日本病態栄養学会初日2017/1/13(金)の感想。
【17/01/13 しらねのぞるば

日本病態栄養学会(1日目)感想

20周年記念大会で,日程がゆったりしているので,本日は午後からの開催でした.

私は,江部診療所からの口演もあるので,栄養教育・指導のセッション24件を最初から最後までじっくりと聴いておりました.

以下,個別口演のメモから:

◇厳格なカロリー制限食を強制され,それを忠実に守ったら,透析に至ってしまった,実にお気の毒な例がありました.

◇病院の指示するカロリー制限食を忠実に実行しているのに,血糖値が下がらないから『指示した食事を守らず,
  間食をしているのだろう』と医師から罵倒され,食事・医療不信に陥った例も報告されていました.

◇「糖質制限食を行うと,ご飯をたべないから,塩分過剰になるのでは?」という質問に,糖質制限を実行している
側からは「ご飯のおかずだから,味が濃くなる. 糖質制限食ではむしろ薄味になる.」という回答がありました.

◇「糖質制限食に耐え切れず,Drop Outする人が多いのでは?」という質問に,「糖尿病患者にはすぐに結果が
よく出るので,むしろDrop Outは少ない」という回答.

◇患者はともかく,医師に対するアンケートでも,『糖質のみが血糖値を上げるとは知らなかった』とは! 病院に
行くのが恐ろしくなりました.

◇複数の口演で,大多数の患者は「病院の指示する(カロリー制限食の)食事療法は守れない」と答えていました.

◇【糖尿病治療は,まず食事療法】とガイドラインにあるのに,実際には医師は栄養指導を依頼するのを面倒くさ
がって実行していない. また,栄養指導を依頼する/しない の基準もあいまいだという報告には愕然としました.

◇血糖コントロール不良で肺癌手術を行えない患者に,糖質制限をわずか1ヶ月行っただけで,血糖値が安定し,
術後合併もなく手術が成功したという事例がありました.

◇糖質制限食とカロリー制限食とのクロスオーバー試験が報告されましたが,座長から「最初に糖質制限食を割り
当てられたグループは,すぐにいい結果が出るので,来月からカロリー制限食をしてくださいと言われても,実際
にはそうしないのではないか」というコメントがありました.

◇江部診療所の山本先生の発表はお見事でした. しかし,いい意味で先生の発表は目立ちませんでした. なぜ
なら,多くの病院でも糖質制限食が続々と実行されるようになり,こういう報告は珍しくなくなったからです.

全般感想から申しますと,医療最前線では,糖質制限食に対するあからさまな敵意・誹謗はすっかり影をひそめ,食事療法の選択枝としての糖質制限食は,すっかり定着したことが感じられました.

もう数年すれば,糖尿病食事療法の第一選択肢になっていくという,この流れはもう誰にもとどめられないでしょう

(「ケトン体」という言葉を聞いただけで,頭に血が上る,例の御仁はわかりませんが. 明後日のコントラバシー3,楽しみにしております).】



こんばんは。

しらねのぞるばさんから、第20回日本病態栄養学会年次学術集会(1日目)の感想を頂きました。

ありがとうございます。

私も、江部診療所の外来が終了して、午後3時頃駆けつけました。

山本心さんの発表、HbA1c7.0%未満と7.0%以上で、統計を取ると、いろんなデータで、明確に差が出ました。

自分の診療所のデータなのですが、統計を取るまでは、あまり把握できていませんでした。

興味深いのは、1回の食事の糖質量が「30~40g」の緩やかな糖質制限食だと、1日に90~120gであり、これだと7.0%未満は一人だけでした。

残りの5名は7.0%以上でした。

1日の食事の糖質量が60gで、スーパー糖質制限食なのに、7.0%以上の人が一人(7.5%)だけいましたが、カルテで確認すると過少申告の可能性ありです。

1日の食事の糖質量が60g以下の、残りの25名は、全員7.0%未満でした。

HbA1c7%未満群 36名  平均6.1%±0.4  平均糖質量55.2g±21.1
HbA1c7%以上群 15名  平均7.4%±0.4  平均糖質量123.6g±42.8

全員が、糖質制限食でしたが、スーパー糖質制限食群と緩やかな糖質制限群と二分されました。

当たり前ではありますが、やはりスーパー糖質制限食の方がコントロール良好ですね。



他の発表も聞きましたが、しらねのぞるばさんのご感想のように、糖質制限食に対するあからさまな誹謗中傷は、ほぼ皆無でしたね。

医学界、良い方にどんどん変化していますので、嬉しい限りです。


江部康二
テーマ:糖質制限食
ジャンル:ヘルス・ダイエット
コメント
糖尿病に良く使用され、糖質制限を支持する医師も比較的良く使用しているアクトスpioglitazoneに関して、
FDAは、「武田のアクトスは膀胱癌のリスク上昇に関連する可能性があると結論した」と発表しました。

医薬品安全性情報 Vol.15 No.01(2017/01/12)
国立医薬品食品衛生研究所 安全情報部
http://www.nihs.go.jp/dig/sireport/weekly15/01170112.pdf

【米FDA(U. S. Food and Drug Administration)】
2型糖尿病治療薬pioglitazone:膀胱癌のリスク上昇に関連する可能性があるとFDAの再レビューで結論

◇要 約
FDAは,再レビューの結果,2型糖尿病治療薬のpioglitazone(販売名:[‘Actos’],[‘Actoplus Met’],[‘Actoplus Met XR’],[‘Duetact’],[‘Oseni’])は,膀胱癌のリスク上昇に関連する可能性があると結論した。
Pioglitazone含有製品の製品情報には既にこのリスクに関する警告が記載されているが,新たにレビューした研究について追記するための製品情報改訂をFDAは承認した。
(詳細は該当サイトをご覧下さい)
2017/01/15(Sun) 06:52 | URL |  | 【編集
本ブログ、日本医学界の変化!
都内河北 鈴木です。

真理は隠蔽出来ないですね!!

