期的な研究成果と言えます。

SGLT2阻害薬が持つ利尿作用が、心血管死の予防に有利に働いたのではないかという説もありますが、それなら利尿剤を飲めばいいわけで、理屈に合いません。

それよりも、ケトン体値上昇による心保護作用の可能性のほうが魅力ある仮説であり、私もそれに賛成です。

SGLT2阻害薬により増加したケトン体が心臓や腎臓でエネルギー源として利用されるため、EMPA-REG で、心血管、腎臓保護が示された可能性もあります。
 
また、SGLT2阻害薬は薬物による糖質制限であるという考え方もできます。

SGLT2阻害薬により増加したケトン体に、心血管、腎臓保護作用があるなら、当然、糖質制限食によるケトン体上昇も心血管、腎臓保護作用があることとなります。

実際、高雄病院の入院糖尿病患者さんで、スーパー糖質制限食実践2週間でも、早朝空腹時血糖値が180~200mg/dlから改善せず治療に難渋していた数例の症例において、SGLT2阻害薬投与により、翌朝には100~120mg/dlていどに劇的に改善したことがありました。

外部からの糖質由来の血糖は糖質制限食でリアルタイムに改善しますが、身体内部の糖新生による血糖上昇は糖質制限食でもなかなか良くなりません。

<糖質制限食+SGLT2阻害薬> のコンビにより、糖毒が解除されて、劇的な効果が得られたものと思います。

脱水による脳梗塞などの副作用には細心の注意が必要ですが、SGLT2阻害薬はかなりのポテンシャルのある良い薬の可能性があります。



江部康二

テーマ:糖質制限食
ジャンル:ヘルス・ダイエット
コメント
SGLT2阻害薬
2型糖尿病の患者が糖質制限をしないで、SGLT2阻害薬を服用して血糖値を下げた場合、血糖値スパイクはどうなるのでしょう?
過剰な糖質(日本酒とか)摂取後は一時的でも高血糖になりますよね?
やはり糖尿病の患者には夢の薬では無いですよね。
又、腎臓に余計な負担を負わせる事になりますよね。
一瞬チョットものすごく期待してしまいました。σ(^_^;)
2017/02/06(Mon) 19:39 | URL | まちこ | 【編集
Re: SGLT2阻害薬
まちこ さん

SGLT2阻害薬は、食前も食後も、30mgくらい血糖値を下げます。
しかし過剰な糖質には太刀打ちできません。

ただSGLT2阻害薬、記事にも書きましたように、使い方次第では、非常に有用です。
2017/02/06(Mon) 19:53 | URL | ドクター江部 | 【編集
度々すみません
やはり肩の痛みがおさまらず。
普段家庭血圧を測っても正常値ですが、痛みが気になり測ると上130台下80台になってしまいます。脈拍は60台から70台ですが。
やはりセルコックス100とロキソプロフェンの湿布だけではなく、ステロイド注射をしてもらった方がよいのか考えます。1回でもステロイド糖尿病やそのまま真性糖尿病を発症する場合もありますか。
2017/02/07(Tue) 00:07 | URL | さえ | 【編集
Re: 度々すみません
さえ  さん

「1回でもステロイド糖尿病やそのまま真性糖尿病を発症する場合もありますか。」

それは、めったにないと思います。

治療に関しては、主治医とよくご相談ください。

2017/02/07(Tue) 07:35 | URL | ドクター江部 | 【編集
金森重樹さんも糖質制限食で絶好調!
http://archives.mag2.com/0000086027/

メールマガジンビジネス部門日本一 & 「通販大家」社長の超有名人です。
2017/02/07(Tue) 12:13 | URL | らこ | 【編集
Re: 金森重樹さんも糖質制限食で絶好調!
らこ さん

コメントありがとうございます。

歯周症が改善して、体重が減って肥満脱却・・・金森さん絶好調ですね。
2017/02/07(Tue) 22:31 | URL | ドクター江部 | 【編集
ケトン体の数値について
こんにちは、初めて投稿させて頂きます。
いつも為になるブログをありがとうございます。

私自身、一年半位糖質制限をしていて、最近血中ケトン体測定器を購入しました。
何日か試しましたが、何回測っても、0.1mmolの数値です。
私は糖尿病でもダイエットでもなく、健康目的で糖質制限を始めました。やせ型の為、スーパーを目指しつつもナッツや果物が多かったり、根菜が若干多かったりして、結果的には1食当り30g前後の糖質になっていたと思います。
そこで、厳密に糖質量を計算して1食当り20g以下に抑えた所、一度だけ0.9mmol(900マイクロmolですね)、だいたい0.2~0.3を推移しています。
個人差もあるのでしょうが、私の場合は糖質をきちんと抑えないと、ケトン体が多く作られないのだなぁと実感しました。

そこで疑問に感じたのが、緩やかな糖質制限でケトン体の恩恵を受ける事は、果たしてできるのか?というものです。

SGLT2阻害薬の薬効が、ケトン体による心保護作用によるという仮説についても同様です。
スーパー糖質制限で血中ケトン体が上昇するのは分かるのですが、緩やかな糖質制限、あるいは糖質制限せずにSGLT2阻害薬の服用のみで、ケトン体は上昇するのでしょうか?

糖質を摂取すれば、インスリンが分泌されケトン体は作られなくなると思うのですが、例えば夜糖質を摂らなければ、夜~朝だけケトン体が作られ、効果が出るという事でしょうか?
この場合、もしケトン体を作る回路が働くスイッチが入るのに時間がかかるタイプの人だと、効果が出にくくなる可能性があるでしょうか。

個人的に、0.1~0.3mmolの数値でケトン体の様々な恩恵を受ける事ができるのか、気になる所です。
先生の見解を教えて頂けましたら幸いです。
2017/02/15(Wed) 07:46 | URL | みんみん | 【編集
Re: ケトン体の数値について
みんみん さん

スーパー糖質制限食でケトン体は上昇します。

緩やかな糖質制限食では、ケトン体は上昇しません。

SGLT2阻害薬のみでも、ケトン体は上昇します。

1)食後高血糖を予防するメリット
2)血中ケトン体上昇による臓器保護効果

ケトン体測定器の基準値は、0.085mmol以下だったと思います。
ケトン体はある程度高値であるほど、臓器保護作用は発揮されると思います。

0.1~0.3mmolの数値でも少しは恩恵はあると思います。

2017/02/15(Wed) 12:41 | URL | ドクター江部 | 【編集
お返事ありがとうございます。
SGLT阻害薬は、スーパー糖質制限に匹敵する効果があるんですね。
驚きましたが、とても勉強になりました。

ケトン体の数値、測定器だと85マイクロmolが基準値なんですね。
私の場合は一応、基準値よりは高いですね。
もう少し上がるといいなと思いますので、引き続きスーパーでやって様子を見ようとと思います。
とても参考になりました。
ありがとうございました。
2017/02/16(Thu) 15:27 | URL | みんみん | 【編集
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