江部先生の医療理念の御尽力には、重症化する病態から生還できた事!!
生還後も脳梗塞後遺症プラ~ク減少改善している者として、
感謝尽きません!!

何等御礼できない生活状況である事が、悔やまれますが、
益々の「糖質制限理論」食生活継続で改善目指し結果を報告できればと考えています。
御容赦下さい。
敬具
2017/01/15(Sun) 07:57 | URL | 都内河北 鈴木 | 【編集
感謝
こんにちは。
日本病態栄養学会一日目のご感想をありがとうございます。
現況、世の中が糖質制限食に対して前向きであることを知り、一般人としても大変嬉しく思いました。
(お願い)
今回の学会の資料やご報告など、雑誌等で公表されましたら、書名をブログでお知らせくださいますようお願い申し上げます。
2017/01/15(Sun) 12:33 | URL | 一般人 | 【編集
第20回日本病態栄養学会 3日目 コントラバシー#3の感想
江部先生,本日のDebate お疲れ様でした. いい席をとるために,早朝から雪の中を,国際会議場に一番乗りしましたが,その甲斐はありました.

本日の『コントラバシー#3』のテーマ名は,『低炭水化物の食事療法の是?非?』でしたが,先生も途中述べられたように,「炭水化物」と「糖質」ではまるで意味合いが異なるので,これは適切とは思えません. 先生が提唱されているのは,糖質制限であって,食物繊維摂取を否定しているわけではないからです.

また,「食事療法」としての是非を問うているのであって,ひとつ前のコントラバシー#2のように,肥満者のダイエットとしての是非を論ずる場ではなかったはずです. ところが,糖質制限食を『否』とする岐阜大学 武田先生は,ほとんど,糖尿病患者への治療効果には触れませんでした. 糖尿患者の食事療法についてのDebateなのに,血糖値やHbA1cのスライドが1枚もなかったのは,不思議を通り越して,あっぱれです.まあ触れることができなかったというべきでしょうが.

また,高糖質食で体重が減少した例として,刑務所の食事や 昭和20年代の日本を引き合いに出していましたが,これは作戦失敗だったと思います.なぜなら武田先生が引用した,厚生省(当時)の『国民栄養調査』ですが,武田先生は 本当にこの調査書を読まれたのか疑問だからです.

例えば昭和22年の調査書本文にもある通り;

http://www0.nih.go.jp/eiken/chosa/kokumin_eiyou/doc_year/1947/1947_kek.pdf

当時の公衆保険局栄養課長は,こう述べています.

『以上を要するに,蛋白質摂取量もまた熱量と同様,都市・農村ともに前年より増加をみたが,これを標準量に対比するときいずれも18~20%不足であり,即ち蛋白質の不足が都市・農村に共通的にみられ,特に農村においては動物性蛋白質の著しき不足という質的缺陥が認められる.』

『脂肪の摂取量は,都市の年間平均は約15.3gであり,農村のそれは約13.4gで,これらは望ましき標準必需量に比較すると,なお,40~50%の不足である.』

武田先生は,昭和21~25年のマクロ栄養表だけをスライドに出して,『理想の食事構成』と言わんばかりでしたが,ここでは『劣悪きわまる栄養事情』とされているのです. 実際,その通りで,調査書結語では;

『身体的症候の発現率は前年度よりは一般に減少したが,母乳分泌不良・月経異常・腱反射消失・口角炎,貧血等はなお相当多く見られる.』

とあるように,当時の日本人は,このひどい食料事情による疾病・短寿命・子供の発育不良に苦しんでいたのです. 武田先生は,現在の日本から,こういう状況に戻すべきだと,本当にお考えなのでしょうか?

「当時は糖尿病は少なかった」と言われていましたが,当たり前です. 糖尿病になれるほどの栄養も摂れず,糖尿病が発見されやすくなる年齢に達する前に死んでしまう人が多かったからです. だいたい 当時は,今のように血糖値が簡単に測定できるわけではなく,糖尿病かどうかは『尿を試験管にとり,ヨードを一滴たらしてみる』程度で判定していたのですから(それすら 全例ではない),現在の糖尿病 有病率と比較すること自体が間違っています.数字どうしであれば,なんでも比較できるというわけではないでしょう.

武田先生は,遺伝子がご専門だそうで,いろいろと難しいことを並べておられましたが,それらは,実際に患者を直接診察・対話し,患者のQOL・健康を高めることを目的にされているのか,それとも単に DNAサンプルを集める対象としてしかみていないのではないのかとも思いました.

というのも,聴衆は非常に少なかったですが,本日 朝一の『コントラバシー#1』の最後に,奈良県立医大の石井均先生が,『近年の医療は,何でもEvdence,Evidenceで,人間である患者の気持ちを見落としていないか. 科学だけで患者が見えていないのでは』
と述べられたのが,強く印象に残ったからです.

2017/01/15(Sun) 14:37 | URL | しらねのぞるば | 【編集
Re: タイトルなし

アクトスと膀胱癌に関する
最新情報をありがとうございます。
2017/01/15(Sun) 15:51 | URL | ドクター江部 | 【編集
Re: 第20回日本病態栄養学会 3日目 コントラバシー#3の感想
しらねのぞるば さん

興味深いご感想をありがとうございます。
明日、記事にしたいと思います。
2017/01/15(Sun) 15:56 | URL | ドクター江部 | 【編集
